高年収というイメージがある職業に「弁護士」があるが、実際のところ平均年収はどのくらいなのだろうか。この記事では、勤務型弁護士の平均年収を紹介しつつ、独立して弁護士事務所を開いた開業弁護士と比較してみよう。
弁護士の平均年収は?厚労省調査によれば728万〜769万円程度
職業別の平均年収を調べる際に参考になるのが、厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」だ。最新版である「令和元年(2019年)版」から、弁護士の平均年収を計算してみよう。
この調査では、企業規模が「10人以上」のケースと「1,000人以上」のケースで、職業別の月収と賞与の平均的な金額が明らかにされている。
弁護士数は弁護士事務所の最大手でも500〜600人程度だが、弁護士以外の職員も含めると1,000人以上になることもあるので、企業規模が「10人以上」と「1,000人以上」の両方で平均年収を計算してみよう。
<企業規模が10人以上のケース>
平均所定内給与(月収) | 50万2,500円 |
平均ボーナス(年間) | 125万5,600円 |
平均年収 | 728万5,600円 |
<企業規模が1,000人以上のケース>
平均所定内給与(月収) | 48万2,900円 |
平均ボーナス(年間) | 190万3,200円 |
平均年収 | 769万8,000円 |
企業に所属する弁護士の平均年収は、企業規模によって728万5,600万〜769万8,000円ということだ。平均月収は企業規模が10人以上の企業のほうが高いが、ボーナスは企業規模が1,000人以上の企業のほうが高い。
開業弁護士の平均年収は1,000万〜3,000万円程度
では「開業弁護士」の平均年収は、企業に所属する弁護士とどれほどの差があるのだろうか。
残念ながら、厚生労働省などによる公的な調査では、開業弁護士の平均年収のデータがない。ただし日本弁護士連合会が毎年発行している「弁護士白書」では、開業弁護士と勤務型弁護士の両方を含めた平均年収が明らかになっている。
インターネットで公開されている弁護士白書の2018年版を見ると、回答者2,584人の平均年収は959万円。厚生労働省の調査における「728万5,600万円〜769万8,000円」と比べると200万円ほど高い。
つまり、開業弁護士が弁護士全体の平均年収を引き上げていることになる。したがって、勤務型弁護士よりも開業弁護士のほうが、平均年収が高いことは明らかだ。
一般的に、開業弁護士の平均年収は1,000万〜3,000万円程度といわれている。ただし開業弁護士は「経営者」であり、その経営手腕によって平均年収が300万円程度の人もいれば1億円を超える人もいる。いずれにしても、勤務型弁護士と比べると年収に幅があるといえるだろう。
他の職業と比較すると?全職業の中で7位
最後に、勤務型弁護士の平均年収を他の職業と比べてみよう。先ほど紹介した賃金構造基本統計調査の令和元年版によると、企業規模が10人以上のケースにおける平均年収のトップ10は、以下のとおりだ。
<職種別の平均年収トップ10>
1位 | 航空機操縦士 | 1,694万6,100円 |
2位 | 医師 | 1,169万2,300円 |
3位 | 大学教授 | 1,100万6,200円 |
4位 | 大学准教授 | 872万3,600円 |
5位 | 記者 | 792万2,200円 |
6位 | 不動産鑑定士 | 754万5,900円 |
7位 | 弁護士 | 728万5,600円 |
8位 | 高等学校教員 | 709万3,600円 |
9位 | 一級建築士 | 702万8,800円 |
10位 | 公認会計士、税理士 | 683万5,500円 |
弁護士は7位で、同じ「士業」の中では6位の「不動産鑑定士」(754万5,900円)より低く、9位の「一級建築士」(702万8,800円)よりも高い。
高年収を目指すなら独立・開業が求められる
この記事では、勤務型弁護士の平均年収を紹介しつつ、開業弁護士との差について見てきた。勤務型弁護士の平均年収は他の職業と比べると高いほうだが、さらなる高年収を目指すなら独立・開業が求められる。
勤務型弁護士の平均年収は、事務所が地方と都心、また中堅と大手で変わることも覚えておきたい。
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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