投資信託を取引できる金融機関には証券会社や銀行などがあるが、銀行で投資信託を取引するメリット・デメリットは何だろうか。投資信託を取引する銀行を決める際は、店舗やネットバンキングの利用しやすさや、投資信託の取扱数の銀行ランキングも参考になるだろう。

1.投資信託を銀行で取引するメリット・デメリット

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(画像=88studio/stock.adobe.com)

投資信託とは、投資家から集めた資金を運用の専門家が株式や債券などに投資し、運用する金融商品のことだ。投資家は、投資額に応じて運用成果を得ることができる。

投資信託を銀行で取引するメリット

銀行は、ほとんどの人が利用する金融機関だ。「証券会社よりも、銀行のほうがなじみがある」という人が多いだろう。普段から利用している銀行での投資信託の取引は安心感があり、特に投資初心者にとっては心理面でメリットになるだろう。

銀行で投資信託を取引するためには投資信託口座が必要になるが、口座開設や取引については身近な銀行でサポートを受けられる。普段利用している銀行口座から資金を移動せずに投資信託を購入できる点もメリットと言えるだろう。

投資信託を銀行で取引するデメリット

銀行が取り扱う投資信託の数は、証券会社に比べると少ない傾向がある。また銀行は、投資についての情報が証券会社に比べて見劣りすることがある。

ネット証券ではノーロード(購入時手数料無料)の投資信託が一般的だが、多くの銀行ではノーロードの投資信託は一部であり、購入時に手数料がかかるものが多い。

2.銀行10行の投資信託取扱数ランキング

投資信託を取引する銀行を決める際、投資信託の取扱数は重要なポイントになる。主な対面銀行とネット銀行を対象にした、投資信託の取扱数ランキングは以下のとおり。なお、このランキングは投資信託の仲介のみを行っている銀行や、ホームページの投資信託の情報が不十分な銀行を除外している。

銀行の投資信託の取扱数ランキングTOP10

(※データは2020年8月12日時点、あおぞら銀行とソニー銀行は2020年8月14日時点)

順位 銀行名 投資信託 取扱数
1位 三菱UFJ銀行 469
2位 ジャパンネット銀行 419
3位 三菱UFJ信託銀行 333
4位 イオン銀行 318
5位 三井住友信託銀行 255
6位 みずほ銀行 254
7位 ソニー銀行 242
8位 新生銀行 231
9位 三井住友銀行 199
10位 あおぞら銀行 140
※各銀行のホームページより筆者作成

これらの銀行をランキング順に紹介しよう。基準価額の動向などは、2020年8月14日時点の内容である。

投資信託取扱数ランキング1位……三菱UFJ銀行

三菱UFJ銀行が取り扱う投資信託469本のうち、購入時手数料無料のノーロード投信は103本。ホームページのファンド検索が使いやすく、購入時最大手数料や信託報酬などの様々な条件で投資信託を絞り込める。

三菱UFJ銀行で売れている投資信託の傾向を確認してみよう。2020年7月の月間投資信託販売金額ランキングTOP3は以下とおりだ。

・三菱UFJ銀行の投資信託販売金額ランキングTOP3(2020年7月)

順位 ファンド名 運用会社 投資対象 信託報酬
(税込)
1位 eMAXIS 日経225インデックス 三菱UFJ国際 国内株式 0.44%
以内
2位 ピクテ・マルチアセット・
アロケーション・ファンド
(愛称:クアトロ)
ピクテ投信投資顧問 資産複合 最大2%
程度
3位 東京海上・円資産バランスファンド
(毎月決算型)(愛称:円奏会)
東京海上アセット
マネジメント
資産複合 0.924%
※三菱UFJ銀行ホームページより筆者作成

1位のeMAXIS 日経225インデックスは、日経平均株価との連動を目指すファンドだ。2位のクワトロは、世界の株式・債券やデリバティブ取引などを行うアクティブ・ファンドである。

3位には、国内の債券・株式・不動産投資信託(REIT)に分散投資をするファンドがランクインした。このファンドは、基準価額の変動リスクが大きくなると資産配分比率を変更する運用を行う。

投資信託取扱数ランキング2位……ジャパンネット銀行

ジャパンネット銀行では、2020年2月3日よりすべてのファンドの購入時手数料が無料(ノーロード)になった。投資信託の積立購入は、ワンコイン(500円)から始められる。

・ジャパンネット銀行の投資信託販売金額ランキングTOP3(2020年7月)

順位 ファンド名 運用会社 投資対象 信託報酬
(税込)
1位 楽天 日本株4.3倍ブル 楽天投信投資顧問 国内株式 1.243%
2位 楽天 日本株3.8倍ベア 楽天投信投資顧問 国内株式 1.243%
3位 楽天 日本株トリプル・ベアIV 楽天投信投資顧問 国内株式 1.023%
※ジャパンネット銀行ホームページより筆者作成

7月の販売金額ランキングTOP3はすべて国内株式のレバレッジ型の投資信託で、いずれも短期取引に適したファンドである。

日本株4.3倍ブルは日本株の4.3倍の値動きを、日本株3.8倍ベアは日本株のマイナス3.8倍の値動きを、日本株トリプル・ベアIVは日本株のマイナス3倍の値動きを目指すファンドだ。

投資信託取扱数ランキング3位……三菱UFJ信託銀行

三菱UFJ信託銀行では、投資信託333本のうち51本が購入時手数料無料(ノーロード)だ。2020年4月より、来店して円定期預金と投資信託を100万円以上同時に申し込むと、預金金利が優遇される「投資信託セットプラン」を実施している。

・三菱UFJ信託銀行投資信託販売金額ランキングTOP3(2020年7月)

順位 ファンド名 運用会社 投資対象 信託報酬
(税込)
1位 シュローダー先進国好利回り
CBファンド2020-07(限定追加型)
シュローダー 国内外債券 0.968%
2位 netWIN GSテクノロジー株式
ファンドBコース(為替ヘッジなし)
ゴールドマン 米国株式 2.09%
3位 ベイリー・ギフォード
インパクト投資ファンド
(愛称:ポジティブ・チェンジ)
三菱UFJ国際 国内外株式 1.4630%
※三菱UFJ信託銀行ホームページより筆者作成

1位のシュローダーのファンドは限定追加型であり、購入申込期間は終了している。2位のゴールドマンのファンドは、米国のテクノロジー企業に投資するアクティブ・ファンドだ。

3位のポジション・チェンジは、平等な社会・教育の実現や環境・資源の保護などの社会的インパクトをもたらす事業を行う世界の企業に投資するアクティブ・ファンドである。

投資信託取扱数ランキング4位……イオン銀行

イオン銀行では、投資信託318本のうち67本が購入時手数料無料(ノーロード)だ。ホームページには「かんたんファンド選び」など、初心者でも投資信託を選びやすい情報を掲載している。

・イオン銀行の投資信託流出入金額ランキングTOP3(2020年7月)

順位 ファンド名 運用会社 投資対象 信託報酬
(税込)
1位 投資のソムリエ アセットマネジメントOne 資産複合 1.54%
2位 iFree8資産バランス 大和アセットマネジメント 資産複合 0.24%
3位 ニッセイ グローバル好配当
株式プラス(毎月決算型)
ニッセイアセットマネジメント 海外株式 1.73%
※イオン銀行ホームページより筆者作成

7月の投資信託流出入金額ランキングには、バランス型のアクティブ・ファンドである投資のソムリエと、バランス型のインデックス・ファンドであるiFree8資産バランスがランクインした。

3位のニッセイ グローバル好配当株式プラス(毎月決算型)は、毎月分配金が支払われるために基準価額が5年前に比べて約7分の1になっているのが気になるところだ。

投資信託取扱数ランキング5位……三井住友信託銀行

三井住友信託銀行では、投資信託255本のうち85本が購入時手数料無料(ノーロード)だ。積立投資を検討している人に役立つ様々な情報を「つみたて・とうしの入口」としてホームページで提供している。

・三井住友信託銀行の投資信託販売金額ランキングTOP3(2020年7月)

順位 ファンド名 運用会社 投資対象 信託報酬
(税込)
1位 次世代通信関連 世界株式戦略ファンド
(愛称:THE 5G)
三井住友トラスト・
アセットマネジメント
国内外株式 1.188%
2位 SMT 日経225インデックス・オープン 三井住友トラスト・
アセットマネジメント
国内株式 0.407%
3位 J-REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型) 三井住友トラスト・
アセットマネジメント
国内REIT 1.1%
※三井住友信託銀行ホームページより筆者作成

1位のTHE 5Gは、世界の次世代通信5G関連企業の株式に投資するアクティブ・ファンドで、2位は日経平均株価との連動を目指すインデックス・ファンドだ。

3位はJ-REIT(日本の取引所に上場しているREIT)に投資するファンドで、毎月分配金が支払われる。

投資信託取扱数ランキング6位……みずほ銀行

みずほ銀行の投資信託254本のうち、購入時手数料無料(ノーロード)は36本。投資初心者でも簡単に利用できるロボアドバイザー「SMART FOLIO」が資産運用をサポートしてくれる。

・みずほ銀行の投資信託販売金額ランキングTOP3(2020年7月)

順位 ファンド名 運用会社 投資対象 信託報酬
(税込)
1位 グローバルESGハイクオリティ
成長株式ファンド(為替ヘッジなし)
(愛称:未来の世界(ESG))
アセットマネジメントOne 国内外株式 1.848%
2位 投資のソムリエ アセットマネジメントOne 資産複合 1.54%
3位 グローバル・ハイクオリティ
成長株式ファンド(為替ヘッジなし)
(愛称:未来の世界)
アセットマネジメントOne 国内外株式 1.87%
※みずほ銀行ホームページより筆者作成

7月の投資信託販売金額ランキングには、3つのアクティブ・ファンドがランクインした。未来の世界(ESG)は7月に運用を開始した新しいファンドである。

投資のソムリエと未来の世界は、新型コロナウイルス前の水準を上回る基準価額で推移している。

投資信託取扱数ランキング7位……ソニー銀行

ソニー銀行では、投資信託242本のすべてが購入時手数料無料(ノーロード)だ。初めてのファンド選びに便利な「かんたんファンド・ナビゲーター」は、いくつかの質問に答えるだけで該当する投資信託を選んでくれる。

・ソニー銀行投資信託販売金額ランキングTOP3(2020年7月)

順位 ファンド名 運用会社 投資対象 信託報酬
(税込)
1位 楽天 日本株トリプル・ベアIV 楽天投信
投資顧問
国内株式 1.023%
2位 楽天 日本株4.3倍ブル 楽天投信
投資顧問
国内株式 1.243%
3位 楽天 日本株3.8倍ベア 楽天投信
投資顧問
国内株式 1.243%
※ソニー銀行ホームページより筆者作成

2020年7月の販売金額ランキングTOP3では、順位は違うもののジャパンネット銀行と同じレバレッジ型の投資信託3本がランクインした。

レバレッジ型はレンジ相場などで基準価額が上下を繰り返すと減価するため、その特性を理解した上で取引を行いたい。

投資信託取扱数ランキング8位……新生銀行

新生銀行の投資信託231本のうち、購入時手数料無料(ノーロード)は55本。ホームページのファンド詳細ページは非常に分かりやすく、動画などで投資を解説する「資産運用のキホン」を提供しており、投資初心者でも利用しやすい銀行と言える。

・新生銀行投資信託販売金額ランキングTOP3(2020年7月)

順位 ファンド名 運用会社 投資対象 信託報酬
(税込)
1位 野村インデックスファンド・日経225
(愛称:Funds-i 日経225)
野村アセット
マネジメント
国内株式 0.44%
2位 楽天日本株4.3倍ブル 楽天投信投
資顧問
国内株式 1.243%
3位 SBI 日本株3.7ベアIII SBIアセット
マネジメント
国内株式 0.913%
※新生銀行ホームページより筆者作成

1位のFunds-i 日経225は、日経平均株価との連動を目指すインデックス・ファンドだ。

2位と3位は、ともにレバレッジ型である。楽天日本株4.3倍ブルは日本の株式市場の約4.3倍の値動きを、SBI 日本株3.7ベアIIIは日本の株式市場のマイナス3.7倍の値動きを目指すファンドだ。

投資信託取扱数ランキング9位……三井住友銀行

三井住友銀行の投資信託199本のうち、購入時手数料無料(ノーロード)は41本。「学べる金融講座」では、全国の支店で投資を無料で学ぶことができる。

・三井住友銀行投資信託販売金額ランキングTOP3(2020年7月)

順位 ファンド名 運用会社 投資対象 信託報酬
(税込)
1位 HSBCグローバル・ターゲット
利回り債券ファンド2020-07
(限定追加型)
HSBC投信 国内外債券 0.968%
2位 ダブル・ブレイン 野村アセット
マネジメント
資産複合 2.013%
程度
3位 三井住友・225オープン 三井住友DS
アセットマネジメント
国内株式 0.66%
※三井住友銀行ホームページより筆者作成

7月の投資信託販売金額ランキングTOP3の1位は、購入期間などが限定される限定追加型ファンドである。

2位のダブル・ブレインは絶対収益追求型という特殊なファンドであり、3位の三井住友・225オープンは日経平均株価のインデックス・ファンドだ。

投資信託取扱数ランキング10位……あおぞら銀行

あおぞら銀行の投資信託140本のうち、購入時手数料無料(ノーロード)は22本。あおぞら銀行BANK支店でのネットバンキングでは、業界No.1の普通預金金利0.2%を提供している。

・あおぞら銀行投資信託販売金額ランキングTOP3(2020年7月)

順位 ファンド名 運用会社 投資対象 信託報酬
(税込)
1位 あおぞら・新グローバル・
コア・ファンド
(限定追加型)2020-Ⅰ
(愛称:十年十色01)
あおぞら投信 資産複合 1.405%
2位 ピクテ・グローバル・
インカム株式ファンド
(毎月分配型)
ピクテ投信
投資顧問
海外株式 1.81%
3位 ダイワ・US-REIT・オープン
(毎月決算型)Bコース
(為替ヘッジなし)
大和アセット
マネジメント
海外REIT 1.672%
※あおぞら銀行ホームページより筆者作成

1位の十年十色01は購入期間が限定される限定追加型で、2020年5月に運用を開始したファンドだ。

2位のピクテのファンドは、世界の高配当利回りの電力・ガス、水道・通信などのインフラ系企業に投資する。3位は、米国のREIT(不動産投資信託)に投資するファンドだ。

2位と3位は毎月分配型であり、分配金支払いのために基準価額が減少傾向にある。

3.投資信託を銀行で取引する場合でも銘柄選定は自分で行うべき

行きつけの銀行があれば、そこで投資信託を取引してもいいだろう。ただし、銀行員から購入時手数料などのコストが高い投資信託をすすめられることがあるので、注意してほしい。

コストが高くても、それを超える運用成績を上げてくれればいいのだが、高いコストが利益を圧迫してしまうこともある。

銀行員からのアドバイスを参考にするのはいいが、投資信託はコストやリスクなどを正しく把握した上で自らを選ぶようにしたい。

執筆・松本雄一(セキュリティ・金融アドバイザー)
外資系コンピューター会社にてカスタマーサポート・開発・セキュリティ対策などを経験後に独立。自らの投資経験をもとに株式や投資信託などの投資情報を発信している。興味のある分野はフィンテックや新しい金融商品など。

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