本記事は、和田耕太郎氏、堀江大介氏の著書『ポストコロナのキャリア戦略 経営×ファイナンス』(ロギカ書房)の中から一部を抜粋・編集しています
資本家・投資家・経営者の視点を身に付けろ
厚生労働省によると、2020年8月14日現在、新型コロナウイルスに関連して解雇、雇い止めを受けた人は、見込みを含めて4万5,650人に上りました。こうした報道からもわかるように、アフターコロナの時代に入って、サラリーマンを続けるという選択、すなわち、1つの組織に属し、組織のために一生懸命働くことを志向することは、ますますリスキーになっています。
サラリーマンは“絶滅”するという向きもありますが、現時点では、労働者による剰余価値の創造というプロセスを抜きにしては、資本主義社会は回りませんから、サラリーマンという存在がいなくなることはないでしょう。
ただ、AIやIoT、ロボット技術が発展・普及し、業務の効率化、省人化が進めば、人手はますます不要になります。替えのきかない、絶対的なスキルをもっているのでもないかぎり、給料が大幅に上がることもありません。こうした状況を考慮すれば、サラリーマンを“絶滅危惧種”として捉えるのは大げさでもなんでもなく、リアリティのある見方といっていいでしょう。
そもそもサラリーマンとは何かといえば、自分の時間を切り売りすることで得た給料、すなわち時給で生活する存在です。時間は有限ですから給料には自ずと天井がありますし、もとよりその給料はといえば、勤めている会社の販管費から支払われるので、稼ぎが爆発的に増えることはありません。また、他人の時間を組み合わせてレバレッジを効かせることもできないので、どんなに優秀なエリートでも、サラリーマンでいる限りは一生、自分の時間を切り売りするほかありません。
一方、純然たる投資家であれば、所有する株式や不動産などの資本が稼いでくれるので、自分の時間を切り売りする必要はありません。資本家も同様です。「経営×ファイナンス」能力によって、オーナーを務める会社を成長させることができれば、株式の価値は蓄積的に上がっていきます。他人の時間を組み合わせることで、お金を爆発的に増やすことができるのです。
経営者に関しては、雇われ経営者である限りは、サラリーマンと同様に自分の時間を切り売りして働くことになりますが、業績に責任を負いながら、マネジメントによって集団を動かすため、サラリーマン従業員に比べれば稼ぎは圧倒的に多くなります。加えて、ストックオプションや業績連動給与が付与されやすいという特徴もあります。また、オーナー経営者であれば、資本家としての側面も併せ持つことになります。
サラリーマンと資本家・投資家・経営者──。どの道を志すかは、価値観や嗜好、現時点での能力や経験によって異なるでしょうし、一人ひとりが自由に選択して然るべきだと思いますが、もし将来的に、資本家や投資家、経営者として生きていきたいという気持ちが少しでもあるのなら、今すぐにでも「経営×ファイナンス」能力を身につける行動を開始してください。その選択は早いに越したことはありません。
「経営×ファイナンス」能力の因数分解
ここからは「経営×ファイナンス」能力の具体的な中身についてお話します。
これまでの話で、「経営×ファイナンス」能力が、組織やプロジェクトを丸ごとマネジメントする能力であること、組織に頼らない、自立的なキャリアを形成するために必要な能力であること、資本家・投資家・経営者として生きるために欠かせない能力であることはご理解いただけたと思いますが、それがどのような力によって成り立っているのか。若手ビジネスパーソンが身に付けるべき力を明確にするためにも“因数分解”をしてみたいと思います。
経営力は「人間力」「コミュニケーション能力」「胆力」「グリット力」「事業計画策定力」等に、ファイナンス力は「係数理解力」「エクセル力」「財務会計力」「資金調達力」等に分解することができます。
もちろん経営もファイナンスも、非常に幅広い概念ですし、そのなかで「何が重要か?」と問われれば、「すべてが大事」としか応えようがありません。したがって、ここに挙げた項目は、資本家や投資家、経営者の業務を経験するうえで優先的に身に付けておかなくてはならない必要条件であり、「経営×ファイナンス」能力を実戦の場で鍛えていく際に強く意識すべき要件として捉えていただければ結構です。
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