「ナスダック(NASDAQ)」は米国の代表的な株価指数だ。よく見聞きする言葉ではあるが、ダウ平均株価やS&P500との違いを明確に説明できるだろうか。ナスダックは2020年から21年にかけて活況が続いたことから、関連する投資信託やETFの注目度も高い。その特徴と注目銘柄を解説する。
1,ナスダック(NASDAQ)とは
ナスダックは、グーグルやアップル、フェイスブックやアマゾンが上場している、新興企業を中心とする米国株式市場のことだ。ナスダック上場銘柄すべての株価を時価総額で加重平均したものが「ナスダック総合指数」、金融株を除く主要100社の株価から算出されたものが「ナスダック100指数」と呼ばれる。これらはダウ平均株価(NTダウ)やS&P 500と並ぶ米国の代表的な株価指数である。
ナスダックはIT・ハイテク株中心で、任天堂なども上場
ナスダックは当初ベンチャー企業や中堅企業が上場する市場だったが、近ごろは世界的に有名になった企業もそのまま残っていることから、規模が大きい企業も含まれる。業種としてはインターネット関連企業やハイテク企業が多い。
アメリカ企業に限らず上場可能なので、世界的に有名な比較的新しい企業全体の動向が反映されている。最近ではイスラエルや中国企業の上場が目立つようになった。日本からはインターネットイニシアティブ、キリンホールディングス、キユーピー、日産自動車、任天堂などが参加している。日本におけるジャスダック(JASDAQ)はナスダックの日本版である。
アメリカのもう1つの株式市場は世界最大級の時価総額を誇るニューヨーク証券取引所(NYSE)である。こちらは大型の優良銘柄が多く、ビザ、ウォルト・ディズニー、コカ・コーラ、ジョンソン&ジョンソンなどが含まれる。
ナスダック総合指数とナスダック100指数の違い
ナスダック総合指数はナスダックに上場している3,000以上の銘柄をすべて対象としており、世界中の新興市場のベンチマークと位置付けられている。1971年2月の株価を100とした指数を表している。2021年3月19日時点のナスダック総合指数は13,215.24だ。
一方ナスダック100指数は金融銘柄を除外した時価総額上位100社を構成銘柄としており、世界的に知名度の高いIT銘柄の動向を示す材料として重要な指標となっている。2021年3月19日現在のナスダック100指数は12,866.99。「ビッグ・テック」「GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)」と呼ばれる巨大IT企業の好調さをナスダック総合指数よりも直接的に影響を受けることから、関連する投資信託やETF(上場投資信託)の注目度が高くなっている。
ナスダックとNYダウ、S&P500との違い
ナスダックとダウ平均株価の違いは、採用されている構成銘柄に大きく表れている。ダウ平均株価は30の構成銘柄から成っており、業種はさまざまだ。ゴールドマンサックス、アメリカンエキスプレスなどの金融銘柄のほか、ジョンソン&ジョンソン、メルクなどヘルスケア部門の企業が目立つ。銘柄数が少ないため、個別企業の株価の動向に左右されやすい。
S&P500は米国株式市場の大型株500銘柄から成る。ナスダックと同様IT企業やハイテク企業が多いが、アメリカ企業のみが対象となる。ナスダック指数は世界中の新興企業が対象となる。
2,ナスダック連動投資信託・ETFのメリットとデメリット
ナスダック関連の投資信託やETFに投資するメリット・デメリットは何であろうか。
ナスダック連動投資信託・ETFに投資するメリット
ナスダック総合指数、ナスダック100指数に連動する投資信託やETFを購入すれば、少額で米国の幅広い銘柄に分散投資するのと同じ効果が得られる。
ナスダックの指数は、他の指数に比べて値動きが大きいのが特徴だ。ここ数年は世界全体で株価が堅調であったが、ダウ平均株価は1年で75.5%増、5年で83.38%増、S&P500は1年で74.89%増、5年で88.79%増であった。それに対し、ナスダック総合指数はこの1年で93.72%増、5年で168.9%増、ナスダック100指数は1年で83.63%増、5年で183.91%増と、上昇幅が大きい。インデックス投資でありながらリターンを積極的に狙うことが可能だ。
<各指数の上昇率>
指数 | 1年 | 5年 |
ダウ平均 | 75.5%増 | 83.38%増 |
S&P500 | 74.89%増 | 88.79%増 |
ナスダック総合指数 | 93.72%増 | 168.9%増 |
ナスダック100指数 | 83.63%増 | 183.91%増 |
GAFAMなど米国巨大IT企業の堅調な業績が今後も続くと予想されるなら、ぜひ注目しておきたい指数である。
ナスダック連動投資信託・ETFに投資するデメリット
ダウ平均株価やS&P500に比べて値動きが大きく高いリターンが期待できるが、同時にリスクが高くなる傾向がある。特に2021年3月以降は米国株式市場が下落基調に転じており、ナスダック指数は今後注意が必要かもしれない。
また、つみたてNISAにはナスダック指数に連動する投資信託やETFがない点もデメリットだ。つみたてNISAで米国株式に連動する指数はS&P500とCRSP USトータルマーケットインデックス(米国上場銘柄のほぼ100%をカバーしている指数)のみだ。つみたてNISAは長期的に安定した資産運用を促すことを目的としているため、リスクが高めのナスダック指数はつみたてNISA向きではないと判断されたようだ。
3,投資信託とETFの3つの違い
ナスダック関連の金融商品としては投資信託とETFが有力だ。どちらも少額から分散投資が可能で、ナスダックの指数に連動するよう設計された商品が多数存在する。両者の主な違いは3つある。
購入価格──投資信託は1日1回基準価額、ETFはリアルタイム
ETFは個別株式のようにリアルタイムに価格が決定するが、投資信託は1日1回基準価額が決定される仕組みになっている。したがってETFでは指値注文や逆指値注文が可能だが、投資信託ではそのような複雑な注文はできない。
積立投資──投資信託は自動積立可能、ETFは原則不可
投資信託は毎月・毎週など定期的に一定額ずつ購入する自動積立投資が可能だが、ETFは一括で買うよりほかない(一部の証券会社では「るいとう」を使って積立ができるケースもある)。少額ずつコツコツ購入したいと考えている場合は積立投資が便利だ。
再投資による複利効果──投資信託はあり、ETFはなし
3つめは再投資ができるかどうかだ。投資信託の分配金は受け取りを指定しなければ自動的に同じファンドの購入に充てられる。これにより元本が増え複利の効果が得られる。ETFはすべての分配金は分配される仕組みであるため、複利の効果は得られない。
投資信託とETF、どちらの利益が大きいか比べることはできないが、それぞれの特性を理解して使い分けることが重要である。
4,ナスダックに連動する注目の投資信託3選
ナスダックの指数に連動する、純資産総額の高い投資信託をピックアップした。
商品名 | 信託報酬 (年率税込) |
トータル リターン(1年) |
純資産総額 (百万円) |
iFreeレバレッジ NASDAQ100 (大和) |
0.99% | 109.22% | 58,855 |
iFreeNEXT NASDAQ100 インデックス(大和) |
0.50% | 47.55% | 21,382 |
三菱UFJ NASDAQオープン Bコース (三菱UFJ国際) |
1.67% | 47.89% | 19,756 |
投資信託でもっとも純資産総額が高いのは大和アセットマネジメントの「iFreeレバレッジ NASDAQ100」だ。2位に大きく差をつけた資産規模を持つ。日々の基準価額の値動きがNASDAQ100指数(米ドルベース)の値動きの2倍になるように設計されており、積極的なリターンを狙う投資家から支持されている。
「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」はNASDAQ100指数(円ベース)に連動するインデックス型投資信託。レバレッジやアクティブ型でないシンプルなナスダック連動投資信託なら同ファンドが最も規模が大きい。S&P500に連動する投資信託よりも信託報酬は高めだ。
「三菱UFJ NASDAQオープン」はナスダック上場銘柄のうち時価総額が高く成長が期待される50銘柄に投資するファンドである。Aコースは為替ヘッジありで、Bコース為替ヘッジなしだ。アクティブ型投資信託なので信託報酬は高めである。
5,ナスダックに連動する注目のETF3選
ナスダックの指数に連動する、純資産総額の高いETFを3つ挙げた。
商品名 | 信託報酬 (年率税込) |
トータル リターン(1年) |
純資産総額 (百万円) |
(NEXT FUNDS)NASDAQ-100 (R)連動型上場投信(野村) |
0.50% | 47.96% | 29,887 |
上場インデックスファンド米国株式 (NASDAQ100)ヘッジ有(日興) |
0.28% | 18.00% ※1 |
16,451 |
上場インデックスファンド米国株式 (NASDAQ100)ヘッジ無(日興) |
0.28% | 28.24% ※2 |
10,091 |
主要なETFはナスダック100指数を対象とするものが多い。最も規模が大きいのは野村アセットマネジメントの「(NEXT FUNDS)NASDAQ-100(R)連動型上場投信」。NEXT FUNDSは国内のETFの残高および売買代金でシェアトップのETFシリーズだ。
続くのは日興アセットマネジメントの「上場インデックスファンド米国株式(NASDAQ100)」である。ヘッジありは純資産総額が高めだが、ヘッジコストがかかるためリターンがヘッジなしより目減りしている。信託報酬は変わらない。
6,ナスダック連動投資信託はリスク許容の範囲内で検討を
米国株式に連動する投資信託・ETFの中には、ダウ平均株価、S&P500、ナスダック総合指数、ナスダック100指数をベンチマークとするものがあり、それぞれに特徴があることを解説した。
アメリカ以外の企業を含む世界の新興市場に重視する場合はナスダック総合指数、世界の有名IT企業に重視する場合はナスダック100指数をベンチマークとする投資信託やETFに投資するのが良いだろう。値動きがやや激しくなる傾向があるので、許容できるリスクの範囲の見極めが大切だ。
執筆・篠田わかな(ファイナンシャルプランナー)
外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
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