寿司チェーン大手のくら寿司が、コロナ禍でも健闘している。人気アニメ「鬼滅の刃」とのコラボも奏功し、外出自粛ムードの中で国内売上高が過去最高を更新した。直近の決算発表や月別売上高などを見ながら、くら寿司の現在と未来を考えていこう。

月別売上高の前年対比の推移から見えるものは?

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(画像=くら寿司プレスリリースより ©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable)

くら寿司の国内売上高の推移は、月別売上高の前年対比(%)の変化を追うとわかりやすい。その推移を見てみよう。

年月 月別売上高前年対比
2019年11月 106.1%
2019年12月 100.9%
2020年1月 110.3%
2020年2月 118.7%
2020年3月 89.7%
2020年4月 54.7%
2020年5月 84.5%
2020年6月 102.1%
2020年7月 98.0%
2020年8月 100.6%
2020年9月 113.9%
2020年10月 133.5%
2020年11月 141.2%

国が緊急事態宣言を発令した2020年4月に、前年対比で売上高を大きく落としていることがわかる。しかし、6月ごろから前年並みの水準まで戻し、8月以降はすべての月で前年を超えるようになった。

注目すべきは10月と11月の実績だ。10月は前年対比で133.5%、11月は141.2%と大幅に超えている。需要喚起策としてスタートした「Go To Eat」キャンペーンが始まったのが10月で、この時期とぴったり重なる。

Go To Eatキャンペーンでは「無限くら寿司」が話題になり、売上増を後押しした。1,000円以上の食事をすると1,000円分のポイントを受け取れ、そのポイントで1,000円以上の食事をするとまた1,000ポイントをもらえる。これが、「無限くら寿司」の仕組みだ。

くら寿司は「Go To Eatご予約で、くら寿司ならずっとお得!」といったキャッチコピーで、公式アプリなどで堂々と「無限くら寿司」をアピールした。

「鬼滅の刃」とのコラボが過去最高売上高の更新に寄与

このように、くら寿司は新型コロナウイルスの感染拡大に翻弄されながらも、「Go To Eat」特需を確実に取り込み、過去最高の国内売上高を記録するまでになっている。

記録更新の要因はもう一つある。「鬼滅の刃」とのコラボだ。

くら寿司は2020年6月と9〜10月にかけて、鬼滅の刃とのコラボキャンペーンを実施した。主人公などの人気キャラクターをイメージした「鬼滅の刃にぎり 三種盛り」を200円で提供し、会計2,000円ごとにオリジナルクリアファイルをプレゼントしたことが、全国的に話題となった。

鬼滅ブームにあやかったことが、記録的な売上の原動力となったのだ。

くら寿司のように、Go To Eatキャンペーンや鬼滅の刃の人気をうまく活用できた企業は決して多くない。

一方で最終損益は上場以来初の赤字に転落

ただし、懸念点もある。くら寿司は、日本国内だけでなく海外でも事業を展開している。海外ではGo To Eatキャンペーンや鬼滅ブームの恩恵などを受けられなかったことから、感染防止のために店舗を一時閉店した影響が大きかった。

くら寿司が2020年12月2日に発表した2020年10月期の連結業績(2019年11月~2020年10月)では、国内事業と海外事業を合わせた売上高は前期比0.2%減の1,358億3,500万円。営業利益は前期比93.6%減の3億5,000万円、経常利益は同81.5%減の11億3,500万円。

最終損益は、前期の37億6,600万円の黒字から2億6,200万円の赤字に転落。最終赤字は、くら寿司が2001年に上場してから初めてのことだ。

最終赤字の要因は、新型コロナウイルスの感染防止に向けた店舗の改装コストなどがかさんだこと。国内売上高こそ好調だが、企業全体としては厳しい状況といわざるを得ない。

ちなみに2021年10月期(2020年11月〜2021年10月)については、「新型コロナウイルス感染症の収束時期が不透明な中で、業績予想の合理的な判断が困難」として、未定となっている。

今期はどのような業績となるのか

売上高が過去最高を更新したことは、くら寿司にとっては間違いなく良いニュースだ。しかし海外事業が振るわないため、予断を許さない状況が続くだろう。すでに2021年10月期がスタートしているが、今期はどのような業績となるのか、引き続き注目したい。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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