本記事は、茂木健一郎氏の著書『 眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』(日本文芸社)の中から一部を抜粋・編集しています

頭がいい人って、どういう人をいうの?

頭がいい
(画像=PIXTA)

人間は、ほかの動物よりもさまざまに劣っているところがありながら、これだけの文明を発達させてきました。この事実を見ると、少しは「頭がいい」と思ってもいいかもしれません。人間の「頭のよさ」はどんなことに由来するのでしょうか。

現代の脳科学では、頭のよさ=他人とうまくやっていけること、だと考えています。他人と心を通じ合わせ、協力して社会をつくりあげることが、人間の頭のよさの本質だということです。頭のよさというのは、社会性と深く関わっているのです。

他人の心を読み取る能力を専門用語で「心の理論」といいます。コンピュータはいくら計算が速くできても、心の理論をもちません。他人の心を読み取り、初対面の人ともうまくコミュニケーションが取れる能力においては、人間はコンピュータよりもはるかに優れています。

また、サルなどの群れをつくる動物と比べても、人間の社会的知性が優れていることは疑う余地はありません。現在までの知見を総合すると、厳密な意味で他人の心を読み取ることができるのは、すべての動物のなかで人間だけだとされています。

相手の考えが容易に判断できない場合であっても、目には見えない相手の心を感じることができるのは人間だけです。「あうんの呼吸」といった言葉は、そんな微妙な人間同士の関係を言い表しているといっていいでしょう。

他者を受け入れ、共生していくことが「頭のよさ」につながっていきます。つまり、いっしょに仲良くいることで頭がよくなるということです。

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(画像=『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』より)

いわゆる「地頭」をよくする方法はある?

イギリスのチャールズ・スピアマン(1863〜1945年)という心理学者は、人間の多くの能力に共通しているg因子というものがあり、このg因子が高い人はさまざまな分野で学力が高いことを統計的手法によって示しました。つまり、g因子が高い= 地頭がいいといえるでしょう。

そして、その後の脳科学の研究によって、g因子の高い人は前頭葉の集中力の回路がよく動くことがわかりました。

では、集中力を鍛えるにはどうしたらいいのでしょうか。私は子どもたちには、「勉強するときにはいきなりトップスピードでやれ」といっています。慣れないうちは辛いかもしれませんが、続けていくうちに、いきなりトップスピードで勉強できるようになっていきます。こうすることで、前頭葉の集中力の回路が鍛えられていくのです。

さらに、「ノイズがあるところで勉強(仕事)する」という方法もおすすめです。林修先生は「いつやるか?今でしょ!」ですが、私の場合は「どこでやるか?居間でしょ!」です。

居間という、雑音の多い場所で集中して何かをすることによって、前頭葉の記憶の回路の働きが強化されます。実際に「東大合格者は居間で勉強していた人が多かった」という話をお聞きになった方も多いはずです。

脳科学的に見れば、人間の前頭葉はどんな場所でも、瞬間的に集中できるように設計されていますから、集中すべきときはいつでも集中できるよう脳にクセづけするのです。このような訓練を続けることで、地頭も育つかもしれません。

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(画像=『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』より)
眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話
茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
1962年生まれ。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京大学、日本女子大学非常勤講師。東京大学理学部物理学科、同大学法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学研究員を経て現職。専門は脳科学、認知科学。「クオリア」(感覚のもつ質感)をキーワードとした、心脳問題についての研究を行なっている。全国各地での講演活動や、テレビ出演、雑誌への寄稿など精力的に活動し、Twitterのフォロワーが140万人を超える(2019年12月現在)など、その発言は若者から中高年まで多くの日本人に注目されている。

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