お金を寝かせていても、寝る子が育つだけの金利が見込めない現在、そろそろお金には起きて働いてもらう時期かもしれません。

欧米の富裕層は、お金に働いてもらうために投資を積極的に行います。投資先ががんばって評価を上げると、自分にも利益が返ってくるからです。

とはいえ、自分で投資をするとなったときに気がかりなのが、元本割れなどの損失を抱えてしまうことです。これから投資を始める人が気になる悩みを、FP(ファイナンシャル・プランナー)である筆者が解消していきます。

投資で損をする原因とは

損しない,投資
(画像=hanack /stock.adobe.com)

投資で損をしないためのポイントは、そもそも投資で生じる損失とはどのようなものなのかを知っておくことで見えてきます。基本的な仕組みを説明しながら、「どうして損をするのか」を紹介します。

元本割れ

元本割れとは、投資商品の価値が、購入代金よりも下がってしまうことを指します。支払ったお金よりも、戻ってくる金額の方が少ないため、損をしてしまいます。

「元本(がんぽん)」とは、投資商品を購入するときに使った金額のことです。「元金(がんきん)」や「元手(もとで)」と言い換えるとわかりやすいでしょう。

残念ながら、投資商品のほとんどは元本保証がありません。つまり、どの商品も元本割れのリスクがある、イコール損をする可能性があるということです。

信用取引

株式投資には、「現物取引」と「信用取引」があり、「現物取引」は、自分の資産範囲内だけで株の売買を行います。損をしてしまっても、自己資産が減るだけです。

「信用取引」は、現金や上場株式などを「保証金(担保)」として、証券会社から資金や株券を借りて取引する方法です。担保の3.3倍までの資金を借りられるため、大きな取引が行えるメリットがある一方、自己資金以上に損をした場合、負債を負うことになります。

高額な手数料

投資では、取引を行う際の「取引手数料」、保有期間中の管理経費としての「信託報酬」、さらに中途解約する場合や売却時など、さまざまな場面で手数料がかかります。また、取引で生じた利益に応じた「税金」も徴収されます。

手数料は、投資商品や証券会社によって、また取引状況によっても「金額」や「有無」が異なります。何にいくらくらいかかるのか、どの会社が安いのか、見極めてから取引をしましょう。

投資初心者向けなのは長期保有のじっくり投資

損失の種類や大きさは違えども、投資には多少の損失のリスクはつきものです。リスクを取るからこそ、リターンを得られる、ともいえるでしょう。

そこで、初心者の方は「完全に損をしないこと」を目指すのではなく、まずは致命的な損を避ける投資を目指しましょう。

投資初心者向けの投資方法は、長期保有を前提としたじっくり投資です。短期的なリターンを期待するものは、その分リスクも大きくなるからです。

長期運用は、毎月決まった金額分を定額投資する「積立投資」を行うといいでしょう。投資資金を定額設定することで、安いときに多く購入できます。これを「ドル・コスト平均法」といいます。

投資先を複数作り、リスクを分散することも大切です。1つの投資先で運用がうまくいかなくても、別の運用がうまくいくことで、トータルはプラスになるかもしれないからです。

「長期・積立・分散」で投資を行うための制度やシステムには、次のようなものがあります。

つみたてNISA

「つみたてNISA」は、「販売手数料ゼロ・信託報酬が低水準・分配頻度が低い」など長期運用に適した投資信託を扱っています。また、投資から20年間、年40万円分の投資に対する利益が非課税となります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

「確定拠出年金」は、積立投資を利用した年金制度です。月々5,000円から「投資信託・保険・定期預金」などに投資運用を行い、60歳以降に有期年金か一時金として受け取ります。掛け金は所得控除の対象で、運用利益は非課税など税制優遇も適用されます。

投資信託(ロボアドなども含む)

スマホ証券と呼ばれる新しい金融サービスの多くが、ロボアドの自動運用による投資信託取引アプリを提供しています。ロボアドとは、AIを利用した資産運用プログラムで、投資先選定から取引、資産配分バランス調整やリスク回避などを適宜行います。

投資は余剰資金で!どうやって資産を分ければいい?

投資には、必ず余剰金を使いましょう。そのためには、まず自分の資産を次の4つに分類してみましょう。

・「生活資金」毎月の生活費として使うお金
・「緊急用貯蓄」ケガや病気、事故や故障など、突発的な出来事のために備えるお金
・「目的別貯蓄」子どもの教育費用、大きな買い物準備金、旅行費用など、目的があって貯めているお金
・「余剰金」しばらく(10年くらい)使う予定のないお金

余剰金の作り方

「生活資金」は、当月分だけでなく3ヵ月程度確保できると安心です。

「緊急用貯蓄」の目安は、生活資金6ヵ月分です。急な病気や災害などでは、現金が必要な可能性もあるため、一部は現金化しておきましょう。足りない場合は、優先的に貯蓄することをおすすめします。

この2つと「目的別貯蓄」が満足いく額になって、どこにも当てはまらないお金が出てきたら、それが「余剰金」です。投資には、万一減ってしまっても、生活に影響のないお金を使いましょう。

余剰金の投資配分について

金融商品は、「安全性:元本保証されているもの」「流動性:現金化がかんたんなもの」「収益性:高い利益を生むもの」という3つの要素を持っています。例えば、「安全性が高いもの」は銀行預金や保険商品など、「収益性が高いもの」は株式などの投資商品です。

収益性商品を「(100-年齢)%」で持つと、投資配分のバランスがいいといわれています。例えば、30歳なら70%、40歳なら60%を投資に使い、残りは安全性の高い預貯金などに回すという考え方です。

投資初心者が守りたい失敗を少なくする運用ルール

大きな失敗を回避するためには、あらかじめ運用ルールを決めておき、ルールを必ず守ることが重要です。

運用ルール1. 「投資限度額を決めておく」

投資に使う資金は「余剰金」、そして「(100-年齢)%」分、これを上限と決めましょう。うまくいっているからと、残りの余剰金や緊急用貯蓄などに手を出すことは望ましくありません。また、信用取引などで自己資金を超える投資を行うことも、避けた方がいいでしょう。

運用ルール2. 「売却のタイミングを決めておく」

売却ルールはどのように決めてもかまいませんが、「時間」「利益」「損」の3つのタイミングは押さえておきましょう。

・時間
「20年」「65歳まで」など期間や年齢でもいいですし、あるいは「車を購入」「子どもが結婚するまで(結婚費用)」などライフイベントに合わせてもいいでしょう。あらかじめ目的を決めておき、目的を実行するタイミングで売却するルールです。

・利益
「利益が200万円出たら」「合計資産額が1,000万円に達したら」など、金額的な目標を決めて売却するルールです。「投資金額の2倍になったら、半分を売却」とするのもいいですね。

・損
損失が出たときに売却することを「損切り」といいます。「基準価格が購入金額より安くなった」「総資産額が減った」など損切りラインを決めて売却するルールも決めておきましょう。

投資初心者を脱出するための効率的な勉強方法

損をしないためには、投資に関する知識をつけることも必要です。公式サイトやアプリで提供されている情報もあるため、スマートフォンがあればいつでもどこでも勉強できます。

証券会社公式ページで基礎用語の勉強

証券会社の公式サイトには、初心者向けの投資解説コラムが掲載されています。日本証券業協会・投資信託協会の公式サイトでは、より詳しくわかりやすい解説がまとめられています。

証券会社のオンラインセミナー

証券会社によっては、解説動画を配信しているところもあります。また、質疑応答ができる本格的なオンラインセミナーの開催や、過去のセミナー動画が見られるところもあります。

ロボアドと併用

証券会社のアプリの中には、口座開設をしなくてもデモ使用できるものがあります。取引はできませんが、「投資がどういうものか」を感じ取ることができます。

投資を試してみたい人は、少額から始められる投資アプリで、ロボアドの運用を見ながら勉強するという選択肢もあります。

書籍や会社四季報で情報を得る

「会社四季報」というのは、企業の基本情報や業績、過去3年間の株価など投資に関する情報が載っています。少々値が張りますが、自己投資のために読んでみるのもいいでしょう。世の中の「動き」がわかって、街を見る目が変わるかもしれません。

老後資金が心配でも投資生活を焦らないで!

投資について紹介してきましたが、投資は必ず行わなければならないことではありません。ただ、「投資について知る」ということは大切です。知らずに手を出して失敗するよりも、知ったうえで慎重に挑戦する方が賢い選択です。もちろん、知って、あえて遠ざかるのもいいでしょう。

老後資金に不安があっても、焦って投資を始めるのではなく、他の方法も考えてみましょう。収入アップにつながる資格やスキルを習得するために自己投資を行うことも、ローリスク・ハイリターンな投資といえるのではないでしょうか。

文・高田麗子
国内保険会社で生命保険と損害保険の営業を兼務、外資保険会社では顧客相談室を経験。退職後は、保険についての「わからない。めんどうくさい」を少しでも解消できればと、保険・金融記事の執筆を開始。関心分野は、保険ジャンル全般(生保・損保・社保)や、生活に密着した金融サービスなど。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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