社長が夢を語れる場所へ。中小企業にこそ知ってほしい「ブランディング」を手掛ける女性社長
(画像=THE OWNER編集部)

企業の「ブランディング」というとどのようなことをイメージするだろうか。マーケティング領域では競合他社との違いを明確にし、「〇〇といえばあの会社」と顧客の認知を促進するための様々な取り組みを指すとされる。多額の費用をかけて自社のWebサイトをリニューアルし、ロゴマークを刷新することを思い浮かべるかもしれない。

H&Cブランディングマネジメント株式会社の提供する「事業発展ストーリーBOOK®」はそうしたハード面の魅力づくりよりもむしろ、「今ある会社」の姿を改めて見つめ、隠れた魅力を引き出すことでブランディングを促すツールだ。

吉澤 由美子(H&Cブランディングマネジメント株式会社 代表取締役)
吉澤 由美子(H&Cブランディングマネジメント株式会社 代表取締役)
1966年、島根県松江市生まれ。25歳で結婚し専業主婦となったが、飲食店を営んでいた夫の会社がバブル崩壊後に破綻。自身も多額の借金を背負って離婚、2人の子どもを抱え36歳のシングルマザーに。その後ファイナンシャルプランナーや経営診断士など11種の資格を取得。就職した法人営業の外資系損保代理店では新規契約件数が3年連続第1位に。その実力を活かし2012年7月にH&Cブランディングマネジメント株式会社を東京銀座に設立、代表取締役に就任。中小企業経営者と社員が自信に満ち溢れる会社づくりを自らの使命とする。2017年からベトナムを拠点とした海外販路開拓支援やベトナム人財の活用もサポート。ブランディングとグローバル化支援で、中小企業の事業発展を応援している。

「保険屋さん」からスタートしたコンサルタントとしてのキャリア

島根県でスタートした「H&Cブランディングマネジメント」。「H」はHUMAN(人)、「C」はCORPORATE(企業)の頭文字をとったもので、これらの価値を活かした営業体制づくりのためのコンサルティングを主軸事業としている。代表の吉澤由美子氏はかつて保険代理店の営業担当として10年以上にわたりキャリアを築いてきたが、その道のりは決して平坦ではなかった。

「離婚してシングルマザーになり、子どもたちをしっかりと育てるために一念発起したのがスタートでした。知識もないままに保険代理店に入社し、このままではいけないと思いファイナンシャル・プランニングの資格を取得。代理店でFP相談会を開催して顧客との接点を作り、少しずつ成績を伸ばしていきました」

その後同職種で1度転職を経験し、3社目となったのが大きな転機の舞台でもある法人向け損保代理店。企業の経営者を相手に保険の提案を行うのは、それまでの保険に関する知識のみでは難しくなった。

「単なる“保険の営業さん”と呼ばれないよう、経営や金融、人材育成にまつわる知識も身につける必要があったんです。社長の趣味であればゴルフや将棋の勉強も(笑)。とにかく、何でも相談していただける存在になれるよう勉強を続けていました。そこからいつの間にか『うちの営業に研修をしてほしい』『社員が辞めたいと言っている。話を聞いてやってほしい』と相談を受けるようになり、コンサルティングに近いお仕事をさせていただくようになっていったんです」

会社案内はつまらない!人の存在を感じる営業ツールを作りたい

並々ならぬ努力を重ね、経営者からの信頼を獲得していった吉澤氏。そこからはどのようにしてH&Cブランディングマネジメントが誕生したのだろうか。

「私が営業として担当していた企業は、その多くが製造業や建設業の中小企業。いわゆる“町工場”をイメージしていただくとわかりやすいかと思います。仕事のほとんどは親会社からの下請けで、外部に向けて営業活動をしたことがないという企業も多かったんです。そういった社員の方に向けて営業の研修やキャリアカウンセリングをしてほしい……と言われ、相談に応えるかたわらで講師の資格やキャリアカウンセラーの資格も取得しました。やがて経営にまつわるコンサルティングも依頼されるようになり、2012年にH&Cを興しました」

下請け構造の企業で営業職が担う仕事は「既存の顧客(親会社)との関係を維持し、人事異動や経営状態といった情報を集めること」と吉澤氏。そこに自社商品のPRやクライアントの課題解決に向けた積極的な提案はあまりみられることがないという。

「会社を良くしていきたい、何かしなくちゃと感じたとき、最初に考えるのは自社サイトの刷新や何年も更新されていない会社案内のパンフレット。ですが、従来のサイトデザインや会社案内の多くは、デザイン会社などが用意したヒアリングシートに自社の商品の売りや価格を記入して送り、出来上がったものをチェックして……といった工程を経て作られます。見た目はとてもきれいで先進的なデザインかもしれない。でも、そこには社長の想いや人柄がのっていないんです。そこで私は、自分自身でそのヒアリングシートを作り、一緒にツールを作ることにしました。これが現在当社で提供している『事業発展ストーリーBOOK®』の原点です」

事業発展ストーリーBOOKはH&Cの事業を支える存在だ。クライアントである企業の会社案内のようなものではあるが、創業者がどのような想いで会社をつくったのか、社員たちが自社の商品をいかに誇りに思っているか……。単なる会社案内との大きな違いは、そうした“人”の存在を感じられる点なのだという。

社長が夢を語れる場所へ。中小企業にこそ知ってほしい「ブランディング」を手掛ける女性社長
(画像=事業発展ストーリーBOOKの数々/画像提供:H&Cブランディングマネジメント株式会社)

自社の魅力は対話によって掘り起こされ、磨かれていく

経営コンサルティングに取り組むようになって驚いたのは、「経営計画」が存在しない会社が意外に多いことだった。「仕事はクライアントから勝手に来るものだから、計画を立てることには意味がない」という下請け思考の経営者が多く、最初は面食らったという。

「親会社からの仕事が安定して受けられているときはそれでもよかった。けれど時代とともに製造業の多くが海外へ流れ、自社で仕事を生み出す必要に迫られたときに、自社の営業体制が整っていないと競合他社との価格競争に陥ります。私たちは“お願い営業”と呼んでいますが、足元を見られて利益を得にくくなってしまいがち。そこで生まれたのが“ブランディング営業®”という考え方です」

クライアントに“お願い”をして仕事をもらうというスタイルを脱却し、クライアントが「あの会社の商品がいい!」と指名をしてくれることをめざすブランディング営業®。そのためにH&Cは経営者との面談を重ねる。

「自分の会社には目玉となるようなヒット商品もない、創業者は祖父で、自分はそれを継いだだけだから会社に特別な思い入れもない……。そんな経営者も多くいらっしゃいます。また、お話が苦手で社員に思いをうまく伝えられないという経営者も少なくありません。そこへ私たちが入って、会話を重ねながら会社の魅力や社長の想いを言語化していくお手伝いをします」

ある寝具店のコンサルティングでは「自分は生まれたときからここの会社の息子で、あとを継いだだけなので創業者の想いも知らないし、何が売りかもわからない」という5代目の社長と話をした。販売している布団の機能性や価格面の魅力ではない、会社の魅力とはどこにあるのだろうか。

「社長は寝具店を経営する家に生まれ、ずっとその会社で作った布団で過ごしてこられたのでしょう。あるとき『僕は今まで“眠れない”という状況におちいったことがないんだよね。人生の3分の1は寝ているわけだから、眠りの質が上がると人生の質も変わるよね』とこぼされました。私はすぐにその言葉をキャッチし、『それ、すごいことですよ!』と。商品の魅力を見事に表現している言葉だと思いませんか?そこから“眠りで人生は変わる”をキャッチコピーにして発信を始めました。地元のテレビやラジオがそれを聞きつけて取材に訪れるなど、PR効果も出ています」

社長が夢を語れる場所へ。中小企業にこそ知ってほしい「ブランディング」を手掛ける女性社長
(画像=クライアントからも嬉しい言葉が並ぶ/画像提供:H&Cブランディングマネジメント株式会社)

こうした対話によって会社の魅力を掘り起こしていくのが吉澤氏のスタイル。一見非効率で遠回りかもしれないが、社長や社員とのコミュニケーションを密に行ってストーリーBOOKをつくり上げていくことで、社員の思い入れが強まるという思わぬ収穫もあった。

「会社の歴史を振り返る過程で、これまでの顧客リストや商品の変遷を見ていくと、『うちの商品ってこんなにすごいんだ』『こんな人も買ってくれていたんだ』と気づくこともあります。ストーリーBOOKが出来上がるころには『こんなにすごい商品が売れないわけがない!』とみなさんが自信満々になっているんですよ(笑)。みんなで作ったからこそ、誰かに用意された会社案内よりも思い入れのある、大切に使えるツールになっているという実感があります」

地方に残された“ムダ”こそが、都心の企業とわたりあえるチャンスをつくる

自社の下請け体質や、うまく新規開拓へつなげられないといった悩みを感じている経営者に、吉澤氏はメッセージを送る。

「会社の魅力は必ずどこかにある。まずは会社の“今”と“これまで”を棚卸しし、見つめてみてほしいと思っています。これまでなぜ会社が続いてきたのか?どのようなお客様と関係をつないできたのか?なぜこのお客様は自社の商品を選んでくれたのか?といった切り口から、自社商品の魅力を改めて知ることもできるでしょう。創業者であれば、創業当時のことをふり返ってみるのもいいですね。なぜこの事業をやろうと思ったのか、それは企業理念につながる根っこの部分でもあります」

自分の会社のことを改めて知ってみるーー。この行為によって、会社への思い入れや愛着も形成されそうだ。

H&Cは島根県からスタートした企業だが、地方にこそこうしたブランディングは急務だという。

「地方の魅力は“ムダ”が多いこと。受付に複数の人員が配置されていたり、商談に雑談がはさまって1時間や2時間かかることもざらです。でも、そうした部分にこそクライアントが本当に困っている部分が見えてくることも少なくありません。会社案内だけでは見えてこない会社の魅力や経営者の人柄を感じるには、実際に会うのが一番手っ取り早いんです。2020年には新型コロナウイルスの流行もあり、人々が物理的に分断されましたよね。だからこそ、心のつながりはとても大切に感じられるようになっていると思いませんか。買い物にしてもただ安いものを買うだけではなく、信頼できる人から買いたいという人は増えているはずです。そこには都心部の効率化や生産性の向上よりも、むしろ地方の“余白”や“ムダ”こそが強く活きると感じています」

社長が夢を語れる場所へ。中小企業にこそ知ってほしい「ブランディング」を手掛ける女性社長
(画像=吉澤社長/画像提供:H&Cブランディングマネジメント株式会社)

最後に、吉澤氏はひそかにあたためているという夢を聞かせてくれた。

「コンサルティング事業の展開はもちろん当社としての大きな目標で、海外も視野に入れてベトナムとタイにもオフィスを立ち上げました。それから私がいま一番やりたい!と思っているのは、当社がクライアントとして担当しているような中小企業の社長たちが一堂に会し、自分の“夢”を語れる場所をつくること。派手なヒット商品やグローバルな実績は必要なく、堂々と語れる夢があれば誰でもステージに上がり、一緒に夢を語り合える仲間と出会える。そこから新たなつながりができ、お互いの発展に結びつけられれば良いなと思っています」

都市部と地方の経済格差は大きく、仕事や人は都市に集中している。一方で、コストのかかる都心から地方への移住を試みる人も現れ、人々の視線が地方へと向き始めている面もある。高度なものづくりの技術を持ちながらも、PRが苦手で埋もれていく会社があるのは大きな損失でもある。H&Cはそうした状況に歯止めをかけるべく、中小企業にこそ秘められた大きな魅力を発掘し続けている。

▼資料のダウンロードはこちら
https://cdn.the-owner.jp/contents/ebook/H&C_storybook.pdf

<会社情報>
会社名:H&Cブランディングマネジメント株式会社
創業:2012年7月2日
資本金:300万円(準備金含む)
所在地:本社・東京都中央区銀座6-13-16銀座ウォールビルUCF 5階
URL:http://www.hc-bm.com/

(提供:THE OWNER