(本記事は、田口智隆氏の著書『おカネは、貯金に頼らずに守りなさい。』きずな出版の中から一部を抜粋・編集しています)

お金持ちが投資している金融商品とは?

富裕層
(画像=PIXTA)

投資信託はお金を増やすための「道具」

お金持ちは、お金を銀行口座ではなく、どこに置いているのか?お金を増やす「道具」として何を使っているのか?

そろそろ答えをあきらかにしましょう。

資産を増やして、「お金のストレスフリー」を実現している人は、貯金ではなく、投資をしています。

もっと具体的にいえば、「投資信託」を買っています。

私自身もそうですし、私のまわりで確実に資産を築いている人の多くは投資信託を中心に資金を運用しているのです。

投資信託とは金融商品の一種で、その名の通り「投資するお金を信じて託す」という性格の商品です。

つまり自分で投資先を選ぶのではなく、プロの投資家に運用してもらうのです。

託す相手は、投資信託の運用会社に所属している「ファンドマネジャー」と呼ばれる投資の専門家です。

投資家から集めてきたお金をひとつの大きな資金にまとめ、それをファンドマネジャーが株式や債券などに投資します。そうして運用して得た利益を投資家に分配する。これが投資信託の基本的なしくみです。

投資信託には、数えきれないほど種類があります。

日本の株式だけに投資している「株式ファンド」、日本と海外の国債だけで運用する「国債ファンド」、ブラジルの株式を中心に運用する「ブラジル株ファンド」などさまざまです。

もちろん、株式と国債がミックスされたファンドもあれば、不動産や金(ゴールド)などを組み込んだ投資信託もあります。

イメージとしては、いろいろな株や債券の入った「福袋」のようなものです。これらの福袋をすべてひっくるめて、「投資信託」と呼んでいるのです。

投資信託の重要なメリットのひとつは、貯金と違って、インフレに負けない程度に資産を増やせる、ということです。

仮に毎年2%ずつ物価が上昇しても、投資信託が2%以上の利回り(投資した金額に対する収益割合を1年当たりの平均に直した数字)を出していれば、資産の価値が減少するのを防ぐことができます。実際、利回り2%以上の投資信託はたくさんあります。

世の中にはお金を増やすための「道具」がたくさん存在しますが、お金持ちは投資信託という福袋を「道具」として活用しているのです。

個別株で資産を増やすのは至難の業

「なぜ個別の株式投資ではなく、投資信託なのか?」

こういう疑問を抱く人もいるかもしれません。

実際、お金持ちの中には、個別株への投資で資産を増やしている人もいます。

個別株とは、基本的には一企業の株式のことをいいます。

たとえば、トヨタ自動車やNTTドコモといった個別の銘柄を購入することです。株への投資というと、この個別株をイメージする人が多いかもしれません。

個別株投資には、投資信託と違って自分でコントロールができるというメリットがあります。自分がお気に入りの企業の株を自分のタイミングで売買できます。

しかし、それは裏を返せば、自分の責任で資金を運用しなければならない、ということです。

当然、個別株は株価が大きく上下します。何か不祥事が起きたり経営環境が変わったりしたとき、株式をそのままもつのか売却するのか、自分で判断しなければなりません。日々、株価だけでなくニュースなどの情報もチェックする必要があります。

たとえば2008年のリーマン・ショックや2020年の新型コロナウイルスによる株の暴落時に、どんな対応をとればよいか、投資家としての判断が求められます。

初心者であれば、日々下落する保有銘柄の株価を見て、パニック状態に陥ることは間違いありません。

毎日、株のことばかり考えていても大丈夫な生活をしているのであれば、臨機応変に対応することができるかもしれませんが、ほとんどの人が昼間は仕事をしています。株の取引をしている時間や余裕はありませんし、逆に株の値動きに気をとられたら、本業がおろそかになってしまいます。

株の初心者が個別株で資金を増やすのは、現実的ではないでしょう。

個別株の取引で資産を増やしている人は、株式投資のプロフェッショナル、もしくはセミプロのような存在です。知識や経験が豊富にあり、投資にかける時間がたっぷりあるから、リスクを避けながら資産を増やすことができます。そういう人は、お金持ちの中でもひと握りです。

株の素人が戦いを挑んでも、かないません。

投資信託は資産運用の「柱」

個別の株式投資には、分散投資がむずかしいというデメリットもあります。

分散投資とは、投資先を限定せず、複数の投資先に投資すること。ひとつの株式に集中的に投資してしまうと、その株式の値動きだけで運用資産全体が左右されてしまいます。仮に、その企業が倒産するような事態になれば、全資産を失いかねません。

個別株投資で分散しようと思えば、異なる業種、業態、企業などバランスよく投資する必要があります。

しかし、その場合、各業界や企業の動向、経済の動きなどを日々追って、研究しなければなりません。

また、個別銘柄は比較的価格が高いものが多く、それなりの資金が必要です。本気で分散投資をしようと思えば、少なくとも数百万円はかかるでしょう。

その点、投資信託は、たくさんの株や債券などにバランスよく投資できます。しかも、100円単位で購入できる投資信託もあります。これほど少額でたくさんの銘柄に投資できる金融商品はほかにありません。

投資信託が運用の「柱」だとすれば、個別銘柄は「糸」です。

「糸」はいつ切れてもおかしくありませんが、「柱」であれば少々の衝撃があっても耐えることができます。

FXや不動産投資も初心者にはハードルが高い

同じことは、個別株にかぎらず、ほかの投資手段にもいえます。

債券やFX、ビットコインなどもお金を増やすための「道具」ではありますが、バラエティに富んだ投資ができないという意味で、きわめて扱いがむずかしく、現実的ではありません。

「手っ取り早くお金を増やしたい」
「一発逆転を狙いたい」

そう考える人は、レバレッジがきくFXや値動きの大きいビットコインなどに手を出しがちですが、たいていの人は大ケガを負うことになります。

FXだけに投資していたら、為替の動きに資産が左右されることになります。為替が円高に振れるか円安に振れるかは、専門家でも見極めがむずかしいといわれています。しかも、為替は全世界で売買されていますから、世界中のプロの機関投資家もライバルになります。プロは資産を減らすことは許されませんから、それこそ人生をかけて向き合っています。

そんな弱肉強食の世界で、昨日今日FXを始めた初心者が勝ち続けることは、ほぼ不可能に近いでしょう。ビギナーズラックはあるかもしれませんが、自分の人生を左右するお金を投資する対象としては、現実的ではありません。

なかには、「株よりも投資用不動産を買ったほうがいい」と考える人もいるかもしれません。たしかに、漫然と貯金をしているよりは、建設的な発想かもしれません。

近年は不動産価格が上昇してきたこともあり、投資用マンションを購入して資産を増やしている人もいます。もしかしたら、あなたのまわりにも不動産投資をしている人もいるかもしれません。しかも、不動産は市況にあわせて価格が変動するので、インフレにも対応できるというメリットもあります。

しかし、投資用不動産を購入するには、個別株やFXに投資するよりも格段の覚悟が必要です。

そもそも取引の金額が大きい分、リスクが高くなります。銀行から融資を受ければ、多額の借金を背負うことにもなります。もし購入した物件の空室が続いたり、トラブルが発生したりすれば、資産を失うことにもなりかねません。

また、投資用不動産は海千山千の専門業者もライバルです。通常は資金が豊富で情報網がある業者が優良な物件を先に購入してしまうので、どうしても個人投資家はババを引かされがちです。

投資の素人が、将来的に利益を生み出してくれる物件を見極めることができるでしょうか。やはり、これまで貯金しかしてこなかった個人投資家が、いきなり投資用不動産に手を出すのは無謀と言わざるを得ません。

ちなみに、個人向け国債などの国内債券は元本割れすることがない安定した投資先といえますが、その分、インフレを上回る利回りを得ることができません。貯金とほぼ同じと考えていいでしょう。

投資をするくらいなら持ち家を買ったほうがいい?

「貯金がダメというなら、いっそのことマイホームを買ってしまったほうがいい」と考える人もいることでしょう。

もちろん、ライフスタイルの理想は人それぞれなので、「何よりもマイホームを購入することを優先したい」という人もいるでしょう。

そのように考えている人に対して、「絶対マイホームを買ってはいけません!」などと野暮なことはいうつもりはありません。

しかし、これだけは覚えておいてください。

ローンを組んでマイホームを購入すると、お金のストレスフリーを実現することがきわめてむずかしくなります。

たとえば、1000万円の貯金を頭金にして、4000万円の新築マンションを購入したとします。その際、残りの3000万円を銀行のローンで調達することになります。

住宅ローンはれっきとした借金ですから、何よりも返済が優先されることになります。20年、30年、場合によっては、35年にわたって、毎月返済していかなければなりません。当然、少なくない利子も負担することになります。

毎月ローンを支払っていれば当然、投資にまわす余力が少なくなります。老後資金を貯めたいと思っても、ローン返済に明け暮れるのが現実です。「お金のストレスフリー」を実現するための資金を確保するのもむずかしいでしょう。

もちろん、資産としての不動産は残ります。

しかし、4000万円の新築マンションを購入した時点で、資産としての価値は3500万円ほどに下がることになります。なぜなら、住宅価格には販売会社の販売促進費やスタッフの人件費が乗っかっているからです。

したがって、新築を購入した瞬間、中古住宅としての価値は大きく下がってしまいます。これは、お金持ちが大事にしている等価交換の原則からも外れます。

「お金のストレスフリーを実現する」という観点からいえば、新築のマイホームを購入するよりも、投資信託などに投資するほうが賢明です。

投資信託を毎月一定額購入して、利回り7%で運用すれば、およそ10年で資金は2倍になります。

住宅の頭金にする1000万円の貯金があるなら、投資信託にまわして資産運用したほうが、結果的に豊かな生活になる可能性が高いです。

いまは人生100年時代ですから、十分な資金が貯まってからマイホームを買っても遅くはありません。

あわてて20代、30代のうちに購入しても、20~30年後にはマイホームも古くなり、資産価値が大幅に下がります。将来リフォームも必要になるでしょう。家族構成や働き方も時代とともに変わっていきます。人によっては、ずっと賃貸に住むという選択のほうが正しいのかもしれません。

住宅をどうするかは生き方の問題ですから、絶対的な正解はありません。ただし、マイホーム購入を決める前に、「投資で資産を増やす」という選択肢を検討する価値はあるのではないでしょうか。

以上のような理由から、お金持ちの多くはお金を増やす「道具」として投資信託を選択しています。みなさんも、銀行の貯金を預けかえる場所としてまず検討すべきは、投資信託ということになるのです。

おカネは、貯金に頼らずに守りなさい。
田口智隆
1972年埼玉県生まれ。投資家。株式会社ファイナンシャルインディペンデンス代表取締役。 大学卒業後、学習塾の講師となるも、連日飲みに行き借金が膨らむ。 28歳のとき、父親が病に倒れたのを機に、父親が経営する保険代理店に入社し、地域ナンバーワン代理店に成長させる。 また、徹底した節約と資産運用により、自己破産寸前まで膨らんだ借金をわずか数年で完済。 その後は「収入の複線化」「コア・サテライト投資」で資産を拡大。34歳の時に独立する。 現在その経験を活かしマネー・カウンセリングを行う一方、日本全国でセミナー活動を積極的におこなっている。 著書は、『28歳貯金ゼロから考えるお金のこと』(KADOKAWA)、『11歳のバフェットが教えてくれる「経済」の授業』(フォレスト出版)、『お金が貯まらない人の悪い習慣39』(マガジンハウス)、『なぜ賢いお金持ちに「デブ」はいないのか?』(水王舎)、『即断即決』『入社1年目のお金の教科書』(きずな出版)など、累計90万部を超える。

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