株式投資初心者には長期投資が良いとよくいわれる。その理由は何だろうか?短期投資であるスイングトレードやデイトレードと何が違うのか?ここでは、長期投資のメリットを紹介する。デメリットやおすすめの銘柄も含めて解説するので、これから株式投資を始めようとする人は参考にしてもらいたい。

1,株の長期投資とは?

株式投資の投資スタイル
(画像=MONEY TIMES編集部制作)

株式投資にもさまざまな種類があり、それぞれ特徴がある。代表的な投資手法である長期投資と、短期投資に分類されるスイングトレードやデイトレードを比べて見てみよう。

長期投資とは?3年以上同一株式を保有するスタイル

株式の運用スタイルは、短期投資と長期投資の大きく2つに分けられる。厳密に投資期間が定められているわけではないが、数年単位、長ければ数十年単位で同じ株式を保有し続ける投資スタイルを長期投資と分類する。目安としては、3年が多い。

短期投資との違いは、短期的に株式の売買を繰り返す必要がないため、24時間変動し続ける株価を毎日気にかける必要は少なく、サラリーマンが副業としてスタートするのに適している点が挙げられるだろう。また、売買を短期的に繰り返すとその都度取引手数料がかかるが、長期投資の場合は一度購入すると、売るまでしばらく時間が空く。つまり、トータルで見たときにコストを抑えることが可能だ。

スイングトレードとは?数日から数週間単位で売買する

数日から数週間の単位で銘柄を買い換えていくスタイルをスイングトレードという。株を保有する期間は長期投資ほど長くはないが、後に説明するデイトレードほど短期間でもない。資金を振り回すように決められた短期でトレードをこなしていくスタイルであるため、「スイング」という名前になっている。

スイングトレードは、トレードの波に乗って大きい利益を得られる可能性のある取引だが、売買タイミングが非常に重要となる。トレンドに乗った瞬間がピークであるとすれば、後は下降するばかりでかえって損することもあるだろう。

チャートを見て、相場を読み解く力が必要となってくる。

デイトレードとは?1日のうちに売買する手法

デイトレードは、その名の通り1日のうちに売買を完結させる短期投資の手法だ。省略して「デイトレ」と呼ばれることもある。1日のうちに資産の増減を体感できるため、取引している実感が沸きやすいだろう。

しかし、デイトレードは適切な売買のタイミングを図るために、頻繁にチャート画面をチェックしておく必要がある。一瞬目を離した隙に、最も高い利益が得られるポイントを逃してしまう可能性もあるだろう。

サラリーマンが片手間に行うのは難しく、専業トレーダーや個人投資家に人気の高い手法だ。動きの激しい1日の相場の流れを読むのは、初心者には難しい。

2,長期投資の6つのメリット 株初心者に合っている理由

長期投資のメリット
(画像=MONEY TIMES編集部制作)

株式投資で代表的な投資手法は以上の3点になる。中でも長期投資は初心者に向いているとされている。その理由は長期投資が持つ6つのメリットが原因だ。それぞれを詳しく見ていこう。

メリット1,企業の業績に左右されづらい

長期投資の最大の特徴は、投資家が短期的に株式売買を繰り返さず、企業の成長を長期間じっくり待ってから株式を売却することにある。四六時中変動する株価を気にかける必要がないので、仕事で多忙を極めるビジネスパーソンのライフスタイルに適した投資スタイルといえる。

同一の企業の株式を長期間保有することによって、企業の成長による株価上昇で値上がり益を見込める点は大きなメリットだ。それに加えて、長い目で見た場合の、世界経済全体の成長に伴う株式相場の上昇も、保有する株価上昇の追い風になる。

メリット2,インカムゲインを狙える

長期投資では、キャピタルゲインだけでなくインカムゲインも狙える。株式投資の利益には2種類ある。1つは売却益であるキャピタルゲイン。もう1つは保有しているだけで受け取れる配当金や株主優待などのインカムゲインだ。

配当金や株主優待は、日本株では半期1回ないしは1年に1回の銘柄が多い。スイングトレードやデイトレードの場合は、短期間で売買を行い、利確を目指すことが基本戦術となるため、インカムゲインについては考慮されないことが多い。

一方で長期投資になれば、配当金や優待が設定されている銘柄であれば、それらは確実に受け取れる。

メリット3,取引コストを削減できる

株式投資では、売買手数料はコストとして利益を圧迫する。

長期投資は、短期投資のように取引が頻繁にあるわけではないので、取引手数料などのコストを削減できる。通常は、株価が上がり切ったと思われる局面で1度売却するだけだ。そのため、売却時の取引手数料や税金を短期投資に比べて抑えられるのも重要なメリットだ。

メリット4,空いている時間にできる

長期投資は短期投資と異なり、1日中相場を見張っている必要がない。短期での時間制約がないため、サラリーマンなど日中に本業がある人でも隙間時間に始められるメリットがある。最初は相場を読む力がなくても、勉強しながら取引を進められるので初心者にもおすすめだ。

メリット5,精神的負担が少ない

短期投資の場合、相場の急激な変化に対応できるように相場を常に見張っていなければならないことがある。デイトレードもスイングトレードもチャンスを逃せば、利益を逃すばかりか大損になるリスクがあるからだ。

長期投資でももちろん相場を気にかける必要はあるが、短期投資ほど頻繁にチェックする必要はない。相場の急な変動に左右されて、大急ぎで取引を行うといった、精神的な負担は少ないといえるだろう。

メリット6,株主優待で長期保有特典がつくことがある

銘柄によっては株主優待の恩恵を受けることもできる。配当金とは別に、年に1回か2回、株式を保有する株主への感謝の気持ちとして贈られるのが株主優待であり、対象は自社製品・地域の名産品・クーポン券などさまざまだ。株式を3年以上保有する長期保有株主や、多くの株式を保有する株主を優遇する株主優遇策を設けている企業もある。

3,長期投資向け銘柄を判断する5つのポイント

長期投資向け銘柄の判断ポイント
(画像=MONEY TIMES編集部制作)

長期投資を始めたいと思っても、どのような基準で銘柄を選ぶべきか分からない人は多いだろう。長期投資向けの優良銘柄を判断するためのポイントを整理しておこう。

ポイント1,業績が伸びている

まず、業績が順調に伸びているかどうかをチェックしよう。株価は会社の業績に左右されるため、長期的に業績が安定して伸びていることが重要だ。

日本株であれば、主に日本人を顧客としている内需株から始めてみるのも手だ。内需株は為替に左右されにくい傾向があり、外需株よりも株価変動の変数が少ない。小売株、外食株、通信株、電鉄株、食品株などが内需株にあたる。

会社の業績を知るには、その会社のホームページで決算短信や有価証券報告書を調べてみると良いだろう。有価証券報告書では直近5年分の決算しか見られないが、直近の有価証券報告書と5期前の有価証券報告書を見れば、過去10年間の業績や経営指標を確認できる。

ポイント2,利益率が高い

利益率が高いことは、売上に対して経費が抑えられているということだ。競合他社に比べて優位性が高いため、以後の会社の成長に期待できる。

会社の利益率は企業の決算に掲載されている。基本的に5~15%の利益率であれば高いとされている。

一方で利益率が10%という理由だけで、銘柄を購入することはやめておこう。一時的なブームで利益率が高くなっているだけの可能性もある。3~5年は安定した利益率を保っていることを確認しよう。

ポイント3,自己資本比率が高い

自己資本比率は、会社の総資産を総資本で割った値で表される。算出される自己資本比率が大きいことは、会社の資産の中でも負債より資本が上回ることを意味しており、倒産しにくいとされている。

基本的に自己資本比率は40%を超えていれば十分とされているが、70%以上の会社であればまず問題はないだろう。

ポイント4,株価が割安

4つ目のポイントは、株価が割安であることだ。業績が伸びていて、かつ利益率も高い会社は注目されやすいため、総じて株価が割高になる傾向にある。

株価が割高なときに投資すると、その後下落局面が続くことも考えられる。再び業績の伸びが鈍化すると成長期待がなくなり、損失を被る可能性もあるからだ。

株価が割安であるかどうかを判断する基準の1つに、PER(株価収益率)がある。PERは「株価÷1株当たりの利益」で算出でき、基本的に15倍未満であれば株価が割安ということになる。

とはいえ、会社の業績は利益の大きさだけで判断できるものではない。総合的に会社の株価が割安かどうかを判断するには「企業価値評価手法」が良いだろう。財務諸表を読み解く必要があるが、取引ツールによってはそれが分かるようになっているものもあるので活用してみよう。

ポイント5,連続増配されている

株主還元が積極的にされているかどうかも重要なチェックポイントだ。企業が行う株主還元の代表的な方法が株主への配当である。配当金が連続で増加していることは、株主還元意識も高く、それを支払う余力もある1つの目安となる。

株主還元が積極的にされているかどうかは、「1株配の変化」を見れば分かる。純利益が増加しているとともに配当も増加している会社は、株主還元に積極的であると見ていいだろう。ただし、企業によっては設備投資などに充てていることもあるため、必ずしも株主還元があるとは限らない。

4,長期投資向けおすすめ銘柄5選

上記のポイントに注目した上で、長期投資におすすめの銘柄を5つピックアップした。

おすすめ銘柄1,オリックス(銘柄コード:8591)

オリックスは、同社と連結子会社850社、関連会社170社から構成されるグループ会社だ。2021年1月19日時点のデータで株価1,790円、配当利回りは4.25%となっており、株主優待を2021年3月に予定している。業績推移は下降気味ではあるものの、会社の想定利益を実績が大幅に上回っていることからも今後に期待が持てる。

おすすめ銘柄2,ソフトバンク(銘柄コード:9434)

ソフトバンクは、コンシューマ事業および法人事業、流通事業の3つの事業セグメントからなるグループ企業だ。業績は右肩上がり、株価は2021年1月19日時点で1,363.5円と割安になっている。株主優待の予定はないが、配当利回りは6.31%と高ポイントを記録している。

おすすめ銘柄3,りそなHLDG(銘柄コード:8308)

りそなHLDGでは、銀行や信託業務をはじめとする金融サービスを提供している。2021年1月19日時点での株価は384.9円、配当利回りは5.46%である。一時業績の落ち込みが見られたものの回復に向かっており、株主優待もある。

おすすめ銘柄4,ENEOS HLDG(銘柄コード:5020)

旧名JXTGホールディングスのENEOSホールディングスは、エネルギー事業、石油・天然ガス開発事業、金属事業の3つのセグメント事業を主軸としている。2021年1月19日時点での株価は417.7円、配当利回りは5.27%だ。現時点で株主優待情報はない。

おすすめ銘柄5,三菱UFJ FG(銘柄コード:8306)

三菱UFJフィナンシャル・グループは、銀行・証券事業を中心とした7つのセグメント事業からなる。2021年1月19日時点での株価は494.6円と割安だ。株主優待の予定はないが、配当利回りは5.05%と高水準になっており、今後に期待できる銘柄だ。

番外編:米国株

為替リスクが気にならないのであれば、米国株を購入してみるのも1つの手だ。PER(株価収益率)こそ低いものの、ROE(自己資本利益率)が高い傾向にあるため投資する価値はある。ROEが高いことは、競争率の高い米国市場においても高成長の証明であり、競争力の強いIT株、日用品株、消耗品関連株は長期投資向けといえる。

5,長期投資の3つのデメリット

長期投資のデメリット
(画像=MONEY TIMES編集部制作)

メリットが多いように思える長期投資にもデメリットがある。ここでは、大きく3つに分けて解説しよう。

デメリット1,資金効率が低い

最大のデメリットは、資金効率が低い点だろう。長期間ポジションを保有するだけに、一度投資した資金を取り戻すのに数年かかってしまう。これが短期投資であれば、短期間で利益を得て、得た利益をまた次の投資に回すなど投資効率が良くなる。

デメリット2,忍耐力が必要

長期投資の戦術はその名の通り、長期的に株を保有することで利益を得ること。企業が成長するのを待つ必要があるが、企業や事業は数日で成長することはない。十分な利益を得られるまでは数年かかることを覚悟しておく必要があるだろう。

また株価が下がったときでも、あわてて売却することなく、じっくり待つスタンスも必要だ。早急に利益を出したいと考えている人にとってはデメリットといえる。

デメリット3,失敗したときのロスは大きい

株式は長期で運用することによって、大幅な株価上昇による値上がり益を期待できる。ただし、これは株式の発行元企業の成長が前提となったシナリオだ。株式購入時の見込みに反して企業の業績が伸びなかったり、最悪の場合は倒産してしまったり、株式相場が大暴落するような想定外の世界の突発事件に直面することもある。株式を長期間保有することは、こうした不測のリスクを負う可能性もあることを忘れてはならない。

また想定と大きく外れて失敗してしまった場合、資金だけでなく、それにかけた膨大な時間を棒に振ってしまうことになる。

6, 株式の長期投資は「分散投資」と「ファンダメンタル分析」を心がける

長期投資で心がけたいこと
(画像=MONEY TIMES編集部制作)

メリット・デメリットのある株式の長期投資で最終的に利益を上げるには、リスクを低減することが第一だ。投資の基本である「分散投資」は長期投資でも例外ではない。同一の株式を長期保有することで発生する株価変動リスクに対しては、銘柄を数種類保有することで資産の分散を図りたい。最初に株式を一括購入するだけでなく、時期をずらして、または株価が低迷する際に買い増しをすることもゆくゆくは利益を生み出すことにつながる。時間の分散もまた分散投資には重要だ。

もう1つ怠ってはならないのが企業の業績を予想するために行う「ファンダメンタル分析」だ。長期投資で利益を上げるには企業の将来的な成長が欠かせない。企業の成長性を見積もるには、企業の業績や財政状態を分析して投資先としてふさわしいかを判断する必要がある。

株式の長期投資においては、ファンダメンタル分析は購入時だけに関わるものではない。長期間株式を保有する間に、変化し続ける企業の財務状態や業界を取り巻く環境を随時分析することが求められる。

それによって、企業の実力に対して株価が大幅に低いと判断されれば買い増しをする、または企業の適正株価よりはるかに高い株価を付けていると判断できれば売却するといった臨機応変な対応も、株式の長期投資には欠かせない。

執筆・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。

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