前回は30代が投資をする際に認識すべき視点をお伝えしました。今回は40代が考慮すべきライフプランと必要金額を提示し、必要な準備と資産運用時の心構え、金融商品や投資制度の選び方についてお届けします。

40代でのライフイベントと必要金額

資産管理
(画像=sunftaka77/stock.adobe.com)

40代で考慮すべきライフイベントは、住宅ローン返済や老後準備といった自身のことだけでなく、子供の教育費や両親の介護費用といった家族に関わるイベントが増えます。しばらくはこの負担は続くため苦しい時期が続きますが、教育費は私立と公立で大きく変わり、住宅費用はマイホームか賃貸かでも変わります。40代は働き盛りで収入も増えてくる時期になります。

収入増が期待

国税庁の「令和元年 民間給与実態統計調査」によると、2019年の給与所得者の年齢層別の年間の平均給与(賞与込み)は以下の通りです。30代後半から40代には働き盛りで収入が増えることがわかります。

30代前半 410万円   前年齢層比
30代後半 445万円   +35万円
40代前半 476万円   +31万円
40代後半 499万円   +23万円
50代前半 525万円   +26万円
50代後半 518万円   − 7万円

子供の教育費の負担はかなり大きい

文科省の「平成30年度 子供の学習費調査の結果について」によると、子供を公立又は私立の幼稚園,小学校,中学校,高等学校に通学させる場合の1年間の教育関係費支出は以下の通りです。この支出には学費、納付金、教材、交通費、クラブ活動、学校外の塾などの費用も含まれています。

公立幼稚園   223,647円
私立幼稚園   527,916円
公立小学校   321,281円
私立小学校   1,598,691円
公立中学校   488,397円
私立中学校   1,406,433円
公立高等学校   457,380円
私立高等学校   969,911円

ちなみに、同資料によると幼稚園から高校までの15年間にかかるケース別の費用は以下のようになっています

全て公立に通った場合  541万円
幼稚園は私立,小学校・中学校・高等学校は公立に通った場合 635万円
幼稚園・高等学校は私立,小学校・中学校は公立に通った場合 788万円
全て私立に通った場合  1,830万円

子供2人が私立に行く場合などはかなりの出費が必要ですので、それなりの準備と覚悟をしておきたいです。逆に言うと、子供が卒業すると教育負担が一気になくなるため、その資金を投資やローンの返済に回せることになりますので、ここが踏ん張りどころでしょう。

マイホーム

マイホームは買うか買わないかも大きなライフイベントになります。買う場合の費用のイメージをお話ししましょう。国土交通省の「平成30年度 住宅市場動向調査」によると、住宅をはじめて購入する一次取得者の平均年齢は以下の通りで、はじめてマイホームを取得する年齢は30代後半後半から40代が中心です。

分譲マンション  38.8歳
中古マンション  42.1歳
分譲戸建て    37.7歳
中古戸建て    43.5歳
注文住宅  40.4歳

一次取得者の住宅購入価格、自己資金、年間返済金、返済期間の平均は以下の通りです。700万円から1,200万円程度の頭金を用意して、残りを住宅ローンで払うのが平均像のようです。年間負担額は100万円から130万円程度、これが27年〜33年続きます。

分譲マンション  4,581万円 自己資金1261万円  年間返済額130.9万円 返済期間 33.7年
中古マンション  2,647万円 自己資金810万円  年間返済額104.3万円 返済期間 28.5年
分譲戸建て    3,894万円 自己資金713万円  年間返済額116.7万円 返済期間 33.3年
中古戸建て    2,686万円 自己資金907万円  年間返済額115.3万円 返済期間 27.3年
注文住宅  3,901万円 自己資金960万円  年間返済額116.5万円 返済期間 33.7年 

老後準備を本格化

40代はそろそろ真剣に自分の老後を意識しなくてはならない世代です。そして、人生100年時代にむけて、国民年金や厚生年金以外の「自助努力の年金」を形成するために運用を本格的に始めてもまだまだ間に合う年代です。自分の定年退職金の予定額や住宅ローンの返済予定などを確認し、自分の資産運用見直して老後準備を本格化しましょう。

40代のライフイベントと投資の視点

「自助努力の年金」は、政府が「人生100年時代」「老後2,000万円問題」の対策として、老後の資産形成のための長期投資として勧めており、そのための制度が「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「NISA(少額投資非課税制度)」です。

長期の資産形成には、「iDeCo」による積み立て制度を使うことをおすすめします。月々の積立限度額があり、60歳までは解約できないのがデメリットですが、長期運用に適した投資信託などが投資対象であり、「値上がり益」「分配・配当金」に対して非課税のうえ、積立額を年間の所得から全額控除が出来るため、税効果が極めて大きいです。ライフイベントに必要な資金を除いて、投資可能なだけの積立枠は積極的に利用したいところです。資金があると使ってしまう方にとっては、解約できないことが逆にメリットになるかもしれません。

マイホーム、教育費などのイベントへの準備は、「NISA」を選択するのがいいでしょう。税効果は「iDeCo」には敵いませんが、「値上がり益」「配当・分配金」などに対しては非課税です。税率は現在20.315%のため税効果は十分に高いです。

まず、「iDeCo」「NISA」枠を優先し、それでも余資がある場合は、別の投信や株式投資などに振り分けるのがいいでしょう。なお、教育資金や住宅ローンは金融機関各社が比較的低利で様々なタイプのローンを用意してあります。住宅に関しては、現在、住宅減税も実施されています。こうした恩恵はフルに利用していきましょう。

40代は現在の支出と退職後を見据えて運用ポートフォリオのバランスを見直すのに良いタイミングです。具体的には30代で積極的にリスクを取っていた方でも、やや安定運用の商品比率を高めるなどの動きを取ったほうが良いということです。あくまで一例ですが、資産における株式の比率は「100―年齢」を目安にするといいと言われています。45歳であれば55%が株式、残りの45%を債券などの安定資産で運用することで安全性と収益性に配慮してバランスよく運用することができます。

イベント費用と投資のバランスが大切

老後を意識した「iDeCo」への投資とイベントに必要な資金で「NISA」「預貯金」への投資の2本立てを使いこなすバランス感覚が大事です。その感覚は将来の資産運用においても必ず役立ちますのでしっかり身に付けていきましょう。次回、保有している投資信託が大きく値を下げた場合の対処法についてお伝えします。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません(提供:Wealth Road