(本記事は、株式会社フェイスネットワーク蜂谷二郎氏の著書『不動産活用で資産を守る 相続対策50の新常識』税理士法人チェスター監修の中から一部を抜粋・編集しています)
Q相続税は重いとはいえ、流石に財産の大半は残せるのでは?
遺産が多い人ほど、その多くを税金で徴収されることに!
●相続税の計算方法を大まかに知って、節税の下知識に
相続税の税率は、遺産が多ければ多いほど高くなる累進課税となっています。最高税率は55%で、控除などが設けられているものの、その負担は重くのし掛かります。
実際にどの程度の納税額となるのか、試算してみる前に、まずは相続税の計算方法について説明しておきます。なぜなら、独特な手順を経て算出されるからです。
相続税の計算は、(1)各相続人の課税価格の計算、(2)課税遺産総額の計算、(3)相続税総額の計算、(4)各相続人の相続税額の計算、(5)各相続人の納付税額の計算といった順番で計算します。
まず、(1)については「課税価格=遺産総額の価格-非課税財産-債務葬式費用+死亡前3年以内の贈与財産」という計算式で算出します。
非課税財産に該当するのは、墓所や仏壇、祭具、死亡後に国などに寄付した財産、亡くなった人(被相続人)が加入していた生命保険から支払われた保険金で「500万円×法定相続人の数」に相当する金額部分、死亡退職金で「500万円×法定相続人の数」に相当する金額部分などです。
続いて、(1)で算出した各相続人の課税価格を合計し、「基礎控除」の「3000万円+600万円×法定相続人の数」を差し引きます。これが(2)の課税遺産総額となります。
(3)の相続税額の総額については、法定相続分(民法で定めた遺産の分け方の基準)に沿って遺産が分与されたとみなし各相続人の税額を算出し、それらを合計します。
そのうえで、実際に取得した遺産の割合に応じて(4)の各相続人における相続税額を算出し、(5)の各相続人の納付税額を計算して納税を行うことになります。
●最高税率が適用されると、遺産の過半を納税で失うことに
では、具体的にどの程度の負担になるのでしょうか?計算を簡単にするために、母と一人息子の2人家族(夫はすでに他界)というケースで考えてみます。
母親が遺したのは、亡き夫から受け継いできた相続税評価額3億円の自宅と、預貯金・有価証券・死亡保険金の合計4億円分でした。このケースの場合、子ども以外に法定相続人は存在していないため、遺産の全額が彼の法定相続分で、7億円を受け継ぐことになります。
非課税財産は、 墓所や仏壇、祭具費の合計1500万円、死亡保険金のうちの「500万円×1人=500万円」で、合計2000万円でした。債務葬式費用は400万円、死亡前3年以内に贈与された財産はありません。
こうしたことから、課税価格は7億円から2400万円を差し引いた6億7600万円となります。この金額から「基礎控除」の「3000万円+600万円×1人=3600万円」を差し引いた6億4000万円が課税遺産総額です。
下段の一覧表[図1-3]の通り、55%の最高税率が適用され、「6億4000万円×55% -7200万円=2億8000万円」もの税負担となるわけです。
このケースでは、7億円相当の遺産のうちの4割が相続を通じ、税金として国庫に入ってしまいました。想像以上に税負担が大きくなることに、落胆する人は少なくないはずでしょう。
それなりの資産を有していて法定相続人の数が少ないというご家庭では、入念に相続対策を進めておかなければ、想像以上に多額の税負担を求められる可能性があります。
そして、このケースでは夫が亡くなった際にどのようなかたちで遺産が分与されたのかが明らかになっていませんが、「一次相続(夫婦のどちらかが他界→その配偶者と子が相続するというパターンが一般的)」とともに、「二次相続(配偶者が他界→その子が相続するというパターンが一般的)」のことも最初から念頭に置いた計画を立てることが重要です。
ちなみに、配偶者には相続税の軽減措置が設けられています。具体的には、「配偶者の法定相続分」、もしくは遺産額が1億6000万円以下の場合なら、配偶者に相続税は一切かかりません。
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