新型コロナウイルスの感染拡大が「追い風」となった業界がある。デリバリー業界だ。特に2強の「UberEats」と「出前館」は、激しいシェア獲得争いを繰り広げている。多くの新興組の参入する中、今後業界の勢力図がどのように変化していくのか気になるところだ。
コロナで宅配市場が拡大
新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛措置などによって、「巣ごもり需要」が拡大した。これがゲーム業界や動画サービス業界ではプラスに働いているが、デリバリー業界でも追い風になっている。
店舗に出向かうことなく飲食店の料理を受け取れるデリバリーサービスは、感染リスクを回避しつつ料理の手間も省けるサービスとして脚光を浴び、コロナ以前からサービスを展開していたUberEatsや出前館の利用者が一気に増える結果となった。
2020年はUberEatsや出前館がサービスを展開しているエリアで、デリバリーバッグを背負ったスタッフが自転車で街中を駆け巡る光景が、あちこちで見られるようになった。
UberEats VS 出前館、現在どちらが優勢?
そんなUberEatsと出前館だが、今はどちらがデリバリー市場で優勢なのだろうか。加盟店数を比較してみよう
UberEatsの加盟店数:2万5,000店舗以上
UberEatsは2016年9月に東京でサービスが始まり、3年後の2019年6月時点でレストランパートナー数が1万店舗を超えた。その後公式発表はないが、UberEatsが配信中の広告によると2万5,000店舗以上が加盟しているという。
2020年は11月に三重県四日市市でのデリバリーサービスを開始し、それで32の都道府県に進出したことになる。
出前館の加盟店数:3万5,000店舗以上
出前館は2020年9月に発表したプレスリリースで、加盟店数が3万5,000店舗以上になったことを発表。2020年7月時点では3万店舗だったが、その後1ヵ月半で5,000店舗も増えたことを強調している。
2020年12月には徳島市でも新たにサービスを開始し、進出した都道府県は32となった。同社は2021〜2023年の中期経営計画において、加盟店を2022年までに10万店舗、対象地域を全国に広げる方針を発表している。
加盟店では出前館に軍配?
数字を比較してみると、進出している都道府県数はほぼ同水準だが、加盟店数では出前館のほうが明らかに多い。
ただし、出前館は日本におけるデリバリーサービスの老舗だ。運営会社である株式会社出前館の創業は1999年9月。それを考えると、UberEatsがいかに速いテンポで勢力を拡大しているかがわかる。
続々と新規参入するデリバリーサービス
UberEatsや出前館の他にも、新たなデリバリーサービスを各地域で利用できるようになっている。foodpandaやmenu、Woltなどだ。これらは、UberEatsや出前館と何が違うのだろうか?
foodpanda……ドイツ企業が展開するサービス
foodpandaは、ドイツの料理宅配大手「デリバリー・ヒーロー」が日本で展開するデリバリーサービスだ。2020年9月にサービスを開始し、12月時点で神戸・名古屋・横浜・札幌・福岡・広島・大阪の7都市でサービスを展開している。
料理を届ける時間について「25分以内」とうたっており、食品や日用品を届ける「q-コマース」事業も展開している。
menu……日本ベンチャー発!
menuは、2020年4月に日本のスタートアップ企業が始めたデリバリーサービス。東京23区からスタートし、11月時点で神奈川・愛知・大阪・京都・熊本・福岡・札幌でサービスを提供している。
独自のサブスクサービス「menu pass」(月額980円)に加入すると、基本配達料が無料になるといった割引が受けられる。スタートアップがどこまで大手企業の牙城を崩せるか、注目だ。
Wolt……地方都市からサービスを開始
Woltは、フィンランドから日本に進出したデリバリーサービス。
ユニークなのは、日本国内では2020年3月以降に広島・札幌・仙台の地方都市でサービスを開始した点。Woltは人口密度が低いフィンランドでサービスを成功させており、フィンランドと似た環境の都市から展開するという戦略だ。その後、東京にも進出している。
デリバリー市場は今後も拡大していくのか?
コロナ禍を機にデリバリーの利便性に気づいた人は多く、デリバリー市場は今後も右肩上がりの状況が続くと見られている。外食・中食市場情報サービスを扱うエヌピーディー・ジャパンによると、2019年に4,200億円弱だった出前市場は2020年に6,000億円規模まで拡大した。
デリバリーサービスが続々と登場する中、各社は強気のクーポン戦略を打ち出し、利用者の奪い合いが激化している。いずれ勝ち組と負け組がはっきりし、業界再編が起きるかもしれない。
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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