銀行にお金を預けても金利はほとんどない。その上、そのわずかな金利にすら税金がかかる。しかしiDeCoの定期預金なら金利は非課税だ。今納めている所得税も節税できる。どういうことか。定期預金は銀行に預けるよりiDeCoを使ったほうがお得な理由を解説する。

1.iDeCo(イデコ)の運用商品は定期預金も選べる

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(画像=Romolo Tavani/stock.adobe.com)

個人型確定拠出年金であるiDeCoで取り扱われている金融商品と言えば投資信託がメインだが、定期預金も選べる。

iDeCo(イデコ)のメリットは定期預金でも価値がある

iDeCoの商品には元本変動商品と元本保証商品があり、元本変動商品が投資信託で、元本保証商品が定期預金のことを指す。

iDeCoの節税効果は広く知られるようになり投資への関心は高まっているが、元本割れの恐れのある投資信託を実際に選ぶことに二の足を踏む人も多い。しかし定期預金であれば資産が目減りすることはないので、安全かつ非課税で私的年金の形成が可能になるのではないか。

iDeCo(イデコ)の節税効果に注目

通常の投資では運用中に発生した売却益や分配金には20.315%の税金が課せられるが、iDeCoではこれが非課税となる。つまりiDeCoで定期預金を運用する場合は金利も非課税だ。さらにiDeCoのもう一つのメリットである掛金の全額所得税控除は、iDeCoの定期預金にも適用される。掛金の控除とは、iDeCoに拠出した資金を、医療費や寄付金などと同様に、所得金額から差し引くことだ。これにより所得税が軽減される。

iDeCo公式サイトのシミュレーションによると、年齢30歳で年収500万円の人が毎月2万円を60歳までiDeCoに投資した場合、30年間で144万円の節税になる(掛金の上限や節税額は職業や家族構成などによって異なる)。

2.iDeCo(イデコ)は手数料が安い金融機関を選ぶのが肝心

しかし、iDeCoでは通常の投資ではかからない手数料が発生する。金利が期待できない定期預金では、差し引きマイナスになるのではないか。

iDeCo(イデコ)にかかる手数料

iDeCoでは、加入時に2,829円、運用時に口座管理手数料171円に加え、金融機関ごとに運営管理手数料が毎月かかり、さらには投資信託の手数料である信託報酬がかかる。運営管理手数料は対面型証券会社や銀行、保険会社、地方銀行では300円~400円台であるが、大手ネット証券では無料のところが多い。

信託報酬は年率0.0968%~2.2000%と銘柄ごとに異なる。また、給付金の受け取り時には振込の都度440円、口座を変更する際には金融機関によっては4,400円かかる。

iDeCoの「掛金の所得控除」や「運用益の非課税」により、これらのコストを上回る節税効果があれば、定期預金でもiDeCoのメリットを享受できるというわけだ。したがってiDeCoで定期預金を運用する金融機関選びは「手数料が安い」という点が重要になってくる。

3.iDeCo(イデコ)で手数料を抑えながら定期預金が運用できるネット証券4選

iDeCoの運用中にかかる費用のうち、iDeCoの運営管理手数料が無料の証券会社を以下に例示した。

商品総数 運用期間中
かかる費用(毎月)
定期預金 特徴
SBI証券
(セレクトプラン)
37本 171円 あおぞらDC定期
(1年)
加入者数首位
商品の種類が豊富
楽天証券 32本 171円 みずほDC定期預金
(1年)
加入手続きWeb完結
証券資産と年金資産を
1つのIDで管理
マネックス証券 27本 171円 みずほDC定期預金
(1年)
ロボアドバイザー
iDeCo専用ダイヤルは
土曜、平日夜間営業
松井証券 40本 171円 みずほDC定期預金
(1年)
専門家のアドバイスが充実
見やすい資産管理画面
※筆者作成、2021年1月28日時点

SBI証券…iDeCo提供開始から15年で加入者業界No.1

SBI証券は2005年からiDeCoの取り扱いを開始し、加入者数は業界トップを維持している。規模と運用実績に信頼性がある証券会社だ。iDeCo対象の商品数は37本と豊富で、インデックス型やアクティブ型、国内外株式・国内外債券、複合資産(バランス型)、REITなど幅広いラインアップをそろえている。比率としては低コストの外国株式インデックスファンドが多い。運用時の手数料は毎月171円だ。SBI証券分は無料で、国民年金基金連合会に105円、事務委託先金融機関に66円で、これ以上はどの金融機関でも安くならない。

iDeCoの定期預金は「あおぞらDC定期(1年)」で、2021年2月以降適用利率は0.01%となっている。

楽天証券…利便性が高く、やや積極的な年金運用が可能

楽天証券は品ぞろえの内容と利便性で特色を出している。取扱商品は比較的アクティブなものが多い。新興国、成長株、コモディティ、ターゲットイヤーなどだ。インデックス型投資信託に比べ高いリターンが期待できる。ただし信託報酬をはじめとする運用コストは高めだ。証券資産と年金資産が1つのIDで管理できるのは、iDeCoの経験がある人なら便利さが分かるのではないか。通常の証券会社ではiDeCoの資産を確認するには別のIDで別サイトにログインしなければならない。手数料はSBI証券と同じく最安の171円である。

iDeCoの定期預金は「みずほDC定期預金(1年)」で、適用利率は2020年4月以降0.002%だ。

マネックス証券…ロボアドバイザーや専用問合せ窓口など充実のサポート

マネックス証券ではiDeCo専用ロボアドバイザーでポートフォリオ診断ができる。また、土曜や平日20時まで利用可能な問合せ窓口など、初めてiDeCoを運用する人でも安心して使えるサポート体制がある。商品ラインアップはやや数は少ないものの低コストインデックスファンドを中心とした品ぞろえである。手数料は大手ネット証券と同様に最安の171円だ。

iDeCoの定期預金は「みずほDC定期預金(1年)」が選べて適用利率は2020年4月以降0.002%となっている。

松井証券…独自の資産管理画面や専門家のアドバイスが参照できる

松井証券の資産管理画面は保有残高だけでなくカテゴリーごとの保有比率や掛金の比率などがビジュアルで表示されるので見やすい。ホームページでは専門家がiDeCoの制度の仕組みや効果的な活用方法について解説するページもある。松井証券の商品ラインアップは全40本と豊富で、そのうち14本が低コストインデックスファンド「eMAXIS Slimシリーズ」、11本がターゲットイヤー型投資信託だ。ターゲットイヤー型は目標期限が近づくにつれて資産配分を株式中心から債券中心にシフトするバランスファンドで、一般的にはコストが高めになるが、松井証券で扱っている商品には年率0.4%以下など比較的低コストなものが多い。手数料は最安の171円である。

iDeCoで扱っている定期預金は「みずほDC定期預金(1年)」で、適用利率は0.002%だ。

4.iDeCo(イデコ)で定期預金を選ぶ場合の注意点

iDeCoで定期預金を選ぶ場合、値上がり益や分配金が期待できず、運用益はわずかな利子だけなので、所得控除による節税効果が頼りだ。したがって納めている所得税が少額だとメリットも小さい。専業主婦(夫)など所得税を払っていない人の場合、手数料分マイナスになる可能性が高いので注意したい。

また、あくまでもiDeCoは私的年金の形成のための制度なので、60歳になるまで引き出すことはできない。iDeCoの掛金は家計に影響のない範囲で設定したい。

執筆・篠田わかな(ファイナンシャルプランナー)
外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

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