本記事は、茂木健一郎氏の著書『 眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』(日本文芸社)の中から一部を抜粋・編集しています

脳力を最大限に高める方法とは?

褒める
(画像=PIXTA)

どんな小さなことでもいいですから、何かに挑戦すると脳内の神経伝達物質であるドーパミンが分泌されます。

ドーパミンは運動調節やホルモン調節のほか、快の感情、意欲、学習などに関わっていて、ドーパミンの分泌によって脳の回路が強化される「強化学習」という現象が起こります。

そして、強化学習はドーパミンが分泌される直前に行なわれていた行動を強化する働きもするのです。

たとえば、「自分は勉強ができない」と思っている子どもが、苦手な勉強に挑戦して、テストの点数がグンと上がったりすると、大きな喜び感じ、勉強への意欲が一気に高まります。これもドーパミンの働きによるものです。

強化学習にとって重要なキーワードの1つに、「ゲーミフィケーション」があります。これは、勉強にゲームの要素を取り入れるという意味ですが、たとえば、これだけの英単語を10分間で全部覚えてやろうといったタイムプレッシャーも、ゲーミフィケーションのテクニックの1つです。

タイムプレッシャーは、全力で取り組んでできるかできないかという、ギリギリの時間設定にすることがポイント。ギリギリの時間設定でできたときの達成感は次の挑戦への意欲をかきたてます。

このようなテクニックは子どもの学習の場面で使われることが多いのですが、大人だって何かに挑戦すればドーパミンが分泌されますし、ゲーミフィケーションというテクニックを使って自分の脳を自分で伸ばしていくことが可能なのです。

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(画像=『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』より)

脳もほめると成長するというのは、本当?

よく、「私、ほめられると成長するタイプなんです」という人を見かけます。ほめられれば、誰しもうれしくなるものですが、脳科学の見地で、本当にほめられると成長するのでしょうか。

答えは、YESです。

ほめられると脳では報酬系のドーパミンの活動が何倍かになることがわかっています。つまり、脳が喜んでいるということです。

そのとき大事になってくるのはタイミングです。ドーパミンによる報酬系の活動の特徴というのは、原因となった行為と近い時間にやらないと意味がなくなってしまうということです。ですから、その場で即座にほめることが大事なのです。

そして、もう1つ大事なことが特定性です。「おまえすごいな」といったほめかたは特定性がありません。そうではなく、その人がどう進歩しているかを具体的に特定してほめると効果があります。たとえば「先月と比べるとこれだけ伸びたじゃないか、すごいぞ」といったほめかたです。

あるオリンピック選手から、「どんなトップアスリートでも、コーチがついているほうが伸びることがわかった」という話を聞きました。

そのときのコーチングのポイントは、本人から見えないような課題や素晴らしさを、具体的にフィードバックしてあげることだそうです。

これは、日常のどんな場面でも応用ができるのではないでしょうか。

そして、ほめてあげれば脳も喜んで成長していきます。コーチングの役割というのは、非常に高度なものだと思います。

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(画像=『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』より)
眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話
茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
1962年生まれ。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京大学、日本女子大学非常勤講師。東京大学理学部物理学科、同大学法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学研究員を経て現職。専門は脳科学、認知科学。「クオリア」(感覚のもつ質感)をキーワードとした、心脳問題についての研究を行なっている。全国各地での講演活動や、テレビ出演、雑誌への寄稿など精力的に活動し、Twitterのフォロワーが140万人を超える(2019年12月現在)など、その発言は若者から中高年まで多くの日本人に注目されている。

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