東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドの苦境が続いている。最新決算では売上高が前年同期比で60%以上下落した。コロナ禍による臨時休業からすでに営業は再開したものの、入園者数の制限もあり売上の急回復には結びついていない。V字回復はあり得るのか。

売上高の減少幅は縮小傾向だが、業況は依然厳しい

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(画像=ink drop/stock.adobe.com)

オリエンタルランドの2021年3月期の各四半期決算は、悲惨な状況だ。第1四半期の連結業績(2020年4〜6月)は、売上高が前年同期比94.9%減の61億6,400万円、最終損益は229億2,300万円の黒字から248億7,100万円の赤字に転落した。

第2四半期の連結業績(2020年4〜9月)は、売上高の減少幅は縮小したものの前年同期比76.2%減の591億4,900万円となり、最終損益は300億9,500万円の赤字を計上している。

2021年1月に発表された第3四半期の連結業績(2020年4〜12月)が同社としての最新決算となるが、売上高は前年同期比64.9%減の1,371億1,300万円、最終損益は依然として赤字で287億2,800万円のマイナスとなっている。

<売上高の増減率と赤字額の推移>

時期 売上高の増減率 赤字額
第1四半期 94.9%減 248億7,100万円
第2四半期 76.2%減 300億9,500万円
第3四半期 64.9%減 287億2,800万円

売上高の減少幅は縮小しつつあるが、2021年3月期の通期(2020年4月〜2021年3月)の予測は上方修正せず、売上高は前期比60.1%減の1,854億6,000万円、最終損益は511億1,000万円の赤字に着地する見通しだ。

赤字の元凶は?テーマパーク事業とホテル事業の「ダブル苦」

オリエンタルランドの第3四半期の決算発表から、セグメントごとの業績を紐解いていこう。どのセグメントで特に業績が悪化しているのだろうか。

セグメント別の売上高では、稼ぎ頭である「テーマパーク事業」が前年同期比66.3%減の1,091億5,900万円、「ホテル事業」が同58.6%減の221億5,800万円、「その他の事業」が同53.9%減の57億9,500万円となっている。

<セグメント別の売上高の増減率(前年同期との比較)>

事業セグメント 増減率
テーマパーク事業 66.3%減
ホテル事業 58.6%減
その他の事業 53.9%減

この数字からわかるのは、テーマパーク事業もホテル事業も厳しいということだ。東京ディズニーランドを臨時休園したり、入園者数を制限したりすると、必然的にホテルの売上高は落ちる。

コロナが追い風となる事業部門も有する企業であれば、影響は一定程度にとどまりやすいが、オリエンタルランドの場合はテーマパーク事業とホテル事業のどちらも、コロナの影響をもろに受ける事業だ。

国内外で新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、外国人観光客数が回復すれば、オリエンタルランドの業績は回復基調になるだろう。ただし変異種が猛威を振るい、コロナ禍が長引けば、その時期は後ろ倒しになる可能性が高い。

1人当たりの飲食販売収入は増加、変動料金制導入で今後も?

オリエンタルランドの業績が厳しい状況であることは明らかだが、明るい話題もある。

東京ディズニーランドの営業再開後、入園者の商品購入の需要は予想を上回り、来園者1人当たりの商品販売収入は前年同期を上回る結果となった。これは「リベンジ消費」の一種と考えられ、コロナ終息後しばらくは商品販売収入が期待できそうだ。

1人当たりの飲食販売収入も伸びた。入園者数を制限したことからアトラクションの待ち時間が減り、ゆっくり食事をする時間が増えたためと考えられる。これは、入園者数を制限している今だけの現象と思うかもしれないが、実はそうではないかもしれない。

なぜなら東京ディズニーランドと東京ディズニーシーでは、2021年3月20日からチケットの変動価格制が導入されるからだ。混雑期はチケットの価格が高くなり、閑散期は安くなるため、混雑期と閑散期の来園者数の平準化が期待できる。

来編者数が平準化されるということは、混雑期におけるアトラクションの待ち時間が少なくなるということだ。そのため、1人当たりの飲食販売収入は今後も高い水準を維持する可能性がある。

V字回復への期待感で株価は上昇傾向

オリエンタルランドの株価は2020年3月に大きく下落したが、その後方向感を失い、最近は上昇傾向にある。投資家は、コロナの終息によって同社の業績がV字回復すると期待しているのだろう。

コロナの状況とオリエンタルランドの業績に、引き続き注目したい。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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