有利に資産形成ができる「つみたてNISA」が人気です。しかし、気をつけないと思わぬところで損をしてしまうこともあります。

本記事では、つみたてNISAを利用する上で気をつけたい14の落とし穴を紹介します。対策までしっかり解説しますので、まだつみたてNISAを利用していない方や、すでに利用している方はぜひ参考にしてください。

つみたてNISA 14の落とし穴一覧

つみたてNISA,落とし穴,対策
(画像=PIXTA)

つみたてNISAには、以下の「14の落とし穴」があります。

【投資の自由度の落とし穴】
・①商品の選択肢が少ない
・②投資タイミングを選べない
・③投資枠は繰越や再利用ができない
・④金融機関は変更できるが、積み立てた投資信託は移せない

【リスク・リターンの落とし穴】
・⑤リスクがある
・⑥一括投資よりリターンが下がる場合がある
・⑦積立額やリスクを下げすぎると目標を達成できない
・⑧すぐに止めてしまうと複利効果が弱まる

【税金の落とし穴】
・⑨損益通算ができない
・⑩実質的な損失でも課税される可能性がある
・⑪ロールオーバーができない

【コストの落とし穴】
・⑫ETFは売買手数料がかかる
・⑬信託報酬がかかる
・⑭投資信託の見えないコストがかかる

それぞれの詳細と対策について、詳しく見ていきましょう。

つみたてNISA【投資の自由度】の落とし穴 解説と対策

商品の選択肢が少ない→選択肢が比較的多いネット証券を選ぶ

つみたてNISAで投資できるのは、「金融庁が認可した投資信託」だけです。2020年6月29日時点で189銘柄ありますが、金融機関によっては選択肢が非常に少ないところもあります。

ネット系の証券会社は取り扱いが多い傾向があるので、多くの銘柄の中から選びたい方はネット証券で口座を開設するといいでしょう。

銘柄の選択肢が多いおすすめのネット証券は、以下のとおりです。

  つみたてNISA 
取扱銘柄数
※2020年9月14日時点
SBI証券 163本
楽天証券 159本
マネックス証券 151本

投資タイミングを選べない→積立コースやボーナス設定である程度コンロールできる

つみたてNISAでは、「毎月1回」のように定期的に一定額を買う「積立投資」に限定されており、自分の好きなタイミングで投資することはできません。

金融機関によっては「毎月」以外に「毎週」や「毎日」といった積立コースや、特定の月だけ増額する「ボーナス設定」も用意されています。投資するタイミングを完全に選ぶことはできませんが、これらを利用すればある程度コントロールすることはできます。

投資枠は繰越や再利用ができない→長期運用ができる銘柄を選ぶ

つみたてNISAでは投資枠が用意されており、年間40万円まで投資することができます。ただし、投資枠の繰越や再利用はできません。ある年に投資枠をすべて使わなかったとしても、次の年は40万円までしか投資できません。

投資枠は、商品を売却しても復活しません。途中で売却しないで済むように、長期運用ができる銘柄を選びましょう。長期運用できる銘柄は、後述するリスクやコストの落とし穴を参考にしてください。

金融機関は変更できるが、積み立てた投資信託は移せない→最初の金融機関選びが大切

つみたてNISAでは金融機関を変更して、新たに投資することができます。ただし、前の金融機関で積み立てた商品は、移すことができません。

したがって、最初の金融機関選びが重要と言えます。商品の取扱数やポイント還元などを確認した上で、金融機関を選びましょう。

つみたてNISA【リスク・リターン】の落とし穴 解説と対策

次は、リスクとリターンに関する落とし穴をチェックしましょう。

リスクがある→事前に大まかなリスクをチェック

つみたてNISAで買える投資信託にはリスクがあり、損をする可能性があります。リスクを完全になくすことはできませんが、事前にチェックして過度なリスクを取らないようにしましょう。

投資信託のリスクの例
価格変動リスク 投資対象の価格が変動するリスク
例)株価変動リスク、債券価格変動リスク
為替リスク 海外に投資する場合、現地通貨の価格が変動するリスク
基本的に円高=損失、円安=利益
信用リスク 株式や債券などの発行体(企業や政府)の財政難によって経営破綻してしまうリスク

一括投資よりリターンが下がる場合がある→損失が小さくなる場合もある

つみたてNISAは「積立投資」に限定されていますが、値動きによっては最初にまとまった資金を投資する「一括投資」のほうがリターンは大きくなります。

ただし投資した商品が値下がりした場合は、積立投資のほうが損失は小さくなります。このように、一括投資と積立投資にはメリットとデメリットがあるため、どちらが優れているかは一概に言えません。

積立額やリスクを下げすぎると目標を達成できない→達成に必要な積立額とリターンを知る

つみたてNISAは少額かつ低リスクで始めることができますが、あまりに消極的な運用をすると目標達成が難しくなってしまいます。

目標を決めたら、目標達成に必要な積立額とリターンを把握しましょう。

参考)20年間積み立てた場合いくらになるか
  1年あたりのリターン
1% 3% 5%
毎月の積立金額 1万円 264.2万円 322.4万円 396.8万円
2万円 528.5万円 644.9万円 793.6万円
3万円 792.7万円 967.3万円 1,190.4万円

すぐに止めてしまうと複利効果が弱まる→できるだけ長く続ける

つみたてNISAでは購入した金融商品を自由に売却できますが、すぐに売却してしまうと「複利効果」が弱まり、運用効率が下がってしまいます。

複利効果は運用を長く続けるほど効果が高まるので、できるだけ長く運用するようにしましょう。

つみたてNISA【税金】の落とし穴 解説と対策

損益通算ができない→損しにくい低リスク型の銘柄を選ぶ

つみたてNISAでは「損益通算」ができないため、つみたてNISA口座で損失が出ても節税メリットがありません。

ポイントは、「つみたてNISAで損をしない」ことです。「絶対に損をしない」ことは難しいですが、リスクが低い銘柄を選ぶと損をする確率は減ります。

「債券」の比率が高い銘柄は、リスクが低い傾向があります。つみたてNISAでおすすめの低リスクの投資信託を3つご紹介します。

つみたてNISA対象銘柄の内、債券比率が高いおすすめ低リスク投資信託
投資信託の名前 資産の比率 1年リターン
(2020年7月末時点)
信託報酬
たわらノーロード 最適化バランス(保守型) 債券:約95%
株式:約5%
+1.05% 0.55%
DCニッセイワールドセレクトファンド(安定型) 債券:約90%
株式:約10%
+1.20% 0.165%
auスマートベーシック(安定型) 債券:80%
株式:20%
+0.5% 0.385%

実質的な損失でも課税される可能性がある→値上がり期待できるなら運用継続

つみたてNISAでは20年間の非課税期間がありますが、非課税期間が終了したとき、通常の口座へ商品を移して運用を継続することもできます。

通常の口座で運用を継続する場合、通常の口座へ移したときの時価が買値として登録され、その後の利益は課税されます。つまり、当初の買値で計算すれば損失でも、税金が掛かる可能性があるのです。

参考)通常の口座へ移したときの税金計算の例
当初の買値 通常の口座へ
移したときの時価
売却価格 本来の利益 課税上の利益
1万円 0.5万円 1万円  ±0 +0.5万円
【解説】
1万円で買って1万円で売っているので、本来の利益は0
しかし、通常の口座へ移したときの時価(0.5万円)よりは値上がりしているので課税される

ただし、「課税されるなら運用を継続しない」と判断するのは早計です。今後値上がりするなら、税金面で不利になっても資産が増えることに変わりありません。税金だけを考えるのではなく、今後値上がりが見込めるかどうかを冷静に判断しましょう。

ロールオーバーができない→終了は20年後 新たな環境に合わせ切り替えるのも大切

「一般NISA」では非課税期間が終了した後、あらためて非課税で運用できる「ロールオーバー」ができますが、つみたてNISAではロールオーバーができません。

つみたてNISAの非課税期間が終了するのは20年後です。その時は投資環境が変わっている可能性もあるので、そのまま同じ運用を続けるのではなく、運用方針を新たな環境に合わせることも検討すべきでしょう。

つみたてNISA【コスト】の落とし穴 解説と対策

ETFは売買手数料がかかる→通常の投資信託を選択する

つみたてNISAでは「ETF(上場投資信託)」に投資することもできますが、売買手数料がかかります。つみたてNISAで通常の投資信託に投資する場合は販売手数料がかからないので、手数料を抑えたい場合は通常の投資信託を選びましょう。

信託報酬がかかる→信託報酬が安いインデックス投信を選ぶ

投資信託には「信託報酬」という、保有しているだけでかかるコストがあります。

つみたてNISAでは、どの銘柄を選んでも信託報酬は一定水準以下ですが、中でも「インデックスファンド」は安い傾向があります。信託報酬が低い銘柄で運用したい場合は、インデックスファンドから選びましょう。

投資信託の見えないコストがかかる→事前に運用報告書をチェック

投資信託のコストは、信託報酬だけではありません。事前に判明しているコスト以外に、投資信託が商品を売買する際の手数料など、事前にはわからないコストが発生することがあります。

これらを事前に予測することはできませんが、過去の分は「運用報告書」の「1万口あたりの費用明細」で確認できるので参考にしましょう。

つみたてNISAの概要

これから投資を始める方のために、つみたてNISAの概要をまとめました。

非課税期間 20年間
投資できる商品 金融庁の認可を受けた投資信託
投資できる金額 年間40万円
投資方法 積立投資

つみたてNISAがスタートした背景には、「家計資産の伸び悩み」があります。

日本国内の家計資産は預貯金に偏っており、投資にはあまり振り分けられていません。これを一因として、「他国と比較すると家計資産が伸び悩んでいる」という課題を抱えていました。

国内の投資を促すため、2018年に「つみたてNISA」がスタートしました。高コストで長期投資に向かない銘柄を対象外とし、投資方法は忙しくても取引がしやすい「積立投資」に限定しました。

積立投資に限定したことで生じた落とし穴もありますが、つみたてNISAは投資初心者でも始めやすくメリットも多い資産運用方法と言えます。

つみたてNISAは基本的に有利な制度 落とし穴には注意

本記事では、つみたてNISAの14の落とし穴を紹介しました。これらに注意してつみたてNISAを利用すれば、効率的に資産を増やすことができるでしょう。

文・若山卓也(ファイナンシャルプランナー)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業、保険募集代理業、金融系ライターとして活動しています。関心のあるジャンルは資産運用や保険、またお得なポイントサービスなど。お金にまつわることなら幅広くカバーし、発信しています。AFP、プライベートバンキング・コーディネーター資格保有。

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