(本記事は、株式会社フェイスネットワーク蜂谷二郎氏の著書『不動産活用で資産を守る 相続対策50の新常識』税理士法人チェスター監修の中から一部を抜粋・編集しています)
Q赤字会社の事業承継なら、贈与税や相続税を心配しなくても大丈夫ですか?
いくつかの落とし穴が潜んでいるので要注意!相続税が発生するケースも!!
●赤字経営の会社を相続すれば相続税の心配は無用と思われるが…
故人が遺すのは現金や預貯金、有価証券、不動産などといった資産だけではありません。故人がオーナーを務めていた会社を受け継ぐというケースも考えられます。
特に団塊世代が70代に達している今は、こうした法人の事業承継が急増しているようです。あらかじめ生前贈与のかたちで済ませるパターンもあれば、相続の発生を機に子どもなどが新たなオーナーとなるパターン、後継者が見つからなくてM&A(企業買収)を通じて譲渡するパターンなど、様々な手が打たれているようです。
そのうち、相続で受け継ぐ際に重要なポイントとなってくるのは、承継することになる会社の株価です。
経営状態が良好な場合は様々な対策を講じ、できるだけ株式の評価額を低くしたうえで事業承継を行い、贈与税・相続税の負担を抑えます。
これに対し、赤字経営の会社は株式評価額が低くなってきますし、「債務超過(負債総額>資産総額)」に陥っていると企業価値がないとみなされ、贈与税・相続税のことを心配しなくても済みそうです。
●多額の借金や、回収不能な貸付金を相続してしまうケースが!
しかしながら、実は大きな落とし穴も潜んでいます。債務超過とは、すなわち多額の借金を抱えているということを意味するからです。
そのような会社を相続すれば、大きな負の遺産まで受け継ぐことになるわけです。しかも、会社は赤字続きだったとしても、故人が自分の名義で多額の資産を所有していたとしたら、こちらの相続では高額の相続税を負担しなければなりません。
さらに悲惨なのは、故人が自分の会社に運転資金を貸し付けていたというケースです。たとえ回収が難しいものであっても、故人が他者(自分の会社)に貸し付けている資金は相続財産とみなされ、課税の対象となってしまうのが税制上のルールだからです。
●相続発生前に会社を清算し、堅実な賃貸経営に転向するのも一考
こうしたケースでは、相続が発生する前に会社を清算するという選択肢もあります。そうすれば、貸付金は貸し倒れ金として処理され、相続税がかかることはありません。あるいは、M&A仲介会社などを通じて事業を他者に譲渡する手も考えられます。
ただし、清算時に思わぬ税金が発生するケースも出てくるので、税理士に相談したうえで判断するのが賢明です。
赤字経営であっても、顧客基盤やビジネスモデルなどの価値が評価される可能性もあるでしょう。こうした会社のオーナーとしては、できるだけ早いうちにどうすべきかを真剣に考えておくべきです。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛要請で経営危機に陥り、中小企業の倒産が急増しています。それが象徴するように、企業経営は外的要因にも左右されて厳しい局面を迎えることが少なくありません。
そこで、潔く自分の会社に見切りをつけて売却し、得た資金で賃貸マンションを購入するという人も増えてきています。着実に需要が見込まれるエリアで賃貸経営を行えば、安定的に家賃収入が得られることを期待できるからです。
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