理想のカラダづくりのためにトレーニングやダイエットをしている人にとって、食事の管理は成果を握るカギである。株式会社Muscle Deli(マッスルデリ)は、三大栄養素をバランスで摂取できる冷凍の宅配弁当をサブスクで提供し、食事面から健康づくりをサポートしている。提供数は2020年5月に月間5万食を超え、その勢いは止まらない。代表取締役の西川 真梨子氏にビジネスの特徴や目標を聞いた。
忙しいビジネスマンの食事管理を助けたい
――マッスルデリを起業されたきっかけを教えていただけますか?
西川 マッスルデリは私にとって2社目の起業です。私は繊維メーカーに勤めた後、2013年に友人とサバイバルゲーム場を運営する会社を立ち上げました。そこで起業の楽しさを知り、もっと経営の勉強がしたいと思いコンサルティング会社で3年ほど働きました。
マッスルデリを起業したのは2016年です。ご存じのようにカラダづくりには食事が重要な要素です。私もジムのトレーナーに教わりながら食事の管理をしていましたが、これがなかなか難しい。自炊するには時間が必要だし、外食やコンビニ食ではメニューが限られます。結果的にサラダチキンばかり食べることになり、食事が楽しみでなくなりました。
もっと楽しみながら食事管理できないかと思い、健康食品に関心を持つようになりました。そして調べてみたところ、高齢者向けの食事のデリバリーはあっても、健康な人向けのサービスはありませんでした。
ダイエットについても気になったことがあります。世の中にはさまざまなダイエット法がありますが、成功する人は限られています。リバウンドしては他の方法を試す、という負のスパイラルを繰り返すことも多い。そこで、トレーニングやダイエットに適した、カラダに良い食事のサービスをつくりたいと考えマッスルデリを起業しました。
――サービスの特徴は?
西川 マッスルデリはカラダづくりをしている方の目的に合わせて、「おいしい」「便利」「栄養」を重視した最適な食事をお届けしています。カラダづくりの目的はボディメイク、ダイエット、筋肉を増やしたいなど人それぞれです。そこでWebサイトに食事診断を用意し、問いに答えるだけで個別に最適な食事をお選びいただけるようにしました。料金は定額制で、冷凍弁当を定期的にお客様のご自宅にお届けします。レンジで温めるだけでおいしく召し上がっていただけます。
――メニューはどのようになっているのでしょうか?
西川 メニューは50種類を展開していますので、飽きずに続けていただけます。また、食事の量はカラダのサイズや目的によって変えるべきですが、世の中の食事は1サイズが多い。そこで当サービスでは3つのサイズから選べるようにしました。
一般的なダイエット食は糖質制限をベースにしているものが多いですが、マッスルデリではマクロ管理法に基づいて、カロリーと三大栄養素のバランスを最適化するよう設計しています。これにより長期的にきれいなカラダづくりを目指しています。
――どんな方が利用されているのですか?
西川 ユーザーのおよそ55%が男性、45%が女性です。以前は男性が70%ほどでしたが、2020年以降は女性比率が増えました。年齢は30代~40代が中心で、ダイエットや筋肉づくりなどの目的を持った方が半分以上です。ユーザー層のイメージをひと言でいえば「健康意識の高いビジネスマン」です。
――お弁当の価格はいくらですか?
西川 1食あたりの価格はサイズによって変わりますが、送料込みで1,000円~1,400円。5食単位で提供しています。少し高いと感じる方もいらっしゃいますが、外食すれば1,000円以上、出前では1,500円を超えることも多いですよね。おいしくバランスの良いメニューを手軽に味わえること、からだづくりのための食事相談サービスなどもついているため、適正な価格ではないかと考えています。
――販売食数はどれくらいですか?
西川 2020年5月には月間5万食を超え、以降も順調に伸びています。現在はお弁当以外にもケータリングサービスも提供しています。また、高たんぱく低カロリーのチーズケーキやパンケーキ、ピザやスープなど、弁当以外のメニューも増やしています。
食からトレーニングをサポートするビジネスモデル
――起業してからこれまで苦労したことは?
西川 一番大変だったことは食品工場探しですね。食品工場にとっては既存の商品とコンセプトが違います。しかも発注量も少なかったので、なかなか生産を引き受けていただけるパートナーが見つかりませんでした。いくつもの食品工場さんに提案を続け、工場を見つけることができました。
――サービス開始から販売数は順調に伸びましたか?
西川 現在のD2C型のサービスを始める前は、B2Bでの展開を想定していました。フィットネスジムにアプローチすると、提携してくださるジムはたくさんありましたが、当時のスキームでは販売数量が見込めなかったためC向けに方針転換しました。D2Cサービスのリリース後は、これまでにないサービス内容が注目され、さまざまなメディアに取り上げていただき、順調なスタートを切ることができました。今後はD2Cだけでなく、再びB2Bにも力を入れていきます。
――お弁当以外の事業も展開されていますね。
西川 ケータリングのほか、飲食店と提携して高たんぱくでヘルシーなメニューをUber Eatsなどでお届けする出前サービスも行っています。管理栄養士によるアスリートの食事管理サービスにも力を入れています。
ヘビーユーザーからライトユーザーまで最適な食事を届ける
――今後の展開についてお聞かせください。
西川 カラダづくりをしている方をトータル的にサポートしたいと思っています。そこで食事相談を受けたり、毎月会員向けに食事セミナーを開催するなど、ユーザーとのコミュニケーションの機会を増やしています。単にモノを売るのではなく、情報配信やカウンセリングなどのラインナップを増やしていきたいと考えています。
さらに利便性の向上も追及していきます。注文から食べるまでをもっと便利にすることで、ストレスなく食事管理ができる環境を実現します。
――今後狙っていきたいユーザー層はありますか?
西川 マッスルデリというネーミングもあって、筋力アップを図るヘビーユーザーのイメージが強いのですが、たんぱく質を摂って健康になりたいというユーザーは幅広く存在します。実際にこのコロナ禍ではライトユーザー層の利用が増えました。
市場で提供されているプロテインは甘い味のタイプが主力で、口に合わない人もいます。一方、当社が今年2月に発売したプロテインスープはポタージュ味で、一般的なスープと比べて味も遜色ないレベルに仕上がりました。今後も続々と、日常の食事に加えやすく自然にたんぱく質を摂取できる商品を提供していく予定です。
新しい生活様式の食を支えていく企業として
――コロナ禍で実感したことはありますか?
西川 特に運動はしてないけれども便利に健康的な食事がしたいというユーザーが増えました。在宅勤務が増えることで外食が減ったことも利用増につながっています。コロナ禍で当社の役割が増えていると感じています。
これまではカラダづくりをしている方の課題解決に注力してきました。これからは食事に対する課題認識は薄いものの、なんとなく健康になりたいと思っているライトユーザーの方にも広く商品を提供していきます。
生活様式の変化とともに食事も変わっていくと思いますが、当社のビジネスモデルで実現できることは多いはずです。今後は加速度をつけてサービスを拡充していくつもりです。
――西川社長が実現したい夢はなんでしょうか?
西川 おいしいものを諦めずに食べて美しくなれる環境をつくりたいですね。誰でも美しくなりたい、理想のカラダになりたいと思う気持ちがありますよね。でも一般的にカラダづくりを始めると、おいしいものを食べる体験は減ってしまいます。この課題を解決して、おいしいものを食べながら理想のカラダづくりも追求できる環境を構築したいと思います。(提供:THE OWNER)