新型コロナウイルスは社会にさまざまな変化をもたらし、「ニューノーマル」という言葉も生まれた。そのコロナ禍時代に新たに勃発したのが「宅配戦争」だ。Uber Eats、出前館、楽天デリバリー、Woltなど、フードデリバリー業界は群雄割拠とも言える状況となっている。最終的に勝ち残る企業はどこか?
新型コロナウイルスの感染拡大と「巣ごもり需要」
新型コロナウイルスの感染拡大は「巣ごもり需要」に結びついた。人との接触を減らすために外出を控え、自宅の中で食事をしたりゲームをしたり、といったシーンが増えたのだ。
巣ごもり需要は、動画や映画、音楽などのサブスクリプション型サービスの会員数の増加に結びつき、業界によっては追い風となった。フードデリバリー業界にも追い風が吹いた。外出自粛ムードが広がる中、宅配サービスを利用する人が増えているのだ。
しかし、フードデリバリーに対する需要が増えているからといって、この業界に新規参入すれば必ず成功を収められるかと言えば、そうではない。業界2強とも言えるUber Eatsと出前館、そしてLINEデリマやWoltも事業を拡大しており、すでにシェア獲得競争が激しい状況だ。
ここからはフードデリバリー業界の主要プレーヤーの事業動向をそれぞれ解説していこう。
Uber Eats:すでに30都道府県でサービス提供、店舗数は3万超え
Uber Eatsは2016年9月から日本国内でのサービス展開をスタートしており、すでに30都道府県でサービスを提供している。最近では高知県と和歌山県でのサービスが始まった。
新型コロナウイルスの感染拡大が本格化してから、Uber Eatsの契約店舗数はどんどん増えているようだ。報道などによると、今年2月末から3月末のわずか1ヵ月間で、契約店舗数は20%も増えた。実数ではすでに全国で3万店舗を超えているようだ。
Uber Eatsはフードデリバリー各社の中で、割引クーポンの配布などによるプロモーションに最も力を入れている印象で、クーポンの使用で2,000円近く割引になるという刺激的なキャンペーンに、思わずUber Eatsの会員になってしまった人も少なくないはずだ。
出前館:日本国内では老舗のフードデリバリー大手、Uber Eatsと2強形成
Uber Eatsと並んでフードデリバリー業界の2強の1社とされるのが、出前館だ。出前館のフードデリバリーサービスの歴史はUber Eatsなどより古く、2000年10月からサービス提供を開始している。
ヤフーなどと連携してサービスの拡大に努め、NTTドコモのフード宅配サービス「dデリバリー」とともに事業に取り組んでいることでも知られる。出前館はすでにLINEの子会社となっており、今年12月には「LINEデリマ」と統合され、出前館のブランドでさらに事業が拡大される見通しとなっている。
出前館は公式サイトで「全国40,000店舗以上の中から簡単に検索・注文できる日本最大級の出前サイト」とうたっている。「Uber Eats vs 出前館」の行方がどうなるのかが、しばらくはフードデリバリー業界で最大の関心事であると言えよう。
楽天デリバリー:会員数の今後の伸びが期待される
料理宅配ではUber Eatsや出前館には遅れをとるが、国内のEC(電子商取引)大手・楽天が展開する「楽天デリバリー」を活用している人も多い。掲載店舗数は1万2,000店舗以上とされており、国内で1億人以上のユーザーを抱える楽天だけに、会員数の今後の伸びが期待される。
Wolt:フィンランド発祥、広島・札幌・仙台とサービス提供エリアを拡大中
フィンランド発祥のWolt(ウォルト)は、世界23カ国でサービスを提供しているが、日本国内ではまだ目立たない存在ではある。2020年3月からサービス展開を広島で開始し、現在は北海道札幌市と宮城県仙台市でも事業を展開している。このように日本での規模はまだ小さいが、評判は上々のようで、徐々に日本でも利用者が増えていきそうな予感だ。
有望市場であるだけに競争も激しさを増していく
食品の宅配市場は、コロナ禍以前も拡大傾向にあった。民間調査会社の矢野経済研究所が2019年9月に発表したレポートによれば、2014年度に1兆9,145億円だった食品宅配市場は、2018年度には2兆1,399億円まで膨らんだ。2023年度には2兆4,000億円を超える規模になる見通しだという。
この数字は新型コロナウイルスによる需要増を考慮しておらず、実際はもう少し規模が膨らむ可能性がありそうだ。宅配の利便性を感じたユーザーの一部は、新型コロナウイルスが収束しても引き続き料理宅配サービスなどを利用すると考えられるからだ。
しかし、有望市場であれば必ずと言っていいほど多くの企業がその市場に参入し、いずれは勝ち組と負け組がはっきりする。日本で最終的に勝ち残るフードデリバリーサービスはどこか。引き続きシェア獲得競争に注目だ。(提供:THE OWNER)
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)