(本記事は、株式会社フェイスネットワーク蜂谷二郎氏の著書『不動産活用で資産を守る 相続対策50の新常識』税理士法人チェスター監修の中から一部を抜粋・編集しています)
Q遊休地に賃貸物件を建てておけば相続税を節税できるというのはホント?
節税効果は期待できても、賃貸経営としては大赤字になるケースも!
●首都圏郊外などで所有地に賃貸物件を建てる地主が続出
不動産の「相続税評価額」は「建築費の6割程度」と判断されるケースが一般的です。しかも、その建物を賃貸物件としていた場合には、「自己利用家屋の相続税評価額×70%」となります。
こうしたメリットに着目し、首都圏郊外などの農家をはじめとする土地のオーナーが遊休地の有効活用として、自分の所有地に賃貸アパートを建てるケースがよく見受けられました。そういった提案を行う事業者が盛んに活動していたからです。
しかも、融資を受けて建築すればさらに相続税の節税につながるし、月々の返済は家賃収入で賄えるというセールストークです。もちろん、きちんと家賃収入が得られればその通りですし、賃貸物件が相続税の節税につながることも確かです。
●新築時は満室でも、やがて空室が続出して赤字のたれ流しに
しかし、こうした提案には最も重要な視点が欠落していました。それは、安定的に賃貸需要が見込まれるかどうかというものです。
その話に乗ったオーナーたちが賃貸物件を建てたのは、もっぱら郊外の休耕地などでした。最寄り駅から遠いケースも多く、新築当初は満室となっても、時間の経過とともに空室が目立ち始め、新たな入居者もなかなか見つかないというパターンが続出したのです。
空室を抱えたままでは、家賃収入をローンの返済に充てるというプランも成立しません。そのうえ、空室が目立つ物件は建物の傷みも早く、想定以上に修繕費もかかりがちです。
さらに酷いことに、そのような収益性の低い賃貸物件は、転売しようとしても二束三文の値段しかつきません。結局、赤字をたれ流しながら、売るにも売れない不良資産を抱え込んでしまうハメになったわけです。
不動産の有効活用を考える際には、節税効果だけに目を奪われず、収益性もしっかりと考慮することが肝心です。
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