新型コロナウイルスの影響が直撃した外食産業。持ち帰りが容易なファストフード業が一定の業績を保つ一方で、ファミレス業界はどれほどの影響を受けているのだろうか。ファミレス大手の業績から、業界の動向を探っていく。

特に厳しいファミレス業界の業績

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(画像=山田隆俊)

コロナ禍による外出自粛の影響が外食産業に顕著に表れている。一般社団法人日本フードサービス協会が実施している市場動向調査によると、ファミレス業界の対前年度比月次売上高は以下のように推移している。

2020年1月:100.2%
2020年2月:102.0%
2020年3月:78.8%
2020年4月:40.9%
2020年5月:50.6%
2020年6月:73.5%
2020年7月:77.4%
2020年8月:75.1%
2020年9月:80.3%
2020年10月:91.3%

緊急事態宣言が発令された4~5月は売上高が約半分になるなど壊滅的なダメージを受けたが、7月以降は順調に回復している。Go To Eatキャンペーンが本格的にスタートした10月には90%台まで回復しており、国の施策も業績回復を後押ししているようだ。

とはいえ、第3波の到来によって11月から再度感染が拡大しているため、引き続き予断を許さない状況が続く。

大手の業績と対策

すかいらーく:デリバリーやテイクアウトに注力 自社EC開設も

ガストやバーミヤンなどを擁するすかいらーくホールディングスの2020年12月期第3四半期決算(2020年1~9月)は、売上高が2,135億円で前年同期比25.1%減、営業利益は211億円の赤字となった。

一方でデリバリーやテイクアウト需要は拡大しており、デリバリーの売上は前年同期比35%、テイクアウトの売上は同114%と大きく伸びている。

経営の効率化に向けて、2020年から2021年にかけて約200店を閉店する方針を打ち出した。一方で約80店舗の新規出店も予定しており、不採算店舗を削りながらも採算が見込める出店は継続する方針だ。人件費関連では、2020年の従業員賞与を25%削減することで労働組合と合意し、従業員の雇用は維持する。

ウィズコロナに向けた戦略としては、から揚げ専門店「から好し」の商品のガスト店内販売や、イタリアン業態のグラッチェガーデンズをピザ専門店として再構築するなど、デリバリーやテイクアウトが可能な店舗・配達エリアの拡大を進めており、実施店舗数は2019年10月の1,314店から2020年10月には1,910店へと約1.5倍になっている。

また、楽天やアマゾンといったECサイトで通販事業にも着手しており、2021年には自社サイトを開設する予定だ。

サイゼリヤ:店舗数維持 食事用飛沫防止マスクが話題に

サイゼリヤの2020年8月期決算(2019年9月~2020年8月)は、売上高が1,268億円で前期比19%減、営業利益は38億円の赤字となった。月次の既存店売上では、4月に前年同月比38.6%、5月は同47.8%と大きく落ち込んだものの、7月は70%台、10月は90%台まで回復している。

2020年8月期末における国内店舗数は1,089店で、2019年8月期末の1,093店から微減となったが、2021年8月期は再び増加に転じる見込みだ。

コロナ対策としては、緊急事態宣言発令時にテイクアウト対象メニューを大幅に拡大したほか、8月にオリジナルの食事用飛沫防止ツール「しゃべれるくん」を発表し話題となった。しゃべれるくんは進化を続けており、2020年12月現在は「しゃべれるくん3号」を店舗に配置している。

ロイヤルHD:冷凍食品事業などを強化 テイクアウトやデリバリーに強みを持つ業態開発検討

ロイヤルホールディングスの2020年12月期第3四半期決算(2020年1~9月)は、売上高が611億円で前年同期比42%減、営業利益は160億円の赤字。コロナの影響がグループ事業全体におよび、すべてのセグメントで減収減益となった。

月次のロイヤルホスト既存店売上は、4月に前年同月比42.1%、5月に同54.2%に落ち込んだものの、7月に80%台、10月には90%台まで回復しており、ロイヤルホスト事業における7~9月期の経常損益は黒字に転換している。

2020年は下期賞与を減額するほか、70店舗程度の不採算店の撤退を決定し、10月末までに約40店舗の撤退を完了している。2021年に向けては、家庭用フローズンミールの「ロイヤルデリ」などの事業を拡大するほか、テイクアウトやデリバリーに強みを持つ業態開発を検討する方針だ。

ペッパーフード:Uber Eatsなどデリバリー業者との連携加速

ペッパーフードサービスの2020年12月期第3四半期決算(2020年1~9月)は、売上高が245億円、営業利益は38億円の赤字となった(開示情報が連結業績から非連結での業績に変更されているため、前年同期との比較はなし)。

月次の既存店売上は、4~5月にペッパーランチが前年同期比46.8%、60.9%、いきなり!ステーキが同37.4%、49.4%と苦戦したが、10月にはいきなり!ステーキが74.6%まで回復している。いきなり!ステーキの不採算店撤退は、当初計画の114店舗中61店舗について撤退完了もしくは撤退スケジュール確定済みだ。

コロナ禍においてはデリバリー・テイクアウトに注力しており、Uber Eatsやファインダインに加え、7月にmenu、10月には出前館やDiDiとの連携も開始している。

依然として苦しい状況が続いているファミレス業界

回復基調にあるものの、依然として苦しい状況が続いているファミレス業界。各社とも宅配やテイクアウト、通販事業に注力するなど新たな業態への移行を着々と進めている。

店舗の統廃合などは、しばらく続くかもしれない。家族で気軽に食事を楽しめる「ファミレス」という業態の規模は縮小する可能性があるが、アフターコロナではパワーアップした食のサービス提供者となることに期待したい。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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