なかなか増えない夫の給料、どんどん増える教育資金、不安な年金制度、私たちの生活はどうなってしまうのだろう……と、不安に感じているのはあなただけではありません。

今は、銀行へ預けているだけでお金が増えていく時代ではありません。不安な時代を生きるには、お金に働いてもらい、増やしていく必要があるといえるのではないでしょうか。

今回は、お金を増やすための国の制度「つみたてNISA」を主婦が始めるメリットやデメリットについて解説します。また、あわせて「iDeCo」との違いもご紹介します。

老後の資産を作るなら「iDeCo」か「つみたてNISA」

積立NISA,主婦
(画像=hanack/stock.adobe.com)

お金に働いてもらうといえば「投資」ですが、いきなり大金を使ったり、株式を購入したりするのは不安ですよね。

そこで、金融庁が投資に適していると判断した投資信託などを、コツコツ積み立てて運用する「つみたてNISA」や、掛け金を自分で運用する国の年金制度「iDeCo」を活用しましょう。

どちらも投資商品ですが、違いがよくわからないという人もいらっしゃいますよね。それぞれの特徴をわかりやすく一覧表にしました。

  つみたてNISA iDeCo
利用できる人 日本に住む
20歳以上の人
日本に住む20歳以上
60歳未満の人
非課税対象 年間40万円×20年
最大800万円が上限
専業主婦は月額2万3,000円
(年間27万6千円)まで
掛け金の所得控除 なし 全額所得控除
口座開設数 1人1口座 1人1口座
手数料 なし 加入時2,829円
その他加入者手数料105円と
別途口座管理料
(金融機関により異なる)
最低投資金額 金融機関により異なる
(例:楽天証券100円から)
5,000円から1,000円単位
非課税期間 2018年から2037年まで 60歳まで
途中解約 可能 原則不可能
対象投資商品 長期の積立・分散投資に
適した一定の投資信託
定期預金・保険商品・
投資信託
受取時の控除 20年間の分配金と
譲渡益は非課税
年金受取の場合は公的年金控除、
一時金は退職金控除が適用
こんな人に
おすすめ
・働いていない方、
扶養の範囲で働いている
収入が少ない人
・途中解約の可能性がある人
・50代以上の人
・収入があり、手数料を
差し引いても節税メリットがある人
・何かあったときの緊急資金
としての貯蓄がある程度あり、
追加で老後資金を作っていきたい人
・20代〜40代で老後まで
ある程度、資産形成の時間のある人

iDeCoは掛け金と運用益が非課税になりますが、受取時には控除はあるものの、課税されます。一方のつみたてNISAは、受取時や運用益は非課税であるのに対し、掛け金は税制優遇がまったくありません。

また、iDeCoは原則60歳までは資金の引き出しができませんが、つみたてNISAは自由にいつでも引き出せます。最低投資金額はiDeCoが5,000円からなのに対し、つみたてNISAは証券会社によっては100円から始められるところもあります。投資初心者や主婦が始めやすいのはつみたてNISAでしょう。

専業主婦や103万円以下のパート主婦にはつみたてNISAがおすすめ 

専業主婦や夫の配偶者控除を受けるために年収を103万円以下に抑えている主婦には、つみたてNISAのほうがメリットが大きいです。

その理由は、非課税対象となる掛け金と手数料です。iDeCoは掛け金全額が所得控除の対象となりますが、そもそも収入のない専業主婦がiDeCoに加入しても、所得税や住民税控除の恩恵を受けられません。

同じ理由でパート収入103万円以下の主婦も、給与所得控除65万円、基礎控除38万円の合計103万円が差し引かれるため、課税所得がゼロになって掛け金全額所得控除の恩恵を受けられないのです。

また、つみたてNISAは手数料がかからないのに対し、iDeCoは手数料がかかります。

・iDeCo加入時に2,829円
・掛金納付の都度105円
・金融機関の口座管理料

金融機関の口座管理料はもっとも安いところで月額171円、高いところでは月額600円以上もします。仮に掛け金を毎月納付するなら、最低でも月額合計276円かかりますので年間にすると3,312円もかかってしまいます。

所得のある会社員であれば所得控除で納める税金が安くなるため、手数料がかかったとしても得られるメリットの方が大きくなります。

しかし、所得がない専業主婦やパートの収入が103万円までの主婦は、iDeCoに加入すると手数料の分だけ負担が増えてしまうため、つみたてNISAの方がメリットは大きいといえるでしょう。

こんな人にも「つみたてNISA」はおすすめ

つみたてNISAは、専業主婦やパート収入103万円までの主婦以外にもメリットがあります。どんな人にメリットがあるのか一緒にご紹介します。

投資初心者

つみたてNISAの対象となる投資信託は、金融庁が安定した資産形成づくりのために長期の積立・分散投資に適した商品となるものばかりを厳選しています。

そのうえ、販売手数料も0円、運用管理費用も低い商品ばかりです。一度投資商品を購入すれば、プロが代わりに運用してくれるため、株式のようにタイミングを見計らって売買せずに済みます。投資初心者にピッタリです。

まとまった資金がない人

つみたてNISAはまとまった資金を必要とせず、毎月コツコツ積み立てていく投資商品です。 つみたてNISAの年間投資額の上限は40万円。月額にして約3万3,000円までです。一括で年間40万円を投資することはできず、ネット証券なら最低投資金額は毎月100円から投資可能です。これなら少しのやりくりで捻出できるのではないでしょうか。

老後資金づくりをしている50代以上の人

老後資金として準備をしておきたい50代以上の人は、つみたてNISAがおすすめです。iDeCoのように年齢の上限がないため、50代以上でも最長20年間、長期にわたって非課税で運用することができます。

老後資金を準備するための国の制度「iDeCo」は、つみたてNISAとよく似た制度のため混同されがちです。しかし、iDeCoは、60歳から年金資産として受け取るためには10年以上の加入期間が必要です。10年に満たない場合は、受給可能な年齢が繰り下げられてしまいます。

加入期間 受給開始年齢
10年以上 60歳
8年以上10年未満 61歳
6年以上8年未満 62歳
4年以上6年未満 63歳
2年以上4年未満 64歳
1月以上2年未満 65歳

たとえば、56歳でiDeCoを開始したとしても60歳までしか掛け金を拠出できないため、4年間しか積立期間がありません。投資は長期間続けることで元本割れのリスクが低くなる傾向があるため、できるだけ長く積み立てできるつみたてNISAの方がメリットが大きいでしょう。

また、継続雇用制度による定年が段階的に65歳以上となるため、56歳で始めても引き続き働けることになります。長期にわたって積み立てできるつみたてNISAの方が運用成果も安定します。

中長期の資金作りをしている人

子どもの教育資金や家を購入しようとしている人など、中長期で資金を準備したい場合にもつみたてNISAを活用しましょう。つみたてNISAの積立期間は最長20年ですが、20年でなくても、目的とする時期に合わせて積立期間を自由に短縮することもできます。

たとえば、「10年後の家の購入やリフォーム資金を積み立てたり、子どもの大学入学資金を積み立てたりといった中長期の資金作りに役立ちます。

前述の通り、iDeCoは60歳まで資金を原則引き出すことができませんので、こういった中長期の運用には向いていません。

つみたてNISAの始め方 

主婦や投資初心者にも安心なつみたてNISAを始めるためのステップをご紹介します。

金融機関を選ぶ

つみたてNISAをはじめるには、まず金融機関を選びます。野村證券や大和証券などの対面型の証券会社は、つみたてNISAの仕組みや商品選びなど対面で話を聞きながら選べますが、購入可能なつみたてNISA対象商品数が少ないのがデメリットです。

各銀行でもつみたてNISAを購入できますが、銀行によっては口座管理料がネット証券の2倍以上かかります。そのため、購入可能なつみたてNISA対象商品数が多く、手数料の安いネット証券をおすすめします。

証券会社名 つみたてNISA対象商品数 最低投資金額
楽天証券 159本 100円(毎月)
SBI証券 163本 100円(毎月・毎週・毎日)
マネックス証券 150本 100円(毎月)
松井証券 154本 100円(毎月)

つみたてる金額を決める

ネット証券は最低投資金額も100円から始められるところが多いため、投資初心者でも始めやすいという特徴があります。

たとえば、楽天証券なら「毎月100円以外」にも、「毎日100円」があるため、負担が少ないですよね。

つみたてNISAの月々の上限金額は3万3,000円です。家を購入する際の頭金にしたい、子どもの教育資金に充てたいなど、目標とする金額や時期を決めて上限金額の範囲内で金額を設定しましょう。

つみたて商品を選ぶ

つみたてNISAの投資信託は、「国内株式型」「先進国株式型」「新興国株式型」「バランス型」の4つのなかから選ぶことになります。 また、運用手法によっても投資商品が2つに分かれています。「インデックス型」「アクティブ型」があり、インデックス型は日経平均株価やTOPIXなどと同じ値動きで運用するものをいいます。

投資初心者には値動きのイメージがしやすく、本数の多いインデックス型がおすすめです。

信託手数料の安いものを選ぶ

投資信託には運用期間中に「信託報酬」という手数料がかかります。長期運用になると数%の差が大きな影響を与えることがありますので、商品を選ぶ際には信託報酬を必ず確認しておきましょう。以下で代表的な投資信託の手数料をご紹介しておきます。

ファンド名 信託報酬
SBI・バンガード・S&P500インデックスファンド 0.0938%
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド 0.1023%
eMAXIS Slim バランス(8資産均等型) 0.154%
たわらノーロード 日経225 0.187%
iFree 日経225インデックス 0.154%
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 0.1144%
たわらノーロード 先進国株式 0.10989%

主婦にはつみたてNISAがおすすめ

専業主婦やパート勤務の主婦なら、iDeCoより使い勝手のいいつみたてNISAをおすすめします。ネット証券で口座を作れば、口座管理料が安く、最低投資金額も少額で済むため、始めやすいでしょう。お金に対する不安をつみたてNISAで解消していきましょう。

文・ことりえ( ファイナンシャルプランナー)
奈良県在住のフリーライター。長年生命保険の営業に従事した後、ライターとして独立。会計・税務・保険の記事を中心に執筆活動をしています。FP資格保有

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