◉アメリカのFP業界の発展の歴史


そもそも皆さまはFPという言葉にどのようなイメージをお持ちでしょうか。日本においてはファイナンシャルプランニングという言葉の連想からか、個人の家計管理の専門家というイメージが強いかもしれません。
しかし欧米においては、FPは金融資産3000万円前後以上の人を対象とした資産管理の専門家という位置づけです。

FPという職業は、元々第二次世界大戦後にアメリカ人の金融にまつわるニーズを解決する存在として誕生しました。1960年代の末にはFPの大会等も開かれ、だいぶ活発な活動を行うようになっていたそうです。
そしてそれと並行し、1980年代頃からは、大手金融機関のコミッション(売買手数料)中心のビジネスモデルと顧客軽視の姿勢への問題意識が高まります。そんな中、1990年代頃から金融機関から独立してアドバイスを行えるFPへの注目は高まり、FPによる資産管理ビジネスが育ちだします。
またリーマンショックにより、顧客側から大手の金融機関への不信が加速します。さらに金融機関の営業職の人間にも、会社の制約のない自由な立場からのアドバイスを実現したいと独立する人が増えていきました。

こうしてアメリカのFP業界は現在の姿を迎えます。
FPは顧客の資産管理を行う場合、自身では顧客の資産を預かることは出来ないため、既存の証券会社のプラットフォームを利用するのですが、独立系のFP向けのプラットフォームの提供に力を入れるチャールズ・シュワプなどは、FP経由により預り資産高が増えたおかげで預り資産高の総額が全米1位を誇るなど、米国のFP業界の発展は目を見張るものがあります。



◉アメリカでの主なFPの協会


また、アメリカのFP業界のことを説明するにあたり、FP支援する協会の存在についても述べさせてください。日本に置ける 日本 FP協会 のように、FPの活動を支援する協会がアメリカにも存在し、大きくは以下の3つが著名です。

FPA(Financial Planning Association)

FPA(ファイナンシャルプランニング協会)は、米国におけるCFP(編集注:FPのライセンスの一種)保持者のための最大の会員組織です。前回の記事で内容を紹介したカンファレンスもFPAの主催です。
ホームページは英語版しかありませんが、登録しているFPの検索性に優れ、ファイナンシャルプランニングやライフプランニングに関する一般向けのコンテンツも充実しているなど、「消費者」を意識した作りになっています。

約45000人のCFP所持者が登録しています。

NAPFA(The National Association of Personal Financial Advisors)

NAPFAはFPAと双璧をなすアメリカのFP団体ですが、FPAと比較してよりストイックにFee-Onlyのスタイルでの顧客アドバイスを徹底しています。
こちらもホームページが優れており、検索性、コンテンツ共に充実しています。

約2500人のCFP所持者が登録しています。

C FPboard(Certified Financial Planner Board)

世界的なFPの資格であるCFPの認定機関となります。CFPはどの国の国家資格でもなく、CFPboardが所有する商標になります。
なお日本では、 日本 FP協会 がCFPboardからライセンス提供を受けてCFPの認定を行っています。

CFPboardの所属者という訳では無いですが、CFPの保持者は全米で65000名ほどになります。


◉日本のFP業界が資産運用業界へ発展するには


今回のインタビューでは、NAPFAで理事をしているGugleさんのお時間を頂き、お話を伺いしました。

まず最近の米国のFP業界の動向として、 FPA NAPFA CFPboard の3団体は、ファイナンシャルプランニングの専門家として、「CFP」のブランドを集中的にプロモーションしていくことを話しているそうです。
業界にはCFPのみならず、様々な任意団体の資格が乱立されており、消費者も混乱するしブランディングが統一できていないという課題がありました。

またCFP取得者の約60%はRIA(編集注:Registered Investment Advisor=投資の一任業者、顧客資産の運用を任され売買を行う)として、資産管理のフィービジネスを行っており、ブローカー(コミッションによる証券・保険の販売)は40%程度とのことです。

他に、お伺いしたFee-OnlyでのFPビジネスの成功のコツですが、「声を大にして(マスコミ・ジャーナリストを活用して)Fee-Onlyのメリットを訴え続ける」ことが重要だとのお話でした。
日本の場合には、本来はFP協会にその役割を担ってほしいのですが、多くの会員が所属し実質スポンサーである「保険会社」「証券会社」「銀行」がコミッション商売なのでなかなか難しいと言えそうです。
その意味では、しっかりとしたジャーナリストがこうしたFee-Onlyビジネスの良いところを消費者に伝えていくのが一番だと思いますが、金融業界はジャーナリストのスポンサーでもあるのでこれも難しいかもしれません。

日本でFeeビジネスが広がるには、まだまだ時間がかかるかもしれません。

【参考】

お金の相談、どんな専門家が頼りになるか?〜日米金融サービスの違いに学ぶ〜