株式投資に興味があっても「投資にまで回す資金がない」という人もいるのではないでしょうか。そんな人に検討してもらいたいのが「株の積み立て」です。少額から始めることができるため、若い人でも始めやすい点が魅力です。今回は、株の積み立て投資について詳しく解説します。
株の積み立てとは?
株の積み立ては、あらかじめ決めた金額や株数を定期的に買付し積み立てていく投資方法です。銘柄も事前に決めたものに投資していきます。株の積み立ては証券会社で行うことが可能です。証券会社の中には、毎月100円から積み立てできるところもあるため、まとまった金額を準備できない人でも検討しやすい投資方法といえるでしょう。
ここで簡単に通常の株式投資と株の積み立ての違いを紹介しておきます。
【通常の株式投資】
・100株単位など売買単位が決まっているため、ある程度まとまった資金が必要
例)1株3,000円の株を100株購入したい=30万円が必要になる
・値動きを見ながら売買注文できる
・東京証券取引所など取引所に上場している株はすべて売買できる(売買制限がある場合を除く)
【株の積み立て】
・単元株(通常の株式取引の売買単位)での購入もできるが少額からでも投資が可能。証券会社によっては100円から投資可能というところもある
・毎月決まった日に株を買付するため、購入のタイミングを考える必要がない
・少額投資の場合、単元未満株になる可能性が高いため証券会社によっては取引銘柄が限られる
株を積み立てることのメリット
株の積み立てをすることで得られるメリットは、主に次の4つです。
毎月決まった日に定期的に購入するため、購入タイミングを考える必要がない
株の積み立ては、通常の株式売買と異なり毎月決まった日に買付(購入)を行うため購入するタイミングを見る必要がありません。そのため「株式取引をしたいけれど株価を購入するタイミングが難しそう」「株価をチェックする習慣がない」という人でもチャレンジしやすい投資となっています。
時間の分散ができ、ドルコスト平均法の実践ができる
株式は「安いときに買って高くなったら売る」が基本です。ただ買付のタイミングを誤ってしまった場合は、高値で買付してしまう可能性もあります。
株の積み立ての場合は「ドルコスト平均法」を活用できることが大きなメリットです。ドルコスト平均法とは、同じ銘柄を定期的に同じ金額ずつ買付していく投資方法になります。
ドルコスト平均法を活用することで「購入金額の平均化」が実現可能です。同額を買付していくため、株価が低くなればそれだけ多くの株数を購入することができます。具体的に以下で例を挙げてみます。 ※売買委託手数料などは考慮していません。端数は小数点第1位までとします。
例えば以下のような動きをする銘柄があったとしましょう。
株価の推移
日付 | 1月10日 | 2月10日 | 3月10日 | 4月10日 | 5月10日 |
株価 | 500円 | 450円 | 600円 | 480円 | 530円 |
「毎月10日に5,000円ずつ購入」と「3月10日に50株を一度に購入」といった2つのケースの違いを見ていきます。
毎月5,000円ずつ株を購入の場合(ドルコスト平均法)
日付 | 1月10日 | 2月10日 | 3月10日 | 4月10日 | 5月10日 | |
購入株数 | 10株 | 11.1株 | 8.3株 | 10.4株 | 9.4株 | 合計:49.2株 |
買付金額 | 5,000円 | 5,000円 | 5,000円 | 5,000円 | 5,000円 | 合計:2万5,000円 |
・毎月10日に5,000円ずつ5ヵ月間購入した場合
総投資額は2万5,000円で購入株数は49.2株でした。この場合の平均購入株価は「2万5,000円÷49.2株=約508円」です。
・3月10日に50株を一度に購入した場合
3月10日に50株購入した場合は、株価600円×50株=3万円となり買付金額は3万円かかります。
このようにほぼ同じ株数でも1度に購入したとき株価は600円、毎月分散して購入した場合の平均株価は508円とドルコスト平均法で買付したほうが平均購入株価は低くなりました。一度に購入する場合は、508円よりも株価が低くなったところを狙って買えばお得だったわけですが株価の変動はプロでも予測することは難しい傾向です。
この例では5ヵ月のみの推移を見ていきました。ドルコスト平均法を10年、20年といった長期間続けていくことでより一層平均化していくこが期待できるでしょう。またリスク分散になることも初心者向きと言えます。
長期保有ができる
株の積み立てでは、毎月少しずつ株を買付するため、買付金額によっては単元株に満たない「単元未満株」となる可能性もあります。単元未満株は、単元株のように個人投資家が取引所へ売買注文を入れることができません。そのため証券会社に売却を依頼することが必要です。単元未満株を持つ可能性が高くなる株の積み立ては、指定した金額で売却する指値注文ではなく成行注文となります。
売るのに手間がかかるため、長期保有にも向いているでしょう。
少額投資が可能
株の積み立ては、100円(証券会社によって異なる)からスタートできるところもあります。少額から投資ができるため、「株式投資に興味はあってもまとまった資金を準備できない」といった人でも始めやすい点はメリットです。
株を積み立てることのデメリット
株の積み立てには、メリットだけでなく以下の3つのようなデメリットもあります。
購入ごとに手数料がかかる
証券会社によりますが、株の売買をする際には手数料がかかる傾向です。安くできるところややり方次第で手数料を抑えられる会社もありますが、基本的には手数料がかかることを覚えておきましょう。
短期で利益を得ることが難しい
単元株の取引の場合、成行注文ならすぐに売却でき利益も確保できる可能性があります。しかし指値注文の場合は値段によっては取引が成立せずすぐに売却できない場合もあります。
株の積み立てで毎月少額投資を行っている場合、保有するのが単元未満株になっている可能性もあります。そうなるとやり方次第とはなりますが、初心者の場合は短期で利益を得るのは難しいでしょう。
結果的に損をする場合もある
株式は、元本が保証されている金融商品ではありません。企業の業績や政治経済の動向によっては株価が大きく下落することもあります。いくら積み立てで買い続けたとしても株価が上昇することなく下落し続けた場合は、含み損をかかえることもあるでしょう。ただしこれは株の積み立てに限った話ではありません。
投資は元本保証なし、かつ自己責任が原則のため「絶対に利益が出るとは限らない」ということは肝に銘じておきましょう。
株の積み立て投資の始め方
ここまで株の積み立てのメリットや注意点についてご紹介してきました。しかし実際に投資を始めるときは、どのような方法がよいのでしょうか。2つの方法を確認していきましょう。
NISA(一般)を利用して積み立てる
NISAとは、株式や投資信託への投資で得た配当金・分配金・売却益が非課税となる制度です。NISAを利用すると非課税で積み立てを行うことができます。ただし以下の注意点がありますので気を付けてください。
・口座開設数はすべての金融機関の中で1人1口座
・非課税期間は最長5年間
・非課税投資枠の上限は毎年120万円
※2020年時点
NISA口座は、証券会社や銀行などの金融機関で作ることができます。しかし投資対象を株式に限定している場合は、証券会社で作るようにしましょう。また証券会社によってはNISA口座で単元未満株の購入ができないところもあります。少額からの積み立て投資を考えている人は注意してください。
累投で買い付けていく
100円程度の少額投資から始めたい人は「株式累積投資(累投)」で積み立てていくことも方法の一つです。毎月決まった日に自動的に買付が行われるため、ドルコスト平均法の投資が期待できます。少額投資の場合、しばらくの間は単元未満株ですが積み立てていくと単元株となり市場で売却することも可能です。ただし始める際は以下の点に気を付けてください。
・株式累積投資を扱っていない証券会社もある
・単元未満株の場合は株価の動きを見ながらの売り注文ができない
・証券会社によって累投の対象銘柄が決まっている
・単元未満株は株主優待を受け取れない場合が多い
少額からの投資も可能!積み立て投資で株を始めよう
株の積み立てでは少額からの投資ができる点が大きなメリットといえるでしょう。そのため以下のような人にピッタリの投資方法です。
・今は資金がないけれど投資を始めてみたい
・まとまった金額で株を買うのは怖い
・少額投資から始めたい
特に20~30代前半といった若いうちから始めておくと数年後、数十年後に大きな資産となる可能性もあります。1ヵ月数百円から始めて収入が増えてきたら投資額を増やすことも可能です。投資が気になっている人は、ぜひ気軽に始めてみてはいかがでしょうか。
文・田尻宏子
複数の金融機関での勤務経験や証券外務員第一種、ファイナンシャル・プランニング技能士2級の資格を活かし、金融関連専門のライターとして活動中。生損保・不動産・ローンの情報を中心に「誰でも分かりやすい記事をお届けする」をモットーに執筆。
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