企業と社外人材がよりスムーズにつながれる仕組みを
――ランサーに企業が仕事を依頼した事例を教えていただけますか。
【秋好】当社の例で恐縮ですが、お問い合わせをいただいた方にコールバックして説明をする、10人のインサイドセールスのチームを今年1月に立ち上げました。社員は1人で、10日間ほど募集をかけ、主婦を中心にランサーの方々に集まっていただきました。2~3週間で教育をして、2月から本格稼働を始めています。10人を新規採用するとなると、当社の規模では1年かけても難しかったかもしれません。
――〔株〕エドウインは、ECの仕事をランサーに依頼していると聞きました。
【秋好】数年前から、フリーランスのWEBデザイナーの方がお手伝いをされています。新型コロナウイルスの影響でリモート勤務になったということですが、それ以前はオフィスに常駐して働いていました。コストを抑えながら、高クオリティなものを制作するために、「Lancers Agent」という当社のサービスを使っていただき、最適なランサーを見つけていただきました。
――コロナ禍によって、企業がランサーに仕事を依頼する理由に変化はありましたか?
【秋好】「本当は社員を雇いたいのだけれども、それができないから」という理由でランサーに仕事を依頼するケースもあるのですが、リモートワークを経験したことで、「優秀な人であれば、社員であっても、社外の人材であっても、関係ない」と考える企業が増えているように感じます。先進的な企業には、優秀な人を、日本中、あるいは世界中からすぐに見つけて仕事をしてもらう手段として、当社のサービスを捉えていただいています。1~2年後には、東京のオフィスに出社する社員だけで行なうビジネスは競争力が低くなってしまっているかもしれません。
――リモートワークだと、社員でも、社外の人でも、一緒に仕事を進めるうえで、あまり違いがなさそうですね。
【秋好】ないですね。「フリーランスは社員のように頑張ってくれない」「セキュリティに不安がある」といった誤解も、実際に仕事を一緒にしてみることによって、解けてきています。
ただ、社外の人材の評価をどうするのか、どうモチベートするのか、といった点で苦労される企業が多いのも確かです。そうしたことも含め、フリーランスをオンラインで集めてプロジェクトを組むノウハウを、今から蓄積していただくのがいいと思います。
――新型コロナウイルスの流行が収束しても、リモートワークは続く?
【秋好】全員が在宅勤務をしたり、全員が出社したりするのではなく、両方の良いところを組み合わせることになると思います。
――今後の御社の取り組みとしては、どのようなことを考えていますか?
【秋好】今までやってきた事業も伸びていますが、それだけでは応えられないニーズも多くありますから、新たなサービスも検討しています。
企業に対しては、例えば、もっと簡単に社外の人材とコラボレーションできるサービスを考えています。フリーランスに仕事を依頼するには業務委託契約を結ばなくてはなりませんし、納品書のやり取りや源泉徴収など、業務が多く発生します。そうした手間を省く、一種のHRテックのサービスです。
また、今年5月には、ランサーの活用データをもとに、それぞれの企業に合ったランサーを「バーチャル社員」として登録しておき、人材の調達から契約、報酬の支払い、またパフォーマンスを可視化する機能までをワンストップで提供する「Lancers Enterprise」というサービスを始めています。
ランサーに対しても、仕事のマッチングだけでなく、確定申告のサポートや賃貸保証、クレジットカードなどの与信、福利厚生などのサービスを提供する「Freelance Basics」というサービスを提供しています。
7月3日に政府の未来投資会議で示された成長戦略実行計画案でも、兼業・副業やフリーランスの環境整備が最初に掲げられています。今後も、兼業・副業やフリーランスの方々をサポートをするサービスを充実させていきます。
秋好陽介(ランサーズCEO)
(『THE21オンライン』2020年07月21日 公開)
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