本記事は、小林弘幸氏監修『最先端医療の人生を変える7つの健康法』(ポプラ社)の中から一部を抜粋・編集しています

持続可能なダイエット法とは

HITトレーニング,ダイエット
(画像=fizkes/stock.adobe.com)

具体的にどうやって体重を落としていくのがベストなのかを考えてみましょう。

まずなにより大事なのは、短期間で急激に体重を落とさないこと。急激な体重減少が起きると、身体は基礎代謝を落とし、かつ「食べたい」という食欲を強く発現させます。この欲求は、どんなに強い意志の人でも抵抗できないほどで、抑えこむのは大変なストレスです。ストレスは長く続くと体内にストレスホルモンを増やし、糖代謝自体も狂ってしまいます。だからこそ、長期的に考えていきましょう。

まずは食事です。食事に関してはインスリン抵抗性を解除する食べ方をすればいいことになります。

間食は完全にやめること。一般的に間食とは糖質の摂取と同義ですし、食欲でいうと報酬系を満足させるためのものです。報酬系回路が絡んだ食欲は非常にやっかいで、簡単にやめることはできません。ところが最近、この報酬系回路を騙して活性化させる方法が報告されました。

それは甘いものでうがいをすることです。このうがいをするだけで報酬系回路にある側坐核が活性化していることが確認されたのです。

まずはココアなどの甘い飲みものでうがいをして、間食への欲求を止めてみてください。うがいの仕方にはコツがあります。人間は味覚を舌だけで感じると思っている人がほとんどですが、実は嗅覚において味の7割を感じているのです。

鼻は味を感じるのに必要不可欠なのです。甘いものを食べたかのように脳に勘違いさせるには、甘さを十分に脳に堪能させる必要があります。まずは甘い飲みものをごく少量、舌の上にのせてゆっくりと口から息を吸い込んでください。これで舌の上の甘い飲みものの成分が混ざった空気が肺に到達します。

次に、その甘い成分をたくさん含んだ空気を今度は鼻から出しながらゆっくりと口の中でうがいをするのです。まるで甘いお菓子を食べているような錯覚に陥ります。これで甘いものに対する執着はずいぶん緩和されるはずです。

そして食事は、三食きちんととること。肥満はインスリン抵抗性が筋肉で起こっている状態ですから、まずは糖質をある程度制限します。甘いものだけでなく炭水化物全体を少なめにしますが、完全に断ってはいけません。腹八分目に抑えるだけで十分です。

あくまでもインスリン抵抗性を解除するのが目的なので、過剰なインスリンさえ分泌させなければいいのです。炭水化物は少なめに、でもきちんととる。これが長続きする健康的なダイエットにつながります。

夕食は軽くするのが効果的です。おかず中心で、炭水化物は三食中一番少なめに。インスリン抵抗性を解除する上で極めて重要です。

人は睡眠中に低血糖を起こしたり、空腹で目が覚めることはまずありません。それは、睡眠中は空腹でも血糖値を上げる成長ホルモンが分泌されるからですが、このホルモンはインスリンの効き方を弱くするインスリン拮抗ホルモンでもあるのです。つまり睡眠中は生理的にインスリン抵抗性の状態になっています。

ダイエット中は、睡眠中の血糖を限りなく低くしておくのがコツ。夕飯を多めにとったり、寝る前に食べると、ただでさえインスリンが効きにくい睡眠中にさらに血糖が上がってしまうので、身体は血糖を下げようと通常より多くのインスリンを放出します。これではインスリン抵抗性はさらに助長されるばかり。肥満は、夜つくられるのです。

お酒に関してもよく質問されます。インスリン抵抗性改善の観点からすると、アルコールは血糖を上昇させる効果が低いので過剰でなければ飲んでもかまわないのですが、お酒は脳の摂食中枢を狂わせることが明らかになっています。

多くの人が、酔うと摂食中枢の機能がおかしくなって必要以上につまみを食べてしまう傾向があります。これはお酒が食欲を狂わせている証拠です。毎晩飲むような習慣は避けるべきです。

次に食べ方について考えてみましょう。エネルギー消費を上げる食べ方が望ましいです。それにはよく嚙むことです。よく嚙むと交感神経が活性化されて、褐色脂肪細胞における熱産生が亢進してエネルギー消費が上昇、基礎代謝も上昇します。

微々たるものではありますが、塵ちりも積もれば山となる、です。早食いは太りやすいというのはいくつもの論文で報告されていますから、よく嚙むことで早食いの防止にもなるでしょう。

とはいえ、ひたすら嚙んでいるだけだと食事がつまらなくなってしまって長続きしないことも多いようです。そこでこのとき、甘い飲みものでうがいするときの方法を応用してください。

ご飯を口に含んで嚙むときに口から息を吸い込みます。そして鼻から息を吐きながら、口の中の食べ物をゆっくりと嚙んでみてください。食事が何倍にもおいしく味わえるはずです。これを繰り返せば自然と嚙む回数が増えるでしょう。

過剰摂取はすすめませんが、ときに辛いものを食べてみるのもいいかもしれません。辛いものの中に含まれているカプサイシンは交感神経を活性化し、さらに食後熱産生を促しますからエネルギー消費につながります。あくまでも適量にしてください。

最先端医療の人生を変える7つの健康法
小林弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。AMWA代表理事。1960年、埼玉県出身。順天堂大学医学部、同大学大学院医学研究科博士課程修了後、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。自律神経研究の第一人者として、アスリートやアーティスト、文化人へのコンディショニングやパフォーマンス向上指導に関わる。腸のスペシャリストとして、順天堂大学に初の便秘外来も開設。自律神経や腸内環境を整える習慣やストレッチなどを考案し、心と身体の健康づくりを提唱。

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