特集『withコロナ時代の経営戦略』では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中での、業界の現在と展望、どんな戦略でこの難局を乗り越えていくのかを、各社のトップに聞く。

2003年(平成15年)、千葉県千葉市で有限会社として創業し、不動産管理業・仲介業を開始した株式会社ジャパンマーケティング。3年後の2006年には現在の商号に変更し、買取・リノベーション事業を開始した。千葉県は首都圏のベッドタウンとして早くから発展し、昭和の時代から数多くの不動産物件が開発されてきた。その多くは築年数を重ね、首都圏に近い好立地にありながら住居として活用されにくくなっていく傾向がある。同社は買取リノベーションで、古くても優良な物件を再生し新しい家族の未来につなぐための事業を推進している。トップは顧客と従業員、そして千葉のため「人をつなぐ、価値をつなぐ、未来へつなぐ」決意を語ってくれた。

(取材・執筆・構成=長田 小猛)

株式会社ジャパンマーケティング
(画像=株式会社ジャパンマーケティング)
渡辺 浩志(わたなべ・こうじ)
株式会社ジャパンマーケティング代表取締役社長
東京都生まれ。青山学院大学法学部卒。
大学卒業後、マンションディベロッパーで新築マンションの販売に携わっていた渡辺氏は、前社長と知り合い意気投合して設立2年目のジャパンマーケティングに転職。入社から1年ほどは前職同様新築マンションの仲介を行っていたが、大手が幅をきかせる新築マンションの売買・仲介に見切りをつけ、2007年に買取リノベーション事業を開始。同事業をジャパンマーケティングの中心的な事業に育て上げる。2013年には常務取締役となり、2017年、代表取締役に就任した。

4つの理念を胸に、幸せの応援団であり続ける

――最初に、会社の思いとして掲げているMission、Professional、Honesty、Futureについて詳しくお聞かせいただけますでしょうか。

ホームページの最初に掲げている「JM(Japan Marketing)の思い」は、当社がお客様の幸せの応援団であるための理念とお考えいただければよいと思います。私たちのMissionは、「お客様の家族が幸せ」であるための価値を届けること。不動産は人生で一番大きな買い物です。ですからチャンスを逃さず、的確に、お客様それぞれにとって本当に価値のある住まいをお届けしたいのです。次はprofessional。私たちが自信を持って仕事ができるのは、これまでの成功体験がベースにあるからです。私たちはプロとして、豊富な経験や実績を基にした自信のある提案をお客様にお届けします。次がHonesty。不動産で大切なのは、将来を見据えた賢い判断をすること。せっかく買った不動産が、将来の負担になってはいけないのです。ですから私たちはその取引が最適な売買なのかをプロの立場から精査し、誠意を持ってお客様の背中を押したり、時には抑えたりします。不動産業とは、お客様と末永いお付き合いができてこそ本物だと考えています。最後はFutureです。当社の故郷は千葉県です。

私たちは、当社を育ててくれた地元にもっと貢献したいと考えています。県内にはまだまだ魅力的な物件が眠っています。地元を知り尽くしている私たちが自らディベロッパーとなって新しい街を創り、ビジネスチャンスや雇用を創出したいと考えています。

築年数だけで判断されるには惜しい優良物件に着目

――現在展開している事業と、主力事業「買取リノベーション」について詳しくお聞かせ下さい。

事業としては仲介も行っていますが、買取リノベーションと賃貸管理が2本の柱です。特に買取リノベーションは、当社の一番の特徴であり主力事業です。これは築20年から30年の優良な中古マンション(主に3~4LDKのファミリータイプ)を厳選して仕入れ、リノベーションを行い手の届きやすい価格でお客様に届ける事業です。千葉県は首都圏から近く利便性が高い。魅力的なマンションがたくさんあります。ですが新築となると予算が合わなかったり、ローンも背伸びをしたものになってしまったりということになりがちです。当社の買取リノベーションなら、限られた予算、少ないローン負担で、新築物件のように快適な暮らしが可能です。また同じ予算で、諦めていたエリアへの住み替えも可能になります。

株式会社ジャパンマーケティング
(画像=株式会社ジャパンマーケティング)

――Futureでも語っておられましたが、千葉に貢献することを理念にされている貴社の地元ならではの強みを教えて下さい。

当社の強みは物件の仕入れ力です。当社がこの事業を始めた15年前には、まだこのような事業を行っている競合他社はほとんどありませんでした。おかげさまで長くこの事業を続けているので、情報収集力もあり知名度も高い。これは仕入れに大変有利に働いています。

――コロナ禍でもその優位は変わりませんか?影響は出ていますか?

不動産業界としては追い風のところが多いようです。家にいる時間が増え、これから家をどうするか考える時間が増えたのかもしれませんし、リモートワークが増えて郊外もアリと考えたお客様も多いようです。また逆に感染リスクを少なくするべく、通勤のいらない会社に近い物件を求めるお客様もいます。お問い合わせの件数としては、コロナ前の1.2~1.3倍になっています。

ただ問題は仕入れです。買いたいお客様は増えていますが、売りたいお客様は2割減っているのです。在庫があっても1週間ぐらいで売れてしまう状況で、競争原理が働き買取価格が高騰し始めています。このままではコストが全体的に上昇し、価格のメリットが失われかねません。お問い合わせが増えることは有り難いのですが、期待に応えられない苦しさがありますね。

――今後はどのように事業を発展させていきたいと考えていますか

直近では、まずこの物件が無い状況をなんとかしたいと考えています。とはいえコロナが収束したとしても、仕入れる物件がこの先ずっと十分に出てくる確証はありません。現在はフロービジネス(顧客との関係が1回の取引で終わってしまうビジネス形態、もしくは継続的にその顧客から利益を得ることが担保されないビジネスの形態)が当社の主力事業となっていますが、賃貸管理などのストックビジネス(会員制度を設けたり、顧客と契約を結んだりすることで、継続的な売上や利益を得ることができるビジネス形態)を強化していきたいと考えています。幸い当社は買取や再販、仕入れなどで培ったさまざまな不動産のノウハウと人脈を持っています。これを活かしてストックビジネスを伸ばしていきたいですね。

また人材の確保も積極的に行っていく予定です。現在の社員数は20名ほどですが、まずキャリア採用を積極的に行って即戦力となる社員を増やします。社員の年齢層は40歳前後が多いので、新卒の採用も考えています。毎年新しい人を入れて人材の層を厚くしたいですね。

――2017年には、ひらいホールディングス株式会社のグループ会社となりました。

はい。一番の目的は、資金力と信用力の強化です。資金力は私たちの主力事業である買取リノベーションの強化に、なくてはならないものです。仕入れをするにもリノベーションを行うにも、物件の数を増やすためには資金が必要になりますから。また、信用力の強化は2つの点でメリットがあります。1つは金融機関に対する信用力の向上、もう1つは企業としての信用力向上です。お客様と社員にとって、人をつなぎ、価値をつなぎ、未来へとつなぐ企業でいたいと考えています。