(本記事は、田口智隆氏の著書『おカネは、貯金に頼らずに守りなさい。』きずな出版の中から一部を抜粋・編集しています)
「Jリート」に投資して配当金を得よう
「Jリート」は不動産の投資信託
さて、にわとりにタマゴを産んでもらうには、毎月積み立てていた投資信託を、どんな投資信託に移し替えればよいのでしょうか。
ズバリ、J‐REIT(Jリート:不動産投資信託)に再投資するのが第一の選択肢です。Jリートとは、多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品です。不動産に特化した投資信託と考えていいでしょう。
そもそもリートとは、「Real Estate Investment Trust」の略で、アメリカで生まれた投資のしくみです。日本では頭にJAPANの「J」をつけて「J-REIT」と呼んでいます。Jリートは証券取引所に上場されているので、個別株やETF(上場投資信託)と同じように市場で売買ができます。
「Jリート」の5つのメリット
「Jリート」のメリットは5つあります。簡単に見ていきましょう。
- ①複数の不動産へ分散投資できる
- Jリートの「袋」の中には、さまざまな種類の不動産が含まれています。多数の投資家から集めた巨額の資金を活用して、複数の不動産へ分散投資しているのです。当然、分散させるほど、リスクを軽減することができます。
- ②少ない金額でも購入できる
- 通常、不動産へ投資するためには、多額の資金が必要になります。しかし、Jリートであれば、都内の一等地に建つ高層ビルや巨大な商業施設、自分ではとても手が出ないような高級マンションにも投資できます。金額としては一部でも、「このビルも、あのビルも、私が投資している物件」という満足感を得られるのもメリットです。息子や娘に「あのホテルもお父さんが買っているんだぞ」と自慢できるのがうれしい、という投資家もいます。Jリートのなかには2~3万円から投資できるものも存在します。個人の投資家でも、少額から手軽に始めることができるのが魅力です。
- ③換金性が高い
- Jリートは証券取引所に上場されているため、購入や売却の注文がいつでも可能です。また、日々変動する価格をリアルタイムで知ることもできます。したがって、万が一まとまったお金が必要になったときでも、Jリートを売却して現金化することができますし、Jリートの価格が予想外に大幅に下がってしまったときは損切りすることも可能です。
- ④収益のほとんどが分配される
- これがJリートのいちばん重要なメリットです。Jリートは、利益のほとんどを投資家に分配するしくみになっています。実際の不動産に投資する場合と同様に、不動産からの収益を毎期の分配金(配当金)として受け取ることが可能なのです。この点は、株式や債券を対象にした投資信託とは大きく異なります。第4章で紹介した4つの投資信託を含め、株式や債券を中心とした投資信託の多くは、収益や分配金は再投資されます。これによって複利効果を得ることができるわけです。だから、基本的には投資家に配当金は払われません。じつは、株や債券の投資信託の中には「毎月分配型」のファンドも存在します。毎月いくらかの分配金が支払われるので、投資家はお小遣いをもらっている感覚です。そのため、人気を集めている「毎月分配型」のファンドもありますが、これらの中には、元本を取り崩して配当している、いわゆる「タコ足分配」もあります。この場合、自分が投資したお金を毎月分配金として受け取っているだけ、ということになります。結局資産は増えていないのです。その点、Jリートの場合は、投資した不動産からの賃貸料などが分配金の原資となります。だからタコ足になることなく、分配金を出すことができるのです。
- ⑤利回りの高い商品が多い
- Jリートの多くは定期的に分配金が出ます。たとえば、価格100万円のJリートが年2回、3万円ずつ分配金を出す場合、年6万円を受け取ることになります。このときの利回りは6%です。投資の世界では、一般的に利回り3%を超える商品が「高配当銘柄」といわれます。Jリートには利回り3%を超える商品がたくさん存在します。ひと昔前までは、利回りが高いものだと7~8%のJリートも存在しましたが、人気が出てきたことで利回りは下がる傾向にあります(分配金は変わらなくても、購入者が増えて基準価額が上がると、購入金額が高くなる分、利回りは下がります)。そのような状況でも、現在も5~6%を超える優良Jリートは複数存在しています。私の感覚では、いちばんのボリュームゾーンは3.5~4.5%の商品ですが、それでもほかの金融商品に比べて、はるかに利回りは高いといえます。これだけ高利回りなら、Jリートに100万円の投資をして「スマホ代を稼ぐ」ことも十分可能でしょう。
いちばんのリスクは金利上昇
疑い深い人は、「高利回りということは、リスクも高いんじゃないの?」と不安になるかもしれません。Jリートのデメリットについても触れておきましょう。
不動産に投資する商品ですから、当然、不動産市場にまつわるリスクがあります。Jリートが保有する物件の賃料収入が減ったり、大きなテナントが出ていってしまったり、保有物件そのものの価格が低下したりすることによって、価格や分配金が変動する可能性があります。
また、多くのJリートは一般投資家の投資だけでなく、金融機関から借入をして資金調達をしています。この場合、金利の上昇局面になると、銀行への返済額が増えて収益に影響が及ぶ可能性があります。当然、それは価格や分配金の変動につながります。影響度という点では、銀行の金利上昇がいちばんのリスクといえます。
実際、Jリートは日々取引されているので価格が下がることもあります。たとえば、100万円のJリートが95万円になると、一般の投資家は不安になります。
たしかに、もし1億円を投資していたら500万円分も下がっているので、あせるのはもっともです。しかし、100万円単位の投資であれば、一時的な値動きはそれほど気にする必要はないでしょう。
なぜならJリートを利用した資産運用も長期投資が基本だから。長期間、一定の分配金を得るのが目的ですから、多少の値動きに一喜一憂する必要はありません。
2020年、新型コロナウイルスの影響で、Jリートの基準価額も大幅に値下がりしましたが、長いスパンで見れば、安くJリートを購入できるチャンスともいえます。コロナウイルスで大型テナントが撤退するとなれば問題ですが、ウイルス問題がいずれ収束すれば基準価額も戻るでしょう。
「不動産バブルが弾けて利回りが下がるのではないか」と心配する人もいます。上昇を続けてきた不動産価格が将来下落することは、十分にあり得る話です。
そうなると、いちばん影響を受けるのは、個人で投資用不動産を所有している投資家です。不動産不況になると、空室が埋まらなかったり、安く買いたたかれたりすることもあるでしょう。
しかし、Jリートの場合、「袋」の中身にもよりますが、都市の一等地のビルや商業施設に投資していれば、不動産不況になっても大きな影響は受けにくい。東京駅近くにある一等地のビルのテナントが埋まらないとは考えにくいですから。
また、不動産不況になっても、物件の価格が下がる可能性はありますが、家賃はそれほど下がらないものです。その点、おもに家賃収入を収益源としているJリートは影響を受けにくいといえます。
もっといえば、不動産不況になって仮にJリートの利回りが半分になったとします。しかし、利回り6%のJリートであれば、まだ3%の利回りがあります。そういう意味では、高配当銘柄であることに変わりはありません。
利回りが3%を割ったときこそ、本当に撤退を考えるタイミングです。
総じていえば、ほかの金融商品に比べてJリートのリスクは低いといえます。長期投資を前提としているなら、あまりナーバスになる必要はありません。
それよりも重要なのは、「どのJリートを選ぶか」です。