ここ数年、投資を始める方が増えてきていると言われていますが、世間を見渡せばまだまだ投資は「恐い」「ギャンブルだと思う」と言ったイメージをお持ちの方が多くいらっしゃいます。
確かにギャンブルのように投資をしている人もごく一部にはいますが、投資とは本来、経済成長などに自分のお金を資することであって、ギャンブルとは全く異なります。
本稿ではそんな投資に対する恐怖とどう向き合っていけば良いのか解説していきます。

「恐い」=「リスク」

投資の「恐い」はコントロールできる
(画像=taa2/stock.adobe.com)

多くの方が抱いている投資への恐怖心というのは、ずばりリスクについてです。
リスクと聞くと、「危ない」といったイメージがあるかと思いますが、実はリスクの本質とは危険ではなく、「結果を予測できる度合いや、予想通りにいかない可能性」の事をリスクと言います。
投資への恐怖心を無くすためにはこのリスクについてきちんと理解する必要があります。

誰しもがリスクと共に生きている。

上述した通り、リスクとは予想通りにいかない可能性などの事を言いますが、実は、投資以外でも私たちは普段常にリスクを負いながら生活をしています。

どういうことか?
身近な1日の生活を例に説明しますと、

1.朝、奥さんと子供に見送られて、お父さんが「行ってきます」と会社に出発。

⇒この時点で既にリスクを負っています。家の外に出れば、つまずいてこけたり、車にはねられてケガをするリスクがありますし、急に雨が降って濡れてしまう等、膨大な数のリスクを負う事になります。

2.会社に到着し、社長に呼び出され、普段の業務が評価され昇進した。

⇒これもリスクです。なぜか?朝出発した時には昇進は予測できていなかったからです。また仕事を頑張るという事もひとつリスクです。なぜなら頑張ったからといって評価が上がらなかったり、給料が上がらない可能性もあるからです。

3.その後昇進のお祝いのため仕事帰りに仲間と飲みに行き、帰宅。

⇒これもリスクです。飲みに行くことによって物を忘れてしまったり、飲み過ぎて次の日に疲れが残ったり、奥さんと子供が先に寝てしまってコミュニケーションが取れないリスクがあります。

4.リスクを恐れて家に引きこもり布団にくるまって動かない

⇒これはノーリスク?と思いきやリスクを負っています。引きこもって動かなければ、お金を稼げないリスクだったり、運動しないことによって健康面を害したり、奥さんに嫌われたり、かなりのリスクを負っています。

つまり我々人間は、常にリスクと共に生きているという事です。リスクから解放されることはありません。しかし我々はそんな普段のリスクを危険だとは感じていません。

なぜなのか?それはリスクをコントロールしているからです。

リスクはコントロールすれば恐くない

上記の例で説明すると、

1.の会社に向けて出発した時は、転ばないようによそ見せずに歩いたり、車にはねられないように歩道を歩いたり、きちんと天気予報を見て、雨が降りそうだったら傘を持って行くことによってリスクをコントロールする事によって恐怖は感じなくなりますし、

2.については、ちゃんと頑張りが評価される会社なのか事前に調査しておく事や、周りに評価されなくても努力自体は自分の力になりますので、今後の仕事に生きるだろうと考える事によってリスクをコントロールできますし、

3.については、物を忘れないようにチェックしたり、飲み過ぎないように早めに帰る事を心がけることによってリスクをコントロールできます。

というような形で、実は我々は普段の生活の中で膨大な数のリスクを負いながら生活をしていますが、そのリスクを無意識の中でコントロールしているからこそ、それを恐怖と感じていないだけ、という事が分かって頂けたかと思います。

投資の世界も同じようにリスクをコントロールすれば、朝から会社に行くように、リスクに対しての恐怖心は払拭することができます。

投資におけるリスクとは変動幅のこと

それでは投資においてコントロールすべきリスクとはどのようなものがあるのか、代表的なもの3つとコントロール方法をご紹介致します。

1.価格変動リスク

一つ目は価格変動リスクです。あらゆる投資商品は、その価格が日本円に対して変動します。これが価格変動リスクと言います。多くの人が投資に対して恐怖を感じているのはこの価格変動リスクではないでしょうか。
しかしこの価格変動リスク、もちろん下がるリスクもありますが上がるリスクもあります。下がる事を価格変動リスクと言うのではなく、上昇値と下落値の「幅」の事を価格変動リスクと言います。
一般的に高い上昇値(リターン)の商品ほど、この変動幅は大きくなります。

このリスクも、もちろんコントロールが可能で、期待リターンをどの程度で設定するのかでまずコントロールが可能です。この変動幅は標準偏差といい、期待リターンに対しての上下の変動幅が商品や投資セグメント事に分析されており、自分が負っても大丈夫な期待リターンに対する標準偏差を調べておくことでコントロールが可能です。

また、投資期間を長く取ればとるほど、その幅はマイナスに触れなくなってきますので、長期運用が可能な方であれば高いリターンに対して下落リスクを抑えることが可能です。

2.為替リスク

金融商品は大変便利になってきており、誰しもが手軽に国外の株や債券、REIT(不動産投資信託)などに投資することが可能となっています。日本以外に分散する事によって、より安定したリターンを期待する事が出来ますが、その反面為替というリスクを負う事になります。
為替リスクとは、日本通貨と外国通貨との価格の変動の事で、これは各国の経済状況や政治的な政策によって日々変動しています。

こちらも通貨同士の変動幅が大きい新興国への投資を少なくすることや、手数料はかかりますが為替ヘッジと言う仕組みが組み込まれた商品に投資する事でリスクをコントロールできます。

3.インフレリスク

経済が成長すると一般的には物価が上がります。物価が上がる事により、通貨の価値が下がる事になりますが、これがインフレリスクです。インフレリスクが最も大きい金融資産は当然ながら現金、次いで預金・貯金です。

前提として、この資本主義経済の中、世界各国の政府や企業は利益を出し、成長するために日々努力をして一生懸命働いています。つまり経済が成長する事を前提として今の世の中は成り立っています。この先経済は全世界的に衰退し続けると信じている人は少ないかと思います。

日本ではこのインフレを、年率2%として目標を掲げていますね。
つまり物価を毎年2%以上、上げていく事が目標なわけですから、2%以上で運用しないとお金の価値が下がっていくという事です。

リスクを恐れて預金しか持っていないという方、非常に多いですが、実はノーリスクに見えてこのインフレリスクを負っているという事になります。
インフレリスクは適切に金融資産や不動産などに投資する事によってコントロールすることができます。

リスクコントロールの王道は長期・分散・積立投資

上記のようなリスクをコントロールする方法として、金融庁も推奨しているのがこの長期・分散・積立投資になります。

毎月一定金額を、コツコツ投資信託などに長期で積立てていく、という手法になります。
長期で積立てることによって、価格変動リスクの幅が小さくなりますし、様々な国や企業に分散することによって、世界の経済成長の波に乗ることができますし、毎月積み立てて投資することにより時間分散が図られてリスクとリターンを平準化できます。(ドルコスト平均法)

しかも一度設定してしまえば、しばらくは放置で大丈夫ですので初心者にもおすすめです。

まとめ

人は誰しも知らないものには恐怖を感じますし、人間の性質上、今の自分から変化する事を恐れてしまいます。
さらに日本では金融教育が行き届いていない事からそれが顕著に現れて資産の内、預金の比率が先進国の中でトップクラスに高くなってしまっています。

この先の少子高齢化や人口減少、年金財源の不足などに備えて資産形成は誰しもが取り組むべき課題となってきます。リスクや変化を恐れず、勉強してそれらを克服し、是非素晴らしく面白い投資に取り組んで欲しいなと思います。(提供:THE OWNER