本記事は、小林弘幸氏監修『最先端医療の人生を変える7つの健康法』(ポプラ社)の中から一部を抜粋・編集しています

持続可能なダイエット法とは

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(画像=Gutesa/Shutterstock.com)

運動について考えてみましょう。じつは運動はあくまでも補助です。よく肥満の人が「今月は運動しなかったから太った」といいますが、これは間違いです。運動だけでやせることはほぼ不可能だからです。

けれども食事がうまくいっている状態で適切な運動をすると、痩身効果が2倍3倍になって現れます。あくまでも食事療法がうまくいっていることが運動療法を行う前提になります。

運動は2段階で考えましょう。最初の3ヵ月で取り組むのは、インスリン抵抗性解除を目指した運動です。この場合、血糖値を上げないようにするのが目標ですから運動は食後に行いましょう。ひざなどを痛める恐れがなければランニングなどの運動が効果的です。体重が多過ぎる方は、急にランニングをすると腰やひざを痛めるので、まずはウォーキングから始めるといいでしょう。目標にするのは、エネルギーを効率よく消費する運動量です。これは心拍数を目安に運動します。

カルボーネン法という計算式があります。

(220−年齢−安静時心拍数)×0.6+安静時心拍数

この計算式で導かれる心拍数を維持する形で、20分程度の運動を毎日するのが目標です。

この運動を、糖質を制限した食事とともに3ヵ月続けていれば、インスリン抵抗性は解除されるはずです。運動による負荷はインスリンと同様に、糖を取り込むドアを筋肉細胞の表面に移動させ、留まらせる効果があるからです。この運動が促す効果は非常に強いものです。

糖尿病治療薬であるメトホルミンにも同様の効果がありますが、短時間で効果が切れてしまうため、1日に何回も服用する必要があります。しかし運動であれば、1回の運動で72時間にわたって効果があったことが動物実験で報告されています。

運動を食後に行うことで血糖値が下がり、余分な糖が脂肪に行かず筋肉に取り込まれる身体になったら、「インスリン抵抗性が解除された身体」の完成です。ここで運動も第2段階に入ります。

この段階になると、糖質が常に筋肉に取り込まれるようになるので、実は体重減少が止まってしまいます。多くの人がここでダイエットをやめてしまうのですが、ここがふんばりどき。さらに体重を減らす方向に身体の状態をシフトさせていきましょう。

これからは、身体についた脂肪を消費する運動に変えていきます。

運動をするときに使うエネルギーはどこから供給されているのでしょう。これまで運動をほとんどしていなかった人が突然運動した場合、筋肉を動かすために使うエネルギーのほとんど(約7割)は、筋肉内のグリコーゲンを分解した糖を使うことで賄われます。残りの2割が血中に存在している糖、そして残りの1割程度が脂肪です。これでは体重はなかなか減りません。

しかし第一段階の運動を3ヵ月続けていた身体は、筋肉のエネルギーの使い方に変化が起きています。3ヵ月間にわたって持久的運動を行っているので、運動の際に消費されるエネルギーの供給源は、筋肉のグリコーゲン由来が約4割に減り、血中の糖由来が1割程度、残りの5割が脂肪由来のエネルギーになります。

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(画像=『最先端医療の人生を変える7つの健康法』より)

つまり第一段階で行った運動は、インスリン抵抗性を解除するだけでなく、脂肪をエネルギー消費に使いやすい体質に変化させていたことになります。第二段階の脂肪燃焼を目指した運動は、継続することが大事です。ポイントは2点。

ひとつめは、朝ご飯前に運動をすることです。朝ご飯を食べる前は最も空腹になっているはず。前日の夕飯が夜の8時で、翌朝の7時に走るとすると、11時間も何も食べていない計算になります。早朝空腹時血糖、つまり最も血糖値が下がっている時間帯に運動をすれば血中の糖よりも、グリコーゲンや脂肪などの貯蔵エネルギーを使って走ることになります。食後にくらべても、効率的に脂肪の燃焼を促せます。

ふたつめは、運動負荷です。この場合、第一段階よりも少し負荷を上げた方が効果的です。前出のカルボーネン法の式を少し変形した式を用いて適度な運動時心拍数を出しましょう。

(220−年齢−安静時心拍数)×0・8+安静時心拍数

第一段階よりも少し心拍数が上がるように走ります。3ヵ月前には無理だったかもしれませんが、この頃にはスムーズに走れるのではないでしょうか。あとはみなさんの持続する力だけです。

以上が、医学的に正しく、かつ、持続可能なダイエット法です。時間はかかりますが、健康的で無理なくやせることができます。健康寿命も延伸するはずです。

ダイエットを長期間にわたって継続するのは大変です。ストレスを感じたらダイエットは失敗です。翌日からまた食事に気をつけて運動を続ければいいのです。ダイエットは数字を減らすことではなく、健康を保ち、自分の人生を豊かにするためのものです。無駄なストレスをなくし、目標の体重に無理なく到達することを目指しましょう。

最先端医療の人生を変える7つの健康法
小林弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。AMWA代表理事。1960年、埼玉県出身。順天堂大学医学部、同大学大学院医学研究科博士課程修了後、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。自律神経研究の第一人者として、アスリートやアーティスト、文化人へのコンディショニングやパフォーマンス向上指導に関わる。腸のスペシャリストとして、順天堂大学に初の便秘外来も開設。自律神経や腸内環境を整える習慣やストレッチなどを考案し、心と身体の健康づくりを提唱。

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