投資初心者が気になることの一つに、「投資と貯金の違い」があります。貯金と投資の適切な割合も、よくわからないかもしれません。そこで今回は投資の目的別に、貯金額と投資額の適切な割合について見ていきます。
しっかり理解しておきたい!貯金と投資の違い
投資と貯金は、以下の点が大きくことなります。
預け入れたお金の価値そのものが良くも悪くも変わる
例えば銀行に100万円貯金した場合、(微々たる利息は別にして)途中で引き出さなければ永遠に100万円のままです。この100万円を何らかに投資すると、増えるか減るかは別として、お金の価値そのものが変わります。どの程度増減するかは、運用成果次第です。
投資では実質的に引き出しが制限される
投資とはお金の価値を変える行為であり、価値が上がることもありますが下がることもあるでしょう。お金を引き出すタイミングが悪ければ、損をしてしまいます。例えば終身保険や年金保険などの保険商品のように、一定期間が経過する前に引き出すと損をすることが確定しているものもあります。
したがって「当面使う予定のない貯金」を投資に回し、じっくり時間をかけて価値が上がるのを待つ必要があるのです。
株主優待など、貯金にはないメリットがある
貯金をすれば利息が付きますが、もはや利息目的で貯金をする人はいないくらい金利が低い時代です。投資には損をするリスクがある反面、得をすることもあります。投資先や運用成績にもよりますが「年数%」を狙える可能性もあるため、貯金の利息とはケタ違いといえるでしょう。
また、株式投資なら「配当金」や「株主優待」を受け取れることもあります。
投資の目的別に考える貯金と投資の割合
投資は、「当面使う予定のない貯金」で行うのが基本です。投資にはリスクがあり、短期で大きな利益を狙うほどリスクも大きくなります。投資を行う際は貯金をいくら残し、いつまでにどのくらいの利益を狙うのかを計算し、投資可否を判断しなければなりません。
とはいえ、初心者が必要な利益やそれを得るまでの期間を正しく計算するのは難しいでしょう。そのため、最初は半年~1年分の生活費を貯金として残し、リスクの低いものに投資するのがおすすめです。半年~1年分の生活費がない人は、まずそれを確保してから投資を始めましょう。
貯金を投資に回したら、次は毎月の収入からも少しずつ投資に回すことをおすすめします。
安定的に投資したい場合の割合
安定的に投資したい人におすすめなのが「分散投資」です。決めた割合を毎月投資に回し、その範囲で金融商品を購入します。毎月の投資額は「無理のない範囲」が基本ですが、手取り収入の5~10%が目安です。
すでに当面の生活資金を確保しているなら、家計が赤字にならない範囲・割合で投資に回すとよいでしょう。
積極的にリスクを取って投資したい場合の割合
積極的にリスクを取って投資をしたい場合は、「タイミング」が重要です。タイミングを見計らって金融商品を購入する必要があります。できれば安定投資を上回る割合で投資を続けて、リスクに備えつつリターンを狙いたいところです。
余剰資金に合わせた投資方法
前述のとおり、投資は「半年~1年分の生活費を貯金として残し、余剰資金を投資に回す」のが基本です。投資資金が大きくなるほどさまざまな種類の金融商品への投資が可能になり、投資先を分散することがリスクを減らすことにつながります。最近では投資信託に代表されるように、低額でもリスク分散が可能な金融商品もあります。
投資は基本的に一つの投資先に資産を集中させるほどハイリスク・ハイリターンとなり、分散するほどリスクとリターンは下がります。このことを踏まえて、「自分の余剰資金に合わせたリスクコントロール」をしていきましょう。
50万円未満
余剰資金が年間50万円未満の場合は、「つみたてNISA」を利用した投資がおすすめです。つみたてNISAとは、簡単にいえば「年間40万円まで投資信託で有利に資産運用ができる制度」のこと。つみたてNISAでは、投資で得られた利益に対して課税されないため非常に有利です。
100万円未満
余剰資金が100万円未満の場合は、「NISA」を利用して投資するのがおすすめです。つみたてNISAと似ていますが、NISAなら年間120万円まで投資できます。つみたてNISAでは投資信託にしか投資できませんが、「NISA」では株式などにも投資できますから、検討する価値は十分あるでしょう。
1,000万円未満
余剰資金が1,000万円未満の場合は、「不動産投資」も検討の余地があります。不動産投資は「お金持ちがやるもの」というイメージが根強いですが、近年は「サラリーマン大家」という言葉が一般的になるなど、普通の会社員が不動産投資を行うケースも珍しくなくなりました。不動産投資は安定的な家賃収入が見込めるのがメリットですが、物件の購入時にローンを組むケースがほとんどなので、その返済についても考慮しなければなりません。
投資信託や株式投資の銘柄を増やすのもおすすめです。株式投資は、銘柄によっては1株が100万円を超えるものもあります。
不動産は「現物資産」で、投資信託や株式はいわば「紙の資産」です。どちらが自分に合うのか、じっくり考えた上で選択してください。
1,000万円以上
余剰資金が1,000万円以上ある場合は、さらに選択肢が増えます。一例は「保険商品」です。保険商品は利率が低いものの銀行の利息よりは高く、それでいてほぼ確実に増えます。十分な元本を投資すれば、満足できる利益を得られるでしょう。
一方、FXや先物取引などリスクの高い商品も検討したほうがよいでしょう。これらは数日で元本がゼロになる可能性もありますが、数倍になる可能性もあり、少額の投資でも比較的大きな利益が期待できます。手持ち資金が多くなるほどリスクを抑えられるので、余剰資金が1,000万円以上ある場合は検討してみてはいかがでしょうか。
リスク・リターン別!貯金の運用方法
例えば投資信託でも、国内株式に投資するものか海外株式に投資するものかによってリスク・リターンは大きく変わります。それでも投資信託は、金融商品の中では低リスクに分類されます。ここでは、投資先別のリスク・リターンを見ていきましょう。
ローリスク・ローリターン
ローリスク・ローリターンの代表は「投資信託」です。基本的に1年で数%程度の値動きが多く、初心者が始めるには最適な投資先といえます。
終身保険や個人年金保険などの「生命保険」もローリスク・ローリターンです。途中で引き出すと損になることがあるものの、長期的に見れば資産の増加が期待できる投資先といえます。「生命保険料控除」を利用すれば節税にもつながりますから、検討するとよいでしょう。
ミドルリスク・ミドルリターン
ミドルリスク・ミドルリターンの代表は「株式投資」です。銘柄や市況にもよりますが、1年で±10%程度動くこともあります。投資先が倒産すれば資金がゼロになるリスクがありますが、値上がり益(キャピタルゲイン)をはじめ、配当金(インカムゲイン)や株主優待なども狙えます。
「不動産投資」もミドルリスク・ミドルリターンといえるでしょう。空室が発生すると思うように家賃収入が得られないこともありますが、入居者を確保できれば安定した収入を得られます。ただし、最近の不動産投資では「何をどのように貸すか」も問われるため、オーナーには適切な経営判断が求められます。
ハイリスク・ハイリターン
「FX」は、ハイリスク・ハイリターンが代表といえるでしょう。投資対象が為替なので、値幅の大小は別にしてレートは常に変動しています。FXは初心者にはわかりにくい「証拠金取引」ですが、投資に慣れてきたら試してみるとよいでしょう。
「商品先物取引」もハイリスク・ハイリターンです。銘柄にもよりますが基本的に値動きが荒く、数日で資金が半分になったり、倍になったりすることもあります。資産がマイナスになることさえあるため、十分な投資経験を積んでから始めるようにしましょう。
運用方法① | 運用方法② | |
---|---|---|
ローリスク・ローリターン | 投資信託 | 生命保険 |
ミドルリスク・ミドルリターン | 株式投資 | 不動産投資 |
ハイリスク・ハイリターン | FX | 商品先物取引 |
「貯金だけ」を卒業!投資を始める際に気をつけること
「投資をしてみよう」という心意気は立派です。しかし投資はリスクがあり、勉強も必要ですから、何となく始めるとすぐに嫌気がさすかもしれません。生活に支障が出ることもあるので、始める前にしっかりポイントを押さえておきましょう。
「貯金だけでは足りない」という現実を知ろう
令和元年には「老後資金2,000万円不足問題」が話題になりました。「老後資金は4,000万円」という説もあります。これを貯金だけで準備できるでしょうか?準備できるなら、リスクを取って投資する必要はないでしょう。しかしほとんどの人は準備できないため、やはり投資が必要なのです。
老後資金を貯めるどころか子どもの大学進学費用でさえ、大学生の2人に1人が奨学金制度を使っている時代です。このことも踏まえて、あらためて投資の必要性を認識するべきでしょう。
損得に一喜一憂せず、勉強と情報収集を欠かさない
投資では、得することもあれば損することもあります。損得を繰り返しながら、資産を形成していくのが投資です。取引のたびに一喜一憂していては、長期投資はできません。投資は、「最終的に利益が出ればOK」という気持ちで臨みましょう。
投資の成否を分かつのは、運を除けば「勉強と情報収集」です。投資家にとって、勉強と情報収集に終わりはありません。
ライフプランを作成し、手元に残す貯金額と必要なリスク・利益額を知ろう
投資は、大きなリターンを求めるほどハイリスクになるものです。「青天井で儲けたい」などと考えていると、リスクも青天井になります。自分に必要な利益額を知り、それに見合ったリスクを取るのが基本です。
自分に必要な利益を知るためには、ライフプランを作成する必要があります。ライフプランがれば、その時々で必要な貯金額も容易に把握できるでしょう。作成したライフプランに沿って、計画的に投資を行っていきましょう。
「貯金だけでは足りない」なら、最適な割合で投資もしていこう
今や人生を生き抜くためには、投資は不可欠といえます。家計が赤字にならないように、半年~1年分の生活費を貯金として残し、残りを投資に回すのがおすすめです。まずは、最初の一歩を踏み出すことから始めましょう。
文・婚活FP山本さん(山本昌義さん) CFP🄬 一級FP技能士
山本FPオフィス代表。商品先物会社、税理士事務所、生命保険会社を経て2008年8月に独立。現在は日本初の「婚活FP」として、婚活支援をしながら、婚活中の方や結婚直後の方など、主に比較的若い方のご相談を多数承っています。
【こちらの記事もおすすめ fuelle】
>せこくない、苦しくない、続く「節約術」まとめ
>これで10%オフ!デパコスのオトクな買い方3選
>免税店でさらにお得に買い物する3つの裏ワザ
>イオン系列の株主優待「徹底活用術」生活費を浮かせる3つのポイント
>えっ、知らないの?ヨーロッパでオトクに買い物できる「デタックス」活用法