(本記事は、田口智隆氏の著書『おカネは、貯金に頼らずに守りなさい。』きずな出版の中から一部を抜粋・編集しています)

積立投資に向いた投資信託の4つのポイント

ポイント
(画像=PIXTA)

無数にある投資信託からどれを選ぶか

では、いったいどの投資信託を選べばよいでしょうか。

いざ銀行や証券会社で積立投資用の投資信託を選ぼうとすると、その数の多さに圧倒されるかもしれません。投資信託は、さまざまな種類が発売されているので、どれを選べばよいか迷うでしょう。

もちろん、投資信託ならなんでもよい、というわけではありません。

長期の資産形成に適した投資信託と、そうでない投資信託が存在します。

みなさんも「投資信託で失敗した」という話を、まわりの人やニュースで聞いたことがあるかもしれません。実際、投資信託が元本割れして投資資金を大きく減らした、という人は少なくありません。

銀行や郵便局で「貯金を投資信託にまわして資産を増やしませんか?」と誘われるまま投資をした結果、逆に資産を減らしてしまった、というのはよくある話です。

投資信託の中には、元本割れする商品や投資家からの資金が集まらず、つぶれてしまう商品もあります。

一般論をいえば、ひと昔前まで日本の投資信託の多くは資産を増やすツールとしては不適当でした。銀行や証券会社が売買手数料を稼ぐためにごり押ししていた側面があったからです。

「老後資金をつくるために中国株ファンドを始めましょう」と一般投資家を勧誘する。中国株ファンドが値下がりしたら、「次のねらい目はブラジル株ファンドです。損を取り返しましょう」といって、また新しい投資信託をすすめる。ブラジル株ファンドも値下がりしたら、今度はロシア株、インド株ファンドを買わせる……。

そして、値下がりするたびにファンドから資金が流出するので、ファンドマネジャーの選択肢もかぎられ、ますますファンドはじり貧になっていきます。

銀行や証券会社は手数料で儲かりますが、購入した一般投資家は「投資信託は損するだけだ」という悪いイメージを抱くことになります。そうした悪評が広がり、投資信託を敬遠する人が増えたのも事実です。

しかし、手数料稼ぎの回転売買を防ぐために金融庁は「投資信託等の販売会社における顧客本位の業務運営」を指導するようになり、いい環境に変わりつつあります。

もし「投資信託に悪いイメージしかない」という人がいれば、フラットな視点で投資信託を見直してみてください。投資信託も商品や使い方によっては、資産を増やす強力なツールになることを理解していただけると思います。

では実際に、積立投資による資産形成に適した投資信託を紹介しましょう。

ポイントは、4つあります。

ポイント1 :「バランス型・インデックス型ファンド」を選ぶ

最初のポイントは「バランス型・インデックス型ファンド」を選ぶことです。

安定した値上がりが望める投資信託を選ぶときのポイントは、さまざまな種類の金融商品が入っていることです。種類が多いほうが安定した運用を期待できます。

たとえば、日本株だけで運用する投資信託の場合、日本の株式市場の調子が悪いと、その運用成績も連動して悪くなります。

中国株に特化した投資信託の場合も、中国市場の上下に大きく左右されることになります。そうなると、大きく儲かる可能性もありますが、反対に大きく損する可能性もあります。

一方、日本株式や外国株式、日本債券、外国債券などがバランスよく入っていたらどうでしょうか。株式と債券の値動きは反比例するといわれるので、株式が落ち込んでも、債券でその損失をある程度カバーできます。

また、日本の株式が不調でも、外国の株式が好調であれば、穴埋めすることが可能です。そのほか不動産や金(ゴールド)などのコモディティなど、異なる値動きをする金融商品も含まれていれば、さらに安定した運用が期待できます。

このように投資先が多岐にわたり、安定した運用が見込める投資信託をバランス型ファンドといいます。

一方、インデックス型ファンドとは、何でしょう。

インデックスとは、「指数」を意味します。指数とは簡単にいえば、どれくらい増えたり減ったりしたかを比較するときの指標となる数字で、「日経平均株価」や「TOPIX(東証株価指数)」などもインデックスのひとつです。

インデックス型ファンドとは、そうした指数と同じ値動きをするようにつくられた投資信託です。

たとえば、「日経平均インデックスファンド」という投資信託は、日経平均株価とほぼ同じ値動きをするように設計されています。日経平均株価が1年で10%値上がりすれば、その投資信託も連動して約10%資産が増えるというわけです。もちろん、日経平均株価が下がれば、同じだけ投資信託も資産が減ります。

日本株式にかぎらず、外国株式、国内債券、外国債券、不動産、金(ゴールド)などに連動されたインデックス型ファンドも存在します。

これらは指数に連動するようにつくられているので、ファンドマネジャーの力量はほぼ関係ありません。ということは、指数の通り安定したパフォーマンスを得られます。

また、あとで触れますが、インデックス型ファンドは手数料が安いことも重要なポイントです。

このように、安定したパフォーマンスを出したければ、バランス型でなおかつインデックス型の投資信託を選ぶことが重要なのです。

ポイント2 :購入手数料がゼロの商品を選ぶ

2つめは購入手数料がゼロの商品を選ぶこと。

投資信託を購入するときには、コストが発生します。

そのひとつが「購入手数料」です。

投資信託を購入するときは、投資金額の数%をその費用として販売会社に支払うのが通常です。なかには、3.5%かかる投資信託もあります。

しかし積立投資の場合は、毎月、投資信託を買い増していきます。ということは、購入手数料がかかると、毎月手数料をとられてしまいます。

もし購入手数料3.5%の投資信託を3万円ずつ購入する場合、毎回1050円も引かれてしまいます。いくら基準価額が上がっても、こんなにコストがかかれば、そのうまみは少なくなります。長期投資となれば大きな差となるので、わずかなコストでも見逃せません。

でも、安心してください。先ほど紹介したインデックス型ファンドは、購入手数料が無料のものがほとんどです。これを「ノーロード」といいます。

ポイント3 :信託報酬が1%以下の商品を選ぶ

ポイントの3つめは、信託報酬が1%以下の商品を選択することです。

投資信託を購入するときにかかるコストには、「信託報酬」もあります。

信託報酬は、投資信託を保有している間ずっとかかる維持管理費のようなものです。低いファンドで年率0.2%くらい、高いファンドで3%くらいです。これもずっとかかるコストなので、長期で積立投資をする際は、低いものを選んだほうが有利といえます。

投資信託のコストのなかにはファンドマネジャーの報酬があります。ファンドマネジャーが自分で情報収集や分析をして選んできた金融商品で運用する投資信託の場合、その分コストがかかり、購入手数料や信託報酬が高くなります。

しかし、インデックス型ファンドの場合は、指数と連動するように設計されているので、ファンドマネジャーのコストはあまりかかりません。

したがって、インデックス型ファンドは、信託報酬も低く抑えられています。具体的には、信託報酬1%以下のファンドを選ぶといいでしょう。

ポイント4 :「純資産残高」が増えていて、長期間運用されている

4つめは、「純資産残高」が増えていて、長期間運用されている商品を選ぶこと。

積立投資をする際は、投資家からお金が入り続けているかどうかも重要なポイントになります。

積立投資は数十年単位の長期での運用を基本としています。投資家が解約してどんどん資金が流出してしまう投資信託では心もとないでしょう。お金が流出し続ければ、運用がストップしてしまうおそれもあります。

長期で積立投資をしている人が多い投資信託には、毎月資金が流入してきます。資金が流入し続けていれば安定して運用できますし、何より多くの投資家に支持され、解約する人が少ないということです。悪い投資信託には、長期でお金を預けようという人のお金が入ってきません。

多くの投資家に支持されている投資信託は、株価が暴落したときや景気が悪いときに資金が流出せず、逆に流入してきます。というのも、長期投資を前提としているので、基準価額が下がったときこそ「お買い得」という発想なのです。たとえば新型コロナウイルスによる下落局面でも資金があまり流出しなかった投資信託は、ねらい目といえます。

投資資金が安定して入ってきているかどうかは、「純資産残高」を見ればわかります。

投資信託の運用総額のことで、購入する人が増えれば純資産残高も増えていきます。そのため、その投資信託が優良かどうかを見極める大切な指標といえます。

優良な投資信託かどうかは、その運用期間を見てもわかります。利益を出し続けている投資信託には、コンスタントにお金が集まってくるので、長く運用することができるというわけです。

おカネは、貯金に頼らずに守りなさい。
田口智隆
1972年埼玉県生まれ。投資家。株式会社ファイナンシャルインディペンデンス代表取締役。 大学卒業後、学習塾の講師となるも、連日飲みに行き借金が膨らむ。 28歳のとき、父親が病に倒れたのを機に、父親が経営する保険代理店に入社し、地域ナンバーワン代理店に成長させる。 また、徹底した節約と資産運用により、自己破産寸前まで膨らんだ借金をわずか数年で完済。 その後は「収入の複線化」「コア・サテライト投資」で資産を拡大。34歳の時に独立する。 現在その経験を活かしマネー・カウンセリングを行う一方、日本全国でセミナー活動を積極的におこなっている。 著書は、『28歳貯金ゼロから考えるお金のこと』(KADOKAWA)、『11歳のバフェットが教えてくれる「経済」の授業』(フォレスト出版)、『お金が貯まらない人の悪い習慣39』(マガジンハウス)、『なぜ賢いお金持ちに「デブ」はいないのか?』(水王舎)、『即断即決』『入社1年目のお金の教科書』(きずな出版)など、累計90万部を超える。

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