2020年時点で資産運用の税制メリットを最大限使う方法として代表的なものは「NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」「iDeCo」の4つの制度があります。前3つは金融庁の管轄、iDeCoは厚生労働省の管轄です。2024年からNISA(少額投資非課税制度)3種類が大きく変更されます。そこで今回は、資産形成に役立つことを目的として事前に新しい制度の疑問点をスッキリと解決していきましょう。

NISAとつみたてNISAの現状

NISA
(画像=taa22/stock.adobe.com)

NISA(以下、一般NISA)は「家計の安定的な資産形成の支援」と「成長資金の供給」を目的として2014年1月にスタートしました。2020年時点で年間120万円を上限に5年間非課税枠を使うことが可能です。投資対象は「上場株式」「公募株式投資信託」「ETF」「REIT」など幅広い金融商品を選択することができます。一方「つみたてNISA」は、2018年1月からスタートした制度です。

「家計の安定的な資産形成の支援」に目的を絞り込み、少額・低コストで長期・分散・積立投資を行うことを目指した仕組みになります。そのため投資対象となる金融商品は、手数料が安価で長期投資に最適な公募株式投資信託等に限定されているのが特徴です。2020年時点で年間40年を上限として20年間非課税で投資ができるため、最大元本800万円まで積み立てができます。

金融庁が2020年7月14日に発表した2020年3月末時点の口座開設数は、以下の通りです。

調査結果概要:

口座数
NISA(一般・つみたて)1,405万5,856口座
一般NISA1,185万9,048口座
つみたてNISA219万6,808口座
ジュニアNISA35万8,518口座

(出典:金融庁HPより筆者作成)

利用者を年代別に見ると一般NISAにおける2020年3月時点の50歳代以上の利用者は70.9%です。一方つみたてNISAは、20~40歳代の層が67.8%となっています。一般NISAはシニア層、つみたてNISAは若い世代の利用が顕著といえるでしょう。今回のコロナ禍により資産形成の意識が高まり2020年4月以降の口座数も増加傾向にあります。

しかしNISAはもともと時限立法として制度設計されたため、当初一般NISAは2023年、つみたてNISAは2037年に終了することとなっていました。そのため2020年の税制改正でNISAの仕組み自体を大改正が行われたのです。

改正前と改正後のNISAの仕組み

NISA
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NISA
(出典:金融庁HPより)(画像=YANUSY編集部)

今回の税制改正ではNISAに関して3つの大きな変更が行われました。

  • 一般NISAについては、より多くの国民に長期・積立・分散投資を目指してもらえるよう、この部分を1階、そして従来の一般NISAで担っていた成長資金の供給拡大と安定的な資産形成を2階部分として2024~2028年までの5年間の時限立法とされました。
  • つみたてNISAは、現行制度を維持し2037~2042年まで5年間延長
  • ジュニアNISAは延長せず当初の計画通り2023年末で終了

分かりづらいのが新しい一般NISAです。しかし上記模式図の通り改正後の左側が2階建てになり1階部分が右側のつみたてNISAと同じ緑色となっています。つまり新一般NISAは、従来のつみたてNISAと従来の一般NISAのハイブリッド型と見ることができるでしょう。なお新しい一般NISAは、1階部分年間20万円、2階部分年間102万円がそれぞれの上限です。

1階部分に活用できる商品は現行のつみたてNISAで投資可能な商品、すなわち長期・積立・分散投資に適した商品から選択。新NISAでは、原則1階部分を利用することで2階部分を上乗せすることが求められます。しかしこれまで一般NISAを利用してきた人や上場株式などの取引を行ったことのある人については、例外として1階部分を使わず2階部分のみで上場株式に投資することが可能です。

投資対象が上場株式に限定される理由は、これが新一般NISAの重要な政策目的「成長資金の供給拡大」に資するとされたからです。また2023年末時点で一般NISAの口座を開設している人は、2024年以降新たに口座開設が不要になります。

新しい制度設計下での資産形成の考え方

2024年からNISA制度が大きく変更される背景には「資産形成に長期・積立・分散投資が欠かせない」という金融庁の考えがあります。この点は、投資の王道ともいえる方法で毎月一定額を積み立てるドルコスト平均法が市場価格の変動に耐えうる一方法として考えられるでしょう。特に今回のコロナ禍において「株価、為替、金利といったものがどのように動くのか」についてはプロでも予測不可能です。

特に実体経済とかけ離れた動きをしている株式市場については顕著にいえるでしょう。このような状況下だからこそ王道の「長期・積立・分散投資」がより重要になってくるのです。これに沿った制度改正が、2024年の新NISAといえます。(提供:YANUSY

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