本記事は、茂木健一郎氏の著書『 眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』(日本文芸社)の中から一部を抜粋・編集しています

脳のストレスを解消する方法はある?

朝
(画像=PIXTA)

ストレスが過度に蓄積すると、健康を害するようになります。それは、脳にとっても同じです。

つねにイライラしたり、物事に集中できなくないといった症状に気づいたら、自分自身がストレス過多の状態になっていることを客観的に確認してください。

これが、自分自身をあたかも外側から見ているように認識する「メタ認知」です。これには脳の前頭前野(ぜんとうぜんや)が深く関わっていると考えられていて、メタ認知で自分の状態を客観的に観察できれば、心のアラームを受け取ることができるのです。

メタ認知をしたら、次はストレス解消です。

その際、近年注目を集めている「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」が有効です。

これまでの脳研究においては、主として「何かをしているとき」の脳の働きを対象にしてきました。これに対して、「何もしていないとき」の脳を対象に研究を行ない、そのときに活性化する神経回路網として解明されたのがDMNです。

近年の研究によって、DMNには脳のさまざまな領域を調整し、情報や感情など整理整頓する働きがあることがわかってきました。

いってみれば脳のお掃除係のような存在で、これがストレス解消にも効果を発揮していると考えられています。

DMNを活性化するためには、意識的にぼーっとした状態をつくる必要があります。

そのための効果的な方法が散歩で、禅の修行のなかにも頭を空っぽにして歩く、「歩行禅」というものがあります。

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(画像=『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』より)

脳が活性化するゴールデンタイムは?

脳は、眠っている間、前日に経験した記憶を整理することがわかっています。特にこの働きが活発なのが、レム睡眠のときです。眠っているにもかかわらず、脳波が覚醒時のような型を示すのが特徴で、夢をよく見るのもこのときです。

一方、ぐっすり眠っている状態がノンレム睡眠で、人間の睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠を交互にくり返します。

朝起きた直後は、脳内の記憶の編集、整理がされていますから、脳が非常にすっきりとした状態になっているわけです。そこで、朝が新しい情報を入れるのに最適で、脳がひらめいて新しい発想も生まれる時間帯といえるでしょう。

私が朝、取り入れているルーティンをいくつかご紹介しましょう。

まず、朝の目覚めを促すために、ご褒美を用意します。私の場合はコーヒーとチョコレートです。大好きなものを口にすると、脳のなかではドーパミンが分泌されます。これが、やる気や集中力、生産性を上げてくれるというわけです。

ご褒美(ほうび)は、自分がうれしいことなら何でもOK。大好きな人とコミュニケーションをとるといった社会的な報酬も、脳を活性化させてくれます。

脳を活動的にするために、太陽の光を浴びるのも効果的です。脳には、太陽の光を浴びると、目覚めのスイッチをONにする回路があるからです。私は、天気がよい朝は、散歩を兼ねて外に出るようにしています。

「朝活」が話題になりましたが、脳科学の見地からいっても理にかなっているといってでしょう。

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(画像=『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』より)
眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話
茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
1962年生まれ。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京大学、日本女子大学非常勤講師。東京大学理学部物理学科、同大学法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学研究員を経て現職。専門は脳科学、認知科学。「クオリア」(感覚のもつ質感)をキーワードとした、心脳問題についての研究を行なっている。全国各地での講演活動や、テレビ出演、雑誌への寄稿など精力的に活動し、Twitterのフォロワーが140万人を超える(2019年12月現在)など、その発言は若者から中高年まで多くの日本人に注目されている。

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