株式投資のメリットの一つが配当金だ。インカムゲイン目当てで投資するなら、配当利回りの高い企業はチェックしておきたい。今回は「配当とはそもそも何か?」に加え、配当狙いの投資のメリットや日本株の配当利回り上位10銘柄を紹介していこう。

目次
1,株式投資で得られる2種類の利益
2,キャピタルゲイン重視の投資のメリット・デメリット
3,インカムゲイン重視の投資のメリット・デメリット
4,配当目的投資の銘柄選びの4つのポイント
5,日本株の配当利回りランキングTOP10
6,配当利回りTOP10企業の概要
7,じっくり堅実に増やすなら、高配当利回り銘柄を

1,株式投資で得られる2種類の利益 「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」

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(画像=TK Kurikawa/Shutterstock.com)

配当について説明する前に、株式投資で得られる利益の種類を紹介しよう。株式投資には、「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」という2つの利益がある。それぞれの概要と特徴を簡単に説明しよう。

キャピタルゲイン――株式を売却して得られる利益

キャピタルゲインとは保有株式を売却することで得られる差益のことで、「株を売って得られる儲け」を意味する。

売却して利益が出れば、「値上がり益」または「譲渡益」を得たことになる。損失の場合は「キャピタルロス」、「値下がり損」、または「譲渡損」だ。

インカムゲイン――株式を保有していることで得られる利益

インカムゲインとは、株式を保有していることで定期的に得られる利益のことで、「配当」または「配当金」とも呼ばれる。

日本の場合、利益が上がった企業は決算期末に年1回、あるいは中間と期末で年2回、保有株数に応じて株主に利益を分配する。配当金額は業績によって変動する。黒字でも配当金がないこともあるし、通常の配当に上乗せされる特別配当や記念配当が支払われることもある。

配当は「1株につき~円」というかたちで定期的に株主に分配されるため、銀行預金の利子に似ているところがある。

2,キャピタルゲイン重視の投資のメリット・デメリット

「値上がり益」を主な目的として投資する場合のメリット・デメリットは、以下のとおりだ。

メリット 短期間でリターンを望める

株を売った時点で損益が確定するため、短期間で投資の結果がわかるのが最大のメリットだ。配当に比べると、利益も損も振れ幅が大きいのが特徴である。

デメリット 日常的な手間がかかる

配当狙いの株式投資に対して、キャピタルゲインを目的とする株式投資では、利益を出すために相応の手間をかけなければならない。

市況や株の値動きを分析し、企業の財務状態が健全であることを確認した上で株式を購入する。定期的または頻繁に株価をチェックして、株価が上昇したタイミングを見計らって売却するため、手間がかかる。

しかも、株価変動リスクや流動性リスクなどがあるため、期待通りの利益が出るとは限らない。キャピタルゲインを目的とする投資は、配当利回り重視の投資に比べるとリスクが高いと言えるだろう。

3,インカムゲイン重視の投資のメリット・デメリット ローリスク・ローリターン、中長期で投資効果

次に、インカムゲイン重視(配当利回り重視)の投資、つまり高配当銘柄を選んで投資することのメリット・デメリットを見ていこう。

メリット 低リスクで比較的手間が少ない

1つ目のメリットは、比較的低いリスクで運用できることだ。年1回あるいは年2回、さらに毎年継続的に配当が支払われるので、利益の予想を立てやすい。運用期間を中長期に設定すると、配当が積み重なって、数年後にはそれなりの投資効果が出る。

2つ目のメリットは、キャピタルゲイン目的よりも手間が少ないことだ。日々の株価変動に気を配る必要がないので、多忙で頻繁に株価をチェックできない人でも株式投資で資産を形成できる。

デメリット リターンはキャピタルゲイン目的に比べると限定的

一般的に配当は年に1回もしくは2回なので、株価の上昇によって利益が発生するキャピタルゲイン目的の投資に比べると、リターンは少なくなる傾向がある。

4,配当目的投資の銘柄選びの4つのポイント 企業選びはどうしたらいいか?

インカムゲインを目的とした投資で重要なのは、「配当利回り」が高い銘柄を選ぶことだ。配当利回りは、以下の計算式で求められる。また配当が支払われるかどうかも重要だ。

配当利回り=1株あたりの配当/1株あたりの株価×100

これらの条件を満たす企業をどのように選べばいいのだろうか。銘柄選びの4つのポイントを紹介しよう。

高配当利回り銘柄を選ぶポイント1 ネット証券のスクリーニング機能を活用する

高配当利回り銘柄を選ぶ際は、ネット証券各社のWEBサイトにログインすると使用できるスクリーニング機能、あるいはネット証券の銘柄検索ツールを利用する。

たとえば、「配当利回り3.0%以上」という基本条件に「時価総額100億円以上」や「自己資本比率40%以上」などの条件を組み合わせてスクリーニングすると、すぐに高配当利回り銘柄を絞り込むことができる。

高配当利回り銘柄選びのポイント2 安定的で継続的な配当方針の企業を選ぶ

長期的に安定した配当を望むなら、IR情報の配当方針として「安定的で継続的な配当」を謳っている銘柄を選ぶといい。このような銘柄は、業績悪化や赤字決算でも予想配当額が支払われる可能性が高い。

高配当利回り銘柄選びのポイント3 業績に連動した配当方針の企業を避ける

配当方針が「業績に連動する配当」という銘柄は、赤字決算の場合配当金が支払われないことがあるので、投資に不慣れな人は避けたほうがいいだろう。

高配当利回り銘柄選びのポイント4 利回り以外の指標にも着目する

年間予想配当額は、業績によっては減少、またはゼロになる可能性がある。

ピックアップした銘柄については、少なくとも以下の点をチェックして、配当が減少するリスクが少ないことを確認してから株式を購入するといいだろう。

・業績(実績と予想)
過去に赤字決算で配当がゼロだったことはないかを確認する。業績予想も黒字が望ましい。

・自己資本比率
総資産に占める株主資本の割合のことで、50%を超えていれば安全性が高いと考えられる。

・利益剰余金
自己資本のうち、資本金を超える部分のこと。利益剰余金が十分確保されていれば、赤字決算になってもそれを原資に配当が支払われる可能性がある。

5,日本株の配当利回りランキングTOP10!配当利回り9%以上も

ネット証券最大手であるSBI証券の株式スクリーニング機能を利用して、2020年7月10日終値ベースで「予想配当利回り3%以上」などの条件で銘柄を絞り込んだ。該当銘柄275件中、高配当利回り銘柄TOP10ランキングを見てみよう。

スクリーニングの設定条件は以下のとおりだ。

・予想配当利回りは2020年7月10日終値ベースで算出
・予想配当利回り3.0%以上
・時価総額100億円以上
・自己資本比率40%以上
・全市場対象
・大型株、中型株、小型株のすべてが対象
・普通株、ETF、ETN、REITのすべてが対象

① 抽出した銘柄を予想配当利回り・分配金利回りの高い順に並べ替え
② 上位15銘柄について、各社ホームページで最新の今期予想1株当たり年間配当金(未定の場合は前年度の配当実績)および今期予想1口当たり年間分配金を確認
③ 上位15銘柄の予想配当利回りおよび予想分配金利回りを再計算して、ランキングを再構成

以上の手順で再構成されたランキングTOP10は以下のとおり。

高配当利回り銘柄TOP10

順位 銘柄名
<コード>
配当利回り
(予)
予想配当・
分配金
株価 自己資本
比率
時価総額
1 インヴィンシブル
投資法人
<8963>※1
13.79% 3,459円 2万
5,080円
49.72% 1,529億
900万円
2 青山商事
<8219>※2
8.22% 50.00円 608円 52.15% 306憶
4,000万円
3 日本たばこ産業
<2914>
7.98% 154.00円 1,930円 47.95% 3兆
8,600億円
4 キヤノン
<7751>※2
7.97% 160.00円 2,007円 56.47% 2兆
6,768億
6,200万円
5 投資法人みらい
<3476>※1
7.11% 2,530円 3万
5,550円
46.34% 590憶
9,300万円
6 日本リテール
ファンド投資法人
<8953>※1
7.11% 9,000円 12万
6,600円
48.18% 3,314億
4,100万円
7 コニカミノルタ
<4902>※2
6.94% 25.00円 360円 41.02% 1,809億
5,900万円
8 カナディアン・
ソーラー・
インフラ投資法人
<9284>※1
6.53% 7,400円 11万
3,300円
43.71% 261億
9,400万円
9 ケネディクス
商業リート
投資法人
<3453>※1
6.32% 1万
1,990円
18万
9,800円
49.26% 1,017億
6,700万円
10 いちごオフィス
リート投資法人
<8975>※1
6.00% 4,193円 7万円 46.02% 1,072億
6,000万円

※1.REITの投資単位は1口なので、最低投資金額はREIT価格と同額
※2.青山商事、キヤノン、コニカミノルタの3社は、2020年7月10日時点では今期配当予想を未定としているため、前期配当実績で配当利回りを算出した

6,高配当利回り銘柄TOP10企業はどんな名柄なのか?概要を紹介

上述の高配当利回り銘柄TOP10には、東証REIT市場上場銘柄が6件もランキングされている。

これは、2020年2月下旬からREIT相場が暴落し、2020年7月10日現在ではREIT価格が暴落前の水準に戻っていないこと、さらに一般的な株式の配当利回りに比べて、REITの分配金利回りが比較的高めであることが大きな理由となっている。

REITの分配金が比較的高いのは、賃料収入から得られる利益の90%以上を投資家に分配することで、REITは法人税を免除される仕組みになっているからだ。

インカムゲインを目的とする投資をする場合、分配金利回りが総体的に高いREITも必然的に投資対象に入ってくる。そのため、日頃からREITの値動きや分配金利回りにも注目しておくとよいだろう。

今回TOP10に入っている個別銘柄4件に関しては、配当方針として継続的に高配当を維持することを公表している。しかしながら、各社とも、2020年7月時点では新型コロナウイルス感染拡大の影響が今期の業績にどれほどの影響を及ぼすのか予測できないため、2019年度と同額配当を予想している日本たばこ産業を除いて、青山商事、キヤノン、コニカミノルタは2020年度の1株当たり年間配当金(予想)を未定としている。

高配当個別銘柄を購入するにあたっては、各社のホームページなどで、最新の予想年間配当金を確認してから投資判断を下してほしい。

第1位, インヴィンシブル投資法人<8963>――高分配金利回りを維持する総合型REIT

住居中心およびオフィスなど、複数用途の不動産を組み合わせて投資運用を行っている総合型REITの一つ。不動産用途が複数なのでリスク分散効果もある。長期間にわたって、高い分配金利回りを維持しており、高配当利回りランキング上位の常連でもある。直近保有資産は148物件。

第2位, 青山商事<8219>――郊外型紳士服チェーン店の草分けで業界首位

広島発祥のビジネスウェア販売店「洋服の青山」を運営する紳士服大手。

近年の紳士服需要の減少に加えて、新型コロナウイルス感染拡大を原因とする在宅勤務拡大によるスーツ需要減と、6月の結婚式の中止や延期による礼服需要減が顕著。高級紳士服ブランドや高機能スーツ、レディスキャリア向けブランドに注力しているものの、2020年3月期は連結業績が赤字に転落した。

スーツ需要の長期低迷を見越して売りが続き、2020年7月に入って株価が上場来最安値を更新した。

第3位, 日本たばこ産業<2914>――高配当利回り銘柄の代表格、連続増配はストップ

たばこ販売会社としては世界第4位の規模。日本ではJTとして知られる。グローバル・たばこメーカーとして、世界中で160以上のブランドたばこを販売。近年では、電子たばこや加熱式たばこもラインアップしている。株主優待として自社食品を贈呈しており、手厚い株主還元策で人気の銘柄。

海外でのたばこ販売や、医薬品・食料品事業も手掛けるが、国内では飲食店禁煙化やコロナ禍による娯楽施設休業などの業績への影響は甚大。2020年12月期業績予想では、長年続いた連続増配のストップが発表されている。

第4位, キヤノン<7751>――世界トップクラスのカメラ・事務機器メーカー

国内最大手のカメラメーカーであり、現在はミラーレスカメラが主力。半導体や液晶露光装置、プリンタ・複写機などの事務機器、監視カメラなども手掛けている。

カメラ市場は縮小傾向で販売台数減。医療品機器事業、商業印刷事業、産業機器事業を成長の主柱に据えている。

在宅勤務拡大によりオフィス需要が激減し、2020年1月~3月期は前年同期比で大幅減益となった。

第5位, 投資法人みらい<3476>――三井物産とイデラキャピタルが出資する総合型REIT

投資法人みらいのスポンサーは、三井物産とイデラキャピタル(香港フォースングループの不動産投資運用会社)の2社。オフィス、商業施設、ホテルなど、複数の不動産用途で組成される総合型REITである。直近保有資産は34物件。

第5位, 日本リテールファンド投資法人<8953>――日本初の商業施設特化型REIT

日本で初めて、不動産会社以外の三菱商事とUBSがスポンサーとなったREIT。優良な商業施設不動産に特化した日本で初めての商業施設特化型REITでもある。直近保有資産は101物件にものぼる。

第7位, コニカミノルタ<4902>――印刷需要減だが中小企業向けIT事業は堅調

2006年に写真フィルム・カメラ事業から撤退し、現在の主力商品はオフィス向け複合機。画像診断や医療ITからなるヘルスケア事業や、中小企業向け遠隔業務支援サービスなどのオフィス事業も展開・注力している。

プラネタリウム製品の製造販売・運営も手掛けており、がん診断や創薬支援事業にも積極的。

2020年3月期の連結業績は、国内外でのオフィス需要減が響いて赤字決算および減配となった。

第8位, カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人<9284>――インフラに特化したREIT

グローバル企業であり、国内でも多数の実績がある太陽光発電設備デベロッパー「カナディアン・ソーラー・グループ」がスポンサー。カナディアン・ソーラー・グループが国内に建設した太陽光発電施設を対象にファンドを組成した、インフラ特化型REITである。

持続可能な再生エネルギーを扱うインフラ施設が対象となるため、景気に左右されにくいのが特徴。直近保有資産は21物件。

第9位,ケネディクス商業リート投資法人<3453>――商業施設が対象の単一用途特化型REIT

スポンサーであるケネディクスは、1995年に米不動産投資会社ケネディ・ウィルソン・インクの日本法人として設立された。現在は、国内最大の独立系不動産アセットマネジメント会社として、中規模オフィス、賃貸住宅、ホテル、商業施設など、それぞれを投資対象とする不動産ファンドを組成・運営している。

ケネディクス商業リート投資法人は、4大都市圏を中心とした商業施設に投資する単一用途特化型REITである。直近保有資産は63物件。

第10位,いちごオフィスリート投資法人<8975>――中規模オフィスに特化したREIT

スポンサーは不動産のアセットマネジメントを手掛ける「いちご」である。

いちごオフィスリート投資法人は中規模オフィス特化型REIT。安定的で成長性の見込める中規模オフィスを対象に組成されている不動産ファンドだ。中長期的な観点から、安定的かつ持続的な利益を追求している。

直近保有資産は85件、テナント数は934件にのぼる(2020年6月末現在)。

7,じっくり堅実に増やすなら、日本株の高配当利回り銘柄を検討 

銀行のマイナス金利が長期化している現在、銀行の定期預金に代わる資産形成の手段を探しているなら、日本の高配当利回り銘柄に投資してみてはどうだろうか。株価の影響を受けにくく、比較的安全性が高いので、多忙なビジネスパーソンでも無理なく投資できるだろう。

中長期の資産運用を目的とするなら、高配当利回り企業の業績や財務内容をチェックして、健全性も確認しておきたい。これさえクリアできれば、あまり手間をかけずに堅実に資産を増やしていけるだろう。

執筆・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。

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