◉Financial Life Adovisor社


次に、現地で訪問させて頂いた3社のFP事務所についてお伝えさせてください
まずは最初に訪問したFinancial Life Adovisor社についてです。

ここはCPA(米国公認会計士、日本の税理士に近い資格)のJimさんが1981年と20年以上前に開業した事務所です。

当初は会計事務所として経営されていたようですが、2003年からBenさんというCFP(編集注:ファイナシャルプランナーの国際資格)を採用して、税務の相談だけではなく資産運用のアドバイスも行われるようになりました。
税務とFPサービス(主に資産運用)を両方扱えるところが特徴的で、合わせて相続関連のエステートプラン(不動産プラン)までも取り扱っているとのことでした。

なお会社のブランディングにも大変力を入れていて、事務所のデザインも非常にスタイッシュで格好の良いものでした。
また他に特徴的だと感じたのは、システムに対する投資です。事務所は完全にペーパーレス対応していて、顧客の情報や預かった紙は全てPDF化して、基本的に紙は全て処分しているそうです。その結果、PCとモニタ(モニタは一人4台ぐらい使う)に対する投資がしっかりと行われていて先進的な印象を強く受けました。

日本でも税理士事務所、会計事務所は、税務相談と相続相談にはのってくれていると思ますが、本当の意味で資産運用のアドバイスまでしてくれるところは少ないように感じます。

ただ、今後はこのような総合的なサービスを展開をしてくれる税務事務所が日本でも出てくる可能性はあると思います。


◉iFinancial社


2社目は、iFinancial社です。

こちらの創業者は長年の間、生命保険外交員をされていた女性の方です。20年間以上営業活動をしてきており、自分の事務所の承継を考えて、2004年から今回インタビューに応対して頂いたKeivinさんを採用してFP業務に進出されているそうです。

なおKeivinさんは前職がファンドマネージャーであり、主に新興国の債券と株式にして投資を行っていたそうです。
このようにファンド業界からFP(アドバイザー)への転職などが比較的容易に行えるところに米国の金融業界の懐の広さを感じます。

こちらでは主に顧客サービスについてヒアリングを行いました。やはりシステム投資はある程度しっかりされていて、顧客は自分のIDが発行されており、自分の資産に関してオンラインでいつでも確認できる状態にあります。
また市場の状況などは、4半期ごとにビデオやメールなどで情報発信をしているとのことです。他にリアル(対面)でも、年1回顧客を集めてパーティを開催しており、そこで顧客同士が交流を深める場になっているようです。

顧客の獲得手法についても伺いましたが、やはり主には紹介によるものでした。顧客からの紹介や。弁護士、税理士などの連携先から紹介されるのが一般的だそうです。


◉Alamo Asset Adovisors社


最後の3社目はAlamo Asset Adovisors社です。ここではEricさんにお話を伺いました。

Alamo Asset Adovisorは、独立系のFPが多く所属するFP事務所です。

ここでは各FPが個人であげた収入の65%が本人、35%が事務所に入る形で運営されています。その意味で運営スタイルは、日本の弁護士事務所や税理士事務所の合同事務所形式に似ているかもしれません。

Ericさんは完全に資産管理に特化されていて、プライベートエクイティやプライベートファンドなどを上手く利用しながら顧客の資産を増やしていくのが、最大の貢献だと言う話でした。
具体的にはテキサス州に多く存在する油田に対する投資や、私募REIT、プライベートカンパニーに対する投資などを取り扱っているそうです。

また超富裕層に対するコンサルティングを得意とされているようで、使い切れないほどの資産を保有している人々には、次世代に対する相続のアドバイスに留まらず、チャリティーや慈善事業に対するアドバイスなどもしているそうです。

日本では、相続対策の話は聞きますが、こうした寄付や慈善事業にまでアドバイスをする人の存在はあまり耳にしません。こうした超富裕層ビジネスも、まだまだ米国には学ぶところが多そうです。

以上、アメリカのFP業界の概要や歴史、また実際にのFP事務所などを簡単にご紹介しました。

毎年米国に行って感じることは、こうした個人の資産管理ビジネスは、米国でも1990年代から育ちだし、20年かけて現在のようなスタイルに発展してきたという歴史です。
そして現在、米国のFP個人向けの資産管理に対して果たす役割と言うものはとても大きいものがあります。

日本はその意味でまだまだ米国の1980年代の雰囲気に似たところがあり、これから30年間近くかけてこうした米国型の資産管理ビジネスが根付いていく途上にあるのかもしれません。
言い換えれば、日本の資産管理に関連する業界はまだまだ発展と成長性のある業界であり、個人向けの金融サービスは今後ますます充実してく余地があるのだとも思います。

BY 小屋 洋一( マネーライフプランニング 代表)
本人の同意のもと、ブログ記事を一部加筆・修正等を行った上で掲載しています。

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