新型コロナを機に、ようやく日本でも注目を集め始めているeスポーツ。スポーツファンやゲームファンに限らず、投資家や企業からも、新たな投資やブランドイメージ作りの手段として、関心を集めている分野です。
なぜ今eスポーツが盛り上がっているのか?──その背景から、withコロナ時代のeスポーツに秘められた可能性と投資価値を探ってみましょう。
eスポーツとは?数百万ドルの賞金を稼ぎ出すプレーヤーも
「電子競技(Electronic Sports)」とも呼ばれるeスポーツは、複数のプレーヤーがコンピューターゲームなどの電子機器を用いて競い合うスポーツや競技全般のことを指します。自宅でのプレーとは異なり、観客を集めたイベント会場で開催されることが多く、大きな大会では高額な賞金が狙えます。中には1回の大会で、数百万ドルの賞金を手にするトッププレーヤーもいます。
具体的にプレーされているゲームはスポーツ分野に限らず、シューティングから格闘、カードまで、競技性があるさまざまなコンテンツが対象です。代表的なものでは、「CS:GO」「League of Legends」「Dota 2」などがあります。
日本ではまだ「ゲーム」として捉えられる風潮が強いため、少し想像し難いかも知れませんが、eスポーツ先進国の欧米では「スポーツ競技」としての地位を確立しており、プロゲーマーも「スポーツ選手」として認識されています。
ロシアのスコルコボ研究所のレポートによると、2018年の時点でeスポーツプレイヤー数は世界中で2,700万人いるとされ、観戦者数は2021年までに最大5億5,700万人に達すると予想されています。
コロナ渦でも成長を維持 投資も活発化
そして世界的な知名度が高まるとともに、市場規模や投資も急速に拡大しています。
2020年は新型コロナの影響で大会の延期や中止が相次ぎ、収益の縮小が懸念されていますが、あくまで一過性の現象との見方が強いものと思われます。
前年比23.3%増を記録した2019年のような大幅な成長は期待出来ないものの、eスポーツに特化した市場調査企業Newzooの予想では、市場規模9億7,390万ドル(前年比1.7%増)と出ており、コロナ禍の2020年も僅かながら成長が期待できそうです。
コロナ禍がeスポーツにもたらしたポジティブな変化が後押しとなり、2021年には市場規模が11億9,800万ドルに成長すると予想されています。
またeスポーツメディアEsports Insiderのデータによると、2020年3月の主要な投資・合併・買収は総額1,380万ドルと、投資市場でも逆境に負けない勢いを維持していることが明らかになっています。
コロナ渦から生まれた2つのポジティブな変化
コロナ渦から生まれた一つ目のポジティブな変化は、eスポーツやゲームといったオンラインのエンターテイメントへの需要が高まったこと。ロックダウンや自粛、イベント中止などで、人々が自宅で過ごす時間が増えたためです。
米通信大手Verizonデータによると、ロックダウンの最初の週(2020年3月中旬)、北米ではピークの時間帯にオンラインゲームの利用が75%、ストリーミングの利用が12%増加しました。日本でも9月に開催された国内最大級のeスポーツイベント「RAGE Shadowverse 2020 Autumn GRAND FINALS」の視聴者数が約65万人を記録しました。
二つ目の変化は、eスポーツも含めて以前はオフラインで行われていたイベントが、パンデミックを機にオンラインに切り替わったこと。
このような変化により、多くの人にとってeスポーツがより身近な存在になりました。
withコロナ時代の新たな方向性
前述したように、既に一部のeスポーツは「遠隔からの対戦が可能」というメリットを活かし、オンラインベースに切り替えています。
いくつか例を挙げると、今春にはNascar(ナスカー)が現役ドライバーやセレブリティをフィーチャーした、バーチャル・レースシリーズを開催。その模様がFox Sportsで放映されました。一方、フォーミュラ1は「F1 Esportsバーチャル・グランプリシリーズ」を、公式SNSアカウント経由で配信しました。
またサッカーのイングランドプレミアリーグでは、アーセナルFC所属のメスト・エジル選手やトッテナム・ホットスパーFC所属のガレス・ベイル選手など、本物の選手たちがサッカーゲーム「FIFA eSports」のプレーヤーとして参加するケースが増えています。
コロナ以前からeスポーツは大会の模様をライブ配信する一方で、オンラインで関連性の高いコンテンツを配信するといったアプローチが始まっていました。withコロナ時代の新たな方向性が、eスポーツのさらなる人気に拍車をかけることは間違いなさそうです。
今後の展開予想 オリンピックで採用される可能性は?
今後はより多くの観客を惹きつける戦略として、eスポーツのモバイル化がさらに加速すると予想されています。
また、2019年のeスポーツ視聴者数の半分以上(57%)を、アジア太平洋地域(APAC)が占めていた点も注目を集めています。この数字は、主に中国における熱狂的な盛り上がりによるものですが、日本でも人気に火がついた2020年以降は、APACの視聴者数のさらなる増加が期待できます。
そしてeスポーツがより広範囲に受け入れられることで、以前から議論されていた、オリンピックで採用される可能性が高まるかも知れません。最近では米半導体メーカーであるIntelが、2021年に延期された東京オリンピックに合わせて、eスポーツオリンピック「Intel World Open」の開催を予定しています。このようにeスポーツとオリンピックの関連性を強めるための活動も、オリンピック競技認定を後押しする材料となるはずです。
「デジタル時代のエンターテイメント」としての価値
eスポーツはもはや「熱狂的なゲームマニア向けのエンターテイメント」という枠組みを超え、独立したスポーツ競技としての地位を確立しつつあります。コロナ終焉後には、既存のライブスポーツとはまったく異なる、デジタル時代のエンターテイメントとして、広範囲に定着しているでしょう。
観客としてあるいはプレーヤーとして楽しめるだけではなく、投資家としても関わる価値を見い出せる点が、eスポーツの最大の魅力かも知れません。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。(提供:Wealth Road)