コロナショックで急落した株式市場は徐々に落ち着きを取り戻しつつあるが、依然として二番底への警戒感も燻っている。一方で金価格は40年ぶりに過去最高値を更新し、「有事の金」としての存在感を見せつけている。投資マネーを引き付ける金への投資手段は様々あるが、今回はそれぞれの特徴や注意点について解説する。
ゴールドバーから金貨、コツコツ型の積立まで
現物資産の代表格でもある「金」は、国際情勢の変化や災害時に金価格が上昇する傾向にある。そのため、有事に備えてポートフォリオの一部に組み込んでいる投資家も少なくない。しかしながら、金投資と一口にいってもその種類は様々だ。
●ゴールドバー・金貨
金投資の最もシンプルなスタイルは、ゴールドバーや金貨といった現物の購入である。人気のある100グラムのゴールドバーは、現在の金価格だと約66万円前後で買うことができる (2020年6月時点) 。また、金貨の場合はカナダ中央政府が保証する法定通貨である「メイプルリーフ金貨」などが1/10オンスから1オンス (1オンス=31.1035g) の重さで購入可能だ。
現物購入による投資方法は、実際に金を手にすることで高揚感が味わえる一方、盗難対策も含めた保管方法を確保しなければならず、そのための初期コストや保管料などの費用についても考える必要がある。
●純金積立
少額から気軽にスタートできる方法としては、純金積立もある。地金商や銀行、証券会社などが取り扱っており、月々1,000円から始められる手軽さが魅力だ。また、積立金はドルコスト平均法で定額購入されるため、価格変動リスクを抑えられるメリットがある。
積立期間中は、購入した金を保管してもらうため、手元で管理する必要はない。保管方法には特定保管と消費寄託があり、特定保管のメリットは、銀行や証券会社は顧客が積み立てた純金と自社の資産を区別して保管するため、万が一積立先の銀行や証券会社が倒産しても積み立てた純金は100%返還されるという点だ。デメリットは、運用会社に保管確認や警備保険などのコストがかかる分、手数料が高くなりやすい点だろう。
一方の消費寄託のメリットは特定保管より銀行や証券会社に払う手数料が安いという点だ。デメリットとしては、積立会社に金を預け、投資家が返還を求めることはできるが、積立会社が倒産した場合に、積み立てた金が返還されないリスクがあることが挙げられる。
株式のように手軽に取引できる金ETF
純金積立と同様に少額から始められるとして注目を集めているのが、「金ETF」だ。すでに数種類の金ETFが上場しているが、一口に金ETFといってもそれぞれの投資信託で特徴は異なる。投資家から集めた資金で、金地金あるいは金先物に投資されるかによって現物資産としての金がその投資に対して裏付けされているかどうかという違いがある。
●金ETFの注意点
金地金に投資されるETFは、投資された資金に応じた金が保管されている。また、金ETFの中には実際にこの保管されている実物の金と交換することができるものも登場している。
一方、金先物に投資されるETFは、将来の金の売買を取引するもので、実物資産としての金は裏付けされていない。まずは投資家自らが、原物資産としての金の裏付けを希望するのかどうかを決定し、その上で投資したい金ETFが金地金あるいは金先物どちらを対象としているのかをチェックする必要がある。
金ETFは1口から10口で購入でき、5,000円ほどの少額から投資がスタートできる。ETFは上場された投資信託のため、株式同様にスピーディーに売買が可能である反面、純金積立のようにドルコスト平均法による購入と比較すると、取引のタイミングは投資家が見極めて、売買することが求められる。
また、金を保管するためのコストは不要だが、0.4~0.5%前後の信託報酬がかかってくることにも注意が必要だ。
ハイレバレッジの投資なら金先物取引
金ETFで金先物に少し触れたが、個人投資家でも金先物取引は可能である。将来の金価格を見通し、買いあるいは売りからでも取引がスタートできる。取引単位が1キロと単純に計算すると、何百万円という投資資金が必要に思えるが、証拠金を預託して取引するため、実際の初期投資額はそれほど高くない。その一方で、レバレッジを効かせる分、値動きが激しい場合は損失が大きく膨らむ点に注意が必要だ。
こうしたリスクを軽減すべく、100グラム単位からスタートできる金先物の取引もある。現状、過去最高値を更新する金には、高値掴みを警戒して手を出しづらいというのであれば、この先の動きを見極めて先物で金投資を始めるのも一手だ。
「有事の金」を活用するためには
金投資には、ゴールドバーなどの金地金や純金積立、金ETF、金先物取引など様々な種類がある。金地金では、現物資産を手にする機会がある一方で盗難防止のためのコストがかかるというデメリットがあり、純金積立は価格変動の影響を抑える効果が期待される反面、積立先の状況によっては積み立てた金が返還されない場合も想定される。
また、金ETFの場合は少額で始められるメリットがあるものの、信託報酬がかかる側面や投資家の知識や経験が関わってくる点は無視できない。金先物取引も気軽に始められる反面、ハイレバレッジのリスクがある。このように、投資方法によってメリット・デメリットが存在するため、金投資をする際はリスクを見極めた上で自分に合った方法を選ぶことが大切だ。
(提供:大和ネクスト銀行)
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