インドは人口が多く、IT教育が進んでいる新興国だ。経済が好調なため投資先として興味がある人もいるだろうが、インド株を日本から直接購入することはできない。インド株へ投資する方法や商品の情報、それらを取引できるおすすめの証券会社を比較していきたい。
1,インドはIT大国でありグローバルなIT企業が多い
インドという国とインドの株式市場にはどのような特徴があるのか。それらの概要を紹介しよう。
インドは近い将来に中国の人口を抜き人口世界一になるIT大国
インドは人口13億人を超え、中国に次いで世界で2番目に人口が多い国だ。国連の予想では、2027年ころには中国を抜いて人口世界一の国になり、2040年代には人口16億人に達する見込みである。
インド経済は好調であり、実質GDP成長率は1992年以降30年近く3%以上を維持している。リーマンショック時は大きく落ち込んだものの、3%以上の実質GDP成長率を維持した。2019年の実質GDP成長率は4%あまりであった。
インドは国策としてITへ投資をし、大学などでITを専攻する優秀な学生も多いことから、今後IT分野でのさらなる発展が期待できる。
インド株式市場の時価総額上位にはITサービス企業と銀行が多い
インド株式市場の時価総額上位には、石油化学、ITサービス、銀行、金融、通信、塗料の企業などが並んでいる。なかでもITサービス企業と銀行が多いのが特徴だ。
時価総額の上位にITサービス企業が多いのは、IT大国のインドならではといえる。経済が大きく成長している国は銀行が企業として成長する傾向があり、時価総額上位の銀行が多いのもそれを反映した結果と考えられる。
代表的な株価指数はSENSEX指数とNifty 50指数
インドの代表的な証券取引所は、ボンベイ証券取引所(Bombay Stock Exchange:BSE)とナショナル証券取引所(National Stock Exchange:NSE)だ。
BSEは1875年に設立されたアジア初の歴史がある証券取引所である。BSEの代表的な株価指数は、SENSEX指数(S&P BSE SENSEX)であり、BSEに上場する30の大企業で構成される。
NSEは1992年に法人化され、1994年に株式取引をスタートしたインド最大の証券取引所だ。NSEの代表的な株価指数は、Nifty 50指数であり、NSE上場の13セクターの50銘柄で構成される。
インドの主要企業はBSEとNSEの両方に上場しており、SENSEX指数とNifty 50指数には同じ企業が多く含まれている。
2,日本の証券会社を利用してインド株に投資する3つの方法
インド株へ日本から直接投資することはできない。これはインド政府が外国人の投資家に対し制限をかけているためである。ただし間接的にであれば日本の証券会社からもインド株への投資が可能だ。主な方法は「ADR」「ETF」「投資信託」の3つである。
方法1……ADRを利用すればインドの個別株への投資が可能
ADR(American Depositary Receipt:米国預託証券)は、米国以外の国の企業の株式を裏付けとして、米国で発行される有価証券である。ADRを買うことで、株式の保有とほぼ同様の投資効果を得る。
インド株に対するADRの仕組みは、米国の銀行がインドのA社株を購入してインドの銀行へ預け、米国の銀行は預けた株を裏付けとして預託証券(預かり証券)を発行し、米国の銀行とA社が預託証券を米国証券取引所に上場させたものだ。
米国証券取引所に上場したADRは、米国の上場企業と同等の情報開示の義務があり、投資情報を得やすいメリットがある。
ADRを保有すれば、実際の株主と同じように配当金を受け取れる。株主としての議決権を行使できるかは、ADRを販売する証券会社によって違う。
ADRのメリットは、インドの個別企業へ投資できることだ。インドに注目している企業があれば、ADRの買い付けで、その企業への投資が可能だ。
ADRのデメリットは、個別企業への投資になるため、ETFや投資信託と比べてリスクが高いことである。
方法2……ETFには海外ETFと国内ETFがありインデックス運用が可能
ETF(上場投資信託)には、インド株を資産に組み込む商品がある。インド株のETFを買い付けることで、間接的にインド株へ投資できる。
ETFは複数のインド株やその関連商品を資産に構成し、複数のインド企業へ分散投資できる金融商品だ。個別の企業へは投資できないものの、分散投資により投資リスク低減を期待できる。
ETFの多くはインデックス型であり、株価指数に連動する運用成果をめざすインデックス運用ができる。ETFには、海外の株式市場に上場している海外ETFと国内の株式市場に上場している国内ETFがある。
海外ETFと国内ETFのメリットは、多くがインデックス型のために、投資信託に比べて保有中のコスト(信託報酬)が低めなことだ。
海外ETFのデメリットは、取引の際に取引手数料や為替手数料を負担する必要があることである。国内ETFのデメリットは、インド株のETFの銘柄が非常に少なく、商品の選択肢がほとんどないことだ。
方法3……投資信託のうちインド株へ投資するものの多くがアクティブ型
投資信託には、インド株を資産に組み込む商品がある。ETFと同じように、インド株の投資信託を買い付けることで、間接的にインド株へ投資できる。投資信託はETFと同様に複数のインド企業へ分散投資が可能だ。
日本で組成・販売されるインド株の投資信託は、多くがアクティブ型であり、インドの株価指数を上回る運用成果をめざすファンドである。
投資信託のメリットは、証券会社によっては買い付け手数料が無料なことと、100円などの少額から積立投資ができることだ。
投資信託のデメリットは、多くがアクティブ型のために信託報酬が年1%以上と高めなことである。
「ADR」「ETF」「投資信託」それぞれにおすすめの人とは
ADRは、個別のインド企業に投資したい人におすすめだ。投資したい企業があるなら、その企業のADRを買い付ければいい。ただし、ADRとして上場しているのは一部のインド企業のみなので注意したい。
ETFは多くがインデックス型のため、インドの株価指数に連動する投資成果を望む人におすすめだ。ETFのうち、国内ETFは商品数が非常に少ないものの、証券会社によっては手数料無料で取引できるため、手数料を抑えたい人や短期で取引したい人に向いている。
投資信託は、インド株を少額から積立投資したい人におすすめだ。ただし、インド株の投資信託は多くがアクティブ型のため、買い付けの前に投資信託の良し悪しを判断すべきである。アクティブ型の投資信託の選択には投資の知識が必要となる。
3,インド株を取引できる証券会社3社を徹底比較
ADR、ETF、投資信託のインド株へ投資する3つの方法は日本の証券会社でも利用できる。それらのインド株の商品へ投資できるおすすめの証券会社3社を比較する。
項目 | 商品種別 | SBI証券 | 楽天証券 | マネックス証券 |
銘柄数 | ADR | 8銘柄 | 14銘柄 | 8銘柄 |
海外ETF | 5銘柄 (内、米国ETF 3) |
6銘柄 (内、米国ETF 3) |
4銘柄 (内、米国ETF 3) |
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国内ETF | 1銘柄 | 1銘柄 | 1銘柄 | |
投資信託 | 20本以上 | 20本以上 | 15本以上 | |
取引時間 | ADR 米国ETF |
日本時間 23:30~翌6:00(サマータイム:22:30~翌5:00) 現地時間 9:30~16:00 |
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取引手数料 (税込) |
約定代金の0.495% ・最低手数料:0ドル ・上限手数料:22ドル(円換算 2,288円) |
約定代金の0.495% ・最低手数料:0ドル ・上限手数料:22ドル(円換算 2,288円) ※売却時のみ現地取引費用負担あり |
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為替手数料 | 0.25円(円換算 約0.24%) | 円→米ドル時0円(2021年3月見直しの可能性あり) 米ドル→円時0.25円(円換算 約0.24%) |
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決済方法 | ・米ドルによる外貨決済 ・日本円による円貨決済 |
ADRの取り扱い銘柄数では、楽天証券が14銘柄と他2社をリードする。海外ETFの取り扱い銘柄数は、3社ともに米国ETF 3銘柄の取り扱いがある。SBI証券の海外ETF残り2銘柄とマネックス証券の海外ETF残り1銘柄は香港市場のETFである。楽天証券の海外ETF残り3銘柄は、香港市場とシンガポール市場のETFだ。
香港市場とシンガポール市場の取引時間や取引手数料などは、証券会社ごとの解説にて後述する。
国内ETFのうちインド株の商品は、野村アセットマネジメントの「NEXT FUNDSインド株式指数・Nifty 50連動型上場投信」である。投資信託は、3社ともにインド株の商品としては銘柄数が最も多い。
ADRと米国ETFの取引手数料は、3社でほぼ同じだ。ADRと米国ETFの為替手数料は、マネックス証券の米ドルの片道手数料が無料(近い将来に見直しの可能性あり)である。
ADR、海外ETF、国内ETF、投資信託といった商品の種別によって、銘柄数や取引時間、手数料などが異なるため、どの種別の商品を取引するのかを絞り込んでから証券会社を比較するといいだろう。
4,インド株を取引できる証券会社3社の特徴
ADRや海外ETFを取引するには、それらを取り扱う証券会社を利用する必要がある。ADRや海外ETFの取り扱いが豊富な証券会社3社の特徴を確認しよう。
SBI証券……ネット証券口座開設数No.1で9ヵ国の海外株式取引に対応
SBI証券は日本のネット証券をリードする証券会社といえる。取扱商品が豊富で、取引手数料は主要ネット証券最低水準であり、9ヵ国の海外株式の取引が可能だ。ADRや海外ETF、投資信託の取り扱い数も多く、インド株を投資対象とする商品を多く取り揃えている。
ADR・米国ETF、香港上場ETF、国内ETF、投資信託の取引手数料は主要ネット証券で最低水準であり、米ドルや香港ドルの為替手数料も同じく最低水準だ。
決済方法は、米国市場と香港市場の商品で外貨決済と円貨決済の両方に対応している。
項目 | 商品種別 | 内容 |
銘柄数 | ADR | 8銘柄 |
海外ETF | 5銘柄 (内、米国ETF 3、香港上場ETF 2) |
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国内ETF | 1銘柄 | |
投資信託 | 20本以上 | |
取引時間 | ADR 米国ETF |
日本時間 23:30~翌6:00 (サマータイム:22:30~翌5:00) 現地時間 9:30~16:00 |
香港上場ETF | 日本時間 10:00~10:30 プレ・オープニング 10:30~13:00 前場 14:00~17:00 後場 17:00~17:10 クロージング・オークション |
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取引手数料 (税込) |
ADR 米国ETF |
約定代金の0.495% ・最低手数料:0ドル ・上限手数料:22ドル(円換算 2,288円) |
香港上場ETF | 約定代金の0.286% ・最低手数料:51.7香港ドル(円換算 約698円) ・上限手数料:517香港ドル(円換算 約6,980円) |
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国内ETF | 1日の約定代金100万円まで無料 (アクティブプランの場合) |
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投資信託 | 購入手数料は原則無料 解約(売却)時は投資信託によっては手数料負担あり |
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為替手数料 | ADR 米国ETF |
0.25円(円換算 約0.24%) |
香港上場ETF | 0.15円(円換算 約1.1%) | |
決済方法 | ADR 米国ETF 香港上場ETF |
・米ドル、香港ドルによる外貨決済 ・日本円による円貨決済 |
SBI証券でインド株投資をするメリット・デメリットとおすすめの人は次の通りだ。
・SBI証券でインド株投資をするメリット
SBI証券でインド株投資をするメリットは、豊富な取扱商品と低コストの手数料などのトータルバランスの高さだ。各商品や手数料、サービスなどに大きなデメリットがなく、様々な商品を取引するなら満足度が高いネット証券といえる。
・SBI証券でインド株投資をするデメリット
ADRや米国ETFの取引をメインにするなら、期間限定の可能性があるもののマネックス証券よりも為替手数料の負担が大きくなる。
・SBI証券でインド株投資をするのにおすすめの人
インド株を投資対象とする、ADR、米国ETF、香港ETF、国内ETF、投資信託のうち、様々な商品を取引するならトータルバランスが高いSBI証券がおすすめだ。
楽天証券……口座開設数でSBI証券に迫る豊富な取扱商品のネット証券
楽天証券は、2019年の主要ネット証券での新規口座開設数No.1になるなど、人気の証券会社だ。楽天証券も取扱商品が豊富で、ネット証券で最低水準の取引手数料が多い。海外株式は、米国、中国など計6ヵ国の取引に対応している。
インド株のADR数は14銘柄、海外ETFは6銘柄と3社のなかで最多だ。楽天証券なら、シンガポール市場のインド株のETFへの投資もできる。
インド株関連の商品の取引は、SBI証券と同じ手数料のものが多いが、香港市場の取引手数料は高めである。米ドルや香港ドルの為替手数料はSBI証券と同額だ。
決済方法は、ADRや米国ETFは外貨決済と円貨決済に対応しているが、香港市場やシンガポール市場での取引は円貨決済に限定される。
項目 | 商品種別 | 内容 |
銘柄数 | ADR | 14銘柄 |
海外ETF | 6銘柄 (内、米国ETF 3、香港上場ETF 2、 シンガポール上場ETF 1) |
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国内ETF | 1銘柄 | |
投資信託 | 20本以上 | |
取引時間 | ADR 米国ETF |
日本時間 23:30~翌6:00 (サマータイム:22:30~翌5:00) 現地時間 9:30~16:00 |
香港上場ETF | 日本時間 10:00~10:30 プレ・オープニング 10:30~13:00 前場 14:00~17:00 後場 17:00~17:10 クロージング・オークション |
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シンガポール 上場ETF |
日本時間 9:30~10:00 プレ・オープニング 10:00~13:00 オープン 14:00~18:00 オープン 18:00~18:04 クロージング・オークション |
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取引手数料 (税込) |
ADR 米国ETF |
約定代金の0.495% ・最低手数料:0ドル ・上限手数料:22ドル(円換算 2,288円) |
香港上場ETF | 約定代金の0.55% ・最低手数料:550円 ・上限手数料:5,500円 |
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シンガポール 上場ETF |
約定代金の1.1% ・最低手数料550円 |
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国内ETF | 1日の約定代金100万円まで無料 (いちにち定額コースの場合) |
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投資信託 | 購入手数料は無料 解約(売却)時は投資信託によっては手数料負担あり |
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為替手数料 | ADR 米国ETF |
0.25円(円換算 約0.24%) |
香港上場ETF | 0.15円(円換算 約1.1%) | |
シンガポール 上場ETF |
0.83円(円換算 約1.1%) | |
決済方法 | ADR 米国ETF |
・米ドルによる外貨決済 ・日本円による円貨決済 |
香港上場ETF シンガポール 上場ETF |
・日本円による円貨決済 |
楽天証券でインド株投資をするメリット・デメリットとおすすめの人は次の通りだ。
・楽天証券でインド株投資をするメリット
楽天証券でインド株投資をするメリットは、インド株のADRと海外ETFが3社で最多であり、投資の選択肢が多いことだ。
・楽天証券でインド株投資をするデメリット
楽天証券でインド株投資をするデメリットは、香港市場の商品の取引手数料が他2社に比べて高めなことと、香港とシンガポール市場の商品の外貨決済に対応していないことだ。
・楽天証券でインド株投資をするのにおすすめの人
インド株投資でADRや海外ETFを多くの選択肢から選びたい人や、楽天証券が取り扱うADRのなかに投資したいインド企業がある人は楽天証券がおすすめだ。
マネックス証券……米国や中国の株式などに強いネット証券
マネックス証券は、米国株や中国株などの取扱銘柄が多く、手数料も主要ネット証券で最低水準の外国株に強いネット証券だ。
インド株のADRはSBI証券と同じ8銘柄であり、米国ETFは他2社と同じ3銘柄の取り扱いだ。
取引手数料は、ADRと米国ETFでは他2社とほぼ同じながら、香港市場ではSBI証券よりも低い手数料を実現している。為替手数料では、米国商品の円貨決済による買い付け時に無料(期間限定の可能性あり)である。
決済方法は、米ドル・香港ドルの外貨決済と円貨決済の両方に対応している。
項目 | 商品種別 | 内容 |
銘柄数 | ADR | 8銘柄 |
海外ETF | 4銘柄 (内、米国ETF 3、香港上場ETF 1) |
|
国内ETF | 1銘柄 | |
投資信託 | 15本以上 | |
取引時間 | ADR 米国ETF |
日本時間 23:30~翌6:00 (サマータイム:22:30~翌5:00) 現地時間 9:30~16:00 |
香港上場ETF | 日本時間 10:00~10:30 プレ・オープニング 10:30~13:00 前場 14:00~17:00 後場 17:00~17:10 クロージング・オークション |
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取引手数料 (税込) |
ADR 米国ETF |
約定代金の0.495% ・最低手数料:0ドル ・上限手数料:22ドル(円換算 2,288円) ※売却時のみ、現地取引費用負担 (約定代金1ドルにつき0.0000221ドル)あり |
香港上場ETF | 約定代金の0.275% ・最低手数料:45香港ドル(円換算 約608円) ・上限手数料:450香港ドル(円換算 約6,080円) |
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国内ETF | 無料 (信用取引の場合) |
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投資信託 | 購入手数料は無料 解約(売却)時は投資信託によっては手数料負担あり |
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為替手数料 | ADR 米国ETF |
0.25円(円換算 約0.24%) |
香港上場ETF | 0.15円(円換算 約1.1%) | |
シンガポール 上場ETF |
0.83円(円換算 約1.1%) | |
決済方法 | ADR 米国ETF |
・円→ドル時0円(2021年3月見直しの可能性あり) ・ドル→円時0.25円(円換算 約0.24%) |
ADR 米国ETF 香港上場ETF |
・米ドル、香港ドルによる外貨決済 ・日本円による円貨決済 |
マネックス証券でインド株投資をするメリット・デメリットとおすすめの人は次の通りだ。
・マネックス証券でインド株投資をするメリット
マネックス証券でインド株投資をするメリットは、2021年3月に見直される可能性があるものの、円から米ドルへの為替手数料が無料であるメリットが大きい。また、香港上場ETFの取引手数料が3社のなかで最も低い。
・マネックス証券でインド株投資をするデメリット
マネックス証券でインド株投資をするデメリットは、国内ETFの現物取引手数料が無料ではない点をあげられる。また、投資信託の商品取扱は証券会社として十分なものの、他2社に比べると若干少ない。
・マネックス証券でインド株投資をするのにおすすめの人
インド株投資でADRや米国ETFの取引を考えているなら、マネックス証券なら為替手数料を抑えることが可能だ。また、香港上場ETFの取引を考えているなら、取引手数料が低いマネックス証券がおすすめである。
5,インド株投資の際の2つの注意点 ETFの投資では運用コストなどを考慮すべき
インド株投資にも注意すべき点がある。ここでは3つの注意点を紹介しよう。
注意点1……インドは内需型の経済構造であり他の新興国とは主要セクターに違いがある
多くの新興国は製品の輸出などによる経済成長が目立つが、インドは内需型の経済構造であり輸出はあまり強くない。インドの2019年の輸出額トップ2の製品は、石油製品と宝石・宝飾品だ。
インド経済の主要な業種は、前述のようにITサービスや銀行などである。インドのITサービスの大企業はグローバル展開しているところが多く、タタ・コンサルタンシー・サービシズ、インフォシス(Infosys)、HCL、テックマヒンドラ(Tech Mahindra)などがある。
これらのITサービス企業はSENSEX指数などの構成銘柄でもあり、SENSEX指数などには銀行も多く含まれている。ETFの保有によりインデックス運用する場合などは、ITサービス企業や銀行が株価指数に与える影響が大きいことに気を付けたい。
インドは輸出があまり強くないといっても、グローバルな製造業は存在する。たとえば、自動車のジャガー・ランドローバーを傘下におさめるタタ・モータースはグローバル展開している自動車メーカーだ。
注意点2……インド株のETFの運用コスト(信託報酬)は先進国株に比べて高め
インド株を投資対象とするETFの保有中のコストである信託報酬は、先進国株を投資対象とするETFに比べて割高である。
先進国株のETFは、年0.3%程度以下の低コストの信託報酬の銘柄が数多くあるが、インド株のETFの信託報酬は年1%弱程度の銘柄が多い。
インド株が先進国株との信託報酬の差を上回って成長すれば、高めの運用コストを上回る投資成果を得られるものの、運用コストに差があることを認識しておきたい。
注意点3……ADRは米国株式市場での上場廃止リスクあり
ADRは、インドの証券取引所に上場するインド株とは異なる仕組みで米国の証券取引所に上場する。このため、インドの企業や株式に問題がなくても、インド株のADRが米国の証券取引所で上場廃止になるリスクがある。
ADRが上場廃止になっても、ADRが継続されれば店頭市場で売買できることがある。ADR上場廃止の場合には、証券会社に対応を確認したい。
6,証券会社は自分が取り引きする商品によって選びたい
インド株へ投資する商品は、ADR、海外ETF、国内ETF、投資信託などがある。自分が取り引きしたい商品が決まっていれば、その商品を取り扱う証券会社を選べばよいだろう。
商品が上場している国によって取引手数料や為替手数料が違うため、自分が取り引きする予定の商品の手数料を比較して、利用する証券会社を決めたい。
決済方法については、円貨決済では毎回為替手数料が発生する。繰り返し取り引きするなら、外貨決済に対応している証券会社を選ぶのが良いだろう。
執筆・松本雄一(セキュリティ・金融アドバイザー)
外資系コンピューター会社にてカスタマーサポート・開発・セキュリティ対策などを経験後に独立。自らの投資経験をもとに株式や投資信託などの投資情報を発信している。興味のある分野はフィンテックや新しい金融商品など。
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