日本の金融を支える証券会社トップ10は、どこなのか?証券業界の巨人・野村證券や5大総合証券、SBIや楽天など時代の寵児である主要ネット証券の順位は?40代のビジネスパーソンなら知っておきたい、証券会社トップ10を紹介する。

目次
1,「時価総額」ランキングTOP10
2,「営業収益(売上高)」ランキングTOP10
3,「口座数」ランキングTOP10
4,「現物株式 取引手数料」ランキングTOP10
5,「顧客預かり資産」ランキングTOP10
6,2020年コロナ禍の影響は証券業界にも、業界勢力図に異変あり

1,「時価総額」ランキングTOP10、市場価値が高い証券会社は?

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(画像=Wright Studio/Shutterstock.com)

上場企業の規模と価値を測る指標である時価総額。証券業界で時価総額から見た大手証券といえば、どこなのか?上場している総合証券と、インターネット専業証券を対象にした上位10社は、以下のとおり。時価総額の基準となる発行済株式数は2020年9月1日現在のもの、株価は同日の9時28分時点のものを採用している。

証券会社の時価総額ランキングTOP10
順位 コード 証券会社名 発行済株式数 株価 時価総額
1 8604 野村ホールディングス
(野村證券)
34億9,356万2,601株 538.5円 1兆8,812億8,400万円
2 8601 大和証券グループ本社 16憶9,937万8,772株 472.4円 8,027億8,700万円
3 8473 SBIホールディングス
(SBI証券)
2憶3,655万6,393株 2,416円 5,715億2,000万円
4 8628 松井証券 2憶5,926億4,702株 942円 2,442億2,700万円
5 7177 GMOフィナンシャル
ホールディングス
(GMOクリック証券)
1億1,788万2,903株 664円 782憶7,400万円
6 8698 マネックスグループ
(マネックス証券)
2億5,899万8,600株 277円 717憶4,300万円
7 8609 岡三証券グループ 2億821万4,969株 318円 662憶1,200万円
8 8616 東海東京フィナンシャル
ホールディングス
2億6,058万2,115株 253円 659憶2,700万円
9 8699 澤田ホールディングス 4,095万3,500株 887円 363億6,700万円
10 8708 藍澤証券 4,752万5,649株 690円 328億4,000万円
※上記ランキング表は、SBI証券のスクリーナーを使用し証券業を時価総額順に並べ、その中から証券会社だけを抽出して作成した(2020年9月1日9時28分基準)

第1位:野村ホールディングス(野村證券)、歴史と実績を兼ね備えた証券業界の巨人

発行済株式数と時価総額のどちらも証券業界で群を抜く、歴史と実績を誇る実力企業。野村證券所属アナリストや専門家による質の高い投資分析情報やレポートは、野村證券の口座開設者なら誰でも閲覧できる。

2020年6月30日現在、残あり顧客口座数(532万3,000口座)は、全国の証券会社の総口座数(2,598万163口座)の20.4%を占める。

IPOでも業界トップクラスの引受実績を誇り、野村證券ホームページの公表資料によれば、2019年度のIPOでも引受金額ベースで業界第1位であった。IPO投資をするならば、外せない証券会社と言えるだろう。

対面総合證券の印象が強いが、マネーフォワードと共同で製作した資産管理アプリ「OneStock」の提供を2020年に開始。このアプリは、さまざまな金融機関で保有する自分の資産を自動連携し、一元管理できるもの。デジタルトランスフォーメーションにも意欲を見せる。

第2位:大和証券グループ本社、オンライン取引の草分け

創業110年を超える老舗総合証券でありながら、1996年に始まったオンライントレードの草分け的証券会社でもある。

QUICK社提供の高機能新取引システム「トレボ」、スマートフォンアプリ「株主優待ロボアドバイザー」や比較分析、外債かんたん検索などの分析ツール、会社四季報やUSマーケットアトラス、QUICK株価情報などの情報ツールをはじめとした、オンライントレードに役立つ投資情報やツールが豊富。

大和証券グループの株式会社CONNECTでは、少額投資向けサービス「CONNECT」を提供。「CONNECT」では株式を1株から売買でき、毎月10回まで取引手数料が無料になるなど、投資初心者にやさしい仕組みを導入している。

2020年8月、中国で合弁会社「大和証券(中国)有限公司」を設立する許可を取得。アジアを中心に、グローバル展開も積極的に推し進めている。また、世界的に有名な資産管理会社MSCI INC.とのアライアンスによる「資産運用プランニング」を国内で初めて導入。個人投資家のサポートにも注力している。

第3位:SBIホールディングス(SBI証券)、インターネット専業証券で圧倒的実力

「2020年オリコン顧客満足度ランキング」のネット証券部門で5年連続1位の、ネット証券のトップ・リーダー。投資初心者からデイトレーダーまで、幅広い顧客が納得する充実の商品ラインアップや多彩な投資情報、業界最低水準の手数料が魅力。

ここで、ネット証券首位のSBI証券と総合証券首位の野村證券を比較してみよう。

  SBI証券 野村證券
国内現物株式
最低手数料
0円 2,860円
IPO主幹事数※ 7社 17社
IPO取扱銘柄数※ 82 35
米国株
取扱銘柄数
3,040 576
※2019年の実績

現物株の取引手数料はネット証券ということもあり、SBI証券が圧倒的に安い。IPOや米国株銘柄数も多く、個人投資家ならばまずはSBI証券で口座開設ということになりそうだ。

詳しくは後述するが、SBI証券は2020年3月に口座数がついに野村證券を上回り、1位になった。今、最も人気のある証券会社と言える。

また、グループ全体で地方銀行との連携を強化。宮崎銀行や福島銀行、筑邦銀行、清水銀行などへの出資を拡大。今後この流れを強化していく予定とのことだ。

第4位:松井証券、初心者でも安心のサポート体制や低水準の手数料

創業100年を超える老舗証券会社の松井証券。1995年に日本で初めてインターネット証券に参入し、2001年に上場。海外株式やETF、債券などの取扱いはないが、立会外分売や先物、FXなどの取扱いがある。

松井証券独自の「松井証券ポイント」は、松井証券のクレジットカードを利用したショッピングのほか、対象の投資信託保有で受け取れ、貯まったポイントはAmazonギフトカードなどに交換できる。

一日の約定合計金額が50万円以下だと手数料0円、電話や窓口でのサポート体制も充実しており、サービス内容も魅力だ。

個人投資家にやさしい仕組みが評価され、J.D.パワー ジャパンが発表した「2020年個人資産運用顧客満足調査」でもネット証券部門第1位を獲得している。

第5位:GMOフィナンシャルホールディングス、FXの取引実績国内トップ、オリジナル商品も

日本以外にロンドンや香港など海外にも子会社を持つ、日本の大手証券会社GMOフィナンシャルホールディングス。年間のFX取引高は、8年連続で国内トップだ。

GMOの子会社「GMOコイン」では、暗号資産の事業を行う。レバレッジをかけた取引では日本最多の銘柄数だ(2019年2月13日時点)。「GMOクリック証券」のCFD口座では、ほかの証券会社では取り扱っていない「米国VIベアETF」なども扱う。

グループの中核会社の一つであるGMOクリック証券は、現物取引で300万円以上、信用取引で50万円以上を取引する場合の手数料が、他のネット証券よりも安い。投資に慣れ、ある程度の金額を運用したい人には向いているだろう。

2,「営業収益(売上高)」ランキングTOP10、事業規模が大きく信用力があるのはどこ?

証券会社の営業収益は、一般企業の売上高に当たる。2020年3月期(2019年4月1日~2020年3月31日)における、証券会社の営業収益上位10社のランキングと、各証券会社の信用状態を評価する信用格付は以下のとおりである。

証券会社の営業収益(売上高)と信用格付ランキングTOP10
順位 証券会社名 営業収益 単体の発行体信用格付
長期/短期
(2020年5月14日現在)
1 (連)野村ホールディングス
(野村證券)
1兆9,524億8,200万円 A+/a-1(R&I)
AA-(JCR)
A3/P-2(Moody’s)
A-/A-2(S&P)
A-/F1
(フィッチ・レーティングス・ジャパン)
2 (連)大和証券グループ本社 6,722億8,700万円 A/a-1(R&I)
A+(JCR)
A3/P-2(Moody’s)
A-/A-2(S&P)
A-/F1
(フィッチ・レーティングス・ジャパン)
3 (連)SMBC日興証券 3,987億4,900万円 AA-/a-1+(R&I)
AA(JCR)
A1/P-1(Moody’s)
A/A-1(S&P)
4 みずほ証券 3,817億7,500万円 AA-/a-1+(R&I)
AA/J-1+(JCR)
A1/P1(Moody’s)
A/A-1(S&P)
5 (連)三菱UFJモルガン・
スタンレー証券
2,469億4,600万円  AA-/a-1+(R&I)
AA(JCR)
A1/P-1(Moody’s)
A/A-1(S&P)
A-/F1
(フィッチ・レーティングス・ジャパン)
6 (連)SBI証券 1,244億6,600万円 BBB+/a-2(R&I)
BBB+/A-(JCR)
7 (連)岡三証券グループ 650憶3,800万円 BBB+(JCR)
8 (連)東海東京
フィナンシャル・
ホールディングス
(東海東京証券)
616億9,400万円 BBB+(JCR)
9 (連)岡三証券 560億5,500万円
(2019年12月期)
10 マネックス証券 290億1,400万円
(2019年3月期)
BBB/a-2
(R&I)BBB/J-2(JCR)
※上記一覧は、各社ホームページを参照して執筆者が作成した

第1位:野村ホールディングス(野村證券)、桁違いの業績と高い信用力

従来通りのリサーチ力とコンサルティング力を活かした対面取引に加えて、手数料の安いオンライントレードも強化した営業体制で、例年他社を大きく引き離す業績を上げている。

業界最多の5社から格付を取得しており、全社からA以上の高評価を受けている。実績だけでなく、信用力の高さも業界一の証券会社の雄である。

他社に比べて、収益に占めるホールセール部門の割合が高いのが特徴。2020年3月期は、マーケットの急変でIPOやPO案件が中止になる中、グローバルなM&Aビジネスは堅調で、前期比90%の増収となった。

第2位:大和証券グループ本社、安定した業績と信用力

野村證券には及ばないものの安定した業績を上げており、第3位を大きく引き離して証券業界第2位の地位を維持している。リテール部門のラップ口座サービスやホールセール部門の好調な業績が、収益を下支えしている。

野村證券同様、格付機関5社から高い評価を受けている優良企業。

第3位:SMBC日興証券、信用リスクの低さで高い格付 第4位のみずほ証券に追い上げられているものの、営業収益の伸びを背景に業績を順調に伸ばしている。

格付機関4社から取得している格付はA以上であり、債務履行能力の高さが評価されている。

株式の引受部門は好調で、2019年度の売出しなどの引受金額は国内第1位。IPO主幹事案件も多く、2019年度はIPO全92件中、業界第2位の18件で主幹事として携わった。

3,「ネット取引口座数」ランキングTOP10、人気の証券会社はどこ?

それぞれの証券会社が、どれほど多くの投資家に支持されているかを比較するなら、単純に証券会社の顧客数を確認できる「口座数」を確認すればいい。

総合証券の総合証券口座数とネット証券の口座数を対象にしたランキングで、現在人気の高い証券会社をチェックしてみよう。総合証券には、参考としてインターネット取引専用口座数も併記するので、ネット取引口座数でも比較してほしい。

証券会社「口座数」ランキングTOP10
順位 証券会社名 口座数
(インターネット取引
利用可能口座数)
1 SBI証券 542万7,829口座
2 野村證券
(オンライン
トレード口座)
531万9,000口座
(470万3,000口座)
3 楽天証券 375万7,172口座
(2019年12月末時点)
4 SMBC日興証券
(イージー
トレード口座)
345万3,000口座
(228万4,000口座)
5 大和証券
(オンライントレード
 利用可能口座)
302万2,000口座
(337万3,000口座)
6 マネックス証券 185万6,376口座
7 松井証券 123万7,989口座
8 auカブコム証券 115万1,544口座
9 GMOクリック証券 42万9,910口座
10 岡三オンライン証券 23万6,060口座
※口座数は証券会社各社のホームページから抽出した
※(2020年3月31日現在)

第1位:SBI証券、総口座数で証券業界No.1に

SBI証券は、これまでもインターネット取引が利用できる口座数では業界第1位であったが、2020年3月期末日現在で、証券総合口座ベースでも業界第1位となった。

2020年3月期末現在の口座数は、542万7,829口座。2019年3月期末の口座数は463万676口座だったので、1年間で79万7,153口座(17.2%増)もの新規口座が開設されたことになる。

インターネットが身近で投資が未経験である若年層の個人投資家を多く取り込み、顧客の裾野を着実に広げてきた。それに加えて、2020年2月頃から深刻化した新型コロナウイルス感染拡大の影響が、ネット証券に対する爆発的な需要を後押ししたと考えられる。

第2位:野村證券、オンライントレード可能口座の割合が全体のおよそ9割に

野村證券は証券業界の老舗で圧倒的規模を誇っており、証券総合口座数でも長らく証券業界第1位だったが、2020年3月期末で形勢が逆転し、SBI証券に口座数No.1の座を譲ることになった。

これまで野村證券の顧客は法人と富裕層に属する個人投資家が中心であり、桁外れの預かり資産もこれらの顧客層に支えられてきた。

インターネット取引が主流となる中、野村證券でもオンライン取引環境の整備を各方面で進めてきた。しかし、インターネット取引に親和性の高い若年層の獲得において、SBI証券や楽天証券といったネット証券大手に遅れを取ったことが、口座数逆転につながった。

第3位:楽天証券、驚異的な伸び率で口座数を増やす

楽天証券では、投資初心者の新規顧客を呼び込むためのキャンペーンを積極的に実施している。その効果もあり、2019年12月期末現在では前期末より73万9,838口座増加、24.5%という驚異的な伸び率で新規顧客を増やし、375万7,172口座となった。

これによって、約345万口座を抱える総合証券大手のSMBC日興証券を口座数で上回り、業界第3位に躍り出た。

2019年12月期末以降のネット証券業界への追い風によって、一層の口座数伸長が見込まれる。

楽天証券の2019年12月期末現在の口座開設者のうち、62.6%は楽天会員である。楽天スーパーポイントの投資への活用と高い汎用性によって、多くの楽天ポイント会員を惹きつけていることがわかる。

4,「現物株式 取引手数料」ランキングTOP10 証券会社選びで重要な手数料が安いのは?

ここまで時価総額や営業収益など、企業規模を示す指標を見てきたが、本項では証券会社を選ぶ際に最も気になる取引手数料ランキングを見てみよう。

インターネット取引の普及と取引手数料競争の激化によって、手数料は全体的に下がっている。2020年5月14日現在、インターネット取引による現物株式の取引手数料(税込)が安い証券会社上位10社はどこなのか?

約定代金「10万円以下」の手数料ランキングTOP10  投資初心者が取引しやすい取引額といえば、現物株式の約定代金「10万円以下」の価格帯だろう。この価格帯に対する、1注文ごとの取引手数料(税込)ランキングと、第1~3位の証券会社の特徴を紹介する。(※総合証券については、インターネット取引専用手数料コースを対象にしている。)

以下のランキング表は2020年5月14日現在、各社がホームページで公表している取引手数料(税込)をもとに作成した。なお本文中の手数料は、すべて税込表示である。

約定代金「10万円以下」の手数料ランキング表
順位 証券
会社名
約定代金
5万円以下 5万円~
10万円
1 松井証券  ※ 0円
2 DMM.com
証券
55円 88円
2 ライブスター
証券
55円 88円
2 立花証券
(ストックハウス)
55円 88円
5 SBI証券 55円 99円
5 楽天証券 55円 99円
7 立花証券
(e支店)
77円
8 むさし証券
(トレジャー
 ネット)
82円
9 GMO
クリック証券
96円
10 auカブコム証券 99円
※ 松井証券の手数料はボックスレート(1日定額制手数料体系)だけだが、対象となる価格帯の手数料で他社と比較した。

・第1位:松井証券、恒常的に手数料0円は業界最安値
松井証券の手数料は、ボックスレート(1日定額制手数料体系)の1種類のみ。1日1回でも、何回取引しても、1日の約定代金合計額が50万円以下ならば手数料は0円だ。これには特に条件は設けられておらず、実質的に業界最安の手数料である。

これから投資を始める人や、主に少額取引を予定している人には、松井証券の「1日50万円以下手数料0円」は心強い。

・第2位:DMM.com証券、FXで実績がある新星の手数料は業界最安水準
FXで実績のあるDMM.com証券が、2018年4月から株式取引の提供を開始した。現物の取引手数料は、全価格帯で業界最安水準に設定されている。取扱商品は多くないが、業界で1、2を争う格安な手数料は、潜在的な顧客に強くアピールできるだろう。

・第2位:ライブスター証券、手数料の安さが最大の魅力、無料キャンペーンも
業界最安値水準の手数料を謳っているライブスター証券だけあって、少額取引から大口取引まで、誰でも十分に安い手数料の恩恵を受けることができる。新規口座開設で手数料が2ヵ月間無料になるキャンペーンなどが定期的に実施されているので、チェックしてほしい。

・第2位:立花証券(ストックハウス)、ネット取引に強い中堅総合証券立花証券は、1953年創業の老舗中堅総合証券
会社である。ネット取引サービスとして、ネット取引専用店舗の「ストックハウス」と株式(現物・信用)特化型の「立花証券e支店」の2つのチャネルを運営している。

ストックハウスでは、約定代金5万円以下で55円、10万円以下で88円という格安の少額取引手数料を設定している。

約定代金「20万円超~50万円以下」の手数料ランキングTOP10  株の取引に少し慣れてきたら、より大きな金額の取引をする機会が増えるだろう。次は、投資金額がやや増えた際の取引手数料をランキング形式で紹介しよう。

約定代金「20万円~50万円」の手数料ランキング
順位 証券会社名 約定代金
20万円~
30万円
30万円~
50万円
1 松井証券  ※ 0円
2 立花証券
(e支店)
187円
3 むさし証券
(トレジャー
 ネット)
192円
4 DMM.com証券 198円
4 ライブスター証券 198円
6 立花証券
(ストックハウス)
264円
7 SBI証券 275円
7 楽天証券 275円
7 auカブコム証券 250円
10 SMBC日興証券
(日興ダイレクト
 コース)
275円 440円
※ 松井証券の手数料はボックスレート(1日定額制手数料体系)だけだが、対象となる価格帯の手数料で他社と比較した。

・第1位:松井証券、合計50万円までなら使い方は自由、手数料0円で最安値
約定代金が10万円以下の場合と同様に、20万円から50万円以下の手数料ランキングでも、ボックスレート(1日定額制手数料)だけを採用する松井証券が手数料0円で第1位だ。

50万円の資金で、同日に1銘柄につき上限10万円ずつ5銘柄に分散投資しても、1日に何往復分かのデイトレードをしても、約定代金合計額が50万円以下なら手数料は0円になる。

株式投資の経験を積みたい人や、デイトレードを始めてみたい人には、松井証券の「1日50万円以下手数料0円」は大いに利用価値がある。

・第2位:立花証券(立花証券e支店)、株式取引に特化したネット取引で格安に
約定代金20万円超~50万円以下の手数料では、「立花証券e支店」が松井証券に次ぐ業界最安水準だ。「e支店」とは、立花証券が提供する2つのネット取引サービスのうちの1つ。株式の現物取引と信用取引だけに特化し、システムの内製化や提供する投資情報の厳選によって、業界最安水準の手数料を実現している。

株式の現物取引または信用取引に絞って投資したい人には、要チェックの証券会社だ。

・第3位:むさし証券(トレジャーネット)、ネット取引の手数料が安い埼玉地盤の証券会社
埼玉発祥の地場証券として長い歴史があり、合併を繰り返しながら業界の環境変化にも柔軟に対応してきた結果が、インターネット証券サービス「トレジャーネット」だ。

低コストで投資ができると評判が高く、1注文ごとの手数料コース「トレジャースタンダード」は、少額取引だけでなく、大口取引でも手数料が安いのが特徴。約定代金600万円でも税込手数料が825円と格安だ。

約定代金「50万円超~100万円以下」の手数料ランキング 株式投資にある程度慣れてくると、投資金額を50万円超まで増額することもあるだろう。また、トヨタ自動車<7203>のように株価が6,000円を超える値がさ株だと、単位株を購入するためには50万円以上必要になる。

約定代金が50万円超100万円以下になるような、まとまった投資金額の場合の取引手数料(税込)ランキングはどうなっているのだろうか。

約定代金「50万円~100万円」の手数料ランキング
順位 証券会社名 約定代金
50万円~
100万円
1 立花証券
(e支店)
341円
2 むさし証券
(トレジャーネット)
352円
3 DMM.com証券 374円
3 ライブスター証券 374円
5 GMOクリック証券 479円
6 立花証券
(ストックハウス)
517円
7 SBI証券 535円
7 楽天証券 535円
9 岡三オンライン証券 660円
10 内藤証券
(ネット取引)
754円

約定代金が50万円超~100万円以下の場合の手数料ランキングでは、松井証券を除いて約定代金が20万円超~50万円以下のランキング上位と同じような顔ぶれだ。

しかし、第5位にGMOクリック証券と立花証券(ストックハウス)、第9位に岡三オンライン証券、第10位に内藤証券(ネット取引)が入っており、ランキングはやや変動する。

トップ3には入っていないが、いずれの価格帯においても、SBI証券と楽天証券、GMOクリック証券のネット証券3社は、すべてのランキングでトップ10に入っている。3社は、少額取引あるいはそれ以上の金額の取引でも、手頃な手数料で取引できる証券会社と言える。

ランキング圏外だが、SMBC日興証券ダイレクトコース、水戸証券(水戸ネット)、東洋証券(ホームトレード)の3社は、約定代金100万円で税込手数料が880円になる。取引金額が大きくなると、総合証券のネット取引手数料のほうが割安になる傾向がある。

複数の証券口座を保有し、取引金額に応じて手数料の安い証券会社を使い分けると、コスト削減につながるだろう。

5,「顧客預かり資産」ランキングTOP10、証券会社の顧客規模が大きいのは?

客から預かった株式・債券・投資信託・現金などは「預かり資産」と呼ばれ、証券会社自体の資産とは別に管理されている。そのため預かり資産総額は、顧客規模の指標と考えることができる。

以下は、日本の証券会社の預かり資産総額ランキング(2020年3月期)である。時価総額や営業収益ランキングとの違いも確認してほしい。

証券会社の顧客預かり資産ランキングTOP10
順位 証券会社名 顧客預かり資産
1 (連)野村ホールディングス
(野村證券)
104.0兆円
2 (連)大和証券グループ本社 59.8兆円
3 (連)SMBC日興証券 54.8兆円
4 みずほ証券 42.3兆円
5 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 36.5兆円
6 (連)SBI証券(SBIハイブリッド預金含む) 12.9兆円
7 楽天証券 (2019年12月期)6.9兆円
8 東海東京証券
(提携・合弁含む)
5.7兆円
9 (連)楽天証券 4.8兆円
10 マネックス証券 3.8兆円
※上記ランキング表は、各社ホームページから顧客預かり資産を抽出して執筆者が作成した

第1位:野村證券、時価総額・営業収益ともに首位独走

時価総額と営業収益での優位性は、顧客預かり資産においても変わらず、他社を寄せ付けない。

2020年3月期決算は、新型コロナウイルス感染拡大によるマーケット急落の影響を受けて預かり資産が減少したものの、野村ブランドに対する信頼感もあってか、3月の入金預かりは前月より大幅に増加した。

近年では強固な財務基盤を維持しながら、オンラインサービスの拡充によって時代に即した営業体制を再構築している。

第2位:大和証券グループ本社、リテール部門の不振と相場環境の悪化で預かり資産は減少

個人投資家の株式や投信取引の不振に加えて、新型コロナウイルスの影響で2020年3月期は減収減益となった。2020年3月期第4四半期に株式相場の急落によってエクイティと株式投信の残高が減少し、それに伴って預かり資産も前年度比で約10%落ち込んだ。

不振のリテール部門を支えるのはおおむね好調なラップ口座であり、その販売額は今やエクイティ募集の3倍になっている。個人投資家によるオンライントレードも順調に増えており、2020年3月期の個人国内株式売買代金の8割を占めるまでになっている。

第3位:SMBC日興証券、顧客に寄り添った営業体制

創業以来100年以上にわたって「お客様本位」の経営理念を掲げ、顧客に寄り添った営業活動を行っている。幾度もの合併を経て、世の中のさまざまな変化に対応できる体制を構築したことが、営業収益や顧客預かり資産第3位という結果につながっている。

初心者が株式投資を始めやすい環境作りにも積極的。ネット取引専用コース(ダイレクトコース)の整備やネット証券並みの安い手数料設定、dポイント投資「ポイ株」の導入、サイト掲載記事から直接株式を購入できる「日興フロッギー」など、総合証券ではあるが時代や顧客のニーズにいち早く対応するフットワークの軽さが魅力だ。

6, 2020年コロナ禍の影響は証券業界にも、業界勢力図に異変あり

野村證券は長い歴史と実績に加えて、リサーチ力と営業力によって証券業界トップに君臨してきた。時価総額や業務実績のデータからも、現在でも圧倒的第1位であることがわかる。

近年はインターネットの浸透を追い風に、SBI証券が各分野で絶対的王者の野村證券を猛追していたことは周知の事実である。

2020年2月以降、雇用や経済にダメージを与えている新型コロナウイルス感染拡大の影響が、証券業界にさらなる変化をもたらした。

2020年3月期末現在、とうとう口座数でSBI証券が野村證券を抜いて第1位になったことが確認された。また、ネット証券大手の楽天証券の躍進も目覚ましい。

証券業界では、総合証券とネット証券が入り乱れて、今後、業界勢力図がどのように塗り替えられていくのか注目していく必要があるだろう。

執筆・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。

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