FX取引において、通貨ペアや口座を選ぶ際に参考にしたいのが年間の取引実績だ。本記事では、2020年に取引の多かった通貨ペアと、国内FX会社の取引高ランキングをまとめた。数ある通貨ペアの中で、上位にランクインした人気の通貨ペアはどれか。取引高が多いのはどのFX会社か。FX初心者が口座開設前に取引高をチェックすべき理由もあわせて紹介する。
1,FX取引の通貨ペアシェアランキングTOP10!取引額が多いのはどれ?
まずは、2020年のFX取引額と通貨ペアのシェアランキングTOP10から見ていこう。
一般社団法人金融先物取引業協会が発表したデータによると、2020年の一年間、日本でFX取引に投じられた金額は約6,364兆円にのぼる。これは2019年の約3,439兆円の1.85倍。月別では、新型コロナウイルスの影響で為替レートが乱高下した3月だけで1,015兆円もの取引があり、2020年のFX市場の活況ぶりが窺える。
通貨ペアランキングは、米ドル/円がダントツの1位。取引額約3,856兆円でシェアは約60.6%にも及ぶ。1位と2位(英ポンド/円=約793兆円)の差も大きいが、同様に7位以下も桁が下がる。7位の豪ドル/米ドルのシェアは1%を切ってしまい、1位から6位で全体の取引のおよそ96%を占める。それぐらい人気の通貨は上位6通貨ペアに偏っているのが現状だ。
それでは、上位6通貨ペアの特徴を簡単に紹介する。
1位,米ドル/円 取引額約3,856兆円 シェア約60.6%
基軸通貨としても知られる米ドルは、日本人にとって最も身近に感じる外国通貨だろう。マーケット情報でも米ドル/円はよく取り上げられるように、情報量も多く日本人が最初に手を出しやすい通貨ペアだ。
そのため取引参加者が増え、FX各社もスプレッドを下げやすくなり、気軽に取引ができるため取引量も増える。その結果、レートの値動きは緩やかになり、ますます初心者が安心して取引ができる通貨ペアになる。
日本での人気ぶりは群を抜いていて、米ドル/円の取引額は3月の一ヶ月で721兆円を計上したが、これは2位の英ポンド/円の年間取引額(約793兆円)に相当する。また、米ドル/円はニューヨーク時間(日本時間の夜間)でも多く取引されるため、終日ある程度の値動きが期待できる点も評価が高い。
2位,英ポンド/円 取引額約793兆円 シェア約12.5%
英ポンド/円は主要通貨ペアの中でも値動きが激しく、短期でハイリターンを狙いたい人が好む印象の通貨ペアだ。英ポンド/米ドルと米ドル/円のクロス円で、レートの予想は難しくなるが、ユーロとともに英国の情報も割と取りやすいため、情報を得やすい中ではボラティリティが最も期待できると考えるデイトレーダーも少なくないのだろう。
3位,豪ドル/円 取引額約497兆円 シェア約7.8%
資源国であるオーストラリアの通貨豪ドルは、資源価格の影響を大きく受けるのが特徴だ。また、資源の多くを中国に輸出しており、中国経済の影響も大きく受ける。もともとは高金利通貨として人気があったが、近年はスワップの魅力も薄れてランキングを下げていた。ただ、いまだ根強い人気が残っておりシェアも8%弱をキープしている。
4位,ユーロ/米ドル 取引額約404兆円 シェア約6.4%
ユーロ/米ドルは世界で最も取引が行われている通貨ペアで、情報も多く、値動きも緩めで掴みやすいと言えるだろう。ドルストレート(米ドルが絡んだ通貨ペア)なのでトレンドは出やすく、順張り派向けとも言われている。取引の注意点は、アメリカとヨーロッパの双方の政策や経済動向の影響を受ける点。日本時間では緩めの動きから始まり、その後ロンドン市場が開くと急に活発になることも多い。
5位,ユーロ/円 取引額約362兆円 シェア約5.7%
ユーロ/円は、ユーロ/米ドルと米ドル/円のクロス円。ヨーロッパ、アメリカ、日本のすべての経済動向をチェックする必要がある。ユーロ/米ドルは世界一の取引量で欧州時間に入ると急に活発になることが多いが、それはユーロ/円にも影響する。
6位,英ポンド/米ドル 取引額約231兆円 シェア約3.6%
英ポンド/米ドルは世界第3位の取引量を誇る。ロンドン市場が開くと活況になりトレンドが変わることもしばしば。ユーロ/米ドルよりボラティリティも高いのでハイリターンを狙いたい人に人気だ。
その他の注目通貨ペア──メキシコペソ/円
上位6通貨ペアの特徴を見てきたが、それ以外の通貨ペアで注目なのが、メキシコペソ/円。11位なので上記のグラフには出てきていないが、前年までの2兆円程度の取引額から、10位のユーロ/豪ドルとほぼ同じ約20兆円まで大躍進した。この背景には、金融政策によって世界各国が軒並み低金利になったことで、高金利なメキシコペソに注目が集まったことが挙げられる。またそれに伴って、FX各社がキャンペーンを行ったことなども影響している。
2,FX会社の取引高ランキングTOP6を紹介
次に、FX各社の取引高をチェックしていこう。データを公表している会社のランキングは以下のとおり。
<取引高ランキングTOP6>
順位 | 証券会社 | 2019年 | 2020年 |
1 | GMOクリック証券 | 662.2兆円 | 1,294.4兆円 |
2 | 外貨ex byGMO | 275.1兆円 | 502兆円 |
3 | ヒロセ通商 | 258.7兆円 | 436.8兆円 |
4 | 外為どっとコム | 203.5兆円 | 343.5兆円 |
5 | マネーパートナーズ | 93.3兆円 | 104.3兆円 |
6 | FXプライムbyGMO | 37.7兆円 | 84.1兆円 |
2020年は新型コロナウイルス関連で為替レートも大きく動いた一年であった。各社ともに、前年より大きく取引高を伸ばしており、FX市場の活況ぶりが現れているといえるだろう。
(注釈:公表期間にズレのある会社は単純比較ができないが参考までに以下掲出)
証券会社 | 1年間の取引高 | 期間 |
外為オンライン | 85.2兆円 | 2019年度(2018年4月-2019年3月) |
DMM FX | 635.5兆円 | 2019年度(2018年4月-2019年3月) |
マネックス証券 | 39.6兆円 | 2019年度(2018年4月-2019年3月) |
トレイダーズ証券 | 132.1兆円 | (2018年12月-2019年11月) |
それでは、2019年、2020年のデータを公表している各社の特徴を紹介していこう。
1位,GMOクリック証券
1,000兆円の大台を突破し国内の取引高9年連続1位を達成するとともに、2020年は世界1位となり、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いだ。その要因として、「スプレッドの狭さ等取引コストの安さ」「取引ツールの使いやすさ」「高水準のスワップポイント」があり、バランスが良く初心者から上級者まで使いやすいのが特徴だ。
2位,外貨ex byGMO
GMOインターネットグループの強みを生かしたキャンペーンなどが特徴の外貨ex byGMO。初心者に優しいサポートも強みで、経済指標の発表前にメールで知らせてくれる機能や、24時間電話問い合わせに対応しているのも嬉しい点。さらに、電話対応窓口は、サポートサービスにおける世界最大のメンバーシップ団体HDIの日本法人HDI-Japanから二年連続で最高評価(三つ星)を獲得しているので、安心して取引ができる。
3位,ヒロセ通商
2021年オリコン顧客満足度ランキングFX取引総合第1位(2年連続)を獲得しているヒロセ通商は、スプレッドや約定力、システムの使いやすさなど全体的なバランスが良いと評価されている。通貨ペアの多さも際立つ特徴である。さらに、条件クリアで高級和牛や中華料理がプレゼントされるキャンペーンを実施するなど、ユニークさでも有名。ヒロセ通商の独自性はコアなファンの獲得にもつながっている。
4位,外為どっとコム
1,000通貨から取引ができ、初心者向けの情報提供などでも人気が高い外為どっとコムは、安定した狭スプレッドに加えてキャンペーンスプレッドなども実施し、魅力的なスプレッドで常に上位に食い込んでいる。2020年の取引高は前年比168%もの大幅な伸びを記録している。
5位,マネーパートナーズ
マネーパートナーズは、パートナーズFXとパートナーズFXnanoの2つのサービスを提供しているのが特徴だ。パートナーズFXはロスカットが証拠金維持率の40%など経験者向け、パートナーズFXnanoは100通貨単位の少額投資ができ初心者向け、といった違いがある。
6位,FXプライムbyGMO
FXプライムbyGMOは、GMOクリック証券同様GMOグループだが、GMOクリック証券のFXネオとの大きな違いは、1,000通貨単位での取引ができる点と「ちょいトレFX」というシステムトレード(設定したルールに従って機械的・継続的に取引する手法)ができる点だろう。少額投資や、自動売買に興味がある人にはFXネオよりいいかもしれない(ちょいトレFXは2021年1月現在、PC向けサービスのみでスマートフォン未対応)。
3,直近の取引高からFX会社の信頼度を測る
FX初心者が口座を選ぶ時にまず考えるのは、「他のFX投資家はどの口座を使っているのか」だろう。しかし単純に、各社の「口座数」を比較するだけでは実態をつかめない。なぜなら、実際は複数の口座を持っているユーザーも多く、サブ口座や、最初に開設したが何らかの理由で今は全く使っていない口座、稼働しているがそこでは取引していない口座なども含まれるからだ。さらには、数年前に口座を開いて退場した休眠ユーザーなども口座数にはカウントされる。
FX初心者が本当に知りたいのは、「今実際に取引をしているアクティブユーザーが最も信頼を置いているFX会社はどこなのか」である。取引コストが低く、ツールが使いやすく、取引がしやすく、今もメインで使っている──そんな総合評価の高い口座を探る手段の1つが「取引高」なのである。
また、取引高を非公開にしているFX会社が多い中、月次で公開し続けている会社には誠実さも感じられ信頼度も増す。そういった意味でも、取引高は口座選びの指標になり得る。
4,FX口座や通貨ペア選びの際には取引高をチェックしよう
今回は、通貨ペアの年間取引高ランキングTOP10と、国内のFX業者のうち、データを公開している企業の年間取引高ランキングTOP6を紹介した。これからFX口座の開設を考えている人にはFX会社の取引高を、通貨ペアで迷っている人には通貨ペアのシェアを参考にしていただきたい。
執筆・国枝ゆたか
くにえだFP事務所・代表。金融商品を売らないファイナンシャルプランナー。自身の資産形成の経験を活かしたマネーセミナーなどが人気。若年層にも金融リテラシーを身につけて欲しいという思いから、資産形成のゲーム研修をFP仲間とともに制作。
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