「老後のために投資をしましょう」と勧めるメディアは多いですね。投資は資産形成に有効な手段ですが、元本割れなどのリスクもつきものです。投資で失敗しないためには、金融商品選びや運用方法の知識も必要になってきます。

投資を行う際の注意点や証券会社の選び方、投資以外の老後の資産管理の方法について解説します。

老後の資金を確保する4つの手段

損しない,投資
(画像=Monet /stock.adobe.com)

手元にある資金を「増やす」には投資も有効ですが、まずは投資以外に資金を「確保する」手段ついて考えてみましょう。

貯めることが目的の預貯金

預貯金の魅力は、堅実性です。例えば、毎月2万円の貯蓄を20年間続けると480万円が貯まります。預貯金はよほどのこと(銀行の破綻など)がない限り、貯めたものが無くなってしまうことはありません。

資金を得るために働くのも1つの手段。落とし穴に注意。

「高年齢者雇用安定法」により65歳までの雇用機会は確保されています(2021年4月からは「70歳まで」延長)。就業機会と本人の意欲があるなら、働いて収入を得ることも有効でしょう。

コミュニケーションによる適度な緊張感や、社会的に役立っていると実感すること、規則的な生活の維持などによって、健康面や精神面を健やかに保つ効果もありそうです。

ただし、「現役並み」の収入を得ると、支給されている公的年金額が減額される場合があるため、バランス調整が大切です。

子どもや孫世代に頼るメリット・デメリット

子どもが会社勤めをしている場合、その「扶養家族」となることで2つのメリットが得られます。

ひとつは、保険料の負担なく、子どもの会社の「健康保険」が使えるということです。もうひとつは、子どもが老親分の「所得税扶養控除」を受けられるということです。

ただし、扶養家族に認定されるためには、収入や同居などいくつかの条件があります。子どもにも家族がいる場合の人間関係など、さまざまな「デメリット」も予想されます。

人気のマンション投資は、楽な投資ではない

不動産投資は、住居とは別に不動産を購入して第三者に貸し出し、家賃を利益として得る方法です。

購入時にローンが組めるため、手元の資金が少なくても始めることができると人気があがっています。しかし、実際は不動産の維持に予想以上の手間や経費がかかるものです。また、ローン金利の上昇リスクや、外的要因により不動産価値が突然暴落するリスクもあります。

全員が投資をする必要はない。向いている人の特徴

既に老後資金のための十分な貯蓄がある場合は、わざわざリスクを冒す必要はありません。また、現時点で「投資に使える資金」がない人は、行うべきではありません。くわしくは後述しますが、投資に使う資金は、「しばらくは使う予定のない余剰金」を用いるべきです。

投資に向いている人は、「計画的に物事を進められる」「調子に乗らない」「成功のための勉強を惜しまない」という人です。また、投資で成功するためには、企業や社会情勢などの情報を常に更新しなければなりません。面倒くさがらずに勉強できる人は、成功に一歩近づくでしょう。

自分の老後資産を簡単に見積もる方法

老後のために必要な資産額は、かんたんな計算で導き出すことができます。おおよその老後の生活費を見積もった後で、将来受け取る年金額を確認し、「年金月額(年金額÷12ヵ月)-老後生活費用」でマイナスになった分が、月あたりの不足額です。

老後生活費のおおよその金額は、「現在の生活費-老後不要な資金(子どもの教育費用や住宅ローンなど)」です。自分が将来受け取る年金額は、日本年金機構から届く「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」をチェックすることでわかります。

老後期間を65歳から30年間と仮定して、「不足額×12ヵ月×30年」で出た金額が、準備する資金額の目安です。

また、「65歳-自分の年齢」で老後までの期間がわかります。「不足額÷老後までの期間」で、1年あたりに貯めるべき金額が見えてくるでしょう。

老後の資産運用におすすめの方法は?

老後に必要な金額がわかったら、このまま貯めておけば良いのか、増やした方がいいのかを考えましょう。増やした方が良い場合で、投資に回す余力があるときは、長期運用に適した投資を検討するのもいいでしょう。

長期運用に適した投資にはこのようなものがあります。

つみたてNISA

NISA制度は、少額からでも運用できる投資信託取引制度です。株式や投資信託への投資で得た配当金・分配金の利益部分にかかる税金が、非課税となります。「つみたてNISA」は、長期運用を目指す条件に合致した投資信託のみを扱っているため、老後資金形成に適しています。販売手数料がかからず、また非課税期間が20年と長い点も魅力です。

iDeCo

「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は、投資を利用した私的年金制度です。月々5,000円から始められ、投資商品は「投資信託」の他に「元本確保商品」も扱っています。運用利益は非課税で、掛金は所得控除の対象となり、受取時にも税制優遇を受けることができます。

iDeCoは、加入時手数料と、毎月の運営管理手数料が必要です。金融機関によっては、さらに運営管理手数料がかかる場合もあるため、慎重に選びましょう。

加入期間に応じて、60歳以降に受取開始となります。受取方法は、5~20年の有期年金か一時金から選択でき、金融機関によっては併用することも可能です。

生命保険

手元にある程度まとまった資金があるのなら、「低解約返戻金型」の終身保険や年金保険などに全期前納で加入するのもおすすめです。

低解約返戻金型は、支払期間の解約返戻金が通常の70%に抑えられている分、保険料が割安になっています。全期前納は、保険料をまとめて前払いする方法で、こちらも月払いよりだいぶ割安です。払込期間終了後の解約返戻金は通常の金額に戻り、解約タイミングによっては払込総額よりも多くなります。

解約返戻金は、契約時から決まっているため、タイミングさえ待っていれば約束通りの金額になります。増え幅は小さいですが、元本保証もあり、安心です。

老後のために投資する際の3つのポイント

老後の資産形成のために投資で行う場合、重要なポイントは次の3点です。

1つ目はリスク分散です。長期投資の場合、どの資産が値上がりするかを見定めて投資するのではなく、1つの投資先で運用が上手くいかなくても、別の投資先の運用が上手くいくようにリスクを分散させることが大切です。

2つ目は、分配金をできるだけまとめて受け取ることです。こまめに受け取ると、その分運用資産が減ってしまいます。複利の効果を得るために、利益分は運用資金に積み上げながら、じっくりと長期運用しましょう。

3つ目は、自動積立投資を利用することです。投資商品の値は変動しますが、定額投資することで「安いときに多く」購入することができ、損をしにくくなるのです。

投資用資産はどこからどれだけ捻出するのがいいのか

投資資金は、「ゆとり資金」から出しましょう。万が一減ってしまっても、生活に影響のない資金を用いることが肝心です。

ゆとり資金とは、「生活に使わない分」で「事故やケガ、病気、あるいはイベントなど、突発的な出来事に備える資金以外」で「目的がある貯蓄以外」の資金のことです。

老後のための投資、証券会社の選び方

証券会社は、「自分の取引スタイルに合う会社」がいいでしょう。

主要ネット証券3社と、新しいスタイルの証券会社であるLINE証券、昔ながらの有人店舗を構える野村證券を比較してみましょう。

証券会社を選ぶ際に注目する点

証券会社選びの際に注目すべき点は、3つあります。

・手数料(国内株式取引手数料)
売買注文のたびに必要となる手数料は、証券会社によって大きく異なります。今回は「国内株式取引手数料」を比較しています。(※情報は2020年7月現在のものです)

・サポート体制
投資商品の選択や運用について相談したいときに、どのような窓口が用意されているか確認しましょう。

・取引商品
証券会社では、株式や投資信託、FX以外にもさまざまな商品を扱っています。目的に合った投資商品を扱っている証券会社を選びましょう。

SBI証券

口座開設数№1のネット証券会社です。手数料が安く、「アクティブプラン」を選ぶことで、1日の約定金額50万円までの手数料が0円になります。情報収集や取引も行えるアプリがあり、時と場所を選びません。取引するたびにTポイントが貯まります。

SBI証券
株式取引手数料(1注文ごと) 外国株式 米・中・韓・露・ベトナム・ASEAN
10万円まで 99円
20万円まで 115円 投資信託 2,651銘柄※
50万円まで 275円 FX 29通貨ペア
株式取引手数料(1日定額) サポート体制 ・電話
・AIチャット
50万円まで 0円
※投信銘柄数は日によって異なります。

楽天証券

楽天グループの証券会社です。楽天のポイントが貯まるだけではなく、ポイントを使った投資も可能です。手数料が安く、「いちにち定額コース」を選択すると1日当たりの約定金額50万円までの取引が、手数料0円になります。取扱商品も豊富です。有人チャットや楽らくサポートで初心者向けのサポートも万全です。

楽天証券
株式取引手数料(1注文ごと) 外国株式 米・中・ASEAN
10万円まで 99円
20万円まで 115円 投資信託 2,692銘柄※
50万円まで 275円 FX 26通貨ペア
株式取引手数料(1日定額) サポート体制 ・電話
・AIチャット
・有人チャット
・楽らくサポート
50万円まで 0円
※投信銘柄数は日によって異なります。

松井証券

松井証券は、ボックスレートとして1日当たりの約定金額で手数料換算をします。プランを選択することなく50万円までの取引手数料が無料です。初心者向けのアプリやツールが揃っています。リモートサポートもあり、初心者に安心なサービスが充実しています。

松井証券
株式取引手数料(1注文ごと) 外国株式
10万円まで 0円
20万円まで 0円 投資信託 1,256銘柄※
50万円まで 0円 FX 13通貨ペア
株式取引手数料(1日定額) サポート体制 ・電話
・チャット
・リモートサポート
50万円まで 0円
※投信銘柄数は日によって異なります。

LINE証券

無料通話サービスLINEグループの証券会社です。WEBサイトやアプリはなく、LINEの証券ツールですべて完結します。投資商品は国内株式と投資信託に限られていますが、数百円単位から選べます。LINEPay・LINEポイントにも対応しており、金額にかかわらず購入手数料が0円なので、初心者でも気軽に始められます。

LINE証券
株式取引手数料(1注文ごと) 外国株式
10万円まで 0円 176円
20万円まで 0円 198円 投資信託 28銘柄
50万円まで 0円 484円 FX
株式取引手数料(1日定額) サポート体制 ・問い合わせフォーム
50万円まで 0円 0円

野村證券

対面販売では、専門的な知識を持つ担当営業員に相談しながら投資をできます。手数料は高いですが、サポート体制は万全です。また、オンライン専用支店も用意されていて、自宅で時間を選ばすに、安い手数料で取引することも可能です。

野村證券
株式取引手数料(1注文ごと)店頭/オンライン 外国株式 米・香・独・豪
10万円まで 2,860円 152円
20万円まで 2,860円 330円 投資信託 1,174銘柄※
50万円まで 1.4300% 524円 FX 12通貨ペア
株式取引手数料(1日定額) サポート体制 ・店頭
・電話
・オンライン
50万円まで なし なし
※投信銘柄数は日によって異なります。

まずは自分の資産を把握するところから

投資は、「目標」を決めて行うことが大きく失敗しないためのコツだといわれています。まずは、自分にとって必要な資金額を把握しましょう。

また、全員が投資を行う必要はありません。自分に合った資産運用方法で、老後資金づくりをしていきましょう。

文・高田麗子(ファイナンシャルプランナー)
国内保険会社で生命保険と損害保険の営業を兼務、外資保険会社では顧客相談室を経験。退職後は、保険についての「わからない。めんどうくさい」を少しでも解消できればと、保険・金融記事の執筆を開始。関心分野は、保険ジャンル全般(生保・損保・社保)や、生活に密着した金融サービスなど。FP2級技能士。

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