(本記事は、株式会社フェイスネットワーク蜂谷二郎氏の著書『不動産活用で資産を守る 相続対策50の新常識』税理士法人チェスター監修の中から一部を抜粋・編集しています)
Q不動産はすぐ現金化できないし、分けにくいから、資産は現金が一番でしょうか?
計画的に不動産を所有すれば円満相続につながり、相続税も大幅に節税!
●確かに、自宅の相続などで揉めるケースは見受けられるが…
自宅以外にめぼしい資産が見当たらない一方で複数の相続人が存在する場合、遺産分割の話し合いがまとまりにくいという話をよく耳にします。共有名義にすると売却を巡っていさかいの火種となりやすいですし、それなりの広さがなければ、分割所有するのも非現実的だと言えそうです。
特に揉めやすいのは、故人の子どものいずれかが自宅に同居しており、他の兄弟・姉妹は別居しているというケースでしょう。故人と同居していた人に対し、「自宅はすべて一人で相続して住み続けて構わないが、自分たちの取り分を現金でよこせ」と、兄弟・姉妹が要求するケースが見受けられるのです。
そういった場合、故人と同居していた人は兄弟・姉妹が納得できる別のプランを提案するか、どうにかして現金を捻出するかの二者択一を迫られるでしょう。「だから、不動産を相続するのは厄介……」と思われがちですが、果たして本当にそうでしょうか?得てしてこうしたケースにおいては、不動産自体ではなく、その所有の在り方がネックとなって揉め事に発展しています。
●早い段階で不動産の所有パターンを見直していたら異なる結果が!
先程のケースにおいて、できるだけ早い段階で不動産の所有パターンを見直していたら、誰もが円満になれる解決策を実現することが可能です。仮に、遺産を残す人(被相続人)とその2人の子どもという家族構成であったとしたら、自宅を担保に金融機関から融資を受け、単身世帯に人気の高いエリアにある賃貸マンション1棟を購入しておくというのが一例です。
自宅を担保に借りたローンの支払いには、賃貸マンションから得られる家賃収入を充当します。そして、相続が発生した場合には、同居していた子どもが自宅を受け継ぎ、もう一人は賃貸マンションを自分の取り分とするわけです。
このようなパターンで不動産を所有しておけば、子ども同士がいさかいを起こすリスクはかなり抑えられるでしょう。しかも、不動産の所有は相続税の節税にも結びつきます。
●相続対策の中で最も節税効果が高いのは不動産
相続税を計算する際、遺産の種別によってその「相続税評価額」はかなり異なってきます。「相続税評価額」とは、税制上においてその遺産がどの程度の価値に相当するのかを示したものです。
たとえば、1億円の現金はその額面通り、「相続税評価額」も1億円となります。これに対し、1億円で購入した土地の「相続税評価額」は、取得費用の約8割の8000万円に減額されます。その土地を第三者に貸し付けていると、さらに約8割の評価額(6400万円)となります。
一方、1億円で建物を建築した場合の「相続税評価額」は、購入価格の約4割の4000万円に減額されます。しかも、その建物を第三者に貸し付けていると、さらに約7割の評価額(2800万円)となるので、現金で所有しているケースとはかなりの違いが生じます。
ここまで「相続税評価額」が下がるのは、他人に貸し出していると、容易には処分できないことなどが配慮されているからです。
現金で所有しているケースと比べて大幅に「相続税評価額」が下がれば、その分だけ課税額も抑えられることになります。こうしたことから、数ある相続対策の中でも特に節税効果が大きいのが不動産だと言われているわけです。
[図1-7]は、不動産による節税効果をわかりやすく図解にしたものです。そして、その下は貸家が建っている土地に対する「相続税評価額」の計算式です。
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