人生100年時代ともいわれる一方で普通預金や定期預金だけでは自分の資産をなかなか増やせない時代に突入しています。このような状況の中、老後に備えて資産運用を検討する女性が増加傾向です。そこで今回は資産運用を検討している30代女性にも始めやすい投資信託を利用した資産運用について解説します。これから本格的に資産運用を始めたいと考えている人は、ぜひご一読ください。

30代女性が資産運用を始めるべき理由

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(画像=PIXTA)

30代女性が資産運用を始めるべき理由について、以下の3点にまとめて説明します。

一生独身の女性が増加

厚生労働省の「人口統計資料集(2019年)」によると2015年における50歳時点での未婚率(生涯未婚率と呼びます)は、女性が14.06%でした。50歳時点でパートナーと離別や死別で独身になっている女性は、12.06%です。つまり合計26.12%もの女性が50歳時点で独身ということになります。生涯未婚率は2000年代に入って増加傾向のため、一人で老後を過ごすことも考慮に入れなくてはならない状況です。

年金も一人分のため、夫婦2人世帯に比べて家賃や光熱費といった固定費の負担が大きく自由に使える金額は少なくなります。

超低金利時代で預貯金では資産が増えない

1990年前後のバブル期と呼ばれる時代においては、預貯金の金利が高い時代が続き、定期預金1年物で年利約6%といった利息が得られていました。しかし、バブル崩壊後に金利はどんどん下がって超低金利時代に突入しています。2020年8月時点でメガバンクの普通預金金利は0.001%、定期預金金利の良いものでも0.22%程度であり預貯金だけで資産を増やすことは難しい時代になりました。資産を増やすには、他の金融商品を利用した資産運用を検討する必要があるでしょう。

将来のインフレリスクや年金の減額への対応

「投資商品は元本保証ではなく資産が目減りするのが怖い」という人の中には「現預金であれば減ることがないから安心」と感じている人もいるのではないでしょうか。しかし、ほとんど利息がつかない状態のままお金を預けていると将来のインフレリスクでお金の価値が下がって思い通りの生活レベルを保てない可能性があります。

例えば、現預金で100万円を持っていれば元本割れすることなく一見安心です。しかし、10年後インフレで物価が上がっていくとお金の価値は下がることになるため、同じ100万円でも10年前の100万円の価値とは違ってくるのです。また、年金の減額で見込み通りの収入が得られない場合、老後資金として見積もっていたお金を取り崩すことになり、資金不足に陥る可能性も捨てきれません。

30代女性が一生独身なら将来の備えはいくら必要?

30代女性が一生独身だと仮定すると将来の備えはどのぐらい必要になるのでしょうか。

65歳以上の単身女性世帯の消費支出は14万3,810円

総務省の家計調査(2019年)のデータによると65歳以上の単身女性世帯の消費支出は14万3,810円でした。

年金の支給額では最低限の支出しか賄えない

年金の支給額は、さまざまな要因で決定されることもあり、事前に自分がいくらもらえるかを計算することは困難です。そこで現在支給されている年金額の平均でどのぐらいの収入があるかを確認してみましょう。2018年における女性の厚生年金の平均受給額は、10万2,558円、国民年金の平均受給額は月5万3,342円でした。

男性の厚生年金平均受給額は、16万3,840円、国民年金の平均受給額は月5万8,775円で特に厚生年金において女性のほうが5万円以上少なくなります。先に紹介した65歳以上単身女性世帯の消費支出14万3,810円と比較するとプラスになりますが、将来年金が目減りする可能性やインフレリスクを考えるとかなりギリギリの状態といえるでしょう。

ゆとりのある生活をするには老後資金はいくら必要?

現状の年金支給額では、日常生活を営む最低限の金額しか望めません。そのため「病気により医療費がかかる」「たまには旅行に行きたい」という場合、年金だけでは全く資金が捻出できないことになります。必要最低限の生活費を約15万円、少し余裕のある生活を送るなら月20万円、趣味などを楽しむ余裕のある生活を送るなら月25万円程度は必要です。

老後における毎月の生活費を25万円と考えている場合、毎月10万円は不足する計算になるため、何らかの形で老後資金を積み立てていかなければ老後資金を捻出できないことになります。例えば、65歳から20年生きると仮定すると毎月10万円×12ヵ月×20年=2,400万円、30年なら3,600万円が必要です。

30代女性が検討したい金融商品の特徴とリスク

30代女性の場合、65歳までを目標に30年間資産運用する余裕があります。長期運用をする前提で30代女性が検討したい金融商品の特徴とリスクを一覧表にしました。

金融商品名 安全性 リターン 流動性 求められる知識
普通預金 元本保証 超低金利 いつでも
引き出せる
不要
定期預金 元本保証 低金利 一定期間は
引き出せない
ほぼ不要
財形貯蓄 元本保証 ・定期金利よりも
金利は良い傾向
・財形住宅融資が
受けられる
目的外でも
引き出しは可能
ほぼ不要
債券取引 個人向け国債は
元本保証
利付国債は
元本割れあり
預貯金よりも
高い利回りが
期待できる
中途で換金できるが
一定の利子相当額が
マイナスされる
商品の
知識は必要
投資信託 元本割れあり リスク分散
しながら
リターンも
期待できる
商品による 商品の性格を
把握して
選べるので
初心者でも
運用しやすい
不動産投資 元本割れあり 入居率に
左右されるが
安定した利回りが
期待できる
低い
(投資分の回収には
時間がかかる)
不動産に関する
知識と一般的な
経営の知識が
必要
株式投資 元本割れあり ハイリターン
も期待できる
いつでも引き出せる 個別株や
経済状況など
多くの知識が
必要
FX 元本割れあり ハイリターン
も期待できる
いつでも引き出せる 世界情勢や
世界市場の
動きなど
多くの知識が
必要

表の上から順番にリスクは少なく表の下にある株式投資やFXはリスクが高い金融商品となります。普通預金や定期預金は、ほとんど利息がつかず資産を十分に活用できていない状態です。財形貯蓄も昨今は定期預金並みの低金利ですが積立金額に応じて財形住宅融資が受けられるメリットがあります。ただ基本的に元本保証の金融商品は、なかなか資産を増やせません。

ある程度リスクを取って高利回りを狙うには、元本割れのリスクを伴う金融商品を取り入れる方向で検討する必要があります。しかし、元本割れの可能性がある金融商品は、ほとんどがその金融商品に対する知識が必要な商品ばかりです。なかでも高利回りも狙えて初心者レベルの知識でも始めやすい金融商品は、「投資信託」となります。

30代女性から始める将来の備え向きの金融商品は投資信託

30代女性から始める将来の備えとして選びたい金融商品は「投資信託」です。ある程度高利回りで資産を運用でき実際の運用は専門家に任せることができるため、「投資初心者の女性でも始めやすい」という特徴があります。また、投資信託なら年利3%以上を目指すことも十分に可能です。実質年利3%を1年複利でシミュレーションしてみましょう。

30年間毎月4万円ずつ積み立てると最終積立金額は約2,330万円となります。毎月の積立額を6万円にすると約3,500万円となりほぼ目標金額を達成できるでしょう。

30代から女性が投資信託を始めるメリット

投資信託をおすすめする理由は、他にも3点あります。3つのメリットについて順番に解説します。

少額からの積み立ても可能

投資信託は、少額からの積み立ても可能な金融商品です。一般的な投資信託の最小積立金額は1万円からが多い傾向でしたがネット証券やネット銀行の場合は100円単位から積み立てできる投資信託もあります。まずは少額でもいいので投資信託の積み立てを始め投資を体験してみることも大切です。慣れてきたら家計の見直しで毎月の積立額を増やすようにすることも可能です。

このように「まずは少額から資産運用を始めてみたい」という人にとって投資信託の積み立ては始めやすい金融商品です。

安全性の高い商品とハイリターン商品を好きに組み合わせられる

投資信託は、投資先の割合によって比較的安全性の高い商品とハイリスクハイリターンを追求する商品があります。資産のすべてをハイリスクハイリターン商品に入れるのではなく安全性の高い商品と組み合わせて実質3%の利回りになるよう工夫して運用できる点も投資信託の魅力です。若いうちはハイリスクハイリターンの商品割合を多くします。

年齢を重ねて実際にお金が必要になるタイミングが近づいてくるに従い安全性の高い商品に切り替えるようにすることで「老後資金を手元に多く残す」という運用も自分でコントロール可能です。

iDeCoやつみたてNISAで節税もしながら資産形成できる

投資信託を利用しながら節税ができる「iDeCo」や「つみたてNISA」を利用できる点も投資信託を利用するメリットの一つです。iDeCoは、掛金全額が所得控除されますが満60歳以上になるまでは年金として受け取ることができない点はデメリットです。逆にいえば老後資金として確実に貯められることはメリットといえるでしょう。

つみたてNISAは、毎年40万円を上限に新規投資額の分が非課税になります。非課税期間は20年間ですがいつでも引き出すことが可能です。どちらも税制面での優遇措置があり長期の積立投資で資産形成をすることを支援する制度といえるでしょう。

30代女性が投資信託を選ぶポイント

30代女性が投資信託の商品を選ぶときに確認したいポイントは3点あります。

運用成績

1つ目は、投資信託の運用成績です。投資信託は、運用成績を年間のリターンとリスクで数値として出していますが、運用成績を簡単に比較するには、リターンの数字をリスクの数字で割ったシャープレシオという数値を利用するのが便利です。シャープレシオを使えば数字が大きければ大きいほど対象の投資信託が効率よく資産を運用しているかが分かります。

例えば、「リターン8%、リスク10%のファンドA」「リターン6%・リスク8%のファンドB」があった場合のシャープレシオを計算してみましょう。ファンドAのシャープレシオは8÷10=0.80、ファンドBは6÷8=0.75です。数値の大きいファンドAのほうがより運用成績が良いということになります。

コスト(販売手数料と信託報酬)

投資信託に投資するには、販売手数料と信託報酬手数料という形で運用コストがかかります。運用コストは少ないに越したことはありませんが自分の運用したいタイプの投資信託の運用コストが高い場合も少なくありません。特に信託報酬手数料は運用期間中ずっとかかるコストのため、できる限り低いほうがよいでしょう。

投資信託の中には、さらに別の投資信託をポートフォリオに組み入れている場合もあります。このパターンでは、信託報酬手数料を二重に支払うことになりコストは高めになる傾向です。他の条件も勘案しつつ運用コストが可能な限り少ない投資信託を選ぶようにしましょう。

運用期間は無期限または長期が望ましい

投資信託には、運用期間を設定しているものもありますが、長期運用を前提とする場合は、運用期間が無期限または長期の商品を選ぶほうが望ましいでしょう。なぜなら運用期間を長期にすることで複利の効果を最大限に発揮できるからです。投資途中に発生する利子や分配金を再投資することで利子や分配金にも利息をつけられる点は大きな魅力となります。

また、投資信託を長期保有していると運用で生じるリスクを分散させる効果も期待できるでしょう。つまり長期保有によって安定的な運用もできるようになるのです。

30代から女性が投資信託を始める際に気をつけるポイント

投資信託を始める際、30代女性が気をつけておきたいポイントもあります。主な注意点は以下の3点です。

元本割れのリスク

投資信託は、どの商品も元本割れのリスクがあります。超低金利時代において元本保証の預貯金では資産運用が難しいため、どうしてもリスクを取らざるを得ません。リスクとリターンはトレードオフです。30代女性の場合、運用期間が30年あるため、長期運用を続けることでリスクおよびリターンを平準化することが期待できます。

一時的に元本割れのリスクもありますが、コツコツと積立投資を続けていくことでリスクの分散化も可能です。時間を味方につけられる点は、30代から投資を始める女性にとって大きなアドバンテージといえます。

期間が長い分経済環境の激変による変動リスクがあり得る

投資期間は30年と長期になる分、経済環境の激変が何度かあることが予想されます。例えば、2000年に入ってからも「2008年リーマンショック」「2011年東日本大震災」「2020年新型コロナウイルス感染拡大」など経済環境を激変させる出来事がありました。投資信託も経済の変動リスクの影響は避けられません。

ただ投資信託の中でも投資先を世界中に分散させている商品ならリスクをある程度抑えることは可能です。そのため、投資信託を選ぶときには日本国内ばかりではなく世界に分散投資している商品も組み合わせるなど、分散投資を意識して変動リスクを管理しましょう。

老後費用ばかり比重をかけると現役時代の生活が苦しくなる

家計を見直す際にも注意したいポイントですが老後費用の確保ばかりに力を入れると現在の生活が苦しくなります。老後資金を一生懸命貯めていっても現在の生活が厳しくなりお金を借りて高い利息を払っていては意味がありません。できるだけ以下の2点を意識して毎月の予算を組むよう心がけてみましょう。

・無理のない範囲で積み立てを始める
・現役時代に使う予定のお金(車の購入代金や旅行代金、教育費用など)は別に目的別の貯金を始めるようにする

30代女性が投資信託を始めるならiDeCoとつみたてNISAを検討

iDeCoとつみたてNISAは、30代女性が投資信託を始める際に活用したい制度です。両者の特徴を一覧表で比較しました。

  つみたてNISA iDeCo
年間投資上限額 年間新規積立40万円まで
(非課税投資枠は
20年間で最大800万円)
1.自営業者など
6万8,000円/月
81万6,000/年
2.厚生年金保険の被保険者
1万2,000円~2万3,000円/月
14万4,000円~27万6,000円/年
3.専業主婦(夫)
2万3,000円/月
27万6,000円/年
非課税期間 最長20年間 非課税期間という形はない
税制優遇 一定の投資信託への
投資から得られる
分配金や譲渡益
・加入者が拠出した掛金額は
全額所得控除
・年金として受給する場合は
公的年金等控除
・一時金として受給する場合は
退職所得控除
資金の引き出し いつでも可能 原則60歳まで引き出せない
運用可能な商品 長期積立・分散投資に
適した一定の投資信託
運営管理機関が提示している
運用商品(預貯金、投資信託、
保険商品等)
の中から加入者等自身が
運用指図を行い途中で変更も可能

つみたてNISAは現役時代に使う資金向き

つみたてNISAは、長期積立・運用向きの投資信託を選んで運用する制度で年間の上限金額は40万円です。積み立てた投資信託から得られる分配金や譲渡益は非課税で資金が必要になった場合は途中で引き出せる柔軟性もあります。そのため、つみたてNISAは現役時代に使う予定のある目的のある資金を貯めるのに向いている投資方法です。

iDeCoは老後の資産形成向き

iDeCoは、年金の加入状況により年間の上限投資額が限られますが、投資金額分を所得控除できたり年金受取時にも所得控除が受けられたりするメリットのある投資方法です。60歳になるまで原則引き出せないため、老後資金を運用するのに向いているでしょう。

投資信託はできる範囲から始めよう

30代女性が老後30年間余裕を持った生活を送るためには、年金以外に老後資金として約3,600万円が必要です。投資信託なら年間利回り3%以上を目指して月間6万円ずつ30年間投資することで十分に目標額を達成できます。また投資信託は、少額からも積み立てを始めることができ投資に関する詳しい知識がなくてもある程度商品を選択して分散投資をすることも容易です。

いきなり毎月6万円の投資は難しくても、できる範囲から投資信託を開始して老後の資金作りを始めてみてはいかがでしょうか。

文・藤森みすず
大手Slerにてシステムエンジニアを経験後、フリーランスのライターに。FX・保険・不動産・フィンテックなど、金融に関する記事を多く手掛ける。

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