老後の資産形成に役立ち、節税効果も大きいiDeCo。しかし、注意すべき落とし穴がいくつかあるので、事前に押さえておきましょう。
今回は、iDeCoの7つの落とし穴とリスクを軽減するための対策について解説します。
落とし穴1. iDeCoは60歳になるまで引き出せない
iDeCoで積み立てたお金は、原則として60歳になるまで引き出せません。 iDeCoの主な目的は、老後のための資産形成だからです。好きなときにいくらでも引き出せるとなると、すぐに取り崩してしまう人もいるでしょう。
iDeCoはあくまで老後のためのお金として運用するべきで、向こう数年で使う可能性のあるお金は積み立てるべきではありません。
なお、加入者が死亡したり、一定の障害状態になったりした場合は、60歳に達していなくても受け取れます。その場合は、障害給付や死亡一時金といった形で受け取ることになります。
落とし穴2. iDeCoに加入できない人もいる
加入資格にも注意が必要で、以下のような人はiDeCoを利用できません。
・20歳未満または60歳以上の人
・国民年金保険料を支払っていない人
・企業型確定拠出年金に加入している人で、企業型年金規約においてiDeCoに同時加入できる旨を定めていないケース
iDeCoに加入できるのは、20歳以上60歳未満の方です。ただし、法改正によって2022年からは65歳まで加入できるようになります。
国民年金保険料に関しては、未納のほか保険料の一部または全額を免除されている人も加入できず、加入後にそのような状態になると資格を失います。
注意したいのは、企業型確定拠出年金に加入しているケースです。年金規約を見て、同時加入できると定められているかどうか確認しましょう。
落とし穴3. 金融機関によって商品が違う
iDeCoは、資金の運用先を自分で選ぶ仕組みになっています。しかし、運用先となる投資信託などの商品は、金融機関によってさまざまで、同じではありません。よく調べないで加入してしまうと、掛金を運用したい商品がなくて困る可能性があります。
また、iDeCoの口座を開設できるのは1つのみで、複数の金融機関で口座を開設することはできません。金融機関を変更することはできますが手続きが必要で、保有していた商品は一旦解約しなければなりません。金融機関を変更した後、新たに運用する商品を指定することになります。
落とし穴4. 毎月の手数料が負担になることも
iDeCoには以下のような手数料がかかり、毎月支払うものもあります。
・加入・移換時手数料:2,829円(初回のみ)
・還付手数料:1,048円(還付されたとき)
・加入者手数料:105円(掛金納付ごとに毎回)
・運営管理機関の手数料:金融機関によって異なる
iDeCoに加入するときや転職などで資金を移換するときは2,830円、還付されたときは1,048円がかかります。
毎月支払うことになるのが、加入者手数料と運営機関の手数料です。多くの金融機関では合計171円で、国民年金基金連合会に支払う分が105円、事務委託先金融機関に支払う分が66円です。口座を開設する運営管理機関に支払う手数料が無料の金融機関もあります。
つまり初回に2,839円支払い、毎月最低171円支払うことになります。毎月の掛金が少ないと手数料が相対的に多くなるため、割に合わないと感じるかもしれません。
落とし穴5. 商品によっては元本割れになる可能性がある
iDecoの運用商品は、大きく分けると投資信託と元本保証型の2種類です。投資信託は国内外の株式や債券などに投資して運用するため、元本よりも増える可能性もあれば減る可能性もあります。
元本保証型の商品には定期預金などがあり、いつ解約しても元本割れすることはありません。ただし、日本の金利は非常に低い状態が続いているため、元本の増加はほとんど期待できないでしょう。
元本保証型を選ぶべきなのは50代後半の方など、残りの積立期間が比較的短い人です。老後まで時間がないタイミングでの元本割れは、リスクが大きいです。
60歳になるまで時間があり、ある程度のリスクを許容できる人は、長期的に見れば元本が増える可能性のある投資信託を組み入れるのがおすすめです。
落とし穴6. 節税効果が高くならない場合もある
iDeCoは効率的な資産形成だけでなく、節税効果も魅力です。支払った掛金は全額所得控除になり、所得税と住民税の負担が軽くなります。
しかし、人によっては節税効果を得られないこともあります。例えば、会社員の夫がいる専業主婦が加入するケースです。
専業主婦には所得がないか、あってもそれほど多くないでしょう。住民税や所得税の支払いがないので、iDeCoによる節税は望めません。
ふるさと納税など他の制度をフル活用し、すでに所得税・住民税が安くなっている人も、iDeCoによる節税効果を得られない可能性があります。
落とし穴7. 受け取るときに課税される
60歳以降に積み立てたお金を受け取る方法は、「一時金」「年金」「一時金+年金」の3種類がありますが、いずれも基本的に課税されます。
一時金は退職所得として扱われ、課税対象になります。年金の場合は雑所得として扱われ、こちらも原則として課税対象です。
iDeCoの落とし穴への対策
上記の注意点があることを踏まえて、できる対策について解説します。
・掛金上限を把握する
iDeCoは加入する人によって、掛金の上限額が異なります。詳細は以下のとおりです。
・自営業者など:月額6万8,000円
・企業型年金のない会社の会社員:月額2万3,000円
・企業型年金に加入している会社員:月額2万円
・公務員:月額1万2,000円
・専業主婦(夫)など:月額2万3,000円
掛金の上限額が高くないと、資産形成としては効率が悪いと思うかもしれません。しかし、少しでも節税効果が見込めるなら、加入するべきではないでしょうか。
・掛金は無理のない金額に設定する
60歳まで引き出せないので、掛金をあまり高くしてしまうと経済的に苦しくなる可能性があります。例えば、手取りで毎月20万円程度の収入の場合、その1/3を超える6万8,000円を積み立てるのはリスキーでしょう。
老後のための資産形成であることを意識し、長期間引き出せなくても問題ない程度の掛金に設定して、コツコツ積み立てていきましょう。なお掛金の金額は、途中で変更することができます。
・取扱商品について金融機関ごとに比較する
どのような投資信託を取り扱っているのか、複数の金融機関を見比べてみましょう。各金融機関の公式ホームページで、iDeCoで取り扱う銘柄が公開されています。SBI証券のように、プランごとに選べる商品が異なるところもあります。
・商品についてよく調べる
運用先を指定する前に、その商品にどのような特徴があるのか調べましょう。見るべきポイントは運用方針や信託報酬などのコスト、基準価額、純資産額の推移などです。
一般的に、株式、債券、定期預金の順でリターンが大きく、リスクも大きいです。値動きの幅をチェックして、どの程度なら許容できるか考えながら運用商品を選びましょう。
選びたい商品を多く取り扱っている金融機関を選ぶのがおすすめです。
・受け取り方と税率を知っておく
「受け取るのはかなり先」という人が多いと思いますが、今のうちに受け取り方をどうするか、税金がどれくらい発生するのか確認しておきましょう。
一時金(退職所得)で受け取る場合、課税対象となる所得額は「(収入金額-退職所得控除額)÷2」です。退職所得控除額は、勤続年数が20年以下なら「40万円×勤続年数」、20年超の場合は「800万円+(70万円×(勤続年数-20))」です。
35年勤めた場合、控除額は「800万円+(70万円×(35-20))」で1,850万円です。iDeCoの受取額が1,850万円以下で、他に一時所得がなければ、課税対象の退職所得は0円になるので課税されません。
課税される退職所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万~329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万~1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
例えば、課税される退職所得金額が1,000万円の場合、「1,000万円×33%-153万6,000円」で、税額は176万4,000円になります。
iDeCoでおすすすめの金融商品
リスク許容度別に、iDeCoでおすすめの金融商品を3つ紹介します。
許容度・高 | ニッセイ外国株式インデックスファンド |
許容度・中 | eMAXIS Slim バランス(8資産均等型) |
許容度・低 | イオン銀行iDeCo 定期預金 5年 |
リスク許容度が高く、積極的に利益を狙う人には、「ニッセイ外国株式インデックスファインド」がおすすめ。世界の主要先進国の株式に投資するファンドで、SBI証券や楽天証券などで取り扱っています。
ある程度のリスクを許容できるなら、「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」を検討してみましょう。国内外の株式や債券など、8種類の資産に均等に分散投資ができます。取り扱っている証券会社は、SBI証券や松井証券などです。
リスクを取りたくない人や「元本割れは困る」という人は、定期預金一択です。イオン銀行は、金利0.05%で満期は5年です。
落とし穴に注意しながらiDeCoで積み立てをしよう
iDeCoには、注意すべきポイントがいくつかあります。これから積み立てる人も、すでに積み立てている人も、「こんなはずじゃなかった……」とならないように、対策をしておきましょう。
文・安藤真一郎(ライター・ファイナンシャルプランナー)
主に金融系ライターとして活動し、2019年に2級FP技能士資格を取得。マネージャンルで役立つ情報を、初心者にも分かりやすく解説することを心掛けています。関心分野は、キャッシュレス決済、積立投資、ポイ活、節約術など。
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