不動産投資はハードルが高いと感じる人でも、不動産投資と同じような効果が期待できて少額から投資できるREITなら始めやすいだろう。REITとはどのような商品なのか。その仕組みから、高い利回りが期待できる理由、REITに投資する方法やリスク、今後の動向まで、わかりやすく解説する。
1,REITとは?仕組みやメリット、利回りの推移など
REIT(Real Estate Investment Trust・リート)とは、不動産を投資対象とする投資信託(「不動産投資信託」)のことをいう。投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設、賃貸住宅などの不動産を購入し、そこから得られる賃貸収入や譲渡益などを投資家に分配する仕組みの金融商品だ。
<REITが投資対象とする主な不動産>
・オフィスビル
・賃貸住宅
・商業施設
・物流施設(倉庫、物流センターなど)
・ホテル
・インフラ施設
・シニア・ヘルスケア施設(病院・介護施設など)
・底地(第三者の所有する不動産の敷地となっている土地)
・駐車場
「インフラファンド」と呼ばれ、REITと同じような仕組みで、太陽光発電施設などの再生可能エネルギー発電施設、公共施設運営権などを投資対象とするファンドもある。
REITの仕組み
日本で主に取引されるREITは「J-REIT」と呼ばれ、法律に基づき「不動産投資法人」という会社形態をとっている。不動産投資法人の発行する「投資証券(投資口)」を購入すると「投資主」になり、収益の分配や投資主総会での議決権を行使できる。投資証券は株式会社の「株式」、投資主は「株主」にあたる。原則不動産の開発は行わず、賃貸事業に特化しているため、一般の不動産会社に比べて収益が安定している。
不動産投資法人は不動産の所有者となり、収益を受け取るが、運用を行う「器」としての役割のみを持ち、実際の運営や事務は外部委託しなければならないと法律で定められている。そのため、投資する不動産の調査や選定、投資判断などは、不動産投資法人から業務委託を受けた「資産運用会社」が行う。
投資主名簿管理業務や金銭・不動産権利証などの保管、帳簿作成事務などの資産保管業務は、「資産保管会社」、投資証券の募集・発行・名義書換など、資産の運用・保管業務以外の一般事務は「事務受託会社」が行う。資産保管業務・一般事務は、主に信託銀行が受託している。
REITの6つのメリット
REITに投資する主なメリットは次のとおりだ。
・メリット1……少額から不動産投資ができる
現物の不動産に投資するには、住居物件でも数百万円〜数千万円の資金が必要だ。オフィスビルや商業施設のような不動産では億単位の資金が必要となり、個人で投資するのは現実的ではない。
これに対し、REITでは多くの投資家から資金を集め、その資金で不動産を購入するため、数万円〜数十万円の資金で、さまざまな不動産へ間接的に投資できる。利益は投資額に比例して分配されるため、投資額に応じたリターンが得られる。
・メリット2……複数の不動産に分散投資できる
REITでは集めた資金で複数の不動産に投資するため、分散投資によるリスク軽減効果が期待できる。
・メリット3……投資物件の選定や売買、物件の管理・運営の手間がかからない
REITでは投資する物件の選定や売買、物件の管理・運営などはプロが行うため、現物不動産に投資するような手間がかからない。運用状況は適時開示義務があり、資産運用報告書などで確認できる。
・メリット4……売買しやすい(流動性が高い)
REITは証券取引所に上場しているため、株式と同じように、取引時間中いつでも売買でき、換金するのも簡単だ。一方、現物不動産を売却するには、まず買い手を見つけなければならず、手続きは煩雑で、多くの時間とコストがかかる。
・メリット5……インフレに強い
不動産の資産価値や賃料は、物価上昇(インフレ)に伴って上がる傾向があり、不動産を投資対象とするREITもインフレに強い。
・メリット6……高い利回りが期待できる
REITには利回りの高いものが多い。その理由は、定期的に支払われる賃料を収益源としている点や、運用で得られた利益のほとんどを投資家に配当するREITの仕組みにある。
REITは特例により、収益の90%超を分配するなど一定の条件を満たせば、分配する収益に対して法人税がかからない(事業資金として企業が確保する「内部留保」のみに課税される)。実際に、REITの収益はほぼすべて投資家に分配されている。
これに対し、一般の企業(事業会社)では、収益に法人税がかかり、残った利益から内部留保を差し引いた残りを原資として、投資家に配当が支払われる。
このような違いから、REITは一般的な株式などに比べ投資家への分配(配当)が多くなりやすく、高い利回りにつながっている。
下図は2011年から2020年までの10年間について、「REIT(J-REIT)の平均予想分配金利回り」「東証一部株式配当利回り」「10年国債利回り」の推移を示したものだ。
<J-REITの利回り推移>
REITの平均予想分配利回りはおおむね4%前後で推移し、すべての年で東証一部上場銘柄の株式配当利回りや10年国債利回りを上回っていることがわかる。
2,REITの3つの買い方
REITの各銘柄は証券取引所に上場しており、上場株式と同じように証券会社を通じて買うことができる。そのほか、REITが発行する投資証券(投資口)を投資対象とする「ETF(上場投資信託)」や「投資信託」を買うことで、間接的にREITへ投資することもできる。証券会社によっては100円から積立投資できる場合もある。
個別銘柄 | REIT ETF | 投資信託(REITファンド) | |
---|---|---|---|
投資対象 | 現物不動産 | REIT投資証券 | REIT投資証券 |
購入場所 | 証券会社 | 証券会社 | 証券会社・銀行など |
手数料(コスト) | 売買委託手数料 | 売買委託手数料 信託報酬・監査報酬 |
購入時手数料 信託報酬・監査報酬 売買委託手数料 信託財産留保額 |
最低投資金額 (目安) |
数万円〜数十万円 | 数千円〜数万円 | 数千円程度(※1) |
それぞれの買い方でどのような違いがあるのかみていこう。
買い方1:REITの個別銘柄を購入する
REITの個別銘柄の投資口は、上場株式と同じように証券会社を通じて購入できる。1口から投資でき、1口あたりの価格は数万円〜数十万円程度だ。銘柄(投資法人)によって、投資する不動産の種類(用途)が異なり、一つの用途に特化した「単一用途特化型」、複数の用途の不動産に分散して投資する「複数用途型」に分かれる。
・単一用途特化型REIT
単一用途特化型のうち、ホテルやオフィスビル、商業施設などに特化したREITは、景気動向に左右されやすい傾向があり、好景気のときには高収益を期待できる一方、不景気になると収益が落ち込みやすい。これに対し、住居や物流施設などに特化したREITは、景気の影響を受けにくく、収益が安定している傾向がある。
ただしこれはあくまで傾向であり、たとえば商業施設特化型のREITでも、都市型の商業施設を主とするREITは、郊外型の商業施設を主とするREITに比べて景気の影響を受けやすいといった違いもある。
・複数用途型REIT
複数用途型のうち、2つの用途の不動産に投資する銘柄を「複合型」、3つ以上の用途、または用途を限定せず幅広い不動産に投資する銘柄を「総合型」という。
複合型REITは、オフィスビルと住居のように、用途の異なる不動産に分散投資するため、収益が安定しやすくなる。
総合型REITは、分散投資によって収益の安定が図れるほか、景気の動向などにあわせて組み入れ比率の調整(ポートフォリオのリバランス)がされやすいといった特徴がある。
・REITを個別銘柄で買うメリット
REITを個別銘柄で買うメリットは以下だ。
・不動産・用途を絞って投資できる
・かかるコストは売買委託手数料のみ
REITの個別銘柄は、ETFや投資信託に比べて投資対象が絞られており、自身の投資したい不動産・用途にあわせて銘柄を選べる。購入代金のほかには売買委託手数料しかかからないため、コスト面のメリットもある。
・REITを個別銘柄で買うデメリット
REITを個別銘柄で買うデメリットは以下だ。
・銘柄によってリスク・リターンの違いが大きい
・銘柄の選択が難しい
・最低投資額の大きな銘柄が多い
REITの個別銘柄は、銘柄によってリスクやリターンの違いが大きく、最低投資額が数十万円程度必要となる場合もある。
・主なREITの個別銘柄
REITの個別銘柄には、次のような銘柄がある。
投資法人名(証券コード) | 運用資産 | 投資口価格 | 分配金 利回り | 資産規模 |
日本ビルファンド投資法人 (8951) |
オフィスビル 特化型 |
59万6,000円 | 3.80% | 1兆1,721億円 |
ジャパンリアルエステイト投資法人 (8952) |
オフィスビル 特化型 |
60万9,000円 | 3.57% | 1兆700億円 |
日本リテールファンド投資法人 (8953) |
商業施設 特化型 |
19万900円 | 4.75% | 8,806億円 |
GLP投資法人 (3281) |
物流施設 特化型 |
17万400円 | 3.31% | 7,411億円 |
ジャパン・ホテル・リート投資法人 (8985) |
ホテル 特化型 |
5万3,600円 | 0.73% | 3,700億円 |
大和証券リビング投資法人 (8986) |
複合型 | 9万7,100円 | 4.45% | 3,224億円 |
プレミア投資法人 (8956) |
複合型 | 12万7,900円 | 5.16% | 2,553億円 |
野村不動産マスターファンド投資法人 (3462) |
総合型 | 15万4,400円 | 4.29% | 1兆663億円 |
大和ハウスリート投資法人 (8984) |
総合型 | 26万9,700円 | 4.36% | 8,218億円 |
REITの種類別に紹介しよう。
<単一用途特化型REIT>
・日本ビルファンド投資法人(8951)……オフィスビル特化型REIT。2001年に上場したJ-REIT最古参銘柄のひとつであり、資産規模は1兆円を超える。堅実な財務戦略で高格付を取得している。
・ジャパンリアルエステイト投資法人(8952)……オフィスビル特化型REIT。2001年に上場したJ-REIT最古参銘柄のひとつであり、資産規模は1兆円を超える。
・日本リテールファンド投資法人(8953)……商業施設特化型REIT。2002年上場の古参銘柄で、資産規模は8,000億円を超え、商業施設特化型REITとしては最大。2015年以降、イオン等の郊外型商業施設を売却し、都市型商業施設の割合を高めている。
・GLP投資法人(3281)……物流施設特化型REIT。資産規模は7,000億円を超え、物流施設特化型REITとしては最大。
・ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)……ホテル特化型REIT。資産規模約3,700億円で、ホテル特化型REITとして最大規模を誇る。
<複合型REIT>
・大和証券リビング投資法人(8986)……住宅(60%超)とヘルスケア施設(40%以下)を投資対象とする複合型REIT。
・プレミア投資法人(8956)……オフィスビル(60%程度)と住居(40%程度)を投資対象とする複合型REIT。
<総合型REIT>
・野村不動産マスターファンド投資法人(3462)……オフィスビル(40%程度)、住居(20%程度)、商業施設(20%程度)、物流施設(20%程度)を投資対象とする総合型REIT。複数のREITが合併して誕生し、資産規模が1兆円を超える最大の総合型REIT。
・大和ハウスリート投資法人(8984)……物流施設(50%程度)と住居(30%程度)をメインに、商業施設やホテルなども投資対象とする総合型REIT。
・REITを個別銘柄で買うのが向いている人
「投資したい銘柄、不動産の用途がある人」や「違いを理解した上で、投資目的にあった銘柄を選べる人」、「まとまった資金を投資できる人」などには、個別銘柄が向いている。
買い方2:REIT ETFを購入する
ETF(上場投資信託)とは、株価指数などに連動するように運用されている投資信託の一種で、証券取引所に上場しており、上場株式と同じように証券会社で購入できる。
東京証券取引所(以下、東証)に上場しているETFのうち、国内のREITを投資対象とする銘柄(以下、REIT・ETF)の多くは、「東証REIT指数」に連動するよう運用されている。
東証REIT指数は、国内REITの値動きを反映する代表的な指数であり、東証に上場するREIT全銘柄を対象とした「時価総額加重型(構成銘柄の時価総額の合計額を、ある一定時点の時価総額の合計額で割って算出し、一定時点からの時価総額の増減を示すもの)」の指数だ。
東証REIT指数連動型のETFに投資すれば、実質的に東証に上場しているREIT全銘柄に分散投資するのと同じ効果が期待できる。ほかに、東証に上場するREITのうち、時価総額や売買代金の大きな銘柄を対象とする「東証REIT Core指数」連動型のETFなどもある。
・REITをETFで買うメリット
REITをETFで買うメリットは以下だ。
・分散投資によりリスク軽減効果が期待できる
・個別銘柄に比べ少額から投資できる
・一般的な(非上場の)投資信託よりも手数料は割安
REIT ETFを買えば、投資対象とするREIT全銘柄に分散投資するのと同じ運用成果が期待でき、個別銘柄に投資するよりも値動きは平均化され、リスク軽減効果が高くなる。個別銘柄に比べて少額から投資できるメリットもある。
・REITをETFで買うデメリット
REITをETFで買うデメリットは以下だ。
・個別銘柄に比べてリターンも小さくなりやすい
・保有中にコストがかかる
REIT ETFは、分散投資によりリスクが軽減される反面、個別銘柄に比べて期待できるリターンも小さくなりやすい。また投資信託の運営コストとして、ETFの保有期間中には信託報酬や監査報酬がかかる。
・REIT ETFの主な銘柄
REITを投資対象とするETFには、次のような銘柄がある。
銘柄名(証券コード) | 対象指数 | 株価 | 売買単位 | 分配金 利回り |
信託報酬 (税込) |
NEXT FUNDS 東証REIT指数 連動型上場投信(1343) |
東証REIT指数 | 1,928円 | 10口 | 3.79% | 0.1705% |
上場インデックスファンドJリート (東証REIT指数)隔月分配型(1345) |
東証REIT指数 | 1,820円 | 100口 | 3.63% | 0.33% |
iシェアーズ・コア JリートETF (1476) |
東証REIT指数 | 1,855円 | 1口 | 3.88% | 0.176% |
NZAM 上場投信 東証REIT指数 (1595) |
東証REIT指数 | 1,822円 | 10口 | 3.56% | 0.2728% |
NZAM 上場投信 東証REIT Core指数 (2527) |
東証REIT Core指数 | 1,066円 | 10口 | 3.49% | 0.264% |
対象とする指数が同じなら基本的に同じような運用成果が期待できるが、銘柄ごとに最低投資額(売買単位)や信託報酬などが違い、分配金利回りにも差がみられる。
・REITをETFで買うのが向いている人
「なるべくコストを抑えながらREIT市場全体に分散投資したい人」、「ポートフォリオの一部として不動産を組み入れたい人」などには、REIT・ETFが向いている。
買い方3:投資信託(REITファンド)
REITを投資対象とする投資信託には、東証REIT指数などに連動する運用を行う「インデックスファンド」から、ファンドの運用方針に従い個別銘柄を選定して投資する「アクティブファンド」まで、様々な商品がある。
インデックスファンドの商品性は、基本的にREIT・ETFと同じだ。アクティブファンドでは、複数の個別銘柄に分散投資され、組み入れられる銘柄によって、ファンドごとに運用成果に差がつく。証券会社だけでなく、銀行などで購入できる点も個別銘柄やETFとの違いだ。
・REITを投資信託で買うメリット
REITを投資信託で買うメリットは以下だ。
・少額からREITに分散投資できる
・積立投資しやすい
・証券会社以外の金融機関でも購入できる
投資信託は100円〜数千円程度の少額から投資でき、積立投資にも向いている商品だ。個別銘柄やETFも、「るいとう(株式累積投資)」という制度を利用して定額自動積立投資は可能だが、利用できる証券会社は限られる。積立金額などの設定も投資信託のほうが自由度が高い。
・REITを投資信託で買うデメリット
REITを投資信託で買うデメリットは以下だ。
・信託報酬がETFよりも割高な傾向がある
投資信託は、購入時に支払う手数料や保有期間中の信託報酬・監査報酬などのコストがかり、信託報酬はETFよりも割高な傾向がある。コストに見合った運用成果を期待できるかの見極めが重要だ。インデックスファンドには、購入時手数料がかからず、信託報酬がETFとほぼ同水準の銘柄もある。
・投資信託(REITファンド)の主な銘柄
REITを投資対象とする投資信託には、次のような銘柄がある。
銘柄名 | 基準価額 | 純資産額 | トータルリターン (年率)※2 |
信託報酬 (税込) | |
1年 | 3年 | ||||
三井住友TAM/J-REIT・ リサーチ・オープン(毎月決算型) |
6,690円 | 3,566億円 | -12.42% | 7.02% | 1.1% |
野村/野村Jリートファンド | 1万6,389円 | 124億円 | -12.79% | 7.50% | 1.1% |
三菱UFJ国際/eMAXIS Slim 国内リートインデックス |
8,401円 | 48億円 | -13.86% | - | 0.187% 以内 |
2020年は新型コロナウイルス感染拡大による影響を受け、REITを投資対象とする投資信託の基準価格も大きく下落、年後半にかけて持ち直したものの、直近1年間のトータルリターンは10%超のマイナスとなっている。それでも直近3年間のトータルリターンでみれば7%を超える(「eMAXIS Slim国内リートインデックス」は、2019年10月31日設定のため未記載)。
それぞれの銘柄を解説しよう
J-REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)は、国内に上場するREITが保有する不動産の価値を査定、収益を予想し、個別銘柄を評価する。配当利回りや流動性、時価総額などに、独自の評価を加味して銘柄を選定し、投資するアクティブファンドだ。年12回決算(分配金支払)を行う「毎月決算型」だ。
野村Jリートファンドは流動性、収益性、成長性などを勘案して選定したREIT個別銘柄に分散投資を行い、高水準の配当収益獲得と中長期的な値上がり益をめざすアクティブファンドである。年2回(1月・7月)に決算(分配金支払)を行う「年2回決算型」だが、設定来分配は行われておらず、収益は基準価額に反映されている。
eMAXIS Slim国内リートインデックスは、REITを投資対象とし、東証REIT指数(配当込み)に連動する投資成果をめざして運用を行うインデックスファンドだ。「eMAXIS Slim」シリーズは、コストに強みがあり、ETFの中でも信託報酬の低い銘柄とも肩を並べる。
・REITを投資信託で買うのが向いている人
「少額から複数のREITに分散投資したい人」や「REITに積立投資したい人」、「銀行で投資したい人」などには、投資信託が向いている。
3,REITのリスクや注意点
REITは複数の不動産へ分散投資することにより、現物不動産に比べてリスクは軽減されているが、次のようなリスクもある。個別銘柄のリスクについては、目論見書や決算報告書などに詳細に記載されているため、投資する前に必ず確認しておこう。
リスク1……価格変動リスク
REITは証券取引所に上場しており、株式と同じように需給関係によって投資口価格が変動する。個別銘柄の業績に変化がなくても、株式市場や不動産市況全体の影響を受けて価格が下落することもある。個別銘柄の価格変動要因としては、決算発表(業績の変化)、分配の権利確定、投資口の追加発行、不動産の取得・売却、スポンサー(資産運用会社の親会社)の交代、合併などがある。
リスク2……収益変動リスク
REITの分配金は、運用状況や経済情勢などによって変動する。地震などの自然災害による建物の毀損、テナントの退去、賃料未納・減額、物件の売却損などによって収益が減り、分配金が減少することがある。
リスク3……金利変動リスク
REITでは、投資家から集めた資金のほか、金融機関からも借入れにより資金調達をしている。金利が上昇すれば利息負担が増え、減収要因となる。金利上昇に伴い国債などの債券利回りが上昇すれば、REIT分配金の相対的な魅力が低下し、投資口価格の下落要因となる。
リスク4……法律・税制の変更によるリスク
REITに関する法律や税制が、運用に不利な内容に変更された場合、保有する資産、投資元本の価値が変動するリスクがある。
リスク5……投資法人の倒産・上場廃止リスク
REITも一般の法人(企業)と同じように倒産するリスクがある。投資法人が破綻した場合、保有する不動産は売却され、投資主に分配されるが、投資資金が全額戻ってくる保証はない。
証券取引所の上場廃止基準に該当し、上場廃止となるリスクもある。上場廃止となれば取引は著しく困難になるため、上場廃止までに売却を余儀なくされ、損失を被るおそれがある。
4,REITは今後どうなる?REITの現在と今後の見通し
東証REIT指数(配当なし)は、2019年12月30日の2,145.49から、2020年3月19日には1,145.53まで約47%下落した。2021年になっても新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、REIT市場が今後どうなっていくのかは気になるところだろう。
REITの現在の状況
2020年3月の急落後は、金融緩和策や政府の財政出動などもあり、REIT市場は急速に持ち直した。しかし、2020年12月30日時点の東証REIT指数(配当なし)は1,783.90と、2019年12月30日に比べてなお約17%低い水準にある。TOPIX(東証株価指数)が昨年末の水準を回復し、日経平均株価がバブル後30年ぶりの高値を更新する中で、REITは出遅れが目立つ状況だ。
この要因としては、REIT市場の約4割を占める「オフィス」セクターの回復の遅れがあげられる。不動産仲介・三鬼商事によると、東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の2020年12月の平均空室率は4.49%。2020年4月以降、空室率の上昇が続き、2020年4月平均と比べ約3倍の高い水準にある。
コロナ禍による景気悪化やオフィス空室率の上昇などを受け、REIT市場におけるオフィスセクターに対する悲観的な見方は強い。一方でREITが保有するオフィスビルの収益や評価額は、市場評価ほど悪化しておらず、割安感もある。
REITの今後の見通し
今後のREITの回復には、オフィスセクターが鍵を握る。しかし、テレワークの普及など働き方の変化は一時的なものに留まらず、中長期的にオフィス需要が低迷するリスクは残る。実際に音楽・映像事業を手がけるエイベックスは、2020年12月に南青山の本社ビルを売却、2021年に入ってからも広告大手・電通が本社ビルの売却検討を発表するなど、都心部のオフィスを売却・縮小する動きが広がっている。
一方で、日本市場は低迷する世界の不動産市場の中で相対的に高い収益性を維持しており、海外投資家からの注目は高い。
REITは不動産の裏付けがあり、収益が比較的安定していることから、下落すれば利回りが高まり買い戻されやすい傾向がある。不透明な状況は続いているが、新型コロナワクチンの接種開始など明るい兆しもあり、「売られすぎ感」のあるオフィスセクターは、今後の買い戻しも期待される。
また在宅需要によるネット通販の拡大などで好調な「物流施設」、外部要因の影響を受けにくく収益の安定している「住宅」「ヘルスケア施設」などには、コロナ禍の中でも底堅さがある。
割安感のある「オフィス」、比較的堅調な「物流施設」「住宅」「ヘルスケア施設」などに分散投資することも検討したい。
5.REITは不動産投資をより身近に、ポートフォリオをより充実させてくれる商品
REITは少額から投資でき、不動産投資をより身近なものとして、投資の幅を広げてくれる。現物不動産投資では、保有する資産に占める不動産の割合が大きくなり過ぎたり、投資割合を変えることが難しかったりする面もある。REITであれば、保有する資産の大きさにあわせて投資金額を調整しやすく、希望する割合でポートフォリオに組み入れられる。リスクをよく理解した上で、うまく活用したい商品だ。
執筆・竹国弘城(ファイナンシャルプランナー)
証券会社、保険代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。RAPPORT Consulting Office 代表。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®︎
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