ASEAN株に投資するには、どの証券会社を選べばよいのだろうか。おすすめしたい証券会社3社を比較し、その特徴やメリット・デメリット、どんな人に向いているかを解説する。ASEAN株の魅力や、投資する際の注意点も併せて確認しておこう。

1.ASEAN(アセアン)株とは?

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(画像=FrameAngel/stock.adobe.com)

ASEAN株とは、東南アジア諸国連合(ASEAN・アセアン)に加盟する国の株式のことだ。

ASEAN(アセアン)とは

ASEAN(Association of Southeast Asian Nations/東南アジア諸国連合)は、東南アジア10ヵ国が加盟する地域共同体である。2015年に「ASEAN共同体」が設立され、「政治・安全保障」「経済」「社会・文化」の面で深いつながりがある。近年は著しい経済成長を見せており、世界の「開かれた成長センター」としての潜在力に世界が注目している。

・ASEAN加盟国(10ヵ国・2019年)
インドネシア
マレーシア
フィリピン
シンガポール
タイ
(以上5ヵ国が原加盟国)
ブルネイ
カンボジア
ラオス
ミャンマー
ベトナム

ASEAN10ヵ国 計(2019年) (対 日本比) (対 世界比)
面積 449万平方キロメートル 11.9倍 3.3%
人口 6億6,062万人 5.2倍 8.6%
名目GDP
(国内総生産)
3兆1,731億米ドル 62% 3.6%
1人あたり名目GDP 4,803米ドル 11.9% 42%
(世界平均比)
貿易
(輸出+輸入)
2兆6,625億米ドル 1.9倍 7.3%
出所:目で見るASEAN-ASEAN経済統計基礎資料(外務省・アジア大洋州局地域政策参事官室・令和2年8月)

ASEAN10ヵ国の1人あたりGDPは日本の約1割、世界平均約4割と低い水準にあり、成長の余地が大きい。日本の5倍を超える人口、15〜64歳までの生産年齢人口の割合の高さも、成長の原動力といえる。

・ASEAN経済成長率(実質GDP成長率・年率)

(年) 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019
成長率 7.5% 5.1% 6.2% 5.1% 4.7% 4.8% 5.0% 5.4% 5.3% 4.7%
出所:ASEAN Statistical Yearbook 2020(ASEANstats)

ASEAN経済は2019年まで年5%前後の成長を続けてきたが、新型コロナウイルス感染拡大はASEAN経済にも大きな打撃を与えている。国際通貨基金(IMF)が発表した「世界経済見通し(WEO)」によれば、2020年ASEAN原加盟国5ヵ国の実質成長率はマイナス3.4%まで落ち込む見通しだ。2021年に入ってもなお感染拡大は続き、予断を許さない状況だが、2021年の成長率はプラス6.2%まで回復すると見られており、今後も成長の継続が期待される。

ASEAN(アセアン)主要6ヵ国の特徴

ASEANと一括りにいっても、国ごとに特徴は異なる。主要6ヵ国の基礎情報と経済状況を整理しておこう。

・インドネシア

人口 2億6,691万人(2018年推計)
言語 インドネシア語
主な宗教 イスラム教87.21%、キリスト教9.87%
通貨/レート インドネシアルピア(IDR)/100ルピア=0.74円
(2021年1月15日現在)
名目GDP 1兆1,120億米ドル(2019年)
1人あたり名目GDP 4,164米ドル(2019年)
経済成長率(実質) 5.0%(2019年)
物価上昇率 3.0%(2019年)
出所:インドネシア概況・基本統計(JETRO)、為替レートはBloomberg

インドネシアは世界第4位の人口を有し、名目GDPは1兆1,120億米ドル(2019年)と、いずれもAESAN内で最大だ。1997年のアジア通貨危機後、銀行部門と企業部門を中心とした抜本的な経済構造改革の結果、政治社会情勢や金融が安定し、中間所得者層の増加と個人消費の拡大につながった。2010年には、1人あたり名目GDPが3,000米ドルを突破し、「巨大な消費市場」としての魅力が高まっている。

2005年以降は、金融危機の影響を受けた2009年、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた2020年を除き、年率5〜6%の成長が続く。一方で、経常収支の赤字や通貨安といった問題を抱えている。

・マレーシア

人口 3,258万人(2019年)
言語 マレー語(公用語)、中国語、タミール語、英語
主な宗教 イスラム教61.3%、仏教19.8%(2010年推定)
通貨/レート リンギット(MYR)/1リンギット=25.71円
(2021年1月15日現在)
名目GDP 3,650億米ドル(2019年)
1人あたり名目GDP 1万1,198米ドル(2019年)
経済成長率(実質) 4.3%(2019年)
物価上昇率 0.7%(2019年)
出所:マレーシア概況・基本統計(JETRO)、為替レートはBloomberg

マレーシアは、イギリス植民地時代から盛んな天然ゴムやパーム油などの農産物、スズ・天然ガスといった天然資源の生産に加え、外資系企業を積極的に誘致することで工業化を進めて経済成長を果たした国だ。シンガポールとともに「東南アジアの優等生」と呼ばれ、1人あたりの名目GDPは1万米ドルを超える。

一方で人件費の上昇により、安い労働力に支えられた成長は望めなくなっており、産業の高度化や他国との差別化が課題となっている。これを受けて、マレーシア政府は国策として航空機器部品やロボティクス、IoT、医療機器などの企業誘致、イスラム教国としての強みを活かしたイスラムビジネス・ハラル産業の拡大に取り組んでいる。

・フィリピン

人口 1億98万人(2015年)
言語 フィリピノ語(タガログ語・公用語)、英語(公用語)、セブアノ語など
主な宗教 カトリック教82.9%、その他キリスト教10.0%、イスラム教5.1%
通貨/レート フィリピン・ペソ(PHP)/1フィリピン・ペソ=2.16円
(2021年1月15日現在)
名目GDP 3,600億米ドル(2019年)
1人あたり名目GDP 3,294米ドル(2019年)
経済成長率(実質) 5.9%(2019年)
物価上昇率 2.5%(2019年)
出所:フィリピン概況・基本統計(JETRO)、為替レートはBloomberg

フィリピンでは2014年に人口が1億人を突破したが、その後も人口の増加が続く。平均年齢が24歳と若く、所得水準も依然低い水準にあるため、国内消費市場の拡大による成長が期待される。2016年に大統領に就任したドゥテルテ氏は、これまで手付かずだった課題に積極的に取り組み、経済面ではインフラ整備や税制改革などが進んでいる点が評価できる。

・シンガポール

人口 570万人(2019年)
言語 マレー語(国語)、英語、中国語(北京語)、タミル語※すべて公用語
主な宗教 仏教、イスラム教、ヒンズー教、道教、キリスト教
通貨/レート シンガポールドル(SGD)/1シンガポールドル=78.31円
(2021年1月15日現在)
名目GDP 3,628億米ドル(2019年)
1人あたり名目GDP 6万3,987米ドル(2019年)
経済成長率(実質) 0.55%(2019年)
物価上昇率 0.57%(2019年)
出所:シンガポール概況・基本統計(JETRO)、為替レートはBloomberg

シンガポールの国土は東京23区と同程度で、人口は東京都の半分以下。天然資源も乏しい。しかし地理的な優位性により、中継貿易の拠点として古くから栄えてきた。1965年の独立以降、外資系企業主導の急速な工業化や、金融業・サービス業の発展により、ASEANで唯一の先進国・高所得国となった。現在も教育水準の高さや法人税率の低さなどから、多くの多国籍企業が拠点を置き、アジアの金融・物流の中心的な役割を担う。新興国の多いASEANの中では、やや毛色が異なる存在だ。

外国人のビジネス環境・生活環境の良さが強みだ。直近では、同じくアジアの金融センターである香港で民主化運動による混乱が続き、シンガポールに拠点を移す企業が増えている。

・タイ

人口 6,641万人(2018年)
言語 タイ語
主な宗教 上座仏教 約95%、その他イスラム教4%、キリスト教0.6%
通貨/レート バーツ(THB)/1バーツ=3.46円
(2021年1月15日現在)
名目GDP 5,435.5億米ドル(2019年)
1人あたり名目GDP 7,792米ドル(2019年)
経済成長率(実質) 2.4%(2019年)
物価上昇率 0.7%(2019年)
出所:タイ概況・基本統計(JETRO)、為替レートはBloomberg

タイでは2014年5月に発生したクーデター(政変)により、混乱が続いていた。2019年3月に8年ぶりに下院選挙が行われ、軍政の流れを汲む「国民国家の力党」が政権を獲得し、民政への復帰を果たしたことで安定を取り戻しつつある。

タイ政府は「タイランド4.0」政策を実施し、東部経済回廊(EEC)の推進と重点10産業への投資により高所得国を目指している。一方で、政情不安や高齢化などの課題が残る。

・ベトナム

人口 9,648万人(2019年)
言語 ベトナム語
主な宗教 仏教 約80%、カトリック
通貨/レート ドン(VND)/100ドン=0.45円
(2021年1月15日現在)
名目GDP 2,619.2億米ドル(2019年)
1人あたり名目GDP 2,715米ドル(2019年)
経済成長率(実質) 7.0%(2019年)
物価上昇率 2.8%(2019年)
出所:ベトナム概況・基本統計(JETRO)、為替レートはBloomberg

ベトナムは社会主義国であるが、市場経済システムの導入や対外開放化を進め、構造改革や国際競争力の強化、外国人による投資規制の緩和などに取り組む。成長を牽引するのは、賃金水準の低い労働力を活かした外資系製造業主導の輸出産業だ。成長率はASEANの中でもトップクラスを誇る。人件費の高騰や米中貿易摩擦、新型コロナウイルス感染拡大などにより、生産拠点を中国からベトナムに移す動きもあり、今後も成長が続くと見られている。

2020年は、新型コロナウイルス感染拡大によって10年ぶりの低成長となったが、他のASEAN諸国が軒並みマイナス成長となる中でプラス成長を維持し、その強さを見せた。

【関連記事】 ベトナム株を買うにはどうしたらよいか?3つの買い方やメリット・デメリット、おすすめ銘柄など

ASEAN(アセアン)主要6ヵ国の株式市場

ASEANの主要6ヵ国の株式市場と株価指数は、以下のとおりだ。

・インドネシア……インドネシア証券取引所/ジャカルタ総合指数
・マレーシア……マレーシア(クアラルンプール)証券取引所/FTSEブルサ・マレーシアKLCI指数
・フィリピン……フィリピン証券取引所/フィリピン総合指数
・シンガポール……シンガポール証券取引所/ST指数
・タイ……タイ証券取引所/タイSET指数
・ベトナム……ホーチミン証券取引所・ハノイ証券取引所/ベトナムVN指数

2.ASEAN(アセアン)株の2つのメリット

ASEAN株のメリットとしては、「人口増加・消費拡大による成長期待」「高い配当利回り」が挙げられる。

メリット(1)人口増加・消費拡大による経済成長が期待できる

ASEANは人口6億6,000万人の巨大市場であるが、さらなる人口増加や中間所得者層の拡大による成長余地が多く残されている。平均年齢が若く所得水準の低い国は、安価で豊富な労働力などを背景に企業の進出が進む。所得水準向上による国内市場の拡大も予測されるため、成長が期待できる。

メリット(2)配当利回りが高め

ASEAN株は、配当利回りが高い銘柄が多い。値上がり益(キャピタルゲイン)だけでなく、保有中の配当収入(インカムゲイン)も期待できる。

3,ASEAN(アセアン)株投資におすすめの証券会社3社を比較

ASEAN株に投資するには、どの証券会社を利用したらよいのだろうか。まず検討したいのが、手数料が割安なネット証券でASEAN株を扱う「SBI証券」と「楽天証券」の2社だ。対面証券では数社で取扱いがあるが、ASEAN株であればアジア株に強い「アイザワ証券」をおすすめしたい。3社の特徴を比較したのが以下の表だ。

  SBI証券 楽天証券 アイザワ証券
シンガポール 取扱銘柄数 44銘柄 49銘柄 67銘柄
1注文毎
手数料
(税込)
約定代金の1.1%
<最低手数料>
30.8SGD(※1)
約定代金の1.1%
<最低手数料>
550円
約定代金の1.65%
<最低手数料>
5,500円
(買い注文のみ)
決済方法 外貨決済
円貨決済
円貨決済のみ 外貨決済
円貨決済
為替手数料
(片道)
0.83円 0.83円
0.25円(ETF)
0.83円
タイ 取扱銘柄数 76銘柄 73銘柄 196銘柄
1注文毎
手数料
(税込)
約定代金の1.1%
<最低手数料>
837.1バーツ
(※1)
約定代金の1.1%
<最低手数料>
550円
約定代金の1.65%
<最低手数料>
5,500円
(買注文のみ)
決済方法 外貨決済
円貨決済
円貨決済のみ 外貨決済
円貨決済
為替手数料
(片道)
0.08円 0.08円 0.08円
マレーシア 取扱銘柄数 44銘柄 43銘柄 110銘柄
1注文毎
手数料
(税込)
約定代金の1.1%
<最低手数料>
76リンギット
(※1)
約定代金の1.1%
<最低手数料>
550円
約定代金の1.65%
<最低手数料>
5,500円
(買い注文のみ)
決済方法 外貨決済
円貨決済
円貨決済のみ 外貨決済
円貨決済
為替手数料
(片道)
0.43円 0.43円 0.43円
インドネシア 取扱銘柄数 73銘柄 72銘柄 116銘柄
1注文毎
手数料
(税込)
約定代金の1.1%
<最低手数料>
26万1,800ルピア
(※1)
約定代金の1.1%
<最低手数料>
550円
約定代金の1.65%
<最低手数料>
5,500円
(買い注文のみ)
決済方法 外貨決済のみ 円貨決済のみ 外貨決済
円貨決済
為替手数料
(片道)
0.03円
(/100ルピア)
0.03円
(/100ルピア)
0.03円
(/100ルピア)
フィリピン 取扱銘柄数 × × 75銘柄
1注文毎
手数料
(税込)
約定代金の1.65%
<最低手数料>
5,500円
(買い注文のみ)
決済方法 外貨決済
円貨決済
為替手数料
(片道)
0.07円
ベトナム 取扱銘柄数 310銘柄 × 276銘柄
1注文毎
手数料
(税込)
約定代金の2.2%
<最低手数料>
132万ドン
(※1)
約定代金の1.65%
<最低手数料>
5,500円
(買い注文のみ)
決済方法 外貨決済のみ 外貨決済
円貨決済
為替手数料
(片道)
2.00円
(/1万ドン)
2.00円
(/1万ドン)
特定口座・NISA口座での取引 取扱全銘柄で可能 取扱全銘柄で可能 取扱全銘柄で可能
出所:各社HPより筆者作成(2020年1月15日時点)、手数料はインターネットでの取引時、現地手数料等を含む
※1 売却代金が最低手数料に満たない場合、約定代金の55%(税込)が手数料となる

最低手数料が一律で安い「楽天証券」、取扱銘柄数が多く、すべての国で外貨決済が可能な「アイザワ証券」、取扱銘柄数・手数料のバランスがとれた「SBI証券」とそれぞれに特徴がある。

4.ASEAN(アセアン)株投資におすすめの証券会社3社を徹底解説

3社の特徴やメリット・デメリット、どのような人に向いているのかについて、より詳しく見ていこう。

SBI証券…ASAEN5ヵ国の銘柄を取扱い、取扱銘柄と手数料のバランスのよさが魅力

SBI証券では、「シンガポール」「タイ」「マレーシア」「インドネシア」「ベトナム」の5ヵ国に上場する銘柄を取引できる。

シンガポール 取扱銘柄数 44銘柄
1注文毎手数料
(税込)
約定代金の1.1%
<最低手数料>
30.8シンガポールドル
(約2,412円、1SGD=78.31円換算)
(※1)
決済方法 外貨決済、円貨決済
為替手数料(片道) 0.83円
タイ 取扱銘柄数 76銘柄
1注文毎手数料
(税込)
約定代金の1.1%
<最低手数料>
837.1バーツ
(約2,896円、1バーツ=3.46円換算)
(※1)
決済方法 外貨決済、円貨決済
為替手数料(片道) 0.08円
マレーシア 取扱銘柄数 44銘柄
1注文毎手数料
(税込)
約定代金の1.1%
<最低手数料>
76リンギット
(約1,953円、1リンギット=25.71円換算)
(※1)
決済方法 外貨決済、円貨決済
為替手数料(片道) 0.43円
インドネシア 取扱銘柄数 73銘柄
1注文毎手数料
(税込)
約定代金の1.1%
<最低手数料>
26万1,800ルピア
(約1,937円、100ルピア=0.74円換算)
(※1)
決済方法 外貨決済のみ
為替手数料(片道) 0.03円(100ルピアあたり)
ベトナム 取扱銘柄数 310銘柄
1注文毎手数料
(税込)
(ネット注文)約定代金の2.2%
(電話注文)約定代金の2.926%
<最低手数料>
132万ドン
(約5,940円、100ドン=0.45円換算)
(※1)
決済方法 外貨決済のみ
為替手数料(片道) 2.00円(1万ドンあたり)
出所:SBI証券HPより筆者作成(2020年1月15日時点)、手数料はインターネットコース利用時
※1 売却代金が最低手数料に満たない場合、約定代金の55%(税込)が手数料となる

注文方法は、ベトナム株を除いてネット注文のみ。各市場の取引時間内であれば、リアルタイムで取引できる。5ヵ国とも外貨決済を選択できるため、最初に円を外貨に変えて株を買った後は、配当金や売却代金を外貨で受け取り、保有している外貨で株を買うこともできる。同じ国の銘柄を頻繁に売買する人は、為替手数料を抑えられるので有利だ。ただし、手数料には1注文ごとの最低手数料が設定されており、少額取引が中心の人は手数料が割高になるおそれがある。

<SBI証券でASEAN株投資をするメリット>
・5ヵ国の銘柄を取引できる
・すべての銘柄で外貨決済ができる(為替手数料を抑えられる)
・対面証券に比べて手数料が割安
・リアルタイムで取引できる

<SBI証券でASEAN株投資をするデメリット>
・最低手数料がやや高い

<SBI証券でのASEAN株投資に向いている人>
・同じ国(通貨)の銘柄を頻繁に売買する人
・ベトナム株に投資したい人
・手数料を抑えたい人
・一定金額以上で取引する人(1注文あたり20〜30万円以上が目安)

<手数料が最低手数料を超える約定金額の目安>
最低手数料(税込) 手数料が最低手数料を超える約定金額の目安

  最低手数料(税込) 手数料が最低手数料を
超える約定金額の目安
シンガポール 30.8シンガポールドル
(約2,412円)
2,800シンガポールドル〜
(約21万9,268円〜)
タイ 837.1バーツ
(約2,896円)
7万6,100バーツ〜
(約26万3,306円〜)
マレーシア 76リンギット
(約1,953円)
6,910リンギット〜
(約17万7,656円〜)
インドネシア 26万1,800ルピア
(約1,937円)
2,380万ルピア〜
(約17万6,120円〜)
ベトナム 132万ドン
(約5,940円)
6,000万ドン〜
(約27万円〜)
※2020年1月15日時点のレートで計算

楽天証券……ASEAN4ヵ国の銘柄を取扱い、最低手数料が一律550円で少額取引に有利

楽天証券では、「シンガポール」「タイ」「マレーシア」「インドネシア」の4ヵ国に上場する銘柄を取引できる。

共通 1注文毎手数料
(税込)
(ネット注文)約定代金の1.1%
※電話注文の場合、別途2,200円
<最低手数料>550円
決済方法 円貨決済のみ
シンガポール 取扱銘柄数 49銘柄
為替手数料(片道) 0.83円/0.25円(ETF)
タイ 取扱銘柄数 73銘柄
為替手数料(片道) 0.08円
マレーシア 取扱銘柄数 43銘柄
為替手数料(片道) 0.43円
インドネシア 取扱銘柄数 72銘柄
為替手数料(片道) 0.03円(/100ルピア)
出所:楽天証券HPより筆者作成(2020年1月15日時点)

最低手数料が一律550円(税込)とSBI証券よりも低く設定されているため、1回あたりの取引金額が少ない人に有利だ。手数料コースで「超割コース」を選択すれば、取引手数料(税抜)の1%(大口優遇対象者は2%)分の楽天ポイントがもらえる。 決済方法は円貨決済のみで、取引ごとに為替手数料がかかる。同じ国の銘柄を頻繁に売買する人は、為替手数料がかさみやすいだろう。

<楽天証券でASEAN株投資をするメリット>
・ASEAN4ヵ国の銘柄を取引できる
・対面証券に比べて手数料が割安
・最低手数料が一律で割安
・手数料の1%分のポイント還元がある(「超割コース」選択時)
・リアルタイムで取引できる

<楽天証券でASEAN株投資をするデメリット>
・円貨決済しかできない(取引ごとに為替手数料がかかる)

<楽天証券でのASEAN株投資に向いている人>
・1回あたりの取引金額が少ない人
・頻繁に売買しない人
・積立投資を行う人(円貨での買付けを基本に長期投資をする人)

アイザワ証券……ASEAN6ヵ国の銘柄を取扱い、取扱市場数・銘柄数は業界最高水準

アイザワ証券は、アジア株取引のパイオニア的存在だ。ASEANの中では、「シンガポール」「タイ」「マレーシア」「インドネシア」「フィリピン」「ベトナム」の6ヵ国に上場する銘柄を取引できる。

共通 取引チャネル 注文方法 1注文毎手数料(税込)
対面口座 営業員 2,20%
インターネット口座
「ブルートレード」
コンサルティングネット口座
「アイザワプラス」
ネット 1.65%
コールセンター 1.98%
営業員 2.20%
<最低手数料>5,500円(買い注文のみ)
決済方法 外貨決済、円貨決済
シンガポール 取扱銘柄数 67銘柄
為替手数料(片道) 0.83円
タイ 取扱銘柄数 196銘柄
為替手数料(片道) 0.08円
マレーシア 取扱銘柄数 110銘柄
為替手数料(片道) 0.43円
インドネシア 取扱銘柄数 116銘柄
為替手数料(片道) 0.03円(/100ルピア)
フィリピン 取扱銘柄数 75銘柄
為替手数料(片道) 0.07円
ベトナム 取扱銘柄数 276銘柄
為替手数料(片道) 2.00円(/1万ドン)
出所:アイザワ証券HPより筆者作成(2020年1月15日時点)

アイザワ証券は、フィリピンを除くASEAN5ヵ国の市場と直結した独自の取引システムを持ち、国内株感覚のリアルタイム取引を提供している。取引できる銘柄や方法も充実しており、取扱市場数・銘柄数は業界最高水準。取引方法は対面(営業員)、ネット、電話から選べ、外貨決済と円貨決済に対応している。ただし、手数料はネット証券2社と比べると割高だ。

<アイザワ証券でASEAN株投資をするメリット>
・ASEAN6ヵ国の銘柄を取引できる
・取扱銘柄数が多い
・すべての銘柄で外貨決済ができる(為替手数料を抑えられる)
・為替ネッティング(※3)を利用できる
・リアルタイムで取引できる
・実店舗がある(全国54店舗)

※3 同一約定日に同一通貨の銘柄の売り買いをした場合、現地精算金額の多いほうの為替レートを売り・買い双方に適用することで、為替手数料の実質的な負担を差額部分のみにする仕組み。

<アイザワ証券でASEAN株投資をするデメリット>
・ネット証券に比べて手数料が割高
・買い注文時の最低手数料が5,500円と割高

<アイザワ証券でのASEAN株投資に向いている人>
・より多くの選択肢の中から投資する銘柄を選びたい人
・ ベトナム株やフィリピン株に投資したい人
・同じ国(通貨)の銘柄を頻繁に売買する人 ・対面取引を希望する人

5.ASEAN株に投資する際の5つの注意点

ASEAN株に投資する際は、以下の点に注意したい。

注意点(1)取引コストが高め

ASEAN株の取引手数料は、国内株や米国株に比べて高い。また取引では円を外貨に変える必要があり、その際の為替手数料も米ドルなどの主要通貨に比べて割高だ。取引コストは投資成果においてマイナス要素なので、利用する証券会社や取引金額・頻度などに注意したい。

注意点(2)カントリーリスクが高め

外国株投資は、投資した国の政治や経済の混乱が、企業の業績や株価などに悪影響を与える、いわゆる「カントリーリスク」を伴う。

1997年に発生したアジア通貨の急落とそれに伴う金融危機(アジア通貨危機)や、タイで2014年5月に発生したクーデター、ミャンマーで長年続いた民主化勢力と軍政の対立など、ASEAN地域はこれまでに大きな政治・経済の混乱を経験している。 投資する銘柄だけでなく、投資する国の情勢についても入念に調べ、投資した後も動向を継続的にチェックすること大切だ。

注意点(3)情報が少ない

ASEAN株は、日本人にはなじみのない銘柄が多い。情報を手に入れにくいため、自ら情報を収集する努力が必要だ。今回紹介した3社は、以下のようなASEAN地域の情勢や個別銘柄に関するレポートを提供している。誰でも閲覧できるレポートも多いため、口座のない証券会社も含めてうまく活用してほしい。

グローバル・ストラテジー・レポート(SBI証券) アセアン株式レポート(楽天証券) マーケット情報(アイザワ証券)

注意点(4)為替リスクがある

ASEAN株は外貨での取引となるため、為替リスクを伴う。外貨ベースでは利益が出ていても、外貨安(円高)によって円換算したときに利益が目減りしたり、損失が出たりすることもある。 ASEANは、経済成長率の高い新興国が多い。このような国はインフレ率が高く、相対的に通貨の価値が下がりやすい傾向があるため、特に注意が必要だ。

注意点(5)現地でも課税されることがある

外国株の配当金は投資先の国と日本国内の両方で課税される(二重課税)ケースもあるが、確定申告をすれば「外国税額控除」の適用を受けられる。外国税額控除を受ければ、所得税額から現地で源泉徴収された税額(※3)が差し引かれるため、二重課税を回避できる(※3 控除額は「その年分の外国税額」と「その年分の所得税額×(その年分の国外所得総額÷その年の所得総額)のいずれか少ない金額」)。

<配当金に対する現地での源泉徴収税率(2018年1月1日時点)>
・シンガポール……原則非課税(REITを除く)
・タイ……10%
・マレーシア……原則非課税(一部REITを除く)
・インドネシア……20%
・フィリピン……30%
・ベトナム……非課税

(出所:アイザワ証券HP)

投資する国によってどのように課税されるかを理解し、確定申告をすべきか判断できるようにしておこう。

6. ASEAN(アセアン)株が対象の投資信託に投資する選択肢も

成長が期待されるASEANに株は、先進国株にはない魅力がある。一方でリスクや取引コストが高いなど、注意すべき点も多い。「興味はあるが、個別株はハードルが高い」と感じる人は、ASEAN株を対象とする投資信託に投資する方法もある。投資対象として、ASEAN株という選択肢を持っておくとよいだろう。

執筆・竹国弘城(ファイナンシャルプランナー)
証券会社、保険代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。RAPPORT Consulting Office 代表。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®︎

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