土地付きの太陽光発電投資が注目を集めるようになって久しいですが、2020年に起きた新型コロナウイルス感染拡大によって株や為替などの投資環境が大きく変動したことを受けたこともあり、堅実性の高い太陽光発電投資が再び脚光を集めています。
加えてSDGsなど持続可能な社会への関心が高まりを見せており、企業価値の向上という観点からも太陽光発電投資への注目度は一層高くなっています。
太陽光発電は太陽光パネルを設置するスペースがなければ始められないとされてきましたが、土地付き太陽光発電投資スキームの確立により、土地を持っていなくても始められるものとなりました。
そこで当記事では太陽光発電投資の有望なスキームとして、土地付き太陽光発電の基本から投資方法、メリットとデメリット、最後にはそもそも土地付き太陽光発電投資は「アリ」なのかを結論付けたいと思います。土地はないものの太陽光発電投資への関心が少しでもお持ちの方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
1.土地付き太陽光発電の基本と注目されている理由
土地付き太陽光発電とは何か?特に「土地付き」という点に注目しつつ基本について解説します。
1-1.土地付き太陽光発電投資とは
太陽光発電を事業として行うには、太陽光パネルを設置するためのスペースが必要です。家庭用太陽光発電では屋根を活用するのが一般的ですが、投資用の太陽光発電では野立てといって空き地に太陽光パネルを設置するタイプが多くみられます。
野立ての場合は太陽光パネルを設置する土地が必要になるわけですが、このための土地もセットで販売されているのが土地付き太陽光発電です。こうした土地付きの太陽光発電所を事業目的で設置・購入することを土地付き太陽光発電投資といいます。
1-2.土地付きと土地なしの違い
「土地付き」のタイプがあるということは、「土地なし」もあるということになりますが、両者の違いについても解説しておきたいと思います。
土地付きの太陽光発電は前項で解説した通り、土地と太陽光発電に必要な設備がすべてセットになった物件です。それに対して土地なしというのは自己所有地がある場合、そこに太陽光発電設備を導入するモデルのことを指します。
土地付きで販売されていることにより、太陽光発電に適した土地を所有していない事業者であっても太陽光発電投資に参入しやすくなりました。このことにより、以下のようなメリットが得られます。
①手堅い投資である
電力需要がなくなることは考えにくく、さらに産業用太陽光発電はFIT(固定額買取制度)により20年間の電力買取が保証されているため、少なくとも20年間は手堅い投資であると言えます。また、セカンダリー市場といってすでに稼働している中古発電所が売買される市場が確立されつつあり、セカンダリー市場で売買されている中古発電所の中にはFITの買取条件が良いものがあるため、こうした物件を購入するとFITの期間が短くなるものの買取条件の良い太陽光発電投資が可能になります。
②利益の源泉が無尽蔵である
太陽光発電のエネルギー源である太陽光は、無尽蔵のエネルギーです。厳密には太陽にも寿命がありますが、それは数十億年後のことと考えられているため、今の時代を生きる私たちにとっては無尽蔵、無限のエネルギーであると言っても良いでしょう。
その一方で現代社会は電力に大きく依存しており、電力需要が突然なくなってしまうことも考えにくいため、エネルギー源だけでなく需要も尽きることはありません。尽きることのないものを利益の源泉としているのは、太陽光発電に限らず再生可能エネルギーが持つ大きな強みです。
③災害時にも独立電源を確保できる
相次ぐ地震や集中豪雨により、多くの事業者は災害をリスク要因のひとつとして考慮する必要に迫られています。大規模な自然災害が起きると停電の発生リスクが高まり、実際に停電が起きると事業の継続が困難になります。
太陽光発電によって確保できる独立電源は災害時の非常電源として活用できます。災害により大元の送電線が使えない場合、遠隔地への送電は出来ませんが、近隣住民への電力供給など、地域に貢献できる可能性があります。
④環境投資への社会的イメージ
CSR(企業の社会的責任)が求められる時代となっています。その中でも特にSDGsやESG投資といった利益追求だけではなく持続可能な社会の実現、そのための環境対策などが企業価値の向上だけでなく存続にも大きな意味を持つようになってきているため、環境投資の必要性が飛躍的に高まっています。
こうした要件を満たすために土地付き太陽光発電投資を活用する事例も多くなっています。
1-3.土地付き太陽光発電の利回り目安
事業として土地付きの太陽光発電所を運用すると、どの程度の利回りが見込めるのでしょうか。実際に販売されている中古発電所の利回り表示を見ると10%前後、もしくはそれを超えているものが多く、一般的な不動産投資と比べても総じて利回りは高めです。
1-4.土地付き太陽光発電投資の始め方
土地付き太陽光発電投資を始める方法は、2つあります。
①土地付き太陽光発電所案件を購入する
②中古発電所を購入する
①については、いわば「新規」です。それに対して②はすでに稼働している「中古」の発電所を購入する方法です。
2.太陽光発電に投資する方法3つと投資対象としての特徴
当記事では土地付き太陽光発電への投資をメインに解説していますが、太陽光発電投資には主に3つの方法があります。それらについてのご紹介と、太陽光発電を投資としてとらえた時の特徴や他の投資との違いについて解説します。
2-1.太陽光発電に投資する方法
太陽光発電に投資する方法は、主に以下の3つです。
①自己所有地に太陽光発電所を建設
休耕地や遊休地、山間部の空き地などに太陽光パネルを設置して発電事業を行うスキームです。日照量さえあれば立地条件を問わないため、過疎地などの土地を活用する方法としても有効です。
②土地付き太陽光発電所を購入
当記事で解説している方法で、太陽光発電に適した土地がない、もしくは土地そのものを持っていない方であっても始められるスキームです。
③インフラファンドを購入する
インフラファンドとは、太陽光発電施設など社会基盤(インフラ)を運用対象とする投資商品です。太陽光発電所の設置、購入などの費用を投資家からの出資でまかない、その発電所で得られた収益を分配する仕組みになっています。2020年8月現在、東京証券取引所には7つの銘柄が上場されており、株と同じ感覚で手軽に売買が可能です。
不動産を運用対象とするREITの中にはJ-REITがありますが、このJ-REITと似た投資商品でありながら景気変動の影響を受けにくい特性があり人気を集めています。
2-2.太陽光発電投資の特徴
太陽光発電投資の大きな特徴は、太陽光という自然からの無尽蔵のエネルギーを利用することです。他のさまざまな投資にも利益の源泉がありますが、いずれも景気変動の影響を受けやすく、利益の源泉が無限ではないものがほとんどです。それに対して自然エネルギーが利益につながるというのは、極めて特徴的であると言えるでしょう。
特に面白い点として、太陽光発電投資にはキャピタルゲインという概念があまりありません。株やFXなどの投資では値動きによる差益を狙える一方で暴落や暴騰による損失のリスクがありますが、太陽光発電投資にはそういったリスクがあまりありません。また、一般的な事業では顧客を開拓する必要がありますが、電力需要は開拓しなくても存在するため、「顧客を必要としない」というのも太陽光発電投資の特徴です。
2-3.主要な投資商品との違い
さまざまな投資商品がある中で、これらの投資商品と太陽光発電投資は何が違うのかという点について解説します。
①株、FX、CFD投資との違い
株やFX、そして株価指数や商品などさまざまなものに投資することができるCFDなどはいずれも流動性が高く、投資に参入するのも手仕舞いをするのも容易です。土地付き太陽光発電投資は太陽光発電所を所有することになるため流動性や手軽さという面ではこうした投資には劣りますが、その反面ボラティリティ(価格変動幅)の概念はないため安定性では圧倒的に勝ります。
株、FX、CFDなどは時にハイリターンを狙える一方でハイリスクですが、土地付き太陽光発電投資はこれらの投資と比べると手軽とは言えないものの、はるかに低リスクです。
②不動産投資との違い
太陽光発電所を所有するという感覚は、収益物件を所有する不動産投資と似ている部分があります。どちらも不動産の購入を伴うため流動性があまり高くないという点で共通しています。
しかし不動産投資は立地の良さが絶対的な条件になるのに対して、太陽光発電は日照量さえ十分にあれば過疎地やへき地でも十分、投資として成立するため、立地条件による影響が少ない点において優位性があると言えます。
土地付き太陽光発電投資の利回りが全体的に高いのは、土地の価格が安いことも大きく関係しています。
③投資信託との違い
主要な投資商品として、投資信託とも比較してみましょう。投資信託は初心者であってもプロに運用を託すことができるため幅広い層に人気がありますが、そもそも投資信託はそれほど収益性が高くないという現実があります。株やFXと比べると値動きの幅が小さい傾向があるためキャピタルゲインは狙いにくいですし、信託報酬という運用者への手数料が発生するため投資家の取り分が少なくなってしまうのです。
3.土地付き太陽光発電投資のメリット7つ
土地付き太陽光発電投資には、実に多くのメリットがあります。それぞれのメリットについて7項目に整理しました。
3-1.自己所有地が不要
不動産投資はもちろんのこと、太陽光発電投資であっても土地が必要であることは大きな参入障壁となってきました。土地付き太陽光発電投資であればその障壁がないため、多くの人に参入の門戸が開かれています。
「始めたいのに始められない」といった人たちのニーズに応えられるようになったのは、1番目に挙げるべきメリットです。
3-2.他の投資と比較して安定、利回りも総じて高い
土地付き太陽光発電投資の標準的な利回りを見て、「思っていたより高い」とお感じになった方は多いのではないでしょうか。限りなくゼロに近い銀行預金はもちろんのこと、その他の投資であっても数%レベルのものが大半なので、10%前後もしくはそれ以上の利回りを目にすると高いと思われるのは当然です。
しかも太陽光発電投資の利益源泉は無尽蔵であり、FITで買取価格が保証されている期間はほぼシミュレーション通りの利回りになるため、とても安定しています。
一定期間の配当や分配金が保証されている株や投資信託はないことを考えると、この点だけを見ても安定性は抜群です。
3-3.入居者など顧客を必要としない
先ほど太陽光発電投資の特徴として「顧客を必要としない」点を挙げました。これは入居者を必要とする不動産投資との大きな違いで、募集活動(営業活動)が不要であることを意味します。入居者など顧客との関わりがないことで、人を相手にしたトラブルとも無縁です。
コロナショックなど経済への大きなダメージがあっても電力需要がなくなることはありませんし、人口減少による影響も軽微です。
3-4.管理をアウトソーシングできる
太陽光発電所を所有し、運営するとなると維持管理に多くの業務を必要とするのではないかとお感じかもしれません。しかし、土地付き太陽光発電投資に取り組んでいる事業者や投資家の多くは近隣に住んでいるわけではなく、遠隔地からの投資であることが大半です。
こうした事業者のためにO&Mサービスなど発電所の維持管理を行うサービスが提供されており、これらを利用することで管理をアウトソーシングすることができます。こうしたサービスを利用すると発電量が適切であるかどうかの監視や現場のメンテナンス、さらには災害時の復旧までも委託することができます。
3-5.節税メリット
土地付き太陽光発電投資では土地の購入を伴うことから、それによる節税メリットが期待できます。
事業として太陽光発電投資を行う場合、発電所の取得コストや維持管理に要するコストは経費として計上できますし、発電所を所有・運営することによって発生する税金も経費にすることができます。
太陽光発電設備の購入・設置コストについては、減価償却が可能です。太陽光発電システムに必要な設備類は「電気業用設備」に分類され、その中でも「主として金属製のもの」に該当するため、法定耐用年数は17年です。つまり、設置(購入)後17年にわたって減価償却による経費の計上が可能になるというわけです。
さらに、土地付き太陽光発電投資は相続税対策としても有効です。現金など評価額の高い資産のまま相続するよりも太陽光発電所として所有し、相続すると評価額を減ずることができるため相続税の圧縮もしくは基礎控除内に収まれば非課税にすることも可能になります。
3-6.災害時の電力源確保
災害時に大規模な停電が発生すると、現代社会は機能停止に陥る恐れがあります。しかしそんな中にあって、大規模災害の発生時に太陽光発電を導入している家庭や事業所では自立電源を確保できたことが大きく注目されました。実際に太陽光発電の自立運転が災害時に活躍した事例も報告されており、災害など停電が発生しても電力源を確保する必要性から太陽光発電を導入するケースも多くなっています。
3-7.環境投資で社会的な要請に応え、企業イメージが向上する
企業も社会の一員であるとして、持続可能な社会の実現に向けて取り組む必要があるというのは今や常識になりつつあります。それを象徴するかのようにSDGsやESG投資、RE100などへの取り組みが企業へ投資をするかどうかの判断材料となり、特に大手企業の中にはこうした取り組みをしていることが取引の条件としているところもあります。
従来の考え方ではこうした環境問題への取り組みが「企業イメージ向上につながる」という程度の認識だったかもしれませんが、今後は新規取引の必須条件であるケースや投資の要件であるケースも目にするようになり、企業としては避けて通れない取り組みです。土地付き太陽光発電投資に取り組むことでこうした要件を満たすことができるため、企業で取り組む場合においては投資による金銭的なメリットだけでなく企業価値向上、そして成長戦略という多大なメリットをもたらします。
4.土地付き太陽光発電投資のデメリット、リスク4つと克服法
7つあった土地付き太陽光発電投資のメリットに対して、次はデメリットやリスクと考えられる点を4つの項目で解説し、それぞれを克服する方法についても提案したいと思います。
4-1.初期投資が大きくなる
土地付き太陽光発電は郊外や山間部など比較的土地の価格が安い物件が多いのですが、それでも太陽光発電設備と合わせて数千万円の投資規模になります。土地がなくても始められるとはいっても資金は必要なので、これが参入障壁となります。
ただし、この資金はすべてが自己資金である必要はありません。不動産投資と同様にローンを利用して資金を調達することができるため、全額を用意しなくても始められると考えていただいて問題ありません。金融機関や信販会社、自治体などで多くのローンが用意されています。
4-2.天候によって発電量が変動し、利回りにも影響する
太陽光発電は自然を相手にする事業なので、天候による日照量変化の影響を受けます。日照量が少なくなれば発電量も少なくなるため、利回りが低下してしまうリスクがあります。
これを回避、克服するには入念な長期シミュレーションが不可欠です。太陽光発電の施工事業者は豊富なノウハウを持っているため、施工業者や販売業者選びの際にシミュレーションの「正確性」や「説得力」も判断材料になります。
さらに天候不順による発電量の低下を防ぐ手段として、過積載も有効です。過積載とはパワーコンディショナーの容量以上に太陽光パネルを設置することで発電量の低下を防ぎ、安定化を図る手法のことです。
4-3.FITの20年が終了すると利回りが大幅に低下する
ここまでの解説で「FITがある20年間は利回りが安定する」と述べてきましたが、これは逆に考えると「20年を過ぎると利回りが安定しない」ことでもあります。20年間のFIT期間が終了すると買取価格は大幅に低下してしまうため、それまでの利回りを維持できなくなります。
電力自由化によって新電力や小売り電気事業者への売電も有効ですが、なかなかFITで保証されていた買取価格での売電は難しいでしょう。
もうひとつの根本的解決の方法として、自家消費型への移行も有効です。自家消費型の太陽光発電とは、自前の発電所で生み出された電力をすべて自家消費、つまり売電せずに使うという考え方です。今後電気料金は値上がりが続くとみられており、さらに再エネ賦課金といってFITを維持するための費用が電気料金に上乗せされるため、電力は「買う」よりも「作る」ほうが有利になります。
発電所が遠隔地にある場合であっても運営者が同一であれば自家消費としてみなされる自己託送型の選択肢もあるため、FITが終了した後に自家消費型で太陽光発電のメリットを維持できる可能性は高くなっています。
4-4.災害によって発電所がダメージを受ける可能性がある
昨今の自然災害では太陽光発電所がダメージを受けたという報道を目にすることも多くなりました。平面のパネルを設置するため台風などの強風によって吹き飛ばされたり向きが変わってしまったりといったリスクや、洪水や豪雨で設備が浸水してしまうなど、規模の大きな電気設備だけにこうしたリスクを避けて通ることはできません。
こうしたリスクへの対策には、保険が有効です。損害保険会社の中には太陽光発電など再生エネルギー関連の施設に関する保険商品を販売しているところがあるので、こうした保険に加入することで金銭的なリスクを管理することができます。
5.まとめ 土地付き太陽光発電への投資は「アリ」か
ここまで解説をお読みいただいたうえで、最後に「結局のところ、土地付き太陽光発電への投資はアリなのか」という疑問にお答えしたいと思います。結論として1つ目に言えるのは、FIT期間があるうちは買取価格が保証されているため、シミュレーションの結果、有望な利回りが見込めるのであればアリです。さらにFIT期間終了後のことも織り込んだうえでの投資計画であれば、長期的な投資価値はより高くなるでしょう。
土地付き太陽光発電投資には金銭的なリターンだけでなく、企業価値の維持・向上という重要な側面もあります。SDGsやESG投資への取り組みが必須となる時代に向けて、土地付き太陽光発電投資への参入は「アリ」なのかという議論を通り越して企業の存続に関わるリスク管理でもあるのです。(提供:Renergy Online)