「株の利回り」とは何でしょうか。何となく言葉としては知っているものの、「正確な意味はわからない」という方は多いのではないでしょうか。

単に「株の利回り」といっても種類があるため、どの利回りを指しているのかわからないということも、理解が難しい原因の一つでしょう。

本記事では「株の利回り」のうち、特に「配当利回り」について解説します。配当利回りの計算方法やおすすめの高配当銘柄も紹介するので、知識の整理に役立ててください。

株の利回りとは

株,利回り,とは
(画像=PIXTA)

まずは、「株の利回り」の概要を確認しておきましょう。

「株の利回り」は、「配当利回り」を指すことが多い

株の利回りにはいくつか種類がありますが、単に「株の利回り」という場合は「配当利回り」を指すことが多いです。

配当利回りは以下の式で算出される数値で、「投資額の何%を配当としてもらえるか」を表します。

配当利回り=配当金÷株価

例えば配当金が10円、株価が1,000円なら、10円÷1,000円=0.01(=1%)です。

✔︎配当金とは
配当金とは、企業が利益の一部を株主に支払うものです。株主は利益の一部を受け取る権利があるため、配当金を受け取れます。

【配当利回り=受け取れる配当金の目安】
配当利回りを利用すると、配当金の額を簡単に把握できます。
例えば配当利回り1%は「投資額の1%分の配当金を受け取れる」という意味なので、投資額が100万円なら1万円です。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

その他の利回り

参考までに、「配当利回り」以外の利回りの種類も確認しておきましょう。

【優待利回り】
優待利回り=株主優待÷株価

優待利回りは「投資額に対して何%の株主優待が得られるか」を表すもので、株主優待を現金価値に換算して算出します。

【投資利回り(運用利回り)】
投資利回り=(値上がり益+配当)÷投資額

投資利回りは、「投資額の何%の利益を得られたか」を表します。例えば、100万円の投資額に対して値上がり益が10万円、配当が2万円なら、投資利回りは12%になります。

「株の配当利回り」の注意点

配当利回りを見る上では、注意したいポイントが2つあります。

配当利回りの注意点1:配当はあくまで予想 実際には出ないことも

配当金は銀行預金の利息と違って、必ず出るものではありません。業績悪化などによって配当が出なくなる可能性もあります。

【配当金にまつわる用語】
配当金にまつわる用語を覚えておくと、配当金を理解しやすくなるでしょう。

無配(むはい):配当金が出ないこと
減配(げんぱい):配当金を減らすこと
増配(ぞうはい):配当金を増やすこと
復配(ふくはい):無配になった後、再び配当金を出すこと
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

配当利回りの注意点2:値動きで変動 極端に高い銘柄には注意

配当利回りの計算には株価を使いますが、株価は日々変動しているため配当利回りも日々変動します。株価が低くなるほど、配当利回りは上昇します。

基本的には配当利回りが高いほど良いのですが、極端に高い銘柄には注意しましょう。業績悪化で株価が下落した結果、配当利回りが上昇しているケースがあるからです。

業績が悪化している場合は、減配もしくは無配になる可能性が高いです。見かけの配当利回りに惑わされないようにしましょう。

株の配当はいつもらえるの?スケジュールを確認

株の配当金を受け取るには、いつまでに買えばよいのでしょうか。また買った後、いつ配当金をもらえるのでしょうか。配当金にまつわるスケジュールを確認しておきましょう。

買いの期限 「権利付き最終日」までに買う

配当を受け取るためには、「権利付き最終日までに買う」と覚えておきましょう。

配当金を受け取るには、その企業が指定する月の月末時点で株主になっている必要があります。そこから逆算し、「この日までに買っておけば配当金がもらえる」という日を「権利付き最終日」といいます。

ただし権利付き最終日に買っても、その日のうちに売ってしまうと配当金はもらえません。

権利付き最終日は銘柄によって異なるため、買う前に確認しておきましょう。

【年に複数回配当を支払うケースも】
配当金は企業の決算期ごとに支払われるケースが多いのですが、通年の本決算以外に、中間決算や四半期決算ごとに支払うケースもあります。

複数回支払われる配当金をすべて受け取るには、それぞれの権利付き最終日までに株主になっておかなければなりません。

2~3ヵ月後に配当がもらえる

権利付き最終日までに株を買い、配当金を受け取る権利が確定すると、2~3ヵ月後に配当金を受け取れます。

配当の受け取り方

配当金を受け取る方法はいくつかあります。それぞれの概要を押さえておきましょう。

・配当金領収証方式(従来方式)
郵送される配当金の受領証を銀行などの窓口に提出し、配当金を受け取ります。

・株式比例配分方式
その株式を預けている証券会社の口座に直接入金されます。

・個別銘柄指定方式
株式ごとに銀行口座を指定し、それぞれの口座に配当金が入金されます。

・登録配当金受領口座方式
すべての株式の配当金が、指定する1つの銀行口座に直接入金されます。

【配当金の受け取り方は証券会社で設定する】
配当金の受け取り方は証券会社で手続きし、設定します。複数の証券会社で取引している場合、「株式比例配分方式」と「登録配当金受領口座方式」はどこか1社で手続きをすると、他の証券会社にも自動的に適用されます。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

高配当利回り株を探すポイント

配当利回りが高い株は、どのように探せばよいのでしょうか。

基本的には配当利回りをチェックしますが、業績不振による株価下落によって配当利回りが上昇している銘柄もあります。

見かけの配当利回りにだまされないためには、業績のチェックが欠かせません。特に2つのポイントを確認しましょう。

1.業績が安定しているか

企業によっては、業績が安定していないところもあります。安定的に利益を出していない企業は、配当金の予測が困難です。業績の推移を確認し、売上や利益が安定しているかどうかをチェックしましょう。

2.配当性向(はいとうせいこう)の目標をチェック

企業によっては、「利益の何%を配当に回す」という目標を公表しているところがあります。これを「配当性向」と呼び、以下の計算式で計算されます。

配当性向=1株あたりの配当金÷1株あたりの純利益

高い配当性向を目標としている場合は、受け取れる配当金も大きくなる傾向があります。

すべての上場企業が目標とする配当性向を公開しているわけではありませんが、公開している場合はチェックするようにしましょう。

高い配当性向の目標を設定している株の例
〇ソフトバンク(9434):85%
〇松井証券(8628):60%
〇GMOフィナンシャルHD(7177):60%
〇コマツ(6301):40%

【スタートアップは配当性向が低い傾向】
設立間もない企業、いわゆるスタートアップ企業の配当性向は低めです。スタートアップ企業は、利益を配当金に回すよりも自社の成長のために使いたいからです。

配当性向が低い企業が悪いわけではありませんが、配当金を重視するなら配当性向が高い企業の株を選びましょう。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

「配当貴族銘柄」 連続増配している企業

配当金を増やし続けている企業を「配当貴族」と呼びます。当初の配当利回りが低くても、配当金が増え続けるなら投資妙味がありますよね。

日本においては、10年以上毎年増配している、または安定して配当を出している企業で構成される指数「S&P/JPX配当貴族指数」が参考になります。

この指数の上位10銘柄は以下のとおりです。

【S&P/JPX配当貴族指数 上位10銘柄(2020年12月末時点)】
1位:JT(2914)
2位:デンカ(4061)
3位:五洋建設(1893)
4位:大東建託(1878)
5位:三菱ガス化学(4182)
6位:豊田通商(8015)
7位:三共(6417)
8位:クレハ(4023)
9位:アサヒHD(5857)
10位:オリックス(8591)

「記念配当」 アニバーサリー企業もポイント 

上場企業の中には、通常の配当とは別に、会社設立などの周年のタイミングで「記念配当」を支払うところがあります。

記念配当を予想するのは難しいですが、その企業の創業年などを調べてみると面白いかもしれません。

おすすめの高配当利回り株式10銘柄

ここからは、おすすめの高配当利回り株を10銘柄ご紹介します。

対象は東証一部に限定し、比較的海外の影響を受けにくい銀行や建設といった「内需系企業」の中から、予想配当利回りが5%を超える株を選びました。

予想配当利回りが高い順に並び替えると、以下のようになります。

  株価
※2021.1.12終値
予想配当 予想配当利回り
JT
(2914)
2,048円 154円 約7.52%
ソフトバンク
(9434)
1,352円 86円 約6.36%
あおぞら銀行
(8304)
1,978円 122円 約6.17%
東和銀行
(8558)
665円 40円 約6.02%
淺沼組
(1852)
4,150円 250円 約6.02%
日本郵政
(6178)
846円 50円 約5.91%
長谷工コーポ
(1808)
1,206円 70円 約5.80%
三十三フィナンシャルG
(7322)
1,284円 72円 約5.61%
三機工業
(1961)
1,254円 70円 約5.58%
三井住友フィナンシャルG
(8316)
3,480円 190円 約5.46%
※予想配当は、2021年1月12日時点における直近の決算短信から

予想配当利回りが最も高かったのは「JT」で、7%を超えています。JTは「S&P/JPX配当貴族指数」の構成比でも1位でした。配当金を重視する方は、押さえておくべき銘柄といえるでしょう。

上記は、あくまで執筆時点の予想配当利回りです。配当金が変更された場合や株価が変動した場合は、予想配当利回りも変わります。

株は見かけの利回りにだまされないよう注意

前述のとおり配当利回りはあくまで予想なので、実際の配当金は事前にチェックした配当利回りと異なることがあります。

見かけの配当利回りにだまされず、業績を確認しながら優良銘柄を選ぶようにしましょう。

文・若山卓也(ファイナンシャルプランナー)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業、保険募集代理業、金融系ライターとして活動しています。関心のあるジャンルは資産運用や保険、またお得なポイントサービスなど。お金にまつわることなら幅広くカバーし、発信しています。AFP、プライベートバンキング・コーディネーター資格保有。

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